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遺産分割

相続した不動産の「換価分割」の注意点6つを、弁護士が解説!

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相続人が複数いるとき「財産をどのように分割するか」、すなわち、遺産分割が、相続を「争続」とする最大の要因です。そして、特に不動産(土地・建物)は、相続財産に占める割合が大きいにもかかわらず、「きっちり半分に」という分割が難しいため、遺産分割の最大のハードルとなる難しい財産です。

「換価分割」は、相続した不動産を売却し、その売却代金を分割する方法であり、「お金に換える」わけですから、いかなる割合にも分けることが出来る便利な遺産分割方法です。

ただ、相続財産(遺産)を相続人間で公平かつ平等にわけることができるというメリットがある換価分割ですが、換価分割を選ぶ際には気を付けなければならない注意点もあります。不動産を売却するため、税金の問題も絡みます。

そこで今回は、不動産を相続した相続人の方に向けて、「換価分割」を選択するときのポイントと、実際に「換価分割」の方法で相続不動産を売却・分配するときの注意点を、相続に詳しい弁護士が解説します。

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換価分割と、その他の遺産分割方法との違い

共同相続人が複数いるときの不動産の方法には、主に3つの遺産分割方法があります。それが、「現物分割」、「換価分割」、「代償分割」です。今回はこの3つの方法の1つである換価分割の解説です。

換価分割を選ぶかどうかを適切に判断していただく基準を知るために、まず、換価分割と、それ以外の遺産分割の方法との違いについて弁護士が説明します。

換価分割とは?

換価分割とは、相続した遺産の中の不動産をいったん売却して換金し、その代金額を、相続人間で分け合う分配方法のことをいいます。

例えば自宅不動産しか相続財産(遺産)がない場合で複数の相続人がいるケースなどで、公平に遺産を分け与える目的で、換価分割が利用されます。

そのほかに、換価分割を選択することが適切な例は、つぎのとおりです。

ポイント

  • 相続財産(遺産)の大部分が不動産(土地・建物)である。
  • 相続財産(遺産)の中に、相続人にとって利用価値の少ない不動産が存在する。
  • 相続税を払いきる資力がない。

相続した不動産を、相続人の共有名義のまま放置しておくことも可能ですが、不動産を有効活用するという視点では、不動産を売却し、購入した人に有効活用してもらったほうが適切です。

共有名義のままだと、二次相続の際に、共有持分をさらに分ける必要があるため、面倒が生じることも多くあります。

現物分割と、換価分割の違い

現物分割とは、相続財産(遺産)を、現物のまま(つまりそのまま)、相続人間で分け合う分割方法のことです。現物分割と、換価分割の違いは、遺産分割の際に、現物のまま残っている相続財産を売却するかどうかという点です。

現物のままですと、不動産や株式などは公平な割合で分けることが困難な場合があります。また、そもそも相続財産(遺産)が不動産のみで、土地上に自宅が建っている場合などには、事実上、相続財産(遺産)を現物分割できず、1人が相続するしかありません。

換価分割ではなく、現物分割を選ぶことが適当、あるいは選ばざるを得ない場合とは、例えば次の場合です。

ポイント

  • 相続財産(遺産)の中に、現物のまま手放したくない財産がある。
  • 売却しても価値がない財産である。
  • 相続財産(遺産)のほとんどが預貯金、現金など分けやすい財産である。
  • 相続財産(遺産)に少額の現物が多く、相続割合を柔軟に調整できる

現物の価値もさまざまなため、不動産や株式、動産などの現物が複数あっても、公平な割合で分けられるとは限りません。

代償分割と、換価分割の違い

代償分割とは、相続財産(遺産)を現物のまま分け合うのを基本としますが、足りない分については現金のやり取りで補うという遺産分割の方法のことです。現物分割と、換価分割を足して2で割ったような方法です。

現物分割では、公平な分割割合で分けることができず、換価分割では、手放したくない自宅を売却しなければならないなど、いずれの方法にもデメリットがある場合に代償分割が利用されます。

ただし、相続財産である現物を取得する相続人が、他の相続人に代償としてのお金を支払う必要があるため、現物を受け取る方にまとまった現金があることが必須です。

代償分割で、「代償」に与える現金は、相続財産の中に含まれているものではありません。相続財産(遺産)の中に現預金があり、不動産はAさんに、現預金はBさんに、というのであれば「現物分割」に分類されます。

代償として与える現金が足りない場合、相続人が元からもっていた不動産、動産、株式の売却代金や、生命保険の解約返戻金などをあてることもあります。

換価分割するときの遺産分割協議書の書式例

換価分割することが決まった場合には、その内容を遺産分割協議書に定めておく必要があります。たとえば、相続人である3名の子が不動産の換価分割をする場合には、以下のように書くことが考えられます。

第1条 被相続人〇〇所有の以下の不動産を、相続人Aが取得する。

所在
地番
地目
地積

第2条 前条により取得した不動産は、売却により換価し、当該売却手続に要する費用を控除した金額を、相続人A、B及びCが、それぞれ3分の1の割合で相続する。

もし、この不動産の売買代金を、法定相続分にしたがわず、例えばAとBの2人だけで分けることとする場合には、そのことが分かるように、遺産分割協議書の中に定めておくべきです。

