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遺言書の検認とは?必要なケースと手続きの流れや注意点まで解説

遺言は故人の遺志を示す重要なもの。しかし、遺言の方式が自筆証書遺言、秘密証書遺言だと、検認の手続きを経ないと有効なものとはなりません。遺言書の検認は、遺言が法的な効力を持つために必要となる、大変重要な手続きなのです。

検認をされないと、亡くなった方(被相続人)がこっそり遺言を作成していても、相続人全員に知れないままとなってしまいます。一部の相続人がこれを悪用して、遺産を我が物にする危険もあります。このような遺言の弊害を防ぐために、遺言の真正を確認するのが検認の役割です。そのため、検認のプロセスは、相続人全員に周知されます。

今回は、遺言書の検認について、その方法や手続きの流れ、注意点を解説します。手続きを誤ると争いが加速するリスクもあるためよく理解してください。

目次(クリックで移動)

検認の基本

まず、検認の基本的な法律知識について解説します。検認は、遺言書が法的な効力を発揮するために不可欠な手続きの一つです。

検認とは

検認とは、遺言書の真正性を確認し、その内容を公にすることで、遺言書に基づく相続が正しく行われるようにする法的な手続きです。遺言書は、検認を経ることで初めて法的な効力を持ち、遺言の実行が可能になります。

具体的には、家庭裁判所に必要書類を提出し、検認の申し立てをし、公的な認証を得ます。検認は、遺言者の死後に行われ、相続人全員に周知される重要な手続きです。

なお、検認は、遺言の形式要件に不備がないかを確認するだけのものです。内容が適切か、指定された分割方法が公平かといった点を判断しているわけではないので、家庭裁判所での検認があった後でも、遺言に基づく相続について争いになることは珍しくありません。

検認が必要となる理由

検認は、遺言書が真正なものを確認することを目的としてされます。自筆証書遺言、秘密証書遺言は、故人が自分で作成したものであり、その真正に争いがあったり、偽造や改ざんをされていたりといった危険があるからです。これによって、遺言者の意向を正しく後世に反映することを目指します。

検認の手続きは、相続人の全員への周知が保証されることで、公平性と透明性が担保されます。

遺言の方式には主に、公正証書遺言自筆証書遺言秘密証書遺言がありますが、このなかで検認を要するのが自筆証書遺言と秘密証書遺言です。

公正証書遺言は、公証人が作成し、公証役場で保管されるため偽造の危険がなく、検認は不要とされています。また、2018年の相続法改正により新設された自筆証書遺言の法務局保管の制度を活用していた場合も、同じ理由で検認が不要となります。

遺言書が勝手に作成された場合について

検認の手続きの流れ

次に、遺言書の検認の手続きの流れについて解説します。

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遺言書の発見

まず、故人の死後に、遺言書を発見します。大切な物の保管場所や貸金庫を探すほか、家族や懇意だった専門家に心当たりを聞きます。公正証書遺言はデータベース化されており、相続人などの利害関係人であれば、全国の公証役場から遺言の存在を検索できます。

遺言書の基本について

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必要書類の準備

検認を要する遺言書が発見されたら、検認の必要書類を準備します。

  • 検認申立書
  • 遺言者の戸籍
    (出生から死亡までの全戸籍)
  • 法定相続人全員の戸籍
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検認の申立て

遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ、検認の申立てを行います。検認の申立てにかかる費用は、遺言書1通につき800円の収入印紙と、連絡用の郵便切手代です。

検認の申立てをする人は、次のいずれかです。

  • 遺言書の保管者
  • 遺言書を発見した相続人

不備がなければ受理され、その後1ヶ月程度で、家庭裁判所から相続人全員に対し、検認日が通知されます。

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家庭裁判所における検認

検認の手続きの流れは、家庭裁判所が遺言書を開封し、遺言書の形状や加除訂正の状態、日付や署名など、遺言の形式的な要件が具備されているかを確認します。検認にかかる時間は、10分〜15分程度です。参加者の服装に制限はありませんが、落ち着いた服がよいでしょう。

