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遺産分割とは?相続の違いと3種類の分割方法について解説

遺産分割と相続は、似た言葉ですが、厳密には意味が違います。

「相続」は、亡くなった方の遺産を受け継ぐことの全てをいいます。これに対し「遺産分割」は、相続した財産について、複数の相続人間でどのように分けるか、という分配のことを指します。いずれも遺産を取得する手続きという点では共通しますが、区別して使用します。

今回は、遺産分割と相続の違いと、遺産分割のなかでもその分割方法に3つの種類があることについて、わかりやすく解説します。

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遺産分割と相続の基本

初めに、遺産分割と相続の基本的な法律知識について解説します。遺産分割と相続とは混同しやすいですが、法的には異なる意味を持ちます。

相続とは

相続とは、亡くなった方(被相続人)の財産の全てを、相続人に移転することを指します。

遺産を引き継ぐことの全てを指し、死亡による相続の開始から、最終的な財産の取得によって終了します。人が死亡すると、相続は必ず発生します。相続人が1人ならその人が全ての財産を相続しますが、相続人が複数いる場合には一旦その全員の共有状態が発生し、その後に遺産分割のプロセスを経て各人に遺産が分配されます。

遺産分割とは

遺産分割とは、相続の後に、遺産の具体的な配分の割合を決める行為を指します。相続は死亡によって自動的に開始されますが、遺産分割は、相続人が複数いる場合に初めて必要となり、相続人による行為(遺言の執行もしくは遺産分割協議など)によって遂行されます。

遺産分割は大きく分けて、故人の遺志を優先した「遺言による分割」と、相続人の意向を反映した「遺産分割協議などによる分割」、「法定相続分による分割」(負債の場合など)の3つの手続きがあります。遺言により分割する場合は、指定された相続分に従って分けるのが原則ですが、遺留分を侵害された相続人は遺留分侵害額請求によって救済を受けることができます。

これに対し、遺産分割協議などによる分割では、遺言のないときに法定相続分などを参考にして公平な分け方を相続人全員で協議します。

遺産分割と相続のプロセスの違い

遺産分割と相続の違いについて、その具体的なプロセスを解きほぐすことによって、よく理解するようにしてください。下記の通り、遺産分割は、相続の一部に含まれる手続きです。

相続のプロセスの流れ

相続は、ある人が亡くなった際に、その遺産が法律に基づいて相続人に移転する過程です。相続が発生すると、故人の財産は相続人間で分割される必要がありますが、相続人が1人なら財産の分配は不要です。

相続のプロセスの流れは、次の通りです。

遺産分割のプロセスの流れ

相続人が2人以上のとき、以上の相続の流れのなかで、遺産分割を行い、誰がどの財産を、どの割合で受け取るか、を決める必要があります。遺産分割なしには、相続財産を取得することはできません。

遺産分割の手続きには、遺言による分割、遺産分割協議などによる分割があり、また、負債については遺産分割の対象とならず、法定相続分によって承継されます。相続の分け方は、手続き面で3つの種類があるのです。

【遺言による分割の流れ】

遺言が存在する場合、指定相続分が優先しますが、遺留分による救済があり得ます。

  • 遺言の調査
  • 自筆証書遺言の場合)検認
  • 遺言の執行
  • (遺留分を侵害された相続人がいる場合)遺留分侵害額請求
  • 分割した財産の取得

【遺産分割協議などによる分割の流れ】

遺言がない場合、遺産分割協議、調停ないし審判で分けます。

【法定相続分による承継の流れ】

被相続人の負債の相続では、遺産分割の対象とはならず、相続開始と同時に法定相続分にしたがって承継されます。

遺産分割は、前章の相続の一部なので、分割の前に遺産調査や相続人の確定が必要であり、分割の後には相続登記や相続税の申告・納付が必要となります。

遺産の分割は、民法906条によって、次の事情を考慮して行うこととなっています。

  • 遺産に属する物又は権利の種類及び性質
  • 各相続人の年齢
  • 職業
  • 心身の状態
  • 生活の状況
  • その他一切の事情

遺産分割の方法が決定されると、分割の効果は相続開始時に遡って発生します。

相続人が複数いる場合に遺言がないと、遺産分割協議を成立させるためには相続人全員の合意が必要となります。相続人全員の公平のため、納得のもとで分ける必要があるのです。そのため、1人でも意見が異なると分配を進めることができず、法的手続きに移行し、争続が長期化してしまいます。

