相続財産(遺産)を守る専門家(弁護士・税理士)が解説!

相続の専門家(弁護士・税理士)が教える相続の相談窓口│相続財産を守る会

遺言

遺言書の調査方法(調べ方)と検認手続のポイントを弁護士が解説!

投稿日:

「遺言書」が、相続において非常に重要であることは、一般の方でもご理解いただけているのではないでしょうか。遺言が存在する場合には、民法の原則にしたがわない遺産分割を行わなければならないことが多いからです。

しかし、遺言書の存在を、全ての相続人が知っている場合は、むしろ稀かもしれません。

よくある相続相談

  • 相続人の一部の人が、自分に有利な公正証書遺言を書くよう強要した。
  • 相続人に知られず作成された自筆証書遺言が仏壇から発見された。
  • 自筆証書遺言で必要となる検認手続について知りたい。

身近な相続人すら知らなかった遺言書が突然発見されたときは、自筆証書遺言の場合には「検認(けんにん)」という特別な手続きが必要となります。正しい検認を怠ると、折角でてきた遺言が無効となりかねません。

そこで今回は、遺言書の調査方法と、遺言書が発見された場合に、遺産分割でどのように対応すべきかを、相続に強い弁護士が解説します。

「遺言」の人気解説はこちら!

遺言

2019/2/7

遺言書に書いた財産がなくなった場合の対応は?書き直さないと無効?

相続対策として遺言書を作成している人の中でも、「争続」の大変さを理解している人は、かなり若いうちから遺言を残している人もいます。しかし、生前早くから相続対策をすればするほど、「遺言書に書いた財産がなくなった」「処分してしまった」ということが起こりえます。 遺言書の財産目録に記載をしたからといって、その財産の処分、売却などが禁じられるわけではありませんが、その財産がもはや手元になくなってしまえば、遺言書どおりに遺産分割をすることは困難です。 そこで今回は、遺言書に書いた財産を既に処分してしまったなど、遺言を ...

ReadMore

遺言

2018/11/7

自分で遺言書を作成する方法と注意点を、弁護士が解説

遺言書を作成しておくことで、未然に防げる相続トラブルは多くあります。遺言を作成するのに、早すぎるということはありません。 遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種がありますが、今回は、最も簡単に作成でき、自分ひとりで作成できる「自筆証書遺言」を作成する方法と注意点を、相続に強い弁護士が解説します。 よくある相続相談 自分で遺言書を作成する方法を、手順に応じて知りたい。 自分で遺言書を作成しても無効にならないための注意点を知りたい。 遺言がない場合には、相続は法律のルールどおりに行われ、相続 ...

ReadMore

遺言

2019/1/14

【2019年1月13日施行!】自筆証書遺言の財産目録の改正ルール【完全版】

2018年7月の相続法の改正で、自筆証書遺言の作成ルールが変わります。 この改正は、2019年(平成31年)1月13日に施行されます。施行日に、この記事は修正しました。 遺言書は、のこされる家族などのために、自分の財産の分け方を決めておくための、大切な文書です。せっかく作った遺言書を後から無効とされてしまわないように、正しい作成方法を知っておくことが重要です。 今回は、この自筆証書遺言の作成ルールの変更について、施行日直前ということで詳しい解説を、相続に強い弁護士が解説します。 [toc] そもそも自筆証 ...

ReadMore

遺言

2019/3/5

夫婦で一緒に遺言書を作成するときの注意点と、共同遺言の禁止

相続対策を検討するとき、相続問題は、ある1人の問題ではありません。ご家族全体の問題であるという自覚をもって、家族全員で話し合いをしながら、遺言書の作成など生前対策を進めるのはとても効果的です。 しかし、夫婦で一緒に遺言書を作成しようと考えるときには、注意点があります。それは、「共同遺言」が禁止されているということです。 夫婦の相続財産(遺産)の行方について、将来のことは未定ですので、「原則として配偶者(夫や妻)に残す。しかし、配偶者が死亡している場合には、長男に残す」と遺言したいとき、どのように進めたらよ ...

ReadMore

遺言

2018/12/22

遺言書を失くしたら?紛失したら?再度作成し直す方法・注意点は?

