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遺産の独り占めは違法?独占されたときの解決策と事前の防止策

遺産の分配は、家族間のデリケートな課題です。裏でこっそりと、他の相続人に秘密のうちに遺産を独り占めしようとする人は珍しくありません。悪意ある人が親戚や家族にいたとき、独り占めは相続人間の不公平につながり、法的な紛争の原因となります。しばしば良好だった家族仲を引き裂いてしまうでしょう。

遺産の独り占めの最たる例は「長男が全ての遺産を取得する」という、いわゆる総取りのケースです。総取りを防止するため、法律では、公平を損なわないための遺留分という最低限確保できる相続分の考え方があり、有効な対策となります。

今回は、遺産の独り占めの違法性とよくある悪質な手口、それに対処する具体的な方法について解説します。

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遺産の独り占めの定義とよくある事例

まず、遺産の独り占めとはどのようなものか、よくある事例を踏まえて解説します。遺産を独占することは、民法が相続分やその割合を定め、遺留分を守っていることから考えても、違法となりかねない悪質な手口を多く含んでいます。

対処法や防止策を考える前に、まずはどんな手口があるのか、その実態を知ってください。

遺産の独り占めとは

遺産の独り占めとは、相続人に対する不当な働きかけや、遺産に対する不公正な扱いなどの方法によって、遺産分割の前後において他の相続人に比して不当な利益を得る行為です。

「多くの相続財産を得たい」というのは誰しもの本音かもしれません。しかし、本来相続法などで認められた適正な遺産分配のプロセスを踏まずに、他の相続人の権利を侵害することに繋がり、最悪は違法となるケースもあります。

遺産独占のよくある方法と悪質な手口

遺産の独り占めの具体例は、次の通りです。

  1. 遺産隠し
    他の相続人が知らないうちに遺産に含まれる財産を隠す、被相続人にはたらきかけて自身に贈与させる、書類を偽造して遺産の名義を移してしまう
  2. 不正な遺言書の作成
    自身にとって不利な遺言書を隠す、遺言を偽造する、被相続人に遺言の作成を強要する
  3. 情報を伝えない
    相続が開始したことを他の相続人に伝えない、自分だけが知っている遺産の情報を伝えない、勝手に親の預貯金を使い切ってしまう

これらの遺産の独り占めの方法はいずれも、行き過ぎれば法律に違反します。民法などの民事的な違反はもちろんですが、公文書偽造や私文書偽造といった刑法違反に当たる可能性もあり、不正な手段によって遺産を独占しようとする人は大きなペナルティを受ける危険があります。

相続の手続きは、透明性と公正さを保たなければなりませんが、遺産が高額であったり、生活に窮していたりすると、お金の魔力に負けて、悪質な遺産独り占めの手口をとってしまう方もいます。今回の解説はあくまで対策や防止策であり、問題の深刻さを理解し、自分では絶対に行わないようにしてください。

遺産の独り占めは違法?

では次に、遺産の独り占めに用いられる方法について、その違法性を解説します。結論として、遺産の独り占めは、民法や刑法など、様々な法律に違反するおそれの強い行為です。重大な不正行為だといっても過言ではありません。

相続法は、亡くなった人(被相続人)の財産が公平に分配されることを保証しようとする目的があり、これに反する独占は、違法となる可能性が高いのです。

  1. 他の相続人の権利侵害
    遺産の独り占めは、他の相続人の法的な相続権を侵害します。民法には、最低限相続を保障されている遺留分が定められており、遺産を独り占めすればこの遺留分を侵害するのは明らかです。
  2. 詐欺
    被相続人に働きかけ、嘘をついてだまして財産を奪い取れば、詐欺や強迫にあたる可能性があります。民法において詐欺や強迫にあたる行為は取り消しが可能とされます(民法96条)。また、被相続人の誤解を招いて財産を得る行為もまた、錯誤にあたり取り消し可能です(民法95条)。
  3. 管理義務の違反
    相続人は、その遺産を適正に管理しなければなりません。特に、相続財産管理人や遺言執行者といった特別な立場にある者は、遺産を公正かつ適切に管理し、相続人に分配する義務があり、その地位に乗じて遺産を独り占めすればその義務に違反します。

