相続が開始したとき、相続人の調査、相続人の確定のために必要となるのが、お亡くなりになった方(被相続人)や相続人の戸籍謄本です。
戸籍にはさまざまな種類があり、その時代によって戸籍が紙であったりデータ化されていたりして、集める戸籍が多くなるほど、古い戸籍が必要となるほど、戸籍の収集手続は困難な場合があります。
戸籍は、市区町村役場で取得できるものの、戸籍の取得に不慣れな一般の方にとって、必要な書類を適切に、かつ、スピーディに収集することは大きな負担となります。
その中でも特に、その名称からは内容を理解しづらい「改製原戸籍」の取得について、今回は、相続手続を多く取り扱う弁護士が解説します。
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相続手続に必要な戸籍とは?
そもそも、相続手続の際には、どのような戸籍を準備すればよいのでしょうか。相続開始したときに戸籍が必要な理由は、「誰が相続人になるか」を特定することにあります。
民法で定められている「法定相続人」として、お亡くなりになった方(被相続人)の相続人となる可能性があるのは、次の続柄の人です。
ポイント
配偶者(夫または妻)
子ども
両親・祖父母
兄弟姉妹
そして、これらの法定相続人のうち配偶者以外については、先順位の続柄の人がいない場合に、後順位の続柄の人が相続人となる、という関係にあるため、相続順位の高いほうから順番に、相続開始時において存在しているかどうかを調べなければなりません。
この時に、調査資料として必要となるのが、被相続人の「生まれてから亡くなるまでの連続した全戸籍」です。全戸籍を取得して調べることにより、抜け漏れなく、相続人の存在を調べ、相続人を確定することができます。
また、同様に、法定相続人にあたるはずであった「子」の続柄の人が、すでにお亡くなりになっていたというケースでは、代襲相続をする人(子の子=孫など)が存在するかどうか調べなければなりません。
そのため、相続人の一生分の戸籍(除籍、改製原戸籍を含む)を収集することも必要です。
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改製原戸籍とは?
戸籍は、法改正のたびごとに作り直されています。そして、現在の戸籍が作り直される前の古い戸籍のことを「改製原戸籍」と呼んでいます。単に「原戸籍」とだけいうこともあります。「かいせいげんこせき」とも「かいせいはらこせき」とも読みます。
法改正による戸籍の改製(作り直し)は何度か行われていますが、特に、紙の戸籍がコンピュータ化され、データの戸籍になった時点のものが最も重要です。
さきほど解説しました、相続手続の際に必要となる「全戸籍」の中には、戸籍謄本だけでなく、この「改製原戸籍」も当然含まれます。そのため、相続手続を進めるためには、改製原戸籍も取得しなければなりません。
その理由は、改製の時点で、既に婚姻、離婚、死亡などのライフイベントが起こったことで除籍されていたとき、改製後の戸籍にそれらが全てそのまま引き継がれるわけではなく、省略されてしまうからです。
この場合、改製原戸籍を確認しなければ、婚姻、離婚、死亡などの事実を確認できない場合があり、改製原戸籍が、相続手続におけるとても重要な資料となります。
つまり、改製原戸籍には記載があった事項でも、改正後の戸籍には記載がなくなってしまっている事項について、相続人の特定などの必要から、改製原戸籍を見る必要があるというわけです。
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「戸籍謄本」と「戸籍抄本」の違いは、こちらをご覧ください。
相続手続きでは、多くの戸籍が必要となります。相続手続きで必要となる戸籍には種類があります。 よく使われるのが、戸籍謄本、戸籍抄本、除籍、改製原戸籍です。このうち、戸籍謄本、戸籍抄本を「現在戸籍」といい ...
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改製原戸籍の取得方法・入手方法
ここまでお読みいただければわかるとおり相続手続において重要な役割を果たす改製原戸籍ですが、その取得は、戸籍謄本の取得よりも大変な場合があります。手間や時間、費用のかかる改製原戸籍の取得は、弁護士に代理してお任せいただくこともできます。
例えば、改製前に、結婚や離婚、死亡などのライフイベントが起こっていたり、転居して本籍地を移転していたりする場合には、その回数だけ、取得しなければならない戸籍(除籍、改製原戸籍を含む)が増えます。
相続人の人数が多いご家庭や、婚姻、離婚、出産などによって身分関係が複雑になっているご家族にとって、改製原戸籍を含めた全ての戸籍を取得するのに、数か月程度の長い期間がかかることも少なくありません。
改製原戸籍もまた、市区町村役場の窓口で取得することができますが、過去のライフイベントによって改製原戸籍を取得しなければならない場合に、市区町村の統廃合などもかさなった結果、管轄の役所がどこかを調査することが手間な場合もあります。
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改製原戸籍をいつまでに取得すればよい?
改製原戸籍の取得に、時間と手間が多くかかるとき、いつまでに取得を終えればよいのでしょうか。
具体的には、相続税の納税期限が、「相続開始を知った日の翌日から10カ月」とされていますので、遅くともこのときまでには、改製原戸籍の取得を行っておく必要があります。
また、婚姻と離婚を繰り返して家族関係が複雑なご家庭などでは、相続税の納付・申告以前に、「誰が、どの相続財産(遺産)を受け継ぐか」について争いとなり、遺産分割協議が長引くケースもあります。
このとき、遺産分割協議は相続人全員が参加し、相続人全員が遺産分割協議書に押印をしなければならないこととの関係上、遺産分割協議をはじめる前の段階で、改製原戸籍も取得、入手しておかなければなりません。
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相続手続は、「相続財産を守る会」にお任せください!
今回は、相続準備のとき理解してもらいづらい「改製原戸籍」という専門的な用語について、相続問題に強い弁護士が解説しました。
相続人を確定するためにも、相続手続を行う際に「改製原戸籍」の取得は必要不可欠です。できるだけ早く相続準備を行えるよう、改製原戸籍の収集に時間と手間がかかる場合には、「相続財産を守る会」の弁護士にご相談ください。