なぜなら、遺産分割協議書の定めと異なる分け方をしてしまうと、その分が贈与とみなされて、課税される可能性があるからです。

遺産分割協議書の中では、以下の点を明確に書きましょう。

ポイント

  • 不動産の登記を誰の名前でするか
  • 換価して得られた代金をどのように分割するか
  • 登記費用や換価分割の費用を誰が負担するか

換価分割をするときの、相続登記の注意点

換価分割をするときの、不動産の名義変更(相続登記)には注意点があります。

遺産である不動産は、お亡くなりになった方(被相続人)の名義のままでは売却することができません。お亡くなりになった方の名義の登記をそのまま第三者にうつすことはできないからです。

したがって、相続人全員で法定相続分にしたがって共有登記をしたうえで売却するか、または、いったん相続人の一人(代表相続人)の名義にした上で、第三者に売却する必要があります。

登記をする際には、誰が不動産を取得するかが明確でなければなりません。そのため、遺産分割協議書では、不動産を誰の名義とするのかを、はっきり書きます。

ただ、ご自分で書かれた遺産分割協議書の内容で登記を受け付けてもらえるのかは、あらかじめ登記手続きをおこなう法務局に問い合わせるのがよいでしょう。また、ご自分で文案を作成するのが不安なときは、登記の専門家である司法書士に相談するのがよいでしょう。

代表相続人への名義変更後、しばらく換価分割しない場合は?

換価分割するつもりで相続人の一人(代表相続人)に名義を変更したものの、そのまま売却せずに放置していると、問題が発生する可能性があります。

固定資産税などの不動産に対する税金は、登記された人に課されるため、その負担をどうするかが問題となります。

不動産で何かトラブルが発生した場合に、登記名義人になっていると、所有者だと思われて、損害賠償責任を追及されてしまうことも考えられます。

したがって、換価分割の便宜のために代表相続人1人に登記させるのは、売却をすみやかに行う場合に限定してください。

換価分割をするときの、税務上の注意点

換価分割を選択するときは、税務上の注意点も気にしておく必要があります。換価分割を選択した結果、思いもよらない税金がかかってしまい、結果として損してしまうことは避けなければなりません。

以下では、換価分割をする場合の、税金の基本的な考え方を解説しますが、損をさけるためには、相続に強い税理士にきちんと相談することをおすすめします。

換価分割の相続税は?

換価分割として不動産を売却してしまう場合でも、相続税は、あくまで不動産の相続税評価額が基準となります。売買代金を計算に課税されるわけではありません。

したがって、低額な売買代金で売却してしまった場合には、相続税の負担が重くなる可能性があります。

換価分割で譲渡所得税がかかる?

相続財産(遺産)の不動産を、換価分割のために売却したとき、所得税を課税されることがあります。

相続税は、不動産を取得したこと(相続したこと)に対して課税されます。そのため、その不動産を換価するために売却するのは、相続した財産を売却するという、相続とは別の行為として扱われるのです。

換価分割として不動産を売却した場合の所得(譲渡所得)は、不動産の売却代金から、その不動産の取得費と譲渡費用を引いて計算します。

ただし、不動産を取得した(相続したこと)に関して支払った相続税の一部を、不動産の取得費用に含めることができる制度もあります。

換価分割で贈与税がかかる?

換価分割を行うとき、相続人の単独登記で換価分割を行うと、贈与税を課税されることがあります。

換価分割のために便宜的に相続人の1人に登記させるに過ぎないということが、遺産分割協議書で明らかになっていれば問題ありませんが、そうでない場合には、土地の持分をその相続人1人に贈与したかのように判断される可能性があるためです。

この点については、国税庁が、遺産分割の調停に基づいて換価分割を行うケースに関して、考え方を以下のように示しています。

「共同相続人のうちの1人の名義で相続登記をしたことが、単に換価のための便宜のものであり、その代金が、分割に関する調停の内容に従って実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはありません。」

ー引用元:国税庁「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」における回答

この回答をふまえると、遺産分割協議に基づいて、換価分割を目的として代表相続人の登記名義にする場合は、以下の点をまもる必要があるといえます。

ポイント

  • 遺産分割協議書の中で、換価分割の便宜のための登記であることを明らかにすること
  • 同じく遺産分割協議書で、代金の分け方を明らかにすること
  • そこで決めた分け方にしたがって実際に代金を分けること

換価分割で売却に必要な手数料を明らかにする!

換価分割は、不動産の売却によって得られた金銭を相続人間で公平に分ける手段として、とても有効な方法です。

ただ、換価分割をするためには、

  • 相続登記のための司法書士の費用や登記費用
  • 不動産売却を仲介する不動産業者の費用
  • 換価分割をした場合の税金を計算する税理士の費用
  • 土地の測量費用

など、さまざまな費用がかかります。

そのため、「不動産を売ってしまってお金で分けるのがシンプルで良い」と考えていた相続人でも、いざ売却を検討する段階で、

  • 思っていたような金額が残らなかった
  • 金額が少ないと他の相続人に文句をいわれた
  • その金額しか残らないのであれば別の分け方を考えればよかった

などといった不満やトラブルが生じることも少なくありません。

このような「想定外」をさけるためには、換価分割をした場合にはどれくらいの費用がかかるのかを、あらかじめ調べて、他の相続人にも十分に伝えておくことが不可欠です。

遺産分割は、「相続財産を守る会」にお任せください!

いかがでしたか?

今回は、相続した不動産を換価分割するときのポイントについて、解説しました。

相続財産を守る会では、相続に関係するさまざまな分野の専門家がおたがいに協力して、依頼者のかかえる問題をワンストップで解決しています。

不動産をふくむ遺産の分割や、相続対策については、相続財産を守る会にぜひご相談ください。換価分割を活用した有利な遺産分割の方法をご提案することはもちろん、換価分割をする場合の費用のお見つもりも可能です。

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弁護士法人浅野総合法律事務所

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