また、民事的な違法性を超えて、更に強度の違法性を有する悪質な行為については、刑法違反となる可能性もあります。

  1. 詐欺罪
    だましてお金をとる行為は、刑法の詐欺罪に該当する可能性があり、10年以下の懲役の刑罰が科されます(刑法246条)
  2. 脅迫罪、強要罪
    脅して遺言を書かせるなど、強い働きかけによって利益を得ると、脅迫罪になると2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金(刑法222条)、強要罪になると3年以下の懲役(刑法223条)の刑罰が科されます。
  3. 偽造罪
    被相続人名義の遺言を偽造するなど、他人名義の文書を作成すると、私文書偽造罪として3ヶ月以上5年以下の懲役(刑法159条1項)、戸籍などの改ざんにいたれば公文書偽造になるおそれがあります。

遺産の独り占めは違法となる可能性が高く、相続の正義を守るために法的にも厳しく取り締まられる可能性があります。

遺産の独り占めが起こったときの対処法

次に、実際に遺産の独り占めが起きてしまったときの対処法を解説します。多くのケースで、遺産の独り占めは、被相続人の死後になって初めて判明しますが、手遅れにならないよう速やかに対処する必要があります。

遺産を調査する

まず、悪質な遺産の独り占めを知るためには、遺産を調査し、どのような財産が相続されるべきかを知っておく必要があります。他の相続人から「これで相続財産は全てだ」といわれて目録を見せられても、独占の可能性があるならば疑ってかかる必要があります。

現金や預貯金はなくなりやすく、隠しやすいので独り占めしやすいので注意が必要です。通帳や取引明細を詳細にチェックしなければなりません。遺産の調査において、戸籍や登記簿、通帳などといった財産のありかを示すあらゆる証拠を集めましょう。

相続財産調査について

遺産を確保する

知らない財産が発見されたら、使い込まれないよう、その保全が最優先課題となります。保全とは、なくならないように緊急で遺産を確保することです。

預貯金が見つかったら独占されないよう金融機関に被相続人の死亡を伝え、口座を凍結します。不動産が独り占めされて勝手に処分されそうなら、処分禁止の仮処分という裁判手続きを活用できます。これらによって、遺産分割までに相続財産がなくなってしまわないよう緊急の対策をしましょう。

遺留分を請求する

遺産の独り占めが、生前贈与や遺贈(遺言による贈与)で行われたとき、自身の遺留分を侵害されていれば、遺留分侵害額請求による救済を受けることができます。遺留分とは最低限保障された相続分であり、独り占めした相続人に対して、遺留分相当額を請求することができます。

遺留分の割合は、次の通りです。自分にどれだけ権利があるか確認してください。

スクロールできます
続柄遺留分割合
配偶者のみ配偶者:2分の1
配偶者と子配偶者:4分の1、子:4分の1
配偶者と直系尊属配偶者:3分の1、直系尊属:6分の1
配偶者と兄弟姉妹配偶者:2分の1、兄弟姉妹なし
子のみ子:2分の1
直系尊属のみ直系尊属:3分の1
兄弟姉妹のみ遺留分なし

以上の遺留分割合を遺産にかけた分は、相続することが保障されています。まずは内容証明で遺留分侵害額請求の通知書を送って交渉し、決裂すれば遺留分侵害額請求調停、遺留分侵害額請求訴訟の順に進めます。独り占めをした相続人は話し合いに応じないことが多いため、法的措置を検討すべきケースは多いものです。

遺留分の基本について

遺言の有効性を争う

遺言が不正に作出されたと疑われる場合は、その有効性を争うことができます。具体的には、遺言無効確認訴訟という裁判手続きによって解決します。特に、自筆証書遺言では、弁護士や公証人などの専門家の助けなく作成されており、有利になる相続人の関与や、実印の盗用、悪用といった違法な独占の手口が使われやすいと考えるべきです。

遺言の有効性を争うにあたっては、次の証拠が役立ちます。

  • 本人の筆跡を示す生前のメモ
  • 遺言書の筆跡鑑定
  • 遺言内容とは明らかに異なる意思表示を示すもの
  • 作成時の遺言能力の欠如を示す診断書やカルテ

遺言の無効が裁判所によって確認できれば、不公正な独り占めをやめさせることができます。また、独占をくわだてた相続人は、悪質な手口が相続欠格の事由にあたるなら、相続人ではなくすることができます。

弁護士に相談する

最後に、独り占めが絡む複雑な相続問題は、相続法に精通した弁護士に相談し、サポートを受けるべきです。弁護士なら、交渉はもちろん、裁判所における法的な手続きも含め、最適な解決策を提案してくれます。

