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遺産分割

遺留分の放棄はできる?方法・手続と注意点を弁護士が解説!

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他の相続人にあらかじめ遺留分を放棄させたい、もしくは、「争続」を回避するために、遺留分を放棄したい、という相続相談が、弁護士のもとに寄せられます。しかし、遺留分の放棄は、(特に、ご家族がお亡くなりになる前には)容易ではありません。

遺留分の放棄は、ご家族がお亡くなりになる前に行うものについては、強制的に、無理やり放棄させられてしまう場合に備えて、本人の意思では自由には行えないことになっています。「相続放棄」とも間違えやすいですが、区別して理解してください。

遺留分の放棄をすると、放棄した人は相続人となることはもちろん、遺留分を主張して遺留分減殺請求権を行使することもできなくなるので「争続」を未然に回避できます。

そこで今回は、どのような場合に遺留分の放棄が認められるのか、その基準と、実際に遺留分の放棄をするときにどのような手続きを行えばよいのか、具体的な方法について、弁護士が解説します。

参 考
遺留分の認められる割合と、計算方法は、こちらをご覧ください。

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参 考
遺留分減殺請求権の行使方法は、こちらをご覧ください。

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遺留分の放棄とは?

そもそも遺留分とは、民法に認められた、最低限相続を保障された相続割合のことをいいます。遺留分は、兄弟姉妹以外の法定相続人(つまり、配偶者、子・孫、直系尊属)に認められています。兄弟姉妹には遺留分が認められていません。

これらの法定相続人は、お亡くなりになったご家族(被相続人)の財産によって生活しているなど、残されたご家族の生活を保障するだけの資力を確保する必要性が大きいことから、「愛人に全ての財産を渡す」などの遺言によって遺留分を侵害されても、最低限遺留分相当額だけは、相続できることが保障されているのです。

遺留分相当額の相続を確保するために、生前贈与、遺贈(遺言による相続)によって遺留分を侵害された人が他の相続人に対して行使するのが「遺留分減殺請求権」です。

参 考
法定相続人の範囲・順位と割合は、こちらをご覧ください。

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遺留分をできるだけ増やす方法は、こちらをご覧ください。

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そして、遺留分を放棄することを「遺留分の放棄」といいます。つまり「遺留分減殺請求をしない」という意味です。遺留分は「権利」ですが、権利を有する人が望んでも簡単には放棄できません。遺留分放棄について、民法は次の通り定めています。

民法1043条(遺留分の放棄)

1.相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2.共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。

遺留分は、遺留分を有する法定相続人を保護するために設定されたものであることから、希望すればいつでも放棄できるように思えますが、そうではありません。本当は放棄したくないのに、他の相続人から無理やり放棄させられてしまう、強要の危険があるからです。

参 考
遺産分割協議が揉める理由と解決策は、こちらをご覧ください。

「遺産分割協議」とは、法定相続人や、遺言によって相続人に指定された人が、相続財産(遺産)をどのように分けるかについて話し合いをする協議のことです。 遺産分割協議は、あくまで話し合いですから、円満に解決 ...

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遺留分放棄の目的、利用されるケースは?

遺留分は、法定相続人を保護するために認められた権利ですから、遺留分を放棄するには、それ相応の理由があると考えられます。また、そもそも権利行使をしなければ、遺留分は「争続」の火種にはなりません。

遺留分の放棄は、わざわざ遺留分権利者が自分に不利益・デメリットとなる行為ですから、なぜ行うのか、その理由、目的を明確にしておく必要があります。

遺留分放棄をする目的や、遺留分放棄が利用されるケースには、遺留分を侵害する遺言を残し、「争続」が起こらないように遺留分を放棄してもらうというケースがあります。

なお、次に解説するとおり、遺留分の放棄を、被相続人の生前に有効に行うためには、家庭裁判所の許可を得る必要があり、その際には「合理性」「必要性」が必要とされています。例えば「争続を回避するために遺留分の放棄をする代わりに、一定の生前贈与を受けるというメリットがある」というケースです。

生前贈与遺言によって、相続に関する生前対策をしたとしても「遺留分」のせいで希望通りの相続を実現することができません。遺留分の放棄をしてもらうことではじめて、被相続人の希望通りで、争いのない相続が実現できるのです。

遺留分の放棄をする目的は、相続問題に伴う紛争を回避するためです。

そもそも遺留分減殺請求権を行使しなければ、遺留分を侵害する遺言や生前贈与もまったく問題なく有効ですが、しかし、遺留分減殺請求は「相続開始を知ってから1年、かつ、相続開始から10年」の期間内であれば、いつでも行使できてしまいます。

被相続人の死亡直後は、ひとたびは円満におさまったかにみえた相続・遺産分割に関する問題も、将来相続人たちの状況が変われば、突然、遺留分に関する争いが巻き起こることもあります。

遺留分の放棄の具体的な方法・手続きは?

遺留分の放棄をしたい、もしくは、遺留分の放棄をさせたいということが決まったとき、実際に遺留分の放棄を行うための具体的な方法は、相続開始前であるか、相続開始後であるかによって手続きが異なります。

相続開始前の遺留分の放棄

相続開始前(つまり、ご家族の生前)に遺留分の放棄を行うときには、遺留分権利者が、家庭裁判所に許可の申立てを行い、裁判所の許可を得る必要があります。これは、共同相続人などの利害関係者から、意に反して無理やり遺留分を放棄させられることを防ぐためです。

遺留分の放棄の許可が下りるかどうかについて、家庭裁判所では、次の3点が考慮されるものとされています。相続財産(遺産)を獲得できる重要な権利を放棄するという大きな不利益を負うのですから、それだけのメリットがなければ「強要」ととられても仕方ありません。

もっとくわしく!

遺留分の放棄が、遺留分権利者の自由な意思によるものかどうか
:遺留分の放棄は、遺留分権利者が自分で行う必要があります。
遺留分の放棄に合理的な理由・必要性があるかどうか
遺留分の放棄に見合う代償を得ているかどうか
:例えば、遺留分の放棄の代わりに、十分な財産を生前贈与・遺贈などで得ているとか、経済的援助を生前に受けているといったケースでは、遺留分放棄の代償があり、合理的な理由があったと判断されます。

遺留分は、生前贈与遺言によって本来であればもらえる相続財産を減らされてしまった方の重大な権利であるため、家庭裁判所は、遺留分の放棄に合理性があるか、強要されてはいないかについて、入念な調査をします。

そのため、例えば、次のような遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を得られず、有効に放棄することができません。

ポイント

  • 資力が十分にある相続人に相続財産(遺産)を与えないために遺留分を放棄させる
  • 生活に必要な程度の日常的な援助を行った代わりに、遺留分を放棄させる

なお、ひとたび家庭裁判所が、相続開始前の遺留分の放棄を許可したとしても、その後の事情の変化によって遺留分を放棄することが相当ではない事態となったら、家庭裁判所は、職権で許可を取り消すことができるものとされています。

相続開始後の遺留分の放棄

相続開始「前」の遺留分の放棄に対して、相続開始「後」の遺留分の放棄には、家庭裁判所の許可などの特別の手続はいりません。

つまり、遺留分の放棄が、遺留分権利者の自由な意思に基づくものであって、強制などによるものではないことが証明できれば、合理的な理由や代償はなくても、遺留分を放棄することができます。

既にご家族(被相続人)がお亡くなりになり、相続が開始した後であれば、遺留分減殺請求権をすぐにでも行使できますから、強要によって放棄させられてしまう危険は少ないと考えられ、権利放棄を制限する必要性がないからです。

なお、特に遺産相続問題に争いがない場合には、遺留分の放棄をしなくても、遺留分減殺請求権を行使しないまま1年が経てば、権利は時効消滅します。

参 考
相続で注意すべき「期限」については、こちらをご覧ください。

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遺留分放棄の許可を得るための家庭裁判所の手続は?

遺留分の放棄を、被相続人が生きているうちに行う場合には、家庭裁判所に許可を得なければならないことをご理解いただけたでしょうか。

家庭裁判所の手続は、弁護士に代理して行ってもらうことが可能です。家庭裁判所に提出する申立書などを自分で作成することもできますが、遺産相続問題を数多く取り扱っている弁護士に依頼した方がスムーズでミスなく手続が進みます。

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遺産相続に強い弁護士の選び方は、こちらをご覧ください。

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遺留分権利者が、許可を申し立てるべき家庭裁判所は、「被相続人となる人の住所地を管轄する家庭裁判所」とされています。許可を申し立てる際に必要となる書類・資料などは次のとおりです。

  • 遺留分放棄許可申立書
  • 被相続人の戸籍謄本
  • 申立人の戸籍謄本
  • 収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手

