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遺産分割

遺留分・遺留分減殺請求権は譲渡・贈与できる?【弁護士解説】

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遺留分は、法定相続人に与えられた権利ですが、権利というものは、法律上、譲渡・贈与の対象とすることができます。そこで、遺留分や遺留分減殺請求権は、譲渡・贈与することができるのか、という疑問が生まれます。

遺留分や遺留分減殺請求権が譲渡・贈与することができるかどうかは、相続が開始しているかどうか、遺留分に関する権利が具体的な権利として発生しているかどうかなどによって異なるため、そのタイミングによって場合分けして、弁護士が解説します。

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人(つまり、配偶者、子・孫、両親・祖父母など)が持つ、最低限相続できる割合のことをいい、生前贈与や遺贈により遺留分が侵害されるときは、遺留分減殺請求権を行使することで、その救済を図ることができます。

参 考
遺留分が認められる割合と計算方法は、こちらをご覧ください。

相続のときに、「相続財産(遺産)をどのように分けるか」については、基本的に、被相続人の意向(生前贈与・遺言)が反映されることとなっています。 被相続人の意向は、「遺言」によって示され、遺言が、民法に定 ...

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2019/1/4

遺留分の放棄はできる?方法・手続と注意点を弁護士が解説!

他の相続人にあらかじめ遺留分を放棄させたい、もしくは、「争続」を回避するために、遺留分を放棄したい、という相続相談が、弁護士のもとに寄せられます。しかし、遺留分の放棄は、(特に、ご家族がお亡くなりになる前には)容易ではありません。 遺留分の放棄は、ご家族がお亡くなりになる前に行うものについては、強制的に、無理やり放棄させられてしまう場合に備えて、本人の意思では自由には行えないことになっています。「相続放棄」とも間違えやすいですが、区別して理解してください。 遺留分の放棄をすると、放棄した人は相続人となるこ ...

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遺産分割

2018/8/15

遺留分とは?誰がいくらもらえる?計算方法は?【弁護士解説】

相続の専門用語である「遺留分」の考え方について、弁護士が、わかりやすく解説します。 「遺留分」とは、ご家族がなくなったときに発生する、「相続人が、これだけはもらえる。」という財産の割合のことです。 相続が発生するとき、次のようなご希望から、民法に定められた相続の割合(法定相続分)どおりでない分割方法となることがあります。 よくある相続相談 相続財産(遺産)にかかる相続税を、できるだけ安くしたい。 相続財産(遺産)の維持、増加に貢献した人に、できるだけ多くの財産を残したい。 被相続人(亡くなったご家族)に対 ...

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遺産分割

2019/1/18

「相続放棄」と「代襲相続」の関係を弁護士が解説!【全まとめ】

「相続放棄」と「代襲相続」はいずれも、相続問題を考える際にとても重要なキーワードです。そして、「相続放棄」をすると、相続人ではなくなるため、そのときに、どういうケースで「代襲相続」を考えなければならないのか、が問題となります。 特に、祖父母から両親、そして子への、三代にわたっての相続問題を考える際には、相続放棄と代襲相続との関係は、場面によっては複雑な考慮が必要となる場合もあります。 そこで今回は、相続放棄と代襲相続の関係について、考えられるすべてのケースでどのように処理したらよいかを、相続問題に詳しい弁 ...

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遺産分割

2019/3/13

生前の預貯金の無断引出と、遺留分の関係は?パターン4つを解説!

ご家族がお亡くなりになったときに、「長男に全ての財産を相続させる」といった遺言があると、他の相続人の遺留分を侵害することとなります。民法で定められた最低限の相続分である遺留分を侵害された相続人は、遺留分減殺請求権によって救済を図ります。 しかし、上記のような不公平な遺言が残っていたようなケースでは、すでに、生前もしくは死後に、預貯金が無断で引き出されてしまっており、使われてしまっている場合が少なくありません。 このように、同居の家族や、遺留分を侵害するほどの財産を取得した相続人などが、預貯金を無断で引き出 ...

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2019/1/8

死亡直前・直後の預金引出しへの、相続人の対応は?返してもらえる?

口座の名義人がお亡くなりになると、銀行などの金融機関では、預貯金口座を凍結し、入出金ができないようにするのが原則です。しかし、金融機関は、人の生死を常にチェックしているわけではないので、死亡直前・直後に預金の引き出しが行われることがあります。 預貯金は、相続の際に、1円単位で分割できる、分割しやすい相続財産(遺産)である反面、預貯金の凍結解除や解約、名義変更、払い戻しに手間がかかったり、死亡直前・直後の引出が「不当利得」として「争続」の火種となるなどの問題があります。 特に、ご家族の死亡する前後では、入院 ...

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相続開始前に、遺留分・遺留分減殺請求権を譲渡・贈与できる?

遺留分は、潜在的には、相続人の続柄や人数によって計算することができますが、遺留分減殺請求権が実際に生じるのは、被相続人がお亡くなりになり、相続が開始する時点になってはじめて生じます。

そのため、相続開始前の段階(被相続人の生前)では、遺留分・遺留分減殺請求権を譲渡・贈与することはできません。

そもそも、相続が開始する前は、相続人としての地位は未確定であり、不安定なものです。死亡する順序やタイミングなどによっては、法定相続人が変わることもあります。また、相続財産(遺産)の範囲についても、相続開始直前まで変動し得るものです。

相続開始後に、遺留分・遺留分減殺請求権を譲渡・贈与できる?