既に違法で悪質な独り占めが判明されたならば、悠長なことは言っていられませんから、スピーディに対応しましょう。あなたが甘い考えでも、他の相続人はもう争いに備えて、相当前から準備万端なのです。

相続に強い弁護士の選び方について

遺産の独り占めが起こる原因

次に、対処法を知ったところで、防止策を解説する前に独り占めが起こる原因について知っておきましょう。原因や理由を理解することは、事前に防ぐために役立ちます。

家族間のコミュニケーションが欠如している

まず、遺産の独り占めが起こりやすい場面は、家族のコミュニケーションが欠如しているケースです。特に、一部の相続人が亡くなった方(被相続人)と生前に同居し、他の相続人とは疎遠になっていた場合、同居の親族による使い込みなど、独占が起こりやすい状況になってしまっています。自宅名義の不動産が、勝手に名義変更されていることもあります。

悪質な独り占めにまでは至らずとも、同居の親族は、結婚や進学、就職などでまとまった金銭を贈与されていたり、生活費を被相続人に負担してもらっていたりと特別な利益を受けていることも多く、特別受益が大きな争いとなります。被相続人の同意があったかどうか、分かりづらいのも同居の親族の独り占めを助長している一因です。

遺言書に問題がある

遺言を残さずに亡くなってしまう方は多くいますが、故人の意思が相続に反映されないため、必ず作るべきです。しかし、せっかく作った遺言書に問題があると、独り占めが起こる原因となります。遺言書が不明瞭だったり、不正確だったり、不公平だったりすると、独り占めが生じるのです。

また、相続開始後の遺産分割協議は、相続人全員の参加が必要となります。一方で、遺言があると協議を行わずとも遺産分割ができ、公平な話し合いがないまま不公正な内容でこっそりと分割がされてしまうことがあります。高齢や認知症によって正常な判断力がない親に、有利な遺言を作るよう働きかける人は跡を絶ちません。

相続人間の情報が非対称である

相続人間で、家族の情報に非対称があり、かたよりのあることも、遺産の独り占めが起こる原因となっています。遺産についての情報をある相続人しか知らないと、他の相続人に知られる前に使い込んでしまうことは容易です。預貯金や実印の保管場所を知らない相続人も多く、盗用や悪用が起こってしまいがちです。

被相続人の死後であっても、銀行などの金融機関が死亡の事実を把握するまでの間であれば、預貯金を払い戻し、使い込んでしまう独り占めが起こります。

遺産の独り占めを防ぐ事前対策

ここまで、遺産の独り占めが起こった後の対処を説明してきましたが、本来なら、独占が起こるよりも前に、事前対策を徹底したいところです。被相続人の生前から、次のような事前対策をとることによって、遺産の独り占めをできるかぎり防ぐことができます。

公正証書遺言を作成する

遺言書の作成は、遺産独り占めを防ぐのにとても重要な手段です。遺言書によって遺産の分配を明確に定めておけば、公正さが保てます。そして、被相続人の意思が明確に示されていれば、死後のもめごは少なくなるでしょう。

このとき、争いが少なくなるように遺言を残すには、公正証書遺言の方法によるのがお勧めです。公証人と証人2名の関与のもと、遺言能力や作成過程について争いが起こりづらい方法で作ることができるからです。

公正証書遺言について

日常的に家族でコミュニケーションをとる

日常的に、家族間でオープンなコミュニケーションを維持することが、遺産の独り占めを未然に防ぐことにつながります。被相続人の生前から、死後の遺産のゆくえについて話し合っておけば、家族間の誤解や、間違った期待をなくすことができます。また、相続財産となる可能性のあるものについて事前に皆で情報共有をしておけば、透明性を保つことができます。

相続に関する計画は、家族や財産の状況によって常に変動しますから、定期的な見直しが必要です。家族全員が最新の状況を理解し、いつ亡くなってもリスクが少ないよう、密な交流が家族間の和を保ちます。

まとめ

今回は、遺産の独り占めとその対処法について解説しました。悪質な独り占めをするような相続人と信頼を保つことは難しく、話し合いが困難な場面です。交渉を継続していても埒が明かず、裁判手続きに移行する可能性は高いものと理解してください。

遺産の独り占めは、重大な違法行為であり、厳格な対応が必須となります。なお、生前に気づけば、遺言による公平な分配、家族間のコミュニケーションの維持といったことを徹底し、防ぐことが可能な場合もあります。心配なときは、早めに弁護士のアドバイスを求めるのが重要です。

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