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生命保険の時効は3年!請求から振込までの流れと間に合わないときの対応

生命保険金の請求には時効があり、この期間を過ぎてしまうと、いくら正当な権利があっても請求できなくなる可能性があります。具体的には、保険金の請求権は、請求が可能となった日から3年間が基本となります。

死亡保険金は既に契約者が死亡してしまっていることもあり、生命保険の存在そのものが忘れ去られる危険があります。そのため相続では、生命保険が時効消滅してしまう場面も少なくありません。

今回は、生命保険金がいつまで請求できるのか、その時効と、過ぎてしまったときの対処法について解説します。

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生命保険の時効の基本

保険会社は、保険金請求を受けると、その保険事故(受給権が発生する事由)が支払要件に該当するか調査しますが、事故発生から時間が経つほど、正確な調査が難しくなります。そして、状況が不確かな保険事故に保険金を支給してしまうと、保険契約者間の不平等にも繋がります。

そのため、生命保険金の請求には期限があり、「時効」が問題となります。

生命保険金請求の時効期間とは

保険金請求の時効は、保険法により「保険事故の発生の翌日」を起算点として3年と定められています。仮に2024年1月1日に保険事故が発生した場合、時効期間の満了は2027年の1月1日です。

保険法95条1項(消滅時効)

保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第63条又は第92条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、3年間行わないときは、時効によって消滅する。

保険法(e-Gov法令検索)

公的年金の時効は5年のため、混同しないようにしましょう(また、かんぽ生命の保険金時効も、もともと国営だったことが影響して5年となっています)。

相続手続きの期限について

時効を過ぎてしまうケースの例

次に、受取人が保険金請求をせずに3年が経過するケースを、具体例で紹介します。

保険金の受取人が契約者の死亡を知らなかった場合

保険金受取人と契約者との関係が疎遠になっていたり、海外で暮らしていたりといった理由で死亡を知らなかった場合、時効を経過してしまうことがあります。契約者死亡の一報は届いていても、うっかり保険金請求を忘れていた例もあります。

受取人が保険契約の存在自体を知らなかった場合

契約者が受取人の将来を考えて保険に加入しても、本人に伝える前に突然死亡してしまった場合など、契約の存在自体を知らない方もいます。保険会社は受取人から請求が来てはじめて支払いの準備をするため、受取人からの未請求案件として処理されるおそれがあります。

保険証書などの証明書類は故人が管理しているかもしれません。書類を紛失していたり、死後に処分されたりすると、受取人は保険契約の存在に気付けません。

保険会社も定期的に契約の有無を知らせますが、関連書類の送付先は契約者宛てがほとんどで、契約者の代わりに受取人が気づく可能性は低いです。また、保険契約の有無は個人情報のため、生前だとたとえ家族でも照会に応じてもらえません。

なお、近年は書類の告知からメールなどオンライン型の告知に変わっており、当人しかPCのパスワードを知り得ないことが多く、受取人が知らないまま時効を迎える可能性は高まっています。

生命保険の時効を過ぎても支払われる場合がある

次に、生命保険の時効期間が過ぎてしまった場合の対応を解説します。

時効が経過したからといって、自動的に生命保険契約が消滅するわけではなく、保険会社が受取人に、時効の意思表示をすることではじめて時効が成立します(「時効の援用」といいます)。つまり、保険会社から告知がない限り、保険金の請求は可能であり、あきらめてはいけません。

気付いたらすぐに請求する

時効の援用がない限り、時効期間を過ぎても保険金の請求ができると解説しました。そして、この時効の援用について、保険会社としては、積極的に行うことはしないのが基本的なスタンスです(自殺屋保険金詐欺などの事件性の疑われるケースは例外)。

そのため、受取人としては時効の期限が到来したからといってあきらめるのではなく、保険契約の存在に気づいたら早急に保険会社に連絡してください。いわゆる請求漏れの件数は多く、保険会社はどのように解決すべきか頭を悩ませています。受取人から時効後に問い合わせがあった場合も、無下にすることはありません。

失踪宣告による死亡は時効の起算点に注意

生死不明の場合は、失踪宣告を受けることで死亡したものとして扱われます。失踪には普通失踪(本人の意思による失踪)と特別失踪(事故や災害による行方不明)があり、それぞれ次の時点で死亡と扱われます。

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普通失踪消息を絶って7年が経過した時点
特別失踪事故や災害が発生した時点

失踪宣告を受けると、死亡したものとして相続が行われますが、このとき、保険金請求との関係では、死亡したものと扱われる時点に注意が必要です。特別失踪の場合、保険金の時効の起算点が失踪宣告時ではなく災害発生時となり、時効の計算に大きく関わるので注意を要します。自殺の場合は免責期間かどうかを確認する

自殺の場合は免責期間を確認する

保険契約者が自殺した場合、残された方のなかには「自殺は保険金が受け取れない」と誤認し、請求すらしない人もいます。

しかし、契約内容にもよりますが、一般に、保険会社が保険金を支払う義務を免れる「自殺免責期間」は、契約から2〜3年とされます。もし、家族が自殺してしまったとき、免責期間をよく調べて、あきらめずに請求してください。

生命保険金の請求から振込までのプロセス

生命保険金は請求から振込まで、どのようなプロセスで進むかについて解説します。家族が亡くなったら、時効を意識して、速やかに進めてください。

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保険会社に死亡を伝える

保険金の請求は、受取人が行います。手元に保険証券を用意し、保険会社に連絡して家族の死亡を伝えます。担当者への連絡、もしくは専用のコールセンターが設置されている場合もあります。

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必要書類を準備する

請求時に、保険証券は必須です。保険証券がない場合は保険会社のサポートセンターなどに連絡しましょう。

一般に、必要書類は次の通りです。

  • 保険証券
  • 死亡診断書(または死体検案書)
  • 亡くなった方の除籍謄本
  • 受取人の戸籍謄本、身分証明書、印鑑証明書

入院給付金について提出すべき診断書は、保険会社が独自のものを用意していて、他の書式では受け付けない保険会社もあるため注意を要します。

相続に必要な戸籍の収集について

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保険会社に連絡し、保険金を請求する

保険会社に連絡し、保険金請求の意思を伝えます。この際に伝えるべき内容は次の通りです。

【保険証券の記載内容】

  • 証券番号
  • 亡くなった人の名前
  • 受取人の名前

【保険事故発生事由】

  • 死亡日
  • 死亡原因

請求手続きは保険会社により異なりますが、まず第一報を入れ、必要書類を問い合わせましょう。必要書類は郵送だけでなく、最近はオンライン送信の方法も定着しました。

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保険会社による確認作業

請求を受けた保険会社は、保険金の支払いについて確認を行います。死亡内容が支払対象であり、かつ必要書類がすべて揃っている場合は、迅速にお金が振り込まれます。

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保険金の振込

審査後、保険金が指定の口座に振り込まれます。死亡保険金は遺族の生活費と葬儀代に充当する性格があり、そのため支給は迅速に行われます。保険会社にもよりますが、書類の到着から5営業日程度としている保険会社が多いです。

生命保険金は、受取人固有の財産となるため、遺産分割協議は不要であり、相続人間の話し合いがまとまらない場合にもすぐもらうことができます。

面倒な手続きが多く、必要書類の収集にも時間がかかってしまうとき、万が一にも時効を過ぎてしまったら大変です。生命保険金の請求についても、死亡後の相続手続きと同じく、弁護士や司法書士などの専門家に代わりに任せることができます。「生命保険は自分でやるべき」と考えている人もいるようですが、ぜひお任せください。

相続の専門家の役割について

時効期間内に間に合わない場合の対応策

時効に間に合わない場合も、すぐあきらめるのではなく、保険会社に問い合わせてください。前章の通り、時効の援用が理屈としては可能でも、あえて援用はしないのが保険会社の基本です。

