ご家族がお亡くなりになったとき、残された遺言によって、あなたの相続できるはずであった財産が減らされてしまったとき、「遺留分減殺請求権」を行使して救済できる可能性があります。
遺留分減殺請求権を行使する方法には、内容証明郵便など、話し合いによって解決する方法のほか、遺留分減殺請求訴訟を起こして裁判所で解決する方法がありますが、いずれの方法でも、幾分かの実費がかかります。
遺留分減殺請求権について、他の相続人が争いって来て「争続」になり紛争が激化する場合、その交渉、面談、訴訟などの全てを、相続に強い弁護士にお任せいただくことができます。
そこで今回は、遺留分減殺請求権を行使して、相続できるはずであった財産(遺産)を取り戻すためにかかる、弁護士費用や実費などの費用について、弁護士が解説します。
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そもそも「遺留分減殺請求権」とは?
ご家族がお亡くなりになったときに、法的に有効な形式の遺言書が作成されていたときには、遺言で指定された「指定相続分」が、民法に定められた「法定相続分」に優先します。その結果、法定相続人なのに、法定相続分より少ない財産しかもらえない人が出てきます。
ご家庭の状況、相続財産の状況によっては、法定相続人なのに「一切相続財産を得られない」という人もいます。
しかし、法定相続人のうち兄弟姉妹以外の相続人には、最低限保障された相続分である「遺留分」が認められています。この遺留分を確保するための権利が、「遺留分減殺請求権」です。
遺留分減殺請求権を行使するための方法は、法律に特別の制度が決められているわけではありません。そのため、まずは遺留分を侵害して財産を得た人に対して、内容証明郵便などを送って話し合いをし、話し合いで解決できない場合には、裁判所で訴訟を行います。
裁判手続きを有利に進めるためには、裁判所での主張方法、証拠収集方法などを得意分野とする弁護士の力を借りることが有益です。相続をはじめとした法律の専門的な知識、経験に基づいて、依頼者の力になるのが弁護士の役目です。
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遺留分減殺請求権にかかる費用(実費)
遺留分減殺請求権を行使するとき、その行使の方法によって、かかる実費が変わってきます。遺留分減殺請求権にかかる費用について、弁護士が解説します。
遺留分減殺請求の「調査」にかかる費用(実費)
遺留分減殺請求権を行使することを検討するよりも前に、そもそもあなたの遺留分が侵害されているかどうかを調べる必要があります。遺留分は、法定相続人の人数、相続財産の金額によって決まるため、これらのことを知るためには、次の調査が必要です。
ポイント
法定相続人の調査と、法定相続人の確定
相続財産の有無の調査と、相続財産の評価額の確定
以上の各調査を行うためには、戸籍謄本、除籍謄本、住民票や、登記簿謄本、固定資産税評価証明書、預金通帳の残高証明書など、多くの資料を取り寄せる必要があり、各資料の取り寄せにはそれぞれ、手数料などの実費が必要となります。
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遺留分減殺請求の「協議」にかかる費用(実費)
遺留分減殺請求権を行使するにあたって、まずは相手方となる相続人に対して意思表示をし、話し合いをすることで解決できる場合があります。このときにかかる実費は、次のとおりです。
- 配達証明付き内容証明郵便の郵送代
- 交通費
- 協議に利用する施設代
いずれもそれほど実費をかけないで対応することができます。配達証明付き内容証明郵便の郵送代は、郵送する用紙の枚数によって変わりますが、2000円~3000円程度で十分収まります。
電子内容証明郵便の方法を利用すれば、クレジットカードで支払うこともできます。
ただし、相続人当事者間の話し合いは、感情的な対立が大きく、遺留分減殺請求権を行使された相手方は自分の相続した財産を減らさないよう反論してきて、権利行使を拒否することが予想されます。
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遺留分減殺請求の「調停」にかかる費用(実費)
遺留分減殺請求権を行使することを伝えて話し合いを行っても、協議交渉がうまくいかない場合、裁判所の調停委員などの第三者に間をとりもって調整してもらうことで解決しようというのが、「調停」の方法です。
遺留分減殺請求権の調停は、簡易裁判所で行う一般調停、家庭裁判所で行う家事調停のいずれでも行うことができますが、より専門的な知識に基づいた解決をしてもらうことが期待できる家事調停を選択することが多いです。
遺留分減殺請求の家事調停を申立てるときにかかる費用は、次のとおりです。
- 収入印紙:1200円
- 連絡に必要となる郵便切手(郵券)
必要となる郵便切手(郵券)の金額は、家庭裁判所によって異なるため、調停申立て前に、申立先となる家庭裁判所に事前確認してください。
遺留分減殺請求の「訴訟」にかかる費用(実費)
家庭裁判所に申し立てた家事調停は、裁判所で行う手続きではあり、調停委員が調整してくれるものの、あくまでも話し合いの延長に過ぎません。裁判所が、遺留分減殺請求権について、確定的な判断を下してくれる手続ではありません。
したがって、相続人全員の合意が得られる納得いく解決とならない場合には、調停不成立となって終了し、その後に訴訟を提起することとなります。
遺留分減殺請求権の訴訟提起にかかる費用は、連絡に必要となる郵便切手に加えて、訴訟費用として納める印紙の額は、請求する金額に応じてかわります。
請求する遺留分の金額 | 訴訟費用額(印紙額) |
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100万円以下 | 10万円ごとに1,000円 |
100万円を超え500万円以下 | 20万円ごとに1,000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 50万円ごとに2,000円 |