せっかく作成した遺言書を失くしてしまったら、どうしたらよいのでしょうか。遺言書は重要な書類であり、自分が死んだ後の相続財産の分け方について、自分の意向を反映させるものですから、保管、管理は万全にしなければなりません。 しかし、火災や地震、引っ越しなどの際に遺言書の紛失はどうしても起こってしまう可能性があります。遺言書を失くしてしまったとき、紛失したときの対応は、自筆証書遺言か、公正証書遺言かによっても異なります。 そこで今回は、遺言書を失くしたとき、紛失したときの対応と、再度作成しなおす方法・注意点を、相 ...

ReadMore

遺言

2019/1/18

2018年相続法の改正で変わる、遺言制度の見直し【弁護士解説】

2018年(平成30年)に行われた、民法のうち相続法に関する部分の重要な法改正について、今回は「遺言制度の見直し」という側面から解説していきます。 遺言制度に関して、今回の法改正で変更があった点は、次の4つです。 ポイント 自筆証書遺言の方式の緩和 自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の創設 遺贈の担保責任等 遺言執行者の権限の明確化 特に今回の改正では、自筆証書遺言の様式の緩和によって、遺言が作りやすくなり、また、法務局での保管制度が創設されたことにより、検認手続も不要となったことから、自筆証書遺言が増加 ...

ReadMore

遺言

2018/12/19

遺言能力とは?遺言が有効にある場合、無効になる場合の判断基準

遺言能力とは、遺言を有効に行うことができる能力のことをいいます。相続の生前対策で、「遺言を残しておいた方がよい」というアドバイスをよく受けるかと思います。しかし、遺言能力のない状態で残した遺言書は、無効です。 せっかく相続税対策、揉めない遺産分割対策などの目的で残した遺言が無効となってしまわないためにも、遺言能力があるかどうか、の判断基準をしっかり理解してください。特に、認知症にり患してしまった後の遺言書作成には要注意です。 また、相続人の立場でも、不利な遺言が残っているとき、「遺言能力のない状態で作成さ ...

ReadMore

遺言

2019/2/11

遺言者より先に相続人が死亡した場合の対応は?代襲相続できる?

遺言をのこしてくれたご家族(遺言者)が、「全ての財産を相続させる」と遺言に書いてくれたのに、その遺言者よりも先に、財産をのこされる側の相続人(受遺者)がお亡くなりになってしまった場合、どのように対応すればよいのでしょうか。 受遺者はもはやこの世にいないわけですから、遺言書の通りに相続させることはできません。相続問題において、相続人が先に死んでしまったときにその子が代わりに相続する「代襲相続」がありますが、遺言の際には同様の状況でも「代襲相続」とはなりません。 そこで今回は、例えば祖父が、「長男にすべての財 ...

ReadMore

遺言

2019/1/5

親に遺言書を書いてもらう方法・テクニック7つ【弁護士解説】

15歳以上の人は、遺言を残す能力(遺言能力)がありますが、遺言を書くも書かないも遺言者の自由であって、実際には、遺言書を書かずにお亡くなりになる方も大勢います。「遺言自由の原則」があるからです。 しかし、お亡くなりになる方(被相続人)にとっては、「自分の死亡した後のことは、子に任せる」という方もいますが、実際に家族が亡くなったとき残された者の立場では、遺言書がないととても手間がかかったり、「争続」となって丸く収まらないことも少なくありません。 「遺言書の話は気が重い」、「死後の相続のことを生きているうちに ...

ReadMore

遺言

2019/4/15

遺言書作成にはメリットも、デメリットもある?対策は?

遺言は、いつかやってくるかもしれない万一の自分の死亡のときのために、残されたご家族が困らないように残しておくものです。そのため、適切な遺言には大きなメリットがあり、デメリットはそれほどありません。 しかし、遺言についての知識、経験が乏しく、間違った遺言を残してしまえば、遺言を残すことによるデメリットも当然ながら存在します。 そこで今回は、遺言作成のメリット・デメリットについて、遺言と相続に詳しい弁護士が解説します。解説を参考に、遺言書を書くかどうかをご決断ください。 注意ポイント なお、遺言書を作成する方 ...

ReadMore

no image

遺言

2018/10/17

【弁護士が解説する】自筆証書遺言の要件と、書き方の注意点!

