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秘密証書遺言とは?メリットとデメリットや注意点を解説

秘密証書遺言は、最後の遺志をこっそりと秘密裏に伝える手段です。

この遺言形式は、遺言者の意向が、死後になるまで明らかにされず、プライバシーが守られますが、一方でメリットとデメリットが存在し、よく注意して利用しなければリスクもあります。遺言内容を秘密にできる分、有効に成立させるには要件を満たす必要があり、しかも秘密のために誰もその要件が遵守されているかをチェックしてくれません。

今回は、秘密証書遺言の意味と役割、有効に活用するための注意点について解説します。公正証書遺言、自筆証書遺言といった他の遺言形式に比べると利用頻度は少ないですが、活用に適した場面もあります。

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秘密証書遺言の基本

まず、秘密証書遺言についての基本的な法律知識を解説します。

秘密証書遺言とは

秘密証書遺言とは、遺言者が自らの意思を書面に示し、その内容を秘密にしたまま残す遺言のことです。作成の際には、その内容を明かさず、公証人と証人2名の前で遺言書であることとその存在のみ認証してもらい、封印をして自身で保管します。

他の遺言形式との比較でいえば、次のような特徴があります。

  • 自筆証書遺言との違い
    自分で作成し、保管する点は自筆証書遺言と共通ですが、遺言書の存在だけは公証人が認証してくれます。また、遺言書の全文を自署する必要はありません。
  • 公正証書遺言との違い
    遺言の成立に公証人が関与する点は共通ですが、その内容に関しては公証人にも秘密となっている点が異なります。

この遺言形式の最大の特徴は、遺言の内容を、公証人や証人にすら知られることなく、自らの遺志を残すことができる点にあります。遺言の内容は第三者には一切知られることなく、遺言者の死後に開封されるため、プライバシーの保護が図られます。

秘密証書遺言の作成の手続き

秘密証書遺言の作成の手続きは、次のプロセスで進みます。

  • 遺言文書を自筆、または印字で作成する。
    (ただし、署名部分は自筆である必要がある)
  • 遺言書を封筒に入れて封印する。
  • 公証役場に出向く。
  • 公証人と証人2名の立ち会いのもと封筒に署名または記名押印する。
  • 自身の遺言書である旨を公証人に申述し、公証人と証人が署名する。
  • 完成した遺言書は自身で保管する。
    (紛失しないよう貸金庫や弁護士に預けるなど)

以上の流れで、秘密証書遺言は完成します。公証人が関与することによって、秘密証書遺言はそれが正式な遺言であることを証明され、法的な効力を有することを保障されますが、その内容については公証人は関与しないため、状況に応じた適切なものかどうかは遺言者が判断する必要があります。

秘密証書遺言の作成方法を定める民法の規定は次の通りです。

民法第970条(秘密証書遺言)

1. 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一  遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二  遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三  遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四  公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

2. 第968条第2項の規定は、秘密証書による遺言について準用する。

民法(e-Gov法令検索)

秘密証書遺言のプラバシーを保つため、生前に開封すると無効になってしまいます。遺言が明確に書かれていて、将来の法的な紛争の原因となることを防げるかどうか、心配なら、専門家である弁護士にご確認ください。

秘密証書遺言のメリット

次に、秘密証書遺言のメリットについて解説します。

秘密を保つことができる

秘密証書遺言は、遺言内容を他人に知られることなく残せる、非常にプライベートな遺言形式です。その最大のメリットは、遺言の内容を秘密に保ちながらにして、自身の財産や遺志を後世に伝えることができる点です。

公証人が関与するものの、公正証書遺言とは異なり、公証人は遺言の内容は見ません。公証人と証人の前で、封印した遺言書に署名し、遺言であることを宣言するのみです。これによって遺言者は、自らの意思について極めて個人的な内容であっても、他人の目を気にせず記載できます。

遺言書に書く内容は、プライバシーに関わること、デリケートな家族や資産に関することであると容易に想定でき、たとえ相続人となる家族だったとしても死亡するまでは知られたくないケースもあります。このようなときこそ、秘密証書遺言を活用すべき場面です。

柔軟に遺言の書き方を決められる

秘密証書遺言では、遺言の書き方に柔軟性があります。自筆証書遺言のように全文を自署する必要はなく、タイプした文書としたり、他人に代筆してもらった文書を使用したりすることもできます。健康状態や身体の障害で自筆で全て記すのが難しい人でも、秘密証書遺言は利用できます。

