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相続で兄弟に不公平が生じたら?不公平な相続への対応策

相続は、しばしば家族間の絆を破壊します。特に、兄弟間の相続では、少しの差があるだけで不公平感を生じてしまうことはよくあります。これは単なる法律問題だけでなく、兄弟であるがゆえの感情的な根深い対立もあります。しかし、不公平だからという理由では相続は無効にはなりません。

幼いころから一緒に育ってきた兄弟であるからこそ、不均等な相続が生じると不満が大きいことでしょう。遺産分割の内容はもちろん、不公平な遺言が残されていると、親に愛されていなかったと感じてしまう人もいます。「全ての財産を長男に残す」といった遺言を残す家庭もいまだ少なくないでしょう。不公平な相続がなぜ生じたのか、理由を探ることが解決の近道です。

今回は、不公平な相続への対処法について解説します。

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なぜ不公平な相続が発生するのか

まず、なぜ不公平な相続が発生するのかについて、具体例とともに解説します。

不公平な相続の例

よくある不公平な相続には、次の例があります。

これらは、単なる財産関係についての不均衡のみに限ったものではありません。もちろん、得られる財産に大きな差があれば不平等だと感じるのは当然ですが、家族愛だの感情、これまでの生育環境や歴史、そして得られる遺産に太阿する期待などが複雑に絡み合います。同じ財産額だとしても、不公平感を抱く人もいるのです。

  1. 遺産分割の不均等
    最もよくある不公平な相続の例が、兄弟間で、遺産分割を不均等に取り扱われる例です。例えば「長男に全財産を相続する」「大部分を占める自宅を1人の兄弟が承継し、他の人は現金など価値の低い資産しかもらえない」といったケースです。
  2. 特定の相続人への偏った遺産の分配
    故人が遺言で、特定の相続人に遺産の大部分を譲ると決めたとき、他の相続人が不公平感を持つのは当然です。納得のいかない人がいると争続に発展します。
  3. 遺留分の侵害
    特に、遺言や生前贈与が、民法の定める最低限の相続分である遺留分を侵害しているとき、相続人は法的な権利を不当に侵害されたと強く感じ、不公平感に繋がります。
  4. 感情的な価値のある遺品の分配
    以上のような財産的価値の違いだけでなく、感情的な価値も対立の要因となります。例えば、家族にとっての思い出の品を1人の子に譲ったり、墓を誰が承継するかの問題が生じたりといったケースです。

経済的な均衡を保つのみでなく、感情的な配慮まで必要となってくることから、相続における不公平の問題を解消するには、法律知識だけでなく人間関係のコミュニケーションが不可欠です。

不公平な相続が生じる理由

不公平な相続が生じるには様々な理由がありますが、不公平感を抱く大きな理由は、遺産分割が不平等に進んでしまうことです。

遺産分割は、法定相続分の割合に応じて進むのが原則ですが、遺言がある場合にはこれに従います。そして、その遺言が、故人の意向が強く反映され、法定相続分とは全く異なるものだったときに、「本来であれば法律に基づいて財産を承継できるはずだったのに」と考える相続人が不満を抱くのは容易に想像できます。

また、法定相続分に基づいて分割したとしても、亡くなった方(被相続人)との関係性に違いがある場合、「他の相続人より多くの貢献をしたのに平等では納得いかない」といった別の不満も生じてきます。ある相続人を有利に扱えば他の相続人から不満が出、平等に扱えばそれはそれで不服な人がいるのです。それぞれの相続人の、遺産に対する期待感の違いが重要なポイントとなります。

法定相続分の割合について

兄弟間での不公平な相続への対応策

次に、最もよく起こる兄弟間の不公平な相続について、法的な対応策を説明します。

日本には、家長を尊重する文化が歴史的に存在しており、そのなかで長男が家を承継し、その財産の全てを取得するという慣行が長らく続いてきました。そのような考えを持つ年長者のなかには、今でも長男に全ての財産を譲るという遺産分割を尊重する方は少なくありません。

話し合いによる解決

兄弟間に不公平が生じる相続において、まずは円満な解決を目指します。話し合いによる解決方法で大切なのは、コミュニケーションを密に取ることです。このとき、兄弟間で直接話し合うのでは攻撃的になり、対立が深まりそうなとき、第三者に仲介を依頼するのが有効です。

弁護士を窓口として話し合えば、家族間で直接攻撃し合うデメリットを避けるとともに、法律知識に基づくアドバイスを受けながら解決策を探れます。なお、話し合いで解決したいなら、平等かつ公平な代替案を提示すべきであり、自身にとって有利な主張ばかりではまとまりません。

相続について話し合う遺産分割協議は、しばしば兄弟間の激しい対立となります。

遺産分割協議について

法的手段による解決

話し合いによって円満に解決するのが難しい場合には、法的手段を検討するのも1つの手です。このとき、不公平が程度を超え、遺留分を侵害している場合には、遺留分侵害額請求をすることができます。遺留分とは、民法の定める最低限の相続を保障された割合であり、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた法的権利です。

遺留分割合は、民法で次の通りに定められており、つまり、兄弟姉妹の間で不公平が生じた場合の遺留分割合は、例えば母と子が相続人だとすると2分の1となります。

  • 直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の3分の1
  • それ以外の場合は、被相続人の財産の2分の1

(参考:遺留分の基本

なお、兄弟姉妹には遺留分がないため、子として相続する兄弟間の不公平ではなく、兄弟姉妹が死亡して被相続人となった場合の不公平については、遺留分が請求できません。

このとき、交渉が決裂したら、遺留分侵害額請求の調停を申し立て、不成立に終わった場合には訴訟提起を選択します。いずれも時間と費用がかかるため、事前に弁護士へ相談し、内容証明によって通知してもらいプレッシャーをかける手もあります。

遺留分侵害額請求訴訟について

不公平な遺言が無効となる場合がある

遺留分を侵害された場合に、遺留分侵害額請求によって救済できる場合があると解説しました。しかし、不公平な遺言だったとしても、それだけで無効になるわけではありません。遺留分侵害額請求については権利の行使が必要であり、権利行使せずに放置すれば救われません。文句を言わなければ、不公平なまま進んでしまうのです。

一方で、「不公平である」だけでは無効になりませんが、結果として不公平な遺言の有効性について争い、無効となる場合があります。それが、遺言書に偽造や変造、強要などの不当な働きかけが発見されたケースです。不公平な遺言ほど、このような不当な行為が強く疑われます。

遺言によって有利になる側は、被相続人の生前に、自分にとって有利な遺言を書いてもらえるよう働きかけたり強要したりしていることがあります。特に、認知症などによって判断能力が弱っている家族の場合には、遺言書が無効でないかよく検討しましょう。理不尽な内容であるほど、実際にそのようなケースは少なくありません。

なお、遺言によって有利になる側にとっては、そのような無用な疑いをかけられないために、公正証書遺言の形式を利用するのがお勧めです。公正証書遺言ならば、公証人の関与のもと、遺言能力については確認がなされ、保管も公証役場で行うため偽造や隠匿などの疑いも晴らせます。

遺言書の基本について

まとめ

相続問題、特に兄弟間で生じる不公平感は、家族関係に大きな亀裂を生じさせます。不公平な相続に対処するには、その原因を理解し、適切な対応策をとることが肝心です。納得いかないと嘆くだけでなく、法的な対処を知りましょう。

生前からコミュニケーションを密にしておくのが対策となりますが、死後になってはじめて不公平な相続に気づいたら、まずは交渉、そして、難しければ調停や訴訟を利用します。いずれも、弁護士に依頼し、専門的なアドバイスを得るのが効果的です。

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