連絡用に必要となる郵便切手の金額、種類および枚数は、家庭裁判所によって異なるため、事前に裁判所へ確認をしておきましょう。

申立てが受理されると、家庭裁判所より期日の通知があります。指定された期日に出頭し、家庭裁判所の審問を受け、遺留分の放棄の判断基準を満たしているかどうかについての審理を受けます。

遺留分の放棄の判断基準を満たしていることについて、要件にそって事前に申立書の「申し立ての理由」欄に詳しく記載すると、審問がスムーズに済みます。例えば、次の文例・書式を参考にしてみてください。

1.申立人は、被相続人の長男であり、遺留分を有する。
2.申立人は被相続人より、20XX年X月X日、子の教育資金として1000万円、20XX年X月X日、自宅購入資金として4000万円の贈与を受けていることから、すでにじゅうぶんな財産の贈与を受けている。
3.以上のことから、申立人には、被相続人の相続財産を相続する意思がないため、相続開始前であるが遺留分の放棄を行いたいと考え、申立の趣旨記載の審判を求める。

家庭裁判所の審問の結果、遺留分の放棄が強要ではなく、合理的なものであると判断された場合には、遺留分放棄許可の審判が下され、無事、遺留分を放棄することができます。

遺留分の放棄をするとどうなる?

ここまで解説してきた遺留分放棄の具体的な方法・手続きにしたがって、有効に遺留分を放棄した場合には、その後にはもはや、遺留分減殺請求権を行使することはできません。遺留分を放棄した人に代わって相続した「代襲相続人」も、同様に遺留分減殺請求権を行使できません。

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代襲相続と範囲・割合については、こちらをご覧ください。

「代襲相続」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。「代襲相続」を知ることによって、いざ相続が発生したとき、誰が、どれだけの遺産(相続財産)を相続できるかがわかります。 通常、相続が発生した ...

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しかし、相続放棄をしておらず、あくまでも遺留分を放棄したに過ぎないのですから、遺留分を放棄した後も、その人は法定相続人であり続けますし、相続財産(遺産)を承継することができます。

また、遺留分を侵害する遺言書が発見されたとしても、相続人全員の合意が得られれば、特別な例外を除いて、遺言書と異なる内容の遺産分割協議を行うこともできます。この場合には、遺留分を回復するのと同様の効果が得られることもあります。

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遺言書と異なる内容の遺産分割協議は、こちらをご覧ください。

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なお、遺留分の放棄が有効となった場合であっても、遺留分減殺請求権によって、その相続人が相続財産(遺産)を取り戻せないだけであって、他の共同相続人が相続できる財産が増えるわけでは決してありません。

遺留分の放棄と、相続放棄の違いは?

遺留分の放棄は、遺留分という権利を放棄する手続きであるのに対して、相続放棄は、相続自体を放棄することを意味します。

また、相続放棄は、相続が開始して相続人となってからしからしかできませんが、遺留分の放棄は、相続開始前後を問わず可能である点に違いがあります。

相続放棄は、相続開始後に、家庭裁判所に申述手続を行う必要がありますが、遺留分の放棄は、相続開始前には家庭裁判所の許可手続きが必要となりますが、相続開始後はそのような手続きは不要です。

遺留分の放棄 相続放棄
放棄の対象 遺留分 相続全体
相続人の資格 失わない 失う
遺産分割協議 参加できる 参加できない
手続の管轄 (相続前に限り)家庭裁判所 家庭裁判所
相続開始前 家庭裁判所の許可が必要 そもそも不可能
相続開始後 意思表示のみで可能 家庭裁判所への申述(3か月以内)
参 考
相続放棄したほうが得かどうかの判断基準は、こちらをご覧ください。

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いかがでしたでしょうか?

今回は、法定相続人に保障された権利である「遺留分」について、相続開始前もしくは相続開始後に、放棄するための方法、手続、メリット、理由などについて、相続問題に詳しい弁護士が解説しました。

遺留分の放棄をしたい、もしくは、遺留分の放棄をさせたいと考えている方は、その方法が有効なのか、目的を達成することができるのか、他により良い方法はないかどうかなどの相続相談について、弁護士による初回の法律相談をご利用ください。

しかし、一度行った遺留分の放棄の取消、撤回は難しい以上、せっかく認められている権利である遺留分減殺請求権を行使しないだけでなく、その権利を放棄してしまうことは、よほど特別な理由がない限り行わないほうがよいでしょう。

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