お亡くなりになったご家族の方の意思を、死亡後も、相続に反映する方法が、「遺言」(いごん・ゆいごん)です。 「遺言」は、お亡くなりになったご家族(被相続人)の一方的な意思によって、相続人の合意なく、その意思のとおりの効果を発揮するもので、法律の専門用語では「単独行為」といいます。 よくある相続相談 家族のために貢献してくれた相続人に、多くの財産を残してあげたい。 家業を継ぐ長男のために、事業継続のために必要となる財産を引き継がせたい。 「二次相続」トラブルの防止のため、子に全ての財産を引き継がせたい。 遺言 ...

ReadMore

遺言

2018/7/27

遺言は作り直せる?自筆証書遺言の修正・変更の5つのポイント

あなたは、遺言を作っていますか? 「遺言」は、遺言をのこす人が、ご家族や、お世話になった人などのために、遺言をのこす人の「想い」にそって財産をわたすための、大切な手紙のようなものです。 「遺言」を、書面の形で示したのが「遺言書」ですが、「遺言書」は、自分ひとりで書くもの(「自筆証書遺言」といいます。)でものこすことができます。 私達弁護士が相続についての法律相談を受けて、このような話をすると、「実は仏壇の下に・・・」など語りだす方も少なくありません。 しかし、ご自分ひとりで書く「自筆証書遺言」は、専門家が ...

ReadMore

遺言

2018/12/6

自筆証書遺言と公正証書遺言の比較!結局どちらがいい?弁護士が解説

数ある遺言書の種類のうち、特によく利用されているのが「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類です。この2つの遺言については聞いたことがある方が多いでしょう。他方、秘密証書遺言や緊急時の遺言の利用頻度は非常に低いです。 自筆証書遺言にも公正証書遺言にも、いずれもメリット、デメリットがあると解説されています。メリット、デメリットとして非常に多くの項目を比較していくと、結局どちらを利用したらよいかわからなくお悩みの方も少なくないのではないでしょうか。 そこで今回は、ご状況に合わせて結局自筆証書遺言と公正証書遺 ...

ReadMore

遺言

2018/10/23

【弁護士が解説する】秘密証書遺言とはどんな遺言?作成方法は?

秘密証書遺言とは、遺言書の内容を秘密にしながら、遺言書が存在することのみを公証人に認証してもらって作成する、遺言方法の1つのことをいいます。 秘密証書遺言は、その他の遺言方法である自筆証書遺言、公正証書遺言に比べて、利用されるケースが非常に少ないですが、秘密証書遺言を活用することができるケースも少なくありません。 よくある相続相談 遺言の内容を秘密にしたいが、「自筆証書遺言」の厳しい要件を満たしているか不安・・・ 遺言の存在を知らせ、遺産分割協議に反映してほしいが、内容は自分が死ぬまで秘密にしてほしい。 ...

ReadMore

遺言

2018/10/18

【弁護士が解説】公正証書遺言の書き方の注意点と4つのメリット

公正証書遺言は、自筆証書遺言、秘密証書遺言といった、その他の遺言の形式に比べて、確実性が高く、偽造、改ざんをされにくい点で、最もお勧めの遺言方法です。 遺言書を作成して遺言を残そうと、弁護士、税理士、司法書士などの相続の専門家に相談にいくと、真っ先に勧められるのが、公正証書遺言の作成であることが多いのではないでしょうか。 公正証書遺言を作成するときには、弁護士などの専門家に依頼する方が多いですが、公正証書遺言についてのポイントを、最低限理解してご依頼いただくのがよいでしょう。 よくある相続相談 公正証書遺 ...

ReadMore

遺言

2018/12/30

遺言書と異なる内容の遺産分割協議はできる?できない4つのケース

ご家族がお亡くなりになって遺言書が発見されたとき、故人の遺志を尊重してあげたいものの、どうしても納得いかない内容の遺言が残されていたという相続相談があります。 遺産分割協議とは、遺産の分割方法を、相続人全員で話し合い、相続人全員の合意のもとに相続財産(遺産)を分け与える手続きのことをいいます。 他の相続人も、遺言書の内容にどうしても従いたくない場合には、遺言書の内容とは異なる内容の遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成することができるのでしょうか。できるケース、できないケースについて、相続に詳しい弁護士 ...

ReadMore

遺言

2018/11/7

不公平な遺言書は有効?無効?公平に相続財産をもらう方法は?

