遺産相続問題を、弁護士に相談・依頼し、解決するまでの流れを、わかりやすく順番に解説します。弁護士に初回相談した後は、弁護士の指示にしたがって進めていけばよいですが、基本的な流れについては理解して、不安を取り除いておきましょう。
ちなみに、遺産相続について弁護士にお願いするとき、法律相談をしても依頼しなければならないわけではなく、依頼もまた中途で解約できます。「解決まですべて任せる」というのでなくても、現在のお困りごと、お悩み事について弁護士に任せることができます。
他方で、弁護士に法律相談し、遺産相続に関する業務を依頼したとしても、相談者、依頼者のほうで行っておいたほうがよいこともあります。遺産相続問題をより早く、有利に解決するためには、相続人などご本人の努力も必要です。
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【全体図】弁護士に相談・依頼する流れ
イメージしていただきやすいように、まず最初に、弁護士に初回法律相談をしてから、依頼し、解決に至るまでの全ての流れをまとめました。
なお、どの段階で、どの程度の弁護士費用がかかるかは、弁護士、法律事務所によって異なります。弁護士費用は自由化されたため、遺産相続問題を多く取り扱う弁護士は、遺産相続についての料金体系を決めているのが通常です。
ポイント
問合せ(電話・メール・問い合わせフォームなど)
初回法律相談の日時の予約
初回法律相談
・・・その後依頼を決めるまで、何度でも法律相談できます
・・・法律相談だけで、遺産相続問題が解決することもあります。
弁護士費用のお見積り、方針の説明
弁護士との委任契約締結
弁護士による遺産相続問題の解決・終了
全体像を理解していただいたところで、次に、各段階ごとの注意点、遺産相続に強い弁護士をより有効活用していただくためのポイント、やっておいたほうがよいことなどを解説していきます。
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問合せ、初回相談の予約
遺産相続に強い弁護士への問い合わせは、電話、メール、問い合わせフォームなどの方法によって行います。顧客目線にたって利便性の向上を目指す法律事務所の中には、LINEでご相談予約ができる法律事務所もあります。
遺産相続問題が複雑なときに、事前に相談内容を間違いなく伝えたいときはメール、問い合わせフォームを活用してください。電話で法律事務所に問い合わせることで、懇切丁寧な対応をしてくれる安心できる弁護士かを知ることもできます。
お問い合わせとご相談予約の段階で、事前に弁護士に伝えておいた方がよい情報は、次の通りです。
- 相談者の氏名
- 被相続人の氏名
- 連絡先(メールアドレス・電話番号)
- 相談内容の概要
- 初回法律相談の希望日時
弁護士は、裁判所にいったり、交渉にいったりしているため、常に法律事務所にいるわけではありません。必ず相談予約をとってから初回相談にいくようにします。事前情報があれば、よりスムーズに相談をはじめられます。
注意ポイント
特に、既にお亡くなりになったご家族の遺産相続トラブルについて弁護士に相談したいと考えるときは、お亡くなりになった方(被相続人)の氏名を事前に伝えておいがほうがよいです。
弁護士は、依頼者の味方であり、対立する2当事者間の双方の依頼を受けることはできません。そのため、既に、共同相続人の方の相談を聞いている場合などには、ご相談にお越しいただいてもお話を聞けないこともあるからです。
初回法律相談の受け方と、4つの注意点
初回法律相談の日時の予約をとったら、早速、決められた日時に法律事務所に訪問し、弁護士と対面で法律相談を行います。電話やメールだと、顔が見えないため説明や事情聴取が不足し、特に困難な遺産相続問題では、満足なアドバイスを受けることができません。
初回法律相談は、時間枠が決まっており、次の相談者との関係上、際限なく延長することは難しい場合もあります。そのため、弁護士との法律相談の時間を有効活用するための、初回法律相談の受け方と注意点を解説します。
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初回法律相談の持参資料は?
法律相談の予約電話の際に、「どのような資料をお持ちしたらよいでしょうか。」と聞かれることがありますが、「関係するすべての資料をお持ちください」とお答えしています。
というのも、弁護士の判断なく、ご相談者が持っていく資料と持っていかない資料を選別することは非常に危険です。ご相談者が、持っていかないと決めた資料が、法律相談の結果、とても重要なものであることがわかった、という場合も多々あります。
お抱えになっている問題を、法律相談でしっかり聞いてはじめて必要な書類がわかるくらいであれば、最初から全ての「関係しそうな資料」をお持ちいただいて、法律相談の場で、弁護士が選別、判断したほうが有益です。二度手間になってしまうことを避けましょう。
もっとくわしく!
遺産相続問題では、「今は手元にないけれども、役所などで取得することができる」という必要書類が多くあります。戸籍謄本、住民票、不動産登記簿謄本、商業登記簿謄本、公正証書遺言の写しなどがそれです。
相続手続きを進めていく上で当然必要となる可能性の高い重要な書類ですが、初回法律相談時に全て手元にある必要はありません。
お悩みの遺産相続問題の内容がわかる書類が手元にあれば、後から取得できるものは、弁護士のアドバイスをお聞きいただいてからで間に合います。必要書類の取得の手間もすべて弁護士に依頼頂く選択肢もあります。
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相続で必要な「出生から死亡までの戸籍謄本」の集め方・取り寄せ方
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初回法律相談で何を話したらいい?
遺産相続の初回法律相談で、弁護士にお話しすべきことは、「事実」に関することです。つまり、「どのようなことがあったか。」、「どのようなことで悩んでいるか」ということです。
遺産相続の問題は、感情的な対立が激しいことが多いですが、あなたに初めてご相談いただく弁護士は、「何が起こったのか」を全く知りません。遺産相続問題の解決について「不公平だ」という評価はともかくも、まずは「何が起こったのか」を弁護士に詳しく伝えてください。
遺産相続に強い弁護士であれば、「事実」について詳しくお聞かせいただければ、法律や裁判例に従った、ご相談者がより有利に遺産相続問題を解決できる方針やアドバイスができるはずです。
注意ポイント
弁護士に「事実」を話すときは、ありのままに正直に話しましょう。弁護士は、弁護士法という法律で守秘義務を負っており、相談者が話したことは、他の相続人はもちろん、誰にもバレることはありません。
戦略上、相手方には知られたくない内容であっても、味方である弁護士には知っておいてもらうことで、より長期的に相談者の有利な解決を目指すことができます。味方である弁護士は、あなたに親身になってくれ、否定することはありません。
初回法律相談前にやるべきことは?
遺産相続問題の初回法律相談より前にやるべきことは、相談者の側では特にありません。相談タイミングは、「お悩みