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遺留分を請求されたらどうする?遺留分侵害額請求への対応方法を解説

死後の相続手続きが一段落した矢先、突然に、遺留分を請求されることがあります。予告なく電話やメールで金銭を請求されたり、ケースによっては内容証明が送られてきたりすると、突然の事態に戸惑い、今後の対応に不安を感じるのも無理はありません。

遺留分が認められると得られる遺産が減ってしまうため、できれば拒否したいでしょうが、なによりもまず、絶対に無視してはなりません。とはいえ、請求額のまま受け入れる必要はなく、支払いを拒絶したり、減額を申し込んだりして交渉することが必要です。請求者の言い分が正しいかを確認するには、法律知識も必要です。

遺留分トラブルでは、故人の遺言への不満が噴出します。遺言書があるのに遺留分を請求されたなら、その遺言は不公平で、適切な内容でなかった可能性もあります。対応を誤ると、紛争の長期化や財産の減少を招くので、早期かつ円満な解決のため、適切な対処法を理解してください。

今回は、遺留分を請求された場合の対処法について解説します。

目次(クリックで移動)

遺留分を請求されたときの対応の基本

はじめに、遺留分を請求されたときの対応の基本について解説します。

請求への対応について、状況に応じて方針は様々ですが、無視や放置は厳禁であり、避けるべき対応だといえます。

そもそも遺留分侵害額請求とは

遺留分侵害額請求は、民法で認められた最低限の相続できる割合である遺留分が侵害されたとき、その侵害者に対して請求できる権利と、その請求のことを指します。

故人の行った生前贈与や遺贈(遺言による贈与)によって、本来もらえるはずだった遺産が取得できないとき、遺留分が侵害されることがあります。このとき、遺留分権利者は、遺留分侵害者に対して、遺留分に相当する金額を請求する権利があるのです。

なお、遺留分は権利であり、侵害されていたとしても請求しないことも可能です。

具体的な遺留分は、法定相続分に、遺留分割合をかけて計算します。

例えば、妻と子が法定相続人のとき、それぞれの法定相続分は2分の1ずつであり、遺留分割合は配偶者と子が相続人の場合には2分の1(相続人が直系尊属のみの場合は3分の1)なので、妻と子の具体的遺留分は4分の1となり、これを下回る遺産しか取得できなかったときは遺留分侵害額請求をすることができます。

遺留分侵害額請求の手続きについて

遺留分を請求されたら無視してはいけない

最も重要なこととして、遺留分を請求されたら、無視や放置は禁物です。

たとえ拒否するにせよ、明確に意思表示をすることが必要です。無視をしていては相手の怒りを買うだけで、ケースによっては調停や訴訟にも発展してしまいます。相手が内容証明を送付してこれば、その請求は証拠に残りますから、知らなかったでは済まされません。

遺留分を請求されても無視していると、次のリスクがあります。

法的なトラブルに発展するリスク

無視すると法的トラブルに発展するリスクがあります。遺留分を請求して人は、遺産分割に不満があり、怒っていると考えられます。そのため、放置してもなしにすることはできません。相手が弁護士を依頼しているならなおさら、弁護士費用を既に支払っているでしょうから後には引けません。請求される側の対応として、不作為は好ましいとはいえず、何らかのアクションが必要です。

相手の請求額が認められるリスク

請求された遺留分を放置すると、相手の請求通りの金額が認められるおそれがあります。

遺留分の請求が法的手続きに発展したのに無視して参加しないと、欠席のまま訴訟手続きが進み、敗訴判決が確定してしまう危険があります。まだ裁判にまではなっていなくても、長期間放置すれば「文句がない」「暗黙の了解があった」と評価されるおそれがあります。長いこと放置した後では、その後にやり取りを再開しても、和解できる可能性も低くなってしまいます。

財産を差し押さえられるリスク

遺留分を請求されたのに無視をすると、財産を差し押さえられるリスクもあります。

支払うべき金銭を払わずに逃げていると、財産隠しや逃亡を疑われてしまいます。このとき、仮差押、仮処分といった手続きによって、財産を保全しておく制度が存在しており、これを利用することによって、緊急の必要性があれば財産を押さえておくことができます。また、前章のように敗訴判決が確定すると、強制執行によって財産を差し押さえられ、奪われてしまいます。

遺留分侵害額請求訴訟について

遺留分を請求されたら確認すべき3つのポイント

では、遺留分を請求されたら、どのように対応すればよいのでしょうか。

遺留分侵害額請求をされたとして、無視してはいけないものの、相手の主張を全て受け入れる必要もありません。つまり、拒否して争うことも可能です。遺留分の請求に全く根拠がなかったり、請求すべき金額に誤りがあることもあります。

ここでは、遺留分の請求を受けたらすぐに確認すべきポイントを3つ解説します。

相手は遺留分権利者か

遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者とその承継人のみが行使できます。承継人とは、遺留分権利者が死亡した際の相続人や包括受遺者、相続分の譲受人などの包括承継人、特定承継人などのことをいいます。遺留分を請求された場合にも、その相手に権利がなければ応じる必要はありません。

例えば、次の人は遺留分権利者ではありません。

遺留分の請求額が正しいか

遺留分の権利があるとしても、その請求額に誤りがないかも必ず確認しましょう。遺留分の計算は複雑であり、相続に関する法律知識が必要となります。請求額に誤りがあれば、請求された全額を支払う必要はなく、減額交渉をすべきです。

遺留分の計算方法が適切か

まず、遺留分の計算方法が適切か確認します。その前提として、請求されたらすぐ、請求額の計算式を明らかにするよう要求しましょう。遺留分侵害額の計算式は、次の通りです。

遺留分侵害額 = 遺留分額 - 純取分額

【遺留分額の計算】

  • 遺留分額 = 遺留分算定の基礎となる財産 × 個別的遺留分率
  • 遺留分算定の基礎となる財産 = 相続開始時の積極財産 + 贈与財産 - 債務
  • 個別的遺留分率 = 総体的遺留分率 × 法定相続分の割合

【純取分額の計算】

  • 純取分額 = 特別受益額 + 具体的相続分額 - 相続債務負担額

複数の生前贈与や遺贈があって遺留分侵害者がいるなら、負担の限度額や順序のルールも考慮しなければならず、より複雑になります。

遺産の評価は正しいか

計算式に誤りがないとしても、遺産の評価によっても遺留分の額は変わります。

特に、遺産に不動産が含まれるとき、その評価方法は一定ではなく、考え方によって評価額が異なる可能性があり、請求する側とされた側で争いになりやすいです。遺留分を請求されたら、相続財産中の不動産について必ず自分で査定をしておいてください。

不動産は高額になることが多く、その評価額に関する主張が少し異なるだけで、得られる遺留分が違ってきてしまうからです。

特別受益の確認

遺留分について、法律の一般論を修正する必要のあるケースもあります。代表的な例が、特別受益の考慮です。

特別受益は、相続開始前に相続人が被相続人から受けた利益のことで、家の購入費の援助などが該当します。特別受益があるとき、遺留分の算出においては遺産に持戻して計算するのが基本です(持戻し計算)。特別受益は、特別な利益でなければならないので、そもそも特別受益として考慮すべき利益なのかや、その評価額についても争いになります。

特別受益の評価額は、「相続開始の時の貨幣価値に換算した価額をもって評価すべき」とされています(最高裁昭和51年3月18日判決)。

特別受益の基本について

遺留分侵害額請求の時効(1年)を過ぎていないか

遺留分侵害額請求権には時効があり、いつまでも行使可能なわけではありません。遺留分侵害額請求権の時効は、相続開始及び遺留分侵害を知った時から1年、もしくは、相続開始から10年です。時効後の請求は、既に権利が消滅していますから無効であり、請求されても応じる必要はありません。

この場合には、消滅時効を援用する旨の意思表示が必要となるため、配達証明付の内容証明郵便で、その旨の書面を送付しておきます。

遺留分侵害額請求の期限について

遺留分侵害額請求をされた場合の対応方法

遺留分侵害額請求をされたとき、検討すべき対応方法は、方針によって異なります。いずれのパターンでも、話し合いによる解決を試みるのが通常ですが、難しければ調停、訴訟といった手続きに進みます。

相手の請求に応じる場合の対応

1つ目が、相手の請求に応じる場合の対応です。請求された遺留分の主張に応じるケースには、次の3つの例があります。

  • 相手の主張がもっともだと感じ、共感できる場合
  • 相手の主張が法的に正しく、請求を争っても裁判で同様の解決になると予想される場合
  • 主張の正当性はともかく、いち早くトラブルを解決したい場合

このような場合、請求されたら争わず、そのまま応じる対応もあり得ます。遺留分を請求した側にとっても、そのまま応じてもらえるならば合意をすると考えられるので、早期解決の方向に進みます。なお、この場合に、紛争を終局的に解決し、将来に禍根を残さないために、合意した内容を書面にし、合意書を作成しておくのがお勧めです。

相手の請求を争う場合の対応

2つ目が、相手の請求を争う場合の対応です。請求額や請求内容に争いがある場合には、トラブルに発展しやすいので慎重な対応が求められます。遺留分侵害額請求権を行使してくるケースでは、相手はこちらを敵視している可能性が高く、丁寧に対応しなければ「火に油」です。

遺留分は、法律上の権利ではあるものの、侵害されても権利を行使しない人もいます。「法的にはもっともらえる」という場合も、話し合って減額に成功することもあります。親族内での戦いだからこそ「骨肉の争い」になって泥沼になることもあり、仲が良かったからとて甘くみないことです。

請求された額に法的根拠がない、法律知識に誤りがあるといった反論をし、一切の請求を断るならば、断固たる態度で明確に意思表示をしてください。この際、請求する側と同じく、請求された側にとっても、意思表示が証拠に残せるよう、内容証明を活用するのがお勧めです。

請求額の減額交渉をする場合の対応

3つ目が、請求額の減額交渉をする場合の対応です。減額交渉をするケースには、次の例があります。

  • 相手の請求額が間違っており、法的に正しくない場合
  • 他にも侵害者がいて、自分ひとりで負担すべきでない場合
  • 資力が乏しく、満額の支払いが難しい場合

遺留分を請求された場合の減額交渉では、相手の主張が法的に誤っているなら、正しい計算式や金額を示して説得し、納得してもらう必要があります。請求者が、法的に間違った主張に固執するなら譲る必要はなく、裁判手続きで正しい判断を得るべきです。

経済的な事情で、本来払うべき金額が難しい場合は、減額交渉をするほか、分割支払いの交渉もしておきましょう。将来の資金繰りやライフプランを練って、現実的に可能な支払いを提案するようにしてください。

相手方との交渉の進め方と流れ

上記3パターンのいずれの場合にも、交渉の進め方には、一定の流れがあります。弁護士に依頼して交渉を任せる場合、交渉の手順は次のように進みます。

  1. 遺留分の請求が内容証明で届く。
  2. 弁護士が受任した旨の通知(受任通知)を送付する。
  3. こちらの反論を記載した書面(回答書)を送付する。
  4. 相手の再提案をヒアリングする。
  5. 互いの譲歩によって合意することができるか検討する。
  6. 支払金額が決まったら合意書を作成する。

揉め事になっても、法的な手続きに発展する前に話し合いで解決できる途がないか、検討します。このとき交渉は、言った言わないのトラブルを回避するため、書面によるやり取りで行うのが基本です。当事者同士で書面の送付が難しいときは、録音したり、会議の議事録を作成して署名したりといった証拠化の工夫をしておいてください。

支払方法、支払期限が決まったら、合意書を作成します。合意書には清算条項を定めて、紛争の蒸し返しを防ぐ必要があります。

遺産分割がもめる理由と対処法について

調停や訴訟で争う場合の流れ

最後に、妥協点が見つからず、話し合いでは埒が明かないとき、調停や訴訟といった裁判手続きに進みます。身内同士のトラブルだからといって甘くみてはならず、中立な第三者を入れなければ解決できないときには裁判所を活用しましょう。

ただし、裁判手続きは、解決に至るまで年単位の時間がかかるおそれもあるので、根気のいる手続きであることを理解し、進むときには十分な覚悟をしなければなりません。

【調停の流れ】

  • 遺留分侵害額請求調停が申し立てられる。
  • 家庭裁判所からの連絡書面に従って期日調整をする。
  • 指定された期日に出頭して、話し合いによる解決を目指す。
  • 調停委員が間に入って双方の事情を危機、解決案を提示する。
  • 解決案で合意ができる場合、調停成立により解決する。
  • 解決案に合意できない場合、調停不成立により終了する。

【訴訟の流れ】

  1. 調停が不成立になった後、請求者が訴訟を提起する。
  2. 裁判所に主張を書面で伝え、証拠を提出する。
  3. 当事者の主張立証を踏まえ、裁判所が判決を下す。
  4. 納得いかない場合は不服申立て(控訴・上告)。
  5. 判決が確定すると強制執行により財産の差し押さえが可能になる。

なお、通常は、遺留分を請求する側が裁判手続きを起こしますが、権利がないにもかかわらずしつこく遺留分を請求された場合などには、むしろ請求された側から法的手続きに進む選択をすることもできます。このとき、相続権不存在確認訴訟といった争いを提起します。

遺留分を請求されたら弁護士に依頼すべき理由と弁護士費用

以上の通り、遺留分を請求されたときにすべき対応は手間が多く、遺留分の計算方法が複雑なために専門的な法律知識を要します。知識や経験なく自身で対応し、遺留分の計算を間違えてしまえば、請求される側において、本来払わなくてもよい金額を支出し、損してしまう危険があります。また、相続人間の感情的な対立が大きいと、当事者同士の話し合いは紛糾してしまいます。

このようなケースでは、遺留分を請求されたらすぐに弁護士に依頼するのがおすすめです。まずは弁護士に相談し、対応方針を策定し、交渉の窓口まで任せることができます。弁護士に依頼すれば、法律知識と経験に基づく正しい解決に導いてもらえ、スムーズに解決することができます。

これに対し、弁護士に依頼するには、弁護士費用がかかります。遺留分を請求されたというケースにおける弁護士費用は、一般的な金銭請求の被請求側(請求された側)の例と同じく、旧日弁連報酬基準に基づいて次のように着手金(依頼時に支払う弁護士費用)・報酬金(事件処理の終了時に支払う弁護士費用)を定めるのが通例です。

スクロールできます
請求額着手金報酬金
300万円以下経済的利益の8%経済的利益の16%
300万円を超え3,000万円以下経済的利益の5%+9万円経済的利益の10%+18万円
3,000万円を超え3億円以下経済的利益の3%+69万円経済的利益の6%+138万円
3億円を超える場合経済的利益の2%+369万円経済的利益の4%+738万円

上記表のうち、経済的利益とは、請求された側の場合には「請求された額」、ないし「請求された額からの減額分」を指します。なお、弁護士費用は自由化されているため、旧日弁連報酬基準は1つの相場の目安であり、必ずしもこれによらなければならないわけではありません。

相続に強い弁護士の選び方について

相続法改正によって金銭支払による解決が原則となった

従来、遺留分の侵害をめぐる問題の解決は、遺留分権利者が、生前贈与や遺贈といった処分の効力を否定することによってなされていました。このような権利は「遺留分減殺請求権」と呼ばれていました。その結果、遺留分の侵害があった場合には、その侵害する処分自体の効力がなくなり、移転していた財産権に再び変更が生じるということになっていました。

このような従来の制度のもとでは、不動産の贈与によって遺留分が侵害されてしまった場合などに、遺留分減殺請求権の行使の結果、不動産の権利移転が再度生じたり、受遺者・受贈者と遺留分権利者との間で共有関係が生じたりなど、解決後も複雑な権利関係が残存してしまう危険がありました(また、それを避けるために代償金を支払うことによる解決も可能ですが、そのためには、遺留分侵害者に代償金を払うだけの資力があることが必要となります)。

このデメリットをなくすため、2018年の相続法改正で、遺留分減殺請求権は「遺留分侵害額請求権」と名称変更され、その内容については原則として、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いで解決できる制度となりました。したがって現在は、遺留分を侵害された場合に、その処分の効力を否定するのではなく、その分の金銭を請求することとなりました。

本解説における遺留分を請求された場合の対応についても、従来のように生前贈与や遺贈の目的物を引き渡す必要はなくなり、金銭の支払いに応じるかどうか(もしくは減額交渉をするか)を検討するのみで足りることとなりました。

相続法改正のポイントについて

まとめ

今回は、遺留分を請求された場合の対応方法について解説しました。

無視して放置することは避けるべきで、請求を拒否にするにせよ、必ず何かしらの行動をしてください。請求に応じない場合の対応としては、拒否するか、減額交渉するかといった手が考えられます。基本的な方針を決めるには、相手がいうような遺留分侵害額請求権が発生しているのかどうか、請求を受けたらすぐに、民法のルールに照らして確認する必要があります。

遺留分の計算方法に不安があるなら、弁護士など専門家のアドバイスを求めることを推奨します。話し合いによる円満解決が難しいときは、調停や訴訟といった法的手続きに進みます。遺留分のトラブルのように感情のもつれが激しいとき、対応に疲弊する前に、相続に強い弁護士に相談ください。

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