あなたにとってあまりにも不公平な内容の遺言書が残っていたとき、「この遺言書は無効なのではないか。」と納得がいかない相続人の方から、ご相談を受けることがあります。 結論から申しますと、遺言書は、「不公平である。」という理由だけで無効になることはありません。すなわち、不公平な遺言書もまた、「遺言は有効である。」ということです。 一方で、不公平な遺言書によって権利を侵害された相続人が、少しでも公平に相続財産(遺産)をもらう方法として、「遺留分減殺請求権(遺留分侵害額請求権)」があります。 しかし「遺留分減殺請求 ...

ReadMore

遺言

2019/1/6

複数の遺言書が発見!対応は?どれが優先?【弁護士が解説!】

遺言書とは、お亡くなりになったご家族の、相続財産の分け方についての意向を示す、とても重要な書類です。その効果は絶大で、民法に定められた法定相続分よりも、遺言書に書かれた指定相続分が原則として優先します。 しかし、尊重されるべき重要な書類である遺言書が、複数発見されたとき、どのように対応したらよいでしょうか。どの遺言書にしたがえばよいのでしょうか。優先順位などはあるのでしょうか。特に、全ての遺言書の内容が全く違い、相反するとき混乱することでしょう。 遺言書は、お亡くなりになった方(被相続人)が熟考に熟考を重 ...

ReadMore

遺言

2018/8/8

自筆証書遺言が作成しやすくなりました!【2018年法改正】

「遺言を作ろう。」と考えている方に朗報です。 2018年7月に、相続分野の法律が改正されました。これによって、2019年からは、遺言が、より簡単に残しやすくなります。 というのも、「遺言」とひとことでいっても、「遺言」にはいろいろな形式があり、それぞれの形式ごとに、満たさなければならない要件があります。 「遺言」の法律上認められる要件を欠いてしまうと、せっかく遺言を作ったのに、お亡くなりになった後に「無効」となってしまい、「遺言」を作成した意思が実現できなくなってしまいます。 今回のテーマである「自筆証書 ...

ReadMore

遺言

2019/2/8

「相続させる旨の遺言」とは?遺贈との違いは?弁護士が詳しく解説!

遺言書においてひんぱんに登場するのが、「不動産は妻に相続させる」、「A銀行の預金は長男に相続させる」といった、「~を相続させる」という言葉です。このような内容の遺言は「相続させる旨の遺言」と呼ばれます。 遺言書において特定の財産を特定の方に与える方法には、「遺贈(いぞう)」もあります。正確には、特定の財産を与える遺贈は、「特定遺贈」と呼びます。 では、「相続させる旨の遺言」と「遺贈」は、どのように違うのでしょうか。遺言書において「相続させる」と書いた場合に、どのような意味があるのでしょうか。 遺言をのこさ ...

ReadMore

[toc]

相続財産を守る会を運営する、弁護士法人浅野総合法律事務所では、相続問題と遺言作成のサポートに注力しています。

[speech_bubble type="std" subtype="L1" icon="asano.jpg" name="弁護士
浅野英之"]

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野です。

遺言を生前にのこしておきたい。」という方の相続相談のうち一定数は、「自分が死んでから遺言の存在を知られたい。」、「仲の悪い相続人には、仕返しが怖いので遺言の内容を知られたくない。」と言う方がいます。

そのため、ご家族がお亡くなりになってはじめて、遺言があったことを知るということがあるわけです。遺言書を調査し、その存在を知った時の対処法について、正しく理解してください。
[/speech_bubble]

遺言書の調査方法

まずは、遺言書を探す方法について解説します。冒頭で解説したとおり、相続人として、お亡くなりになった方(被相続人)の親族であっても、隠れてこっそりと遺言を残されている例は多くあります。

遺言書をしっかり探しておかないと、あとから遺言書を発見したときに、遺産分割をやり直す必要が生じる場合もあるので注意してください。

自筆証書遺言・秘密証書遺言の調べ方、探し方

遺言書には、通常の作成方式として、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。

ポイント

  • 自筆証書遺言とは、遺言を行う方が手書きで作成する遺言のことです。
  • 公正証書遺言とは、公証人の前で遺言書の内容を説明し、公証人がその内容を遺言書の形でのこす方法で作成する遺言です。
  • 秘密証書遺言とは、自分で作成した遺言書を封印して公証人に提出し、公証人が作成日などを記録しておく方法で作成する遺言です。

特に、遺言の内容を、相続人には一切秘密にしておきたいと考える方の中には、「秘密証書遺言」を残す方がいます。秘密証書遺言は、遺言書を封印した上で公証人に提出できるので、内容を秘密にしておくことができます。