事前に情報管理を徹底する

生命保険金が時効にかかるのを避けるには、事前に死亡保険金の存在を把握しておくのが基本です。自身が受取人として設定されたのを知ったら、保険証券の保管場所や保険会社の担当者の情報を、被相続人と共有しておきましょう。

時効は死亡保険金だけではなく、医療保険や年金保険にも通じるものです。加入する生命保険や医療保険の保険証券はわかりやすく整理し、いざというときに家族にもわかるようにしておくことが、時効を避ける努力となります。

時効を中断しておく

生命保険金の時効は、中断することもできます。保険金の存在に気付いた時点で請求をすれば、それによって時効の進行をストップさせ、時間的な猶予を確保できます。具体的には、口頭や書面での支払いを求める「催告」によって、6ヶ月の間、時効の完成を猶予させることができます(民法150条1項)。その間に、訴訟提起や差し押さえといった他の事由によって時効完成を阻止することができます。

また、生命保険金の時効の場合には、多くのケースで、保険会社がその債務を承認してくれるでしょう。債務の承認は、時効の更新事由にあたり、その時点から新たに時効期間3年が経過してはじめて権利が消滅します。

なお、2020年の民法改正により、従来の消滅時効の「中断」と「停止」は、「更新」と「完成猶予」に変更されました。

時効期間を過ぎた理由を説明する

時効期間を過ぎても援用はせず、保険金を払ってくれる保険会社は多いですが、対応には注意しましょう。

保険会社に連絡するときは「なぜ時効期間が過ぎるまで気づかなかったか」を詳しく説明し、理解を求める姿勢が大切です。時効の援用をしなくても、保険会社としても社内手続きにて共有する必要があります。スムーズな保険金受取りの実現のためにも、丁寧な対応をして損はありません。

生命保険を時効にかけない生前対策のポイント

生命保険の時効のリスクを避けるためには、長期的な取り組みとして、生前対策が重要です。最後に、行っておくべき生前の対策を解説します。

情報の早期収集と専門家への相談

未請求の生命保険の時効が近い場合、早期の情報収集が大切です。収集した情報は、保険会社と共有しておきましょう。また、法律に詳しい弁護士や保険周りに精通したファイナンシャルプランナーに相談すれば、同様の事態に直面した人がどのように手続きしたか、アドバイスを得られます。

早めに保険金を受け取りのは当然ですが、焦りは禁物。ノウハウを蓄積する専門家に相談することが、最短で保険金を受け取れる近道となります。

相続に強い弁護士の選び方について

家族間で生命保険の情報を共有する

生命保険の観点からいえば、契約をしたときには必ず家族に伝えることです。受取人が保険の存在と自身が受取人であることを認識していれば、時効のリスクに直面することはありません。

時効は3年ですが、3年待ってよいわけではありません。むしろ、契約者の死亡という緊急性の高い状況で生命保険に気付けず、資金源として頼ることができないのが最大のネックです。契約者の死亡は家族のライフプランを大きく変えてしまいます。そのなかで迅速に支給される保険金は、非常に有用性が高いです。

また、家族から加入状況について積極的に聞く、遠慮せず話し合うといったことは、時効のリスク軽減だけでなく、争続の防止にもなります。直接に聞くのをためらう方は、相続財産目録やエンディングノートを通じて間接的に知るのも効果的です。保険会社の担当者に家族の連絡先を伝え、万が一のときに連絡してもらう方法もあります。

まとめ

今回は、生命保険金の請求の時効について解説しました。

生命保険の時効は原則として3年であり、間に合うように請求しなければなりません。特に、家族が亡くなって、生命保険がかけられていたことに気付かず放置していると、この期限を過ぎてしまうケースがあります。実際は、生命保険会社によってはこの消滅時効は援用されず、保険金を払ってくれることもあるので、あきらめず交渉しましょう。

相続の手続きを専門家に任せている場合、面倒な保険金請求についても一括して依頼することができます。

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