被相続人がお亡くなりになり、相続が開始すると、その後は、遺留分減殺請求権が具体的な権利として発生します。すると、その後は遺留分減殺請求権を譲渡・贈与の対象とすることができるわけですが、もう1つの場合分けが必要となります。

それは、既に発生した遺留分減殺請求権を、「行使する意思表示」を行った前なのか、後なのか、という点です。

というのも、遺留分減殺請求権は、「形成権」といって、権利を行使した時点でその権利の効果が実現するため、遺留分減殺請求権を行使する意思表示を行うとすぐに、その権利は、相続財産に対する遺留分相当分の共有持分となるためです。

参 考
相続・生前贈与の「贈与契約書」の作成方法は、こちらをご覧ください。

相続対策をするとき、検討しなければならないのが「生前贈与」です。つまり、お亡くなりになる前に、生きているうちに、財産の一部を他人に贈与するという相続対策です。 財産を贈与する契約のことを贈与契約といい ...

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権利行使の意思表示前の、遺留分・遺留分減殺請求権の譲渡・贈与

相続が開始されると、遺留分減殺請求権は具体的な権利として発生しますので、その権利を譲渡・贈与の対象とすることができます。

ただし、遺留分減殺請求権が、どれほどの価値のある権利かは、相続財産の調査や、相続財産の評価などを行わなければ明らかとならないため、実際には、高額の価値ある権利として取り扱うことは困難であり、譲渡・贈与されることは多くありません。

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より難しい話をすると、ある人にしか帰属せず他の人には譲渡できない権利のことを「(帰属上の)一身専属権」といいますが、遺留分減殺請求権は、これには当たらず、譲渡・贈与することが可能です。

権利行使の意思表示後の、共有持分の譲渡・贈与

相続が開始された後、権利行使の意思表示をすると、遺留分減殺請求権は、「権利行使によって発生した相続財産(遺産)に対する共有持分権に形を変えます。つまり、不動産や株式、債権、動産など、相続財産(遺産)の持分になるわけです。

権利行使の意思表示は、後に争いとならないよう、配達証明付き内容証明郵便など証拠に残る形で行います。遺留分減殺請求権には、「相続開始もしくは減殺請求の対象となる贈与などを知ってから1年」かつ「相続開始から10年」という期限があるからです。

しかし、権利行使の意思表示前の譲渡・贈与と同様に、相続財産(遺産)に対する共有持分権についても、その価値を評価することが難しく、また、他の共同相続人との共有になってしまうため、実際には譲渡・贈与を希望する人は少ないです。

参 考
遺留分減殺請求権の行使方法は、こちらをご覧ください。

相続が開始されたときに、相続財産をどのように引き継ぐ権利があるかは、民法に定められた法定相続人・法定相続分が目安となります。 しかし、お亡くなりになった方(被相続人)が、これと異なる分割割合を、遺言に ...

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もっとくわしく!

権利の行使を他人が行うことのできない権利のことを「(行使上の)一身専属権」といい、このような権利は債権者代位権の対象にはならないとされています。

遺留分減殺請求権は「(行使上の)一身専属権」であることが最高裁判例(最高裁平成13年11月22日判決)で認められていますが、このことと、権利行使前に譲渡・贈与できることや、権利行使後の共有持分を譲渡・贈与できることとは矛盾しません。

他の共同相続人への遺留分減殺請求権の譲渡・贈与

遺留分遺留分減殺請求権は、価値の評価が困難であり、相続人間の「争続」に巻き込まれる可能性も高いため、赤の他人が譲渡、贈与を希望することは少ないです。しかし、他の共同相続人であれば、このことはあてはまりません。

つまり、相続人のうちのある人が、不公平なほどの多くの財産を相続したとき、遺留分を侵害された他の相続人のうち1人は、「もう争いには巻き込まれたくない」といって、他の相続人に対して遺留分・遺留分減殺請求権を譲渡する、という事があり得ます。

遺留分・遺留分減殺請求権の譲渡を受けた他の相続人は、その分だけ、遺留分減殺請求調停・訴訟などの戦いに勝利したときには、得られる相続財産(遺産)が増えることとなります。

参 考
遺産分割協議がもめる理由と、対処法は、こちらをご覧ください。

「遺産分割協議」とは、法定相続人や、遺言によって相続人に指定された人が、相続財産(遺産)をどのように分けるかについて話し合いをする協議のことです。 遺産分割協議は、あくまで話し合いですから、円満に解決 ...

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相続問題は、「相続財産を守る会」にお任せください!

いかがでしたでしょうか?

今回は、遺留分や遺留分減殺請求権を、他人に譲渡・贈与することができるかについて、タイミングごとに場合分けして、弁護士が解説しました。特に、相続人となって争いに巻き込まれたくないという方は、相続分の譲渡はもちろんのこと、遺留分の譲渡をあわせてご検討ください。

ただし、遺留分減殺請求権の譲渡、贈与はとても難しい問題であり、かつ、その範囲や評価を確定されることがとても困難です。最終的には、話し合いで決まらない場合には、調停・訴訟を起こして争わなければなりません。

「相続財産を守る会」では、遺留分減殺請求権の譲渡・贈与を含む、対立の激しい困難な相続トラブルにも、弁護士が複数名で積極的に対応しております。お悩みの方はぜひ一度法律相談ください。

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