★ 相続の専門家の正しい選び方!

相続手続きの期限はいつまで?期限内に終わらせる方法と過ぎたときの対処法

相続手続きは誰しも避けては通れないプロセスですが、複雑で時間がかかります。しかし一方で、相続手続きの期限は、過ぎると大きなリスクがあります。家族が死亡した直後は、通夜や葬儀、医療費や入院費の清算など、やることが多く、相続手続きまで手が回らないかもしれませんが、期限を過ぎるとできなくなってしまうこともあります。

本解説では、相続手続きにおける重要な期限と、期限内にすべき手続きや準備の進め方、万が一にも過ぎてしまったときの対策などを解説します。

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相続手続きで知っておくべき基本的な期限

相続手続きで気にしておくべき期限について、基本的な知識を解説します。

相続の手続きは複雑であり、多くの時間がかかるとお考えください。期限のなかには延長できないものも少なくないので、気付かぬうちに過ぎてしまわないよう慎重に注意しましょう。

相続放棄の期限は3ヶ月以内

相続では、財産だけでなく負債も承継されます。相続財産の額よりも借金などの債務のほうが多いときには、相続放棄の手続きによって相続しないことを選択できます。また、その判断に迷うときは、遺産の限度でのみ債務を負う、限定承認を選ぶこともできます。

相続放棄や限定承認の手続きは、家庭裁判所に申述する必要があり、この手続きには期限があります。具体的には、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に行わなければならないこととされており、この期間を「熟慮期間」と呼びます。3ヶ月の期間内に相続財産調査が終わらない場合には、熟慮期間の伸長を家庭裁判所に申し立てることができます。

熟慮期間を過ぎても相続放棄、限定承認のいずれの手続きも選択していないときは、相続を単純承認したものとみなされます。期限を過ぎた後は、相続放棄や限定承認できないのが原則ではありますが、相続開始を知らなかったり、借金の存在を知らなかったりすると、3ヶ月を過ぎてもなお相続放棄が許されることもあります。実務的には、期限後の放棄も認められるケースが多いため、あきらめず申述することをお勧めします。

相続放棄の手続きについて

準確定申告の期限は4ヶ月以内

準確定申告の期限は、相続があったことを知ったときから4ヶ月以内です。

準確定申告は、被相続人が確定申告を要するときに、故人に代わって相続人の行う確定申告の手続きです。被相続人が経営者や個人事業主であったり、不動産の賃料収入を得ていたりなど、確定申告を必要としていた場合には、準確定申告を行う必要があります。

経営者など、準確定申告を要することが明らかな場合には、あらかじめ領収書などの確定申告に必要となる資料を収集したり、懇意にしている税理士と連絡をとったりといった準備が必要です。準確定申告の期限を過ぎると、延滞税、無申告加算税、過少申告加算税や重加算税といったペナルティによって税額が増えてしまう危険があります。

準確定申告について

相続税の申告・納付の期限は10ヶ月以内

相続税の申告・納付の期限は、相続があったことを知ったときから10ヶ月以内です。申告と納付の期限は同じであり、この時点までに申告と納付のいずれも済ませる必要があります。

相続税は、遺産が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に課税されます。相続税の申告は、税務署から自動で課されるのではなく、相続人が自ら財産と債務を調べ、相続税を計算して申告する必要があります。

相続税の期限に遅れると、延滞税、無申告加算税、過少申告加算税や重加算税といったペナルティによって税額が増えてしまいます。また、相続税を低く抑えるための配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例といった各種制度も、期限後だと利用できなくなります。

相続税の期限について

遺留分侵害額請求の期限は1年または10年

遺留分侵害額請求の期限は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年です。また、相続開始のときから10年経過したときにも、遺留分侵害額請求をすることができなくなります。なお、1年の期限は、相続開始を知っていても、遺留分を侵害されたことを知らなければ進行しません。

遺留分侵害額請求は、民法の定める法定相続人(兄弟姉妹を除く)が最低限取得できる相続分の割合の請求です。被相続人の遺志の尊重と、相続人の保護のバランスをとるために定められた制度ですが、相続関係の安定のため、短期消滅時効が設定されています。

遺留分侵害額請求の期限を過ぎると権利行使ができず、不公平な相続であっても救済を受けることができなくなってしまいます。期限を過ぎないようにするには、内容証明によって、到着日を証拠に苑越して、請求権を行使する意思表示をするようにしてください。

遺留分侵害額請求の期限について

相続登記の期限は3年

2024年4月1日より、相続登記が義務化されます。これによって、相続登記は、遺産分割の日から3年以内が期限となりました。正当な理由なく、期限内に相続登記をしない場合には、過料による制裁が課されるおそれがあります。

相続登記は、相続によって取得した不動産の権利を公的に記録するための登記手続きであり、第三者に対して権利を主張する、第三者対抗要件として機能します。土地を相続する手続きのなかでは必須となります。

相続登記の手続きについて

死亡保険金請求の期限は3年

生命保険の死亡保険金の請求の期限は、被保険者が亡くなった日から3年とされており、この期限を過ぎると時効によって保険金が請求できなくなります。期限を過ぎないようにするには、どのような生命保険がかけられているか、生前に家族で情報共有しておく必要があります。

生命保険の時効について

遺産分割には期限がない

遺産分割とは、遺産を相続人間で分ける手続ですが、遺産分割そのものには法律上の期限がありません。まずは遺産分割協議からはじめ、話し合いが決裂すると遺産分割調停や審判に移行し、対立が大きいケースでは年単位の時間を要します。

なお、期限はないものの、分割せずに長期間放置したり、共有登記のままにしておいたりすると、自由に処分することができず、有効活用の支障となるおそれがあります。

遺産分割の基本について

相続手続きの期限を過ぎたらどうなる?