自筆証書遺言は、第三者が一切関与することなく一人で作成できるため、亡くなった方が遺言書をひっそりと作った場合、見つけるのが大変です。秘密証書遺言も、公証人が関与するため遺言書を作ったこと自体は記録としてのこりますが、公証役場に遺言書の内容はのこらないため、やはり遺言書の発見が大変です。

自筆証書遺言・秘密証書遺言を探すにはどうやって調べたらよいでしょうか。

まず、亡くなった方(被相続人)本人が大切なものを保管していた場所を探してください。ご家族であれば、大切なものをどこに保管していたか目星がつくのではないでしょうか。次の保管場所が考えられます。

たとえば・・・

  • タンス・押し入れの中
  • 仏壇や神棚
  • 押し入れや金庫の奥
  • 書斎の机のひきだし

「自宅に保管すると他の相続人に見られてしまうのでは?」という不安から、金融機関の貸金庫など、自宅以外に慎重に保管する可能性もあるので、貸金庫がないか調査が必要です。

親しい友人や、遺言の作成を手伝ってもらった弁護士・司法書士などの専門士業に遺言書を預けるケースもあります。亡くなった方の親しい親族や友人、顧問弁護士などに心当たりがないか聞いてみてください。

いずれにせよ、遺言書を探すのは手間がかかります。円滑な相続のためには、できる限り、生前から十分なコミュニケーションをとって、遺言の作成の有無について確認しておくのがよいでしょう。

公正証書遺言の調べ方、探し方

公正証書遺言の場合には、調べ方、探し方は他の遺言よりも比較的簡単です。

平成元年以降に作成された公正証書遺言であれば、全国どこの公証役場からでもデータベースで検索することができます。それ以前に作成された公正証書遺言は、遺言を作成した公証役場にのみ記録が残っています。

したがって、平成元年以降に公正証書遺言が作られたと考えられる場合には、ご自宅の近くの公証役場に行けばよいでしょう。

検索をかけても公正証書遺言が見つからず、平成元年よりも前に公正証書遺言を作っていた可能性があると考える場合には、亡くなった方が当時住んでいた場所の近辺の公証役場に問い合わせをしてみてください。

もっとくわしく!

公正証書遺言の検索をすることができるのは、相続人などの、亡くなった方の利害関係人に限られます。

公正証書遺言の検索ができるのは、遺言書を作成した方がなくなっている場合だけです。遺言書を作成した方が存命の間は、たとえ配偶者や子どもあっても、他人が遺言書の有無を調査することはできません。

公正証書遺言の検索を希望する場合は、以下のものを準備したうえで、公証役場に相談してください。相続人が検索をする場合は以下の書類を用意して下さい。

ポイント

  • 戸籍謄本(①亡くなった方の死亡の事実の記載と、②照会者と亡くなった方との利害関係を証明できる記載のあるもの)
  • 公証役場で照会しようとする方の身分を証明する書類(運転免許証など、顔写真つきの公的書類)

相続人の代理人(弁護士・司法書士など)が検索する場合は以下の書類の準備が必要となります。

ポイント

  • 相続人からの委任状(相続人の実印が押印されたもの)
  • 3か月以内に発行された、相続人の印鑑登録証明書
  • 代理人の身分証明書(運転免許証など)と認印
  • 戸籍謄本(①亡くなった方の死亡の事実の記載と、②照会者と亡くなった方との利害関係を証明できる記載のあるもの)

相続人の代襲相続人が検索する場合や、相続人ではないが受遺者(遺言の中で遺贈を受けた者)であると考える者が遺言書の検索を希望する場合などは、上で説明した資料とは異なる資料が求められることになります。

公証役場を訪れる前に、あらかじめ必要な資料を問い合わせるのがよいでしょう。

注意ポイント

遺言検索システムでは、公正証書遺言書があるかどうかと、どこの公証役場に保管されているかしかわからず、遺言の内容自体をシステムで見ることはできません。

実際に遺言内容を知るためには、遺言書が保管されている公証役場に謄本を請求する必要があります。

特別様式の遺言の調べ方、探し方

通常の遺言は自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類ですが、この他にも、特殊な状況において認められる遺言書の作成方法があります。