検認日は相続人全員に通知されますが、当日に全員揃わなくても手続きは進められます。

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検認調書の作成と通知

検認が終わったら、その内容を検認調書にまとめます。当日に立ち会うことのできなかった相続人や利害関係者には、家庭裁判所から検認終了の通知がなされます。

終了後に、検認済証明書の交付を受けることができます(遺言書1通につき150円分の収入印紙が必要です)。この書面は、その後の相続登記、口座の名義変更などの相続手続きの際に使用することができます。

検認しないとリスクがある

遺言書の提出を怠ったまま遺言を実行してしまったり、検認前に開封してしまったりすると、5万円以下の過料が課されます。

法的な責任以外でも、検認のない遺言書では、相続登記や口座の名義変更といった相続手続きは進められません。これによって、相続が滞ってしまい、長期化します。そして、検認をしないことによって、他の相続人から不信感を抱かれ、疑念が募ると、「もっと遺産があるのではないか」「遺言を隠していたのは不利になるからではないか」といった不満に繋がり、争続に発展してしまいます。

このように、遺言書の検認をしないことにはリスクがあり、デメリットが多いため、発見したら速やかに他の相続人に伝え、検認の手続きを行う必要があります。なお、1人の相続人が勝手に開封してしまっただけでは、遺言そのものが無効になるわけではありません。

検認における注意点

最後に、遺言書の検認に関する注意点について解説しておきます。

遺言書の原本の取扱いに注意する

遺言書の原本は非常に重要な書類です。検認をする際には、遺言書の原本を家庭裁判所に持参しなければならず、コピーでは足りませんが、その際の取扱いには細心の注意を払ってください。紛失や損傷をしてしまえば、検認を待たずして、その遺言の内容を視認することができなくなってしまいます。

また、遺言書以外にも、戸籍などの必要書類が多くあり、正確に準備をしないと、不備があると手続きが遅れる原因となってしまいます。

相続に必要な戸籍の集め方について

関係者全員に周知する

検認手続きは、遺言を確実なものとし、公平な遺産分割を実現するためにある手続きです。そのため、相続人をはじめとした利害関係者の公平が保たれなければ意味がありません。

検認の手続きは、相続人の全員に知る権利が保証されています。相続人の確定や、調査が不十分で、全ての人に通知が行き届かないと手続きが無効になるおそれがあります。一方、検認の対象となる遺言の守秘性は高く、プライバシーに配慮し、無用な情報漏洩は避けなければなりません。今後相続のトラブルになる可能性はありますが、関係者間の信頼関係を維持して進めるべきです。

弁護士のアドバイスを受ける

遺言の検認は、あくまで遺言書に形式不備がないかをチェックするもので、内容の正確性を担保するものではありません。遺言の内容が適正か、それに基づいてどう分割すべきかは、検認後に、相続人間で話し合いをしなければならず、その際には相続についての法律知識が必要となります。

例えば、検認後に、遺言について争いになる点は、次の通りです。

  • 遺言の文言が明確でなく、解釈に争いが生じる
  • 遺言書の内容が遺留分を侵害する
  • 遺言者の作成時の遺言能力に疑いがある

このようなケースで、検認後の激しい争いが予想されるなら、早めに弁護士に相談し、アドバイスを受けるのが賢明です。

相続に強い弁護士の選び方について

まとめ

今回は、遺言書の検認についての法律知識を解説しました。

生前には伝えられていなかった遺言書が、突然に発見されることがあります。このような場面こそ、遺言の内容を確実なものとするために、慎重に進めなければなりません。こっそりと作られた遺言は、形式に不備があったり、内容が不公平なものだったりすることも少なくなく、争いになりやすいからです。

検認せずに放置すれば、財産の分け方について争いに発展しやすくなります。

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