1000万円を超え10億円以下 | 100万円ごとに3,000円 |
詳しくは、裁判所のホームページにある手数料額早見表をご覧いただくと便利です。
遺留分減殺請求にかかる弁護士報酬(弁護士費用)
遺留分減殺請求にかかる実費費用をご覧いただければわかるとおり、自分ひとりで遺留分減殺請求をして、成功すれば、それほど多額の費用はかかりません。しかし、相続に関する法律、裁判例の知識なく、遺留分減殺請求権を有利に進めることはとても難しいことです。
遺留分減殺請求権の行使を弁護士に依頼すると、弁護士報酬(弁護士費用)がかかるものの、その分、感情的な対立を排除したスピーディな解決を期待することができます。これまでもめ続けていた「争続」が、第三者である弁護士の関与によってすぐに解決するケースもあります。
特に、次のような遺留分減殺に関する専門的な知識経験を必要とする疑問をお持ちの方は、ぜひ一度、相続に強い弁護士にご相談ください。
よくある相続相談
- 遺言があるが、自分が遺留分を侵害されているかどうかがわからない。
- 遺留分の具体的な計算方法がわからない。
- 遺留分減殺請求権を有利に進めるために、どのように進めるのが得策かがわからない。
そこで次に、遺留分減殺請求権についての様々な手続きについて、弁護士に相談し、依頼するときの費用(弁護士報酬)について解説します。
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遺留分減殺請求の「法律相談」にかかる弁護士費用
遺留分減殺請求権についてのお悩み、疑問を、弁護士に依頼すべきかどうかお迷いの方は、まずは初回の法律相談をお受けください。小さな疑問や不安であれば、法律相談だけで解決できる場合もあります。
法律相談をしたからといって、遺留分減殺請求の協議交渉、調停、訴訟をその弁護士に一任しなければならないわけではありません。相続に強い弁護士の専門的な知見を聞くことによって、「全部自分でやろう」と思っていた解決が早まることも少なくありません。
遺留分減殺請求について、弁護士に相談するときの相談料は、「30分5000円~1時間1万円」程度が相場ですが、相続を専門的に取り扱う弁護士の中には、初回相談に限って法律相談料を無料としている事務所もあります。
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遺留分減殺請求の「交渉」代理にかかる弁護士費用
遺留分減殺請求の交渉を、弁護士に代理を依頼する場合には、まずは法律相談で、ご家族の状況、相続人の人数と続柄、相続財産の状況などを伺って、いくらの遺留分減殺請求権を行使することができそうか、金額の見積もりを行います。
交渉段階のみの依頼であっても、調停や訴訟に移行したときに、どのような結論となりそうか、勝てそうかどうか、勝った場合にいくらの金額が得られそうかを予想しなければ、弁護士に依頼するメリット・利益を知ることができないからです。
遺留分減殺請求の交渉代理を弁護士に依頼頂くとき、弁護士費用(弁護士報酬)は、請求額によって異なります。具体的には、次に解説する訴訟のときにいただく費用の2分の1程度の費用をいただくケースが多いです。
遺留分減殺請求の「調停」代理にかかる弁護士費用
交渉を依頼していて、交渉が不調におわったときに調停に移行する場合に、追加の費用がかかるかどうか、追加でかかる弁護士費用額については、事前に確認しておいてください。
調停は、あくまでも話し合いの延長であって、調停委員のとりなしのもとにできるだけ円満な解決を目指す制度ですが、遺留分減殺請求権を行使した相手方が強硬に拒否した場合には、訴訟提起をしなければ解決できない場合もあります。
交渉から調停に移行するときは、追加の着手金、報酬金のかからない弁護士、法律事務所も多くあります。ただし、調停の回数が何度もかかると、調停の期日に出頭するごとに「日当」がかかることがあります。
遺留分減殺請求の「訴訟」代理にかかる弁護士費用
調停を依頼していて、その後に訴訟に移行した場合には、既に調停開始時に支払った金額を控除して計算する場合もありますので、事前確認が必要です。訴訟は、遺留分減殺請求に関する争いを、裁判所の判断によって確定的に決着してもらうことができる場です。
訴訟によって遺留分減殺請求をするとき、訴訟手続きのすべてを弁護士に代理して行ってもらうためにかかる弁護士費用(弁護士報酬)は、次のように日弁連の旧報酬基準に準じた定め方とすることが一般的です。
請求する遺留分の金額 | 着手金 | 報酬金 |
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300万円以下の場合 | 遺留分請求額の8% | 取得した遺留分額の16% |
300万円を超え 3000万円以下の場合 |
遺留分請求額の5%+9万円 | 取得した遺留分額の10%+18万円 |
3000万円を超え 3億円以下の場合 |
遺留分請求額の3%+69万円 | 取得した遺留分額の6%+138万円 |
3億円を超える場合 | 遺留分請求額の2%+369万円 | 取得した遺留分額の4%+738万円 |
ただし、相続問題を得意とする弁護士、法律事務所の中には、着手金を定額として、報酬金を得られた金額に応じて決めている場合があります。遺留分減殺請求権の権利を有することが確実だけれども、現在手元にそれほど資力がない方には、相続問題に強い弁護士の料金体系がおすすめです。
遺産分割は、「相続財産を守る会」にお任せください!
いかがでしたでしょうか?
今回は、遺留分減殺請求権の行使を、弁護士に相談、依頼頂く際にかかる弁護士費用と、その他に権利行使の際にかかる実費などの費用について、弁護士が解説しました。
自分にとって不利益な生前贈与や遺言が残されていたことによって、相続できるはずであった財産が得られなくなってしまった方にとって、遺留分減殺請求権による救済策はとても重要です。
「相続財産を守る会」では、遺留分減殺請求権の行使について、協議交渉、調停、訴訟などいずれの段階からであっても、相続に強い弁護士が、ご依頼者、ご相談者の方の立場にたって最大限有利な相続を勝ち取るために徹底サポートいたします。