遺産分割方法の3つの種類

遺産分割の方法には、3つの種類があります。それが、現物分割、代償分割、換価分割です。

また、分割せずに共有のまま持ち続ける方法(共有分割)を選択することもできます。ただし、共有分割は、遺産分割の手間がない分、問題の先延ばしであり、後に紛争が起こりやすくなります。将来になって共有状態の解消がもめると、共有物分割請求の争いが起こります。

現物分割

現物分割とは、遺産を現物のまま相続人間で分割する方法です。現物分割のメリット、デメリットは次の通りです。

【メリット】

  • 等分すれば形式的には公平であり、相続人間の同意が得やすい。
  • 各自が取得した財産の全部を使用、処分できる。

【デメリット】

  • 物理的に分けやすい財産(預貯金、現金など)に適している。
  • 不動産の現物分割には分筆を要する。
  • 分割の割合や内容によっては遺産の価値が下がる。
  • 物理的に分けづらい財産もある(美術品、貴金属、家宝など)。

代償分割

代償分割は、1人の相続人がある遺産の全てを取得する代わりに、他の共同相続人に対してその相続分に応じた代償金を払う方法です。代物分割のメリット、デメリットは次の通りです。

【メリット】

  • 遺産の内容に応じた柔軟な解決ができる。
  • 不動産などの財産が不要な相続人にとって代償金の方がメリットがある。
  • 不動産などを細かく分けて価値を減じることがない。

【デメリット】

  • 代償金を支払う資力が必要となる。
  • 代償金額の計算でもめることがある(遺産の評価や計算方法など)。

換価分割

換価分割とは、遺産を現金化して、その代金を相続の割合に応じて分割する方法です。換価分割のメリット、デメリットは次の通りです。

【メリット】

  • 不動産など物理的に分割しづらい財産を公平に分けられる。
  • 換価して正確に等分できトラブルを減らせる。
  • 相続人誰もが不要な遺産を分けるのに適している。

【デメリット】

  • 売却するかどうか、評価額などに争いが生じる。
  • 自宅不動産など現物のまま利用したい相続人がいる可能性がある。

換価分割の注意点について

遺産分割の成功には専門家による戦略が不可欠

最後に、成功する遺産分割のポイントは、その戦略にあります。生前の早い段階から、相続人間でコミュニケーションをとれば、円滑に進められる可能性が上がるからです。この際には、相続人それぞれの希望や期待を共有することから始めてください。

意見の相違がある場合には、専門家への相談がお勧めです。将来の遺産分割においてもめごとが発生しそうなら、相談すべき専門家とは弁護士です。弁護士から、法律の定める公平な分け方と、対立が深まって法的な手続きに移行した場合の裁判所の判断などをアドバイスしてもらうことが、公平な分割案につながります。弁護士から提案を受けたプランなら、他の相続人もしぶしぶでも納得してもらえる可能性もあります。

適切な専門家のサポートによって、遺産分割プロセスはよりスムーズに、かつ紛争のリスクを最小限に抑えて進めることができるのです。

相続に強い弁護士の選び方について

まとめ

今回は、遺産分割と相続という2つの用語の意味と、3つの遺産分割の方法について、区別して解説をしました。いずれも専門用語なので難しいですが、分類には注意してください。

相続は遺産を引き継ぐプロセス全て、遺産分割は相続した後にその財産をどう分けるかの分配方法、つまり、遺産分割は、相続の手続きの一部に含まれている1つの過程なのです。人が死亡すれば相続は必ず発生しますが、そのうち、遺産分割は、相続人が複数いるとき初めて発生します。

そして、相続も遺産分割も、財産を承継する手続きには変わらず、法律知識をもって慎重に進めなければ、有利な結果は望めません。

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