相続手続きの期限を過ぎてしまうと大きなリスクがあります。

相続税の負担が大きくなる

相続手続きの期限を過ぎるデメリットのうち、特に、相続税の期限を過ぎると、税負担が大きくなってしまうという大きな不利益があります。

税額を軽減する特例が使えなくなる

相続税の計算には、様々な控除や特例を適用して、節税をすることができます。しかし、配偶者控除や、小規模宅地等の特例といった制度は、申告期限を過ぎると利用できなくなってしまいます。本来であれば可能であった税額の軽減が受けられなくなる結果、税負担が増えてしまいます。

延滞税などのペナルティがある

相続税の申告や納税が期限内に行われなかった場合、延滞税が課されます。延滞税は、速やかな申告を促すためのものです。納税すべき税額に対して、遅れた期間に応じて加算されるため、申告や納税が遅れるほどに高額となってしまいます。また、悪質な場合には、過少申告加算税、無申告加算税や重加算税などが課されるおそれもあります。

相続人の状況が変化してしまう

相続手続きの期限を過ぎたまま放置しておくと、相続人それぞれの状況にも変化が生じます。相続人のライフステージが変化したり、財産の状況が変わったりすることで、遺産分割はますますまとまりづらくなってしまいます。被相続人の死後しばらくすると、相続人も高齢になっていきます。死亡し、代襲相続が発生するなどして相続人の数が増加すると、相続登記なども複雑となり、必要な資料も多くなってしまいます。

期限内に相続手続きを終わらせる方法

最後に、期限内に相続手続きを終わらせる方法と、注意点について解説します。

遺産分割協議をスムーズに進める

相続による負担を軽減するには、遺産分割協議をできるだけスムーズに進めることが大切です。もめて長引けば、経済的にはもちろん、精神的な負担についても、どうしても相続人の負荷が大きくなってしまいます。

遺産分割がもめる理由と対処法について

遺産分割前でも相続税の申告は期限までに行う

前章の通り、相続税の期限を遵守しないと、税額を軽減する特例が使えず、相続税の負担が増えてしまうことを解説しました。

遺産分割協議が難航し、時間がかかりそうなときには、例外として、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して、期限までに申告しておく方法を活用してください。この手続きをしておけば、申告期限から3年以内に分割したときにも税額軽減の対象とすることができます。

また、相続税の申告期限までに遺産分割が完了していない場合は、法定相続分通りに相続したものとして相続税を納付します。実際に財産を取得していなくても相続税を負担しなければならないので、納税資金の確保には十分な準備を要します。

遺産分割前の預貯金の払戻し制度を活用する

遺産分割前の預貯金の払戻し制度は、相続が発生した後、遺産分割が行われる前に、相続人が故人の預貯金を一定の限度で引き出せる制度であり、2018年の相続法改正で導入されました。

遺産分割が完了するまでには時間がかかることも多く、その間に、相続人の生活費や葬儀費用、医療費の未払いの清算など、現金が必要となることがあります。この制度によって、相続人が速やかに資金を確保できるようにし、緊急の出費にも対応できるようになりました。

口座の名義変更について

相続手続きに困ったら専門家に相談すべき

相続手続きを、間違いなく正確に進めるには、専門家に相談すべきです。特に、相続手続きの期限が迫っている場面では、専門家に任せることによってスムーズに準備を進め、期限を忘れて過ぎてしまわないようにすることができます。専門知識をもとにしたアドバイスを受ければ、遺産分割も感情的な対立を避け、スピーディに進められます。

相続手続きの難しいのは、期限を有する手続きが、税務、法務、登記の各分野に分かれている点です。税務は税理士に、法務は弁護士に、登記は司法書士に、と分けて依頼するのが適切ではありますが、このとき、それぞれの手続きが関連しあい、全ての手続きに期限があるとき、各専門家が連携して、チームを組んで対応する必要があります。

相続の専門家について

まとめ

今回は、相続手続きの期限について解説しました。

相続手続きは、予想よりもはるかに時間のかかる作業です。ただ役所で手続きをすればよいのではなく、その前に必要な準備や話し合いをしたり、必要書類を取り寄せたりしなければなりません。必要書類としては「被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍」が原則であり、戸籍を遡って収集しなければならないので、相当な時間がかかります。

相続手続きは、役所や金融機関でのやり取りが多く、日中に仕事をしている人にとっては十分な時間を割くことができないこともあるでしょう。弁護士など相続の専門家に、代わりに手続きを任せれば、期限を過ぎないようお手伝いできます。

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