このような特別な方法で作成された遺言は、「特別様式の遺言」と呼ばれています。以下のようなものがあります。

ポイント

  • 死亡の危急に迫った者の遺言
  • 伝染隔離病者の遺言
  • 在船者の遺言
  • 船舶遭難者の遺言

たとえば、死亡の危急に迫った者の遺言は、遺言が行われた日から20日以内に、家庭裁判所に請求して内容の確認を受けなければなりません。したがって、家庭裁判所にその確認の記録がのこっているかを調べることになります。

これらの方法によって遺言が作られるのは例外的な場合ですが、これらの方法で作成された遺言が存在する可能性があると考えた場合には、相続に強い弁護士などの専門家にご相談ください。

遺言書の確認方法とポイント

遺言書を発見できたら、どのように内容を確認したらよいか、遺言の確認すべき事項とポイントを弁護士が解説します。

生前に、被相続人から遺言を残すと聞いていたら、事前に内容を見ておきたいところですが、実際には相続人の知らないうちに遺言書が作成されていることも少なくありません。

遺言書を発見できたら、まずは後で説明する「検認」の手続を行う必要があります。特に、封印されている遺言書は検認手続の中で開封しないと、過料の制裁が科される場合がありますので注意して下さい。

遺言の内容を確認する

遺言の内容とは、遺言をした方が、誰にどの財産を与えているのか、財産の配分についてどのような指示をしているのかということです。これは、解説するまでもなく、遺言書を見る方が最初にチェックすることでしょう。

特に、遺言書が、一部の相続人だけに不当に有利、もしくは不当に不利な内容であるとき、その遺言書の内容が、遺留分を侵害するものでないかの確認が必要です。

参 考
不公平な内容の遺言に対する対応方法は、こちらをご覧ください。

あなたにとってあまりにも不公平な内容の遺言書が残っていたとき、「この遺言書は無効なのではないか。」と納得がいかない相続人の方から、ご相談を受けることがあります。 結論から申しますと、遺言書は、「不公平 ...

続きを見る

遺言形式の有効性を確認する

遺言書を確認するにあたっては、遺言の内容のほか、遺言書の有効性にも注意しましょう。つまり、遺言を見る場合には、遺言が有効であるかどうかの確認も必要です。

遺言書は、作成のルールが法律で厳格に定められています。公正証書遺言では公証人が関与して作成されるため、遺言書の有効性が問題とはなりませんが、自筆証書遺言の場合、遺言をのこす方が一人で作ることが多いため、遺言書が有効に作られていない場合も多いです。

自筆証書遺言は、遺言を作成する本人が、その全文、日付、氏名を自書し、押印する必要があります。また、遺言書の訂正も、その方法が厳格に定められています。

参 考
2018年法改正による自筆証書遺言の要件の緩和は、こちらをご覧ください。

「遺言を作ろう。」と考えている方に朗報です。 2018年7月に、相続分野の法律が改正されました。これによって、2019年からは、遺言が、より簡単に残しやすくなります。 というのも、「遺言」とひとことで ...

続きを見る

遺言能力を確認する

遺言をした方が、遺言書を作成した当時認知症などで十分な判断能力がなかった場合にも、遺言書が無効となる可能性があります。

遺言書が発見された場合には、内容も重要ですが、遺言書が無効となる可能性がないかについても留意する必要があります。

もっとも、遺言書を作成する能力(遺言能力)があったかどうかを、遺言書を発見したときに判断するには専門的知識と経験が必要となります。遺言書の有効性でお迷いの場合には、相続に強い弁護士にご相談ください。

【注意】検認が必要な場合あり!

公正証書以外の遺言については、家庭裁判所で、「検認(けんにん)」の手続きが必要です。検認とは、遺言書の形状や、加除訂正の状態、日付や署名などの、遺言書の内容や状態を明確にするための手続です。

検認の手続を行うことで、あとで遺言書が偽造、変造されることを防ぐことを目的としています。また、遺言の存在と内容を相続人に知らせる意味もあります。

注意ポイント

検認の手続は、遺言の有効・無効を判断することを目的としません。つまり、検認が行われたからといって遺言書が有効であると確定するわけではなく、遺言書があとで無効とされる場合もあるのです。

遺言書の検認の手続きは、遺言書の偽造などを防ぐための重要な手続きです。そのため、手続きを行わないと、過料の制裁がかされる可能性もあります。

検認の手続を、自分でやることが難しい場合や不安な場合には、過料の制裁を受けてしまわないよう、相続の専門家(弁護士・司法書士)にご相談ください。

検認の必要な遺言とは?

