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相続人の確定とは?遺産分割協議の前に必要な相続人の確定方法!

家族が亡くなって遺産分割協議を始める前に、必ず「相続人の確定」をしておくのが重要です。「誰が相続人になるか」は、民法の法定相続人に関するルールがありますが、実際の相続のときに、具体的に相続人となる人を定めるプロセスが、相続人の確定です。

相続人の確定を、協議の前提として調査しておかないと、「知らなかった」「発見できなかった」思わぬ相続人を見落とすおそれがあります。隠し子がいるケースも思いの外あるため、思い込みは禁物です。相続人を確定せずに進めた協議は、相続人全員に合意とはならず、無効になってしまいます。

今回は、相続人の確定について、その方法や時期、かかる費用を解説します。

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相続人の確定とは

相続人の確定とは、遺産の承継について話し合う前に、その協議に参加すべき相続人が誰かを決める手続きのことです。相続人の確定をしなければ、法定相続人が存在するのか、具体的な相続分がどれくらいの割合なのか、決めることができません。

相続人を確定することではじめて、どの順位の続柄の相続人が存在し(もしくは存在せず)、どの優先順位で相続できるのかを決めることができます。先順位の相続人が存在する場合には、後順位の相続人は相続することができないからです。

相続人の確定が必要な理由

相続人の確定が必要な理由は、遺産分割協議には、全ての相続人が参加する必要があるからです。その結果として作成される遺産分割協議書にも、相続人全員の実印が必要となります。全員が押印していない協議書は無効となるので、話し合いが無駄になってしまいます。

相続人の確定は、相続人の自己申告で決まるわけではなく、思い込みは禁物です。協議に参加した誰もが知らない隠し子や前妻の子など、思わぬ相続人が判明するケースも少なくないからです。

法定相続人の順位について

相続人の確定は遺産分割協議の前に行う

以上のことから、相続人の確定は、必ず、遺産分割協議を始める前にしなければなりません。このことを指して、相続人の確定は「遺産分割の前提問題」と呼ばれることがあります。

遺産分割協議では、法定相続分通りではない遺産の分け方について、踏み込んだ議論がされます。協議に参加できなければ、遺産分割協議書に心から同意できないでしょう。途中参加では、不公平感が残ってしまいます。

遺産分割協議の基本について

相続人の確定の方法

次に、相続人の確定の方法と、注意点を解説します。

戸籍の入手方法は?

相続人の確定は、戸籍を収集する方法によって行います。「誰が相続人となるか」というよりはむしろ、「相続人が他にいないこと」を調査し尽くすイメージです。婚外子の存在なども、見逃してはいけません。

具体的には、亡くなった方(被相続人)の、出生から死亡までの全ての戸籍を取得し、読み解く必要があります。最も入手しやすい死亡時の戸籍は、現在の家族の状況しか表していないため、そこに記載されていない隠れた相続人がいないか、戸籍を遡って調べるのです。

相続人の年齢や、結婚と離婚、養子縁組と離縁など、身分変更の回数によっても異なりますが、通常、5通から10通程度の戸籍の取得が、相続人の確定には必要となります。

必要な戸籍の種類は?

相続人確定のための戸籍の取得は、まずは死亡時の戸籍を、被相続人の本籍地の市区町村役場に申請します。その後、結婚や離婚、養子縁組や離縁によって戸籍に変動があるときは、その記載に従って順に古い戸籍へと遡ります。戸籍の状況がどうなっているかは、入手した戸籍を読まなければわかりません。

入手すべき戸籍の種類は、次の通りです。

  • 戸籍謄本
    現在、その人の籍が記載されている戸籍。結婚したり、離婚をしたり、子供が生まれたりすると、内容が追加、変更、削除されることがあります。
  • 除籍謄本
    既に閉鎖された戸籍。記載された人が全員いなくなったり、死亡したりしたときに残ります。
  • 改製原戸籍
    過去に存在した戸籍が、法改正による戸籍の様式変更で作り変えられたもの。
  • 戸籍の附票
    戸籍に記載された人が、記載されている間に行った住所の変更を記録したもの。

相続に必要な戸籍の集め方について

どこまで調査しなければならない?

日本では、戸籍をたどることによって、その人の身分関係の変化を全て知ることができる制度になっています。とはいえ、無限にたどらなければならないのでは大きな手間となります。相続人の確定をするために、どこまでの調査をする必要があるか、知っておく必要があります。

相続人の確定までに必要な戸籍調査は、次の通りです。

  • 死亡時の最後の戸籍を、被相続人の本籍地に申請して入手します。
  • 戸籍を読み解き、順次、古い戸籍を入手します。
  • 被相続人の名前の記載された戸籍を、被相続人の出生から死亡まで全て入手します。
  • 発見された相続人が存命であるかを調査するため、発見された相続人の現在までの戸籍を全て入手します。

被相続人の戸籍を全て入手するとともに、発見された相続人の戸籍も取得しなければなりません。次の例のように、代襲相続の生じる可能性がある場合は、代襲相続人の発見に必要な戸籍も必要です。

被相続人の戸籍を全て入手した結果、相続人が妻のみで、前妻との間に子がいたが既に亡くなっていたことが判明したとします。この場合、前妻との子に、その子(被相続人にとって孫)がいると代襲相続が発生し、前妻の子の戸籍もまた、死亡時まで遡る必要があります。

これに対して、被相続人の戸籍を調査した結果、相続人が妻と兄で、兄が既に死亡していた場合は、甥・姪の死亡まで確認できれば、それ以上の調査は不要です。

代襲相続は、第一順位の相続人である「子」の場合、孫、曾孫(ひまご)、玄孫(やしゃご)と永遠に続きますが、第三順位の相続人である「兄弟姉妹」の場合はその子(甥・姪)までしか代襲しません。

相続人の確定の時期(タイミング)

相続人の確定の時期(タイミング)は「できるだけ早く」が原則です。そして、遅くとも遺産分割協議を開始するより前にする必要があります。死亡時の手続きなどが済んで落ち着いたら、速やかに着手するのがよいでしょう。

相続人の確定には、ここまで解説した通り、ある程度の期間と手間がかかるため、時間に余裕をもって進めてください。遺産分割協議までに相続人が確定していないと、相続人全員の合意ができず、申告すべき相続前の金額も確定できません。

相続人の確定にかかる費用

相続人の確定にかかる費用は、戸籍謄本などの取得にかかる実費と、遠方の役所から取り寄せる場合の郵送費などです。戸籍謄本の取り寄せにかかる費用は、定額小為替で払います。入手したい戸籍の種類や市区町村によって金額が異なりますが、いずれも数百円程度です。

弁護士、司法書士などの相続の専門家に依頼すると、これに加え、戸籍1通あたり1000円〜3000円程度の手数料がかかります。

まとめ

今回は、遺産分割協議の前に必ずすべき、相続人の確定について解説しました。確定をどのように進めたらよいか、どこまでの相続調査が必要かは、それに要する手間や費用に直結するため、非常に重要な問題です。

しかし、面倒だからといって相続人の確定を怠ると、遺産分割協議書が無効になってしまう上、相続税の計算ができなくなります。

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