これにより、複雑な遺言内容を正確に表現することができます。

なお、秘密証書遺言でも、署名は自筆でする必要がある点は注意を要します。また、生前に開封した場合のように秘密証書遺言としては無効になってしまっても、全文が自筆で記載されていれば自筆証書遺言としての有効性が認められる余地があります。

秘密証書遺言のデメリット

秘密証書遺言にはメリットがある一方で、デメリットもあります。

遺言が無効になるおそれがある

秘密証書遺言は、相続の開始後に家庭裁判所で検認をする必要があります。検認は、遺言の存在と内容を確実なものにし、故人の意思を反映するための手続きですが、検認前に開封してしまった場合、秘密証書遺言はその秘密性を失い、遺言が無効になってしまいます。

秘密証書遺言を残した被相続人には明らかでも、相続人はそのことを知らないかもしれません。亡くなった後で、相続人が誤って開封してしまい、遺言が無効になるリスクは常につきまといます。

作成に手間と費用がかかる

秘密証書遺言では、秘密にしておくための手間が、他の遺言書よりもかかるデメリットがあります。まず、自筆証書遺言と同じく、遺言書の内容は自分で考える必要があります。その上で、公正証書遺言と同じく証人を準備して交渉や姥に行く必要があります。

また、公証人に依頼するために、秘密証書遺言の費用が1万1000円かかります。

法的紛争を招きやすい

秘密証書遺言は、秘密にされていることから相続人に誤解を生じやすく、法的トラブルを招きやすいデメリットがあります。生前から家族間で遺言内容についてよく話し合い、それによって不利になる可能性ある相続人の納得を得ていれば防げたトラブルも、秘密証書遺言では対策できません。

また、遺言の存在を知らない相続人がいたり、遺言内容について憶測で判断されたりと、秘密であるがゆえの問題性は非常に大きいと言わざるを得ません。遺留分を検討したり、明確な記載内容としたりすることで紛争の多くは回避できますが、そのために専門家に相談することも、遺言の秘密を守りたい場合には躊躇する方もいます。

遺留分の基について

秘密証書遺言の実務上の注意点

秘密証書遺言を作成したとき、その効力を確実なものとするために注意すべき実務上のポイントについて解説します。

秘密証書遺言の利用は慎重にする

秘密証書遺言を利用する際には、そのメリットとデメリットを十分に理解し、慎重に進めかねればなりません。実際、秘密証書遺言の利用例が少ないように、うまく活用するのは難しい遺言形式だといえます。

秘密が保持されるのはメリットではありますが、自身が秘密証書遺言を用いる理由をよく考え、その目的が、他の遺言形式でも実現することができないかどうか、再検討してください。

専門家によるサポートを受ける

秘密証書遺言では特に、専門家のサポートが重要です。秘密であるがゆえに、遺言者が専門家にあえて相談しなければ、誰もその内容をチェックせず、不適切な分割となっている可能性があるからです。

弁護士や司法書士など、相続に携わる士業は、法律によって厳しい守秘義務を負っています。そのため、秘密証書遺言の内容に限らず、相談されたことを他に漏らすことはありません。相続問題のように守秘性の高いものは、たとえ家族や親族でも対立する可能性がありますから、誰にも口外しないのが当然のことです。

任せる専門家を選ぶ際は、その専門性と経験、過去の事例などを参考に、自分のニーズに最も合ったサポートを提供できる先生を選ぶのが重要です。

相続問題の専門家について

秘密証書遺言についてよくある質問

最後に、秘密証書遺言についてよくある質問を回答します。

秘密証書遺言を変更するにはどうしたらよい?

一度作成した秘密証書遺言を変更するには、新たに遺言を作成し、以前の遺言と置き換える方法によります。遺言書のうち新しいものが有効となり、この場合、新しい遺言は秘密証書遺言以外の遺言形式でも可能です。

秘密証書遺言を紛失した場合はどうなる?

秘密証書遺言が紛失した場合、その遺言は法的な効力を失います。したがって、遺志を反映したいなら新たな遺言を作成する必要があります。

まとめ

今回は、秘密証書遺言の特徴、メリットやデメリットと作成方法について解説しました。

秘密証書遺言の最大のメリットは、遺言の内容を秘密にできる点です。ただ、それ以外のメリットがあまりない反面で、無効になるリスクは高く、デメリットが多いと言わざるを得ません。公正証書遺言でも、関与する者が秘密を厳守してくれればプライバシーは保たれます。実際にも、公正証書遺言などに比べて利用例は少なく、あえて活用するなら適した場面でなければなりません。

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