検認は、公正証書遺言以外の遺言について必要となります。

公正証書遺言の場合は、検認は不要です。公正証書遺言は、公証人に遺言の内容を伝えて作成してもらう遺言で、遺言の内容が、公証役場にのこります。そのため、遺言書が偽造されたり、隠されたりするおそれがないので、検認は不要です。

もっとくわしく!

2018年に行われた相続法改正により、2020年7月以降は、自筆証書遺言(手書きの遺言)を法務局に預けられるようになる予定です。

この保管制度によって遺言書を預けた場合には、遺言書の画像データがデータベースに保存されるため、改ざんなどのおそれがありません。したがって、この保管制度にもとづいて保管された遺言書についても、検認は不要です。

検認の申立て方法

検認の手続を行う人は、遺言書の保管者、または遺言書を発見した相続人です。これらの者は、遺言者が亡くなったことを知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、検認手続きを請求しなければなりません。

封印のある遺言書の場合には、家庭裁判所で、相続人などの立会いの上で開封しなければならないこととされています。これも、遺言書の偽造などを防ぐためです。

検認を申し立てるためには、申立書を記載したうえで、少なくとも以下の書類をそろえて提出する必要があります。

ポイント

  • 遺言者(=亡くなった方)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言者の子(およびその代襲者)で死亡している者がいる場合、その方の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

検認は、遺言者(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要があります。検認手続きを申し立てるためには、遺言書(封書の場合は封書)1通につき、収入印紙800円分が必要となります。

手続きの連絡用の郵便切手も必要になります。具体的にいくら必要かは、申立てをする先の裁判所に問い合わせて確認しましょう。

検認手続きの進み方

検認の申立てがなされると、相続人に対して、裁判所から、検認の手続きを行う日(検認期日)が通知されます。検認期日には、相続人が全員そろわなくても手続きが行われます。

検認を申し立てた方は、検認期日に、遺言書、自分の印鑑のほか、裁判所から指示されたものを持参します。

検認期日では、その日に出席した相続人が立ち会ったうえで、裁判官が、遺言書が封印されている場合には封筒を開封し、遺言書の状態などを確認します。

検認が終わると、裁判所で、遺言書の「検認済証明書」を発行してもらうことができます。相続に関する手続きで遺言書を使用する際には、この検認済証明書が必要となります。

検認済証明書の申請には、遺言書1通につき150円分の収入印紙と、申立てをする方の印鑑が必要となります。

検認しないリスク、デメリットは?

上記のとおり、遺言書の提出を怠った場合や、家庭裁判所の手続外で遺言書の開封をした場合には、5万円以下の過料が課されるおそれがあります。

また、遺言書に不動産に関する記載があり、これに基づいて登記手続きを行う場合でも、検認を行っていないと、相続登記することができません。

さらに、金融機関でも、遺言書による相続手続きを行う場合に、検認済みでないと受け付けてくれない可能性があり、相続財産を取得することができなくなります。

相続手続きは、「相続財産を守る会」にお任せください!

いかがでしたでしょうか。

今回は、生前には伝えられていなかった遺言書が突然発見されたときに備えて、遺言書の探し方、調べ方と、遺言書の検認手続について、相続に強い弁護士が解説しました。

見つかっていない遺言書が存在したとき、遺産分割協議が終了していたとしても、遺産分割のために改めて話し合いのやり直しが必要となります。それどころか、遺言を放置し、検認をしないと、過料の制裁を受けるおそれもあります。

お亡くなりになる方の財産の分け方について、相続人間で争いとなるおそれがあるときは、生前から、遺言が存在するかどうか、また、遺言がどのような内容かなどを、事前に確認しておいてください。

「相続財産を守る会」では、遺言書の作成サポートはもちろん、遺言書が発見されたときの検認手続きを代わりに行ったり、遺言にもとづく相続財産の分け方のアドバイスを行うことができます。

ご相談の予約はこちら

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所は、銀座(東京都中央区)にて、相続問題、特に、遺言・節税などの生前対策、相続トラブルの交渉などを強みとして取り扱う法律事務所です。 同オフィス内に、税理士法人浅野総合会計事務所を併設し、相続のご相談について、ワンストップのサービスを提供しております。

-遺言
-

Copyright© 相続の専門家(弁護士・税理士)が教える相続の相談窓口│相続財産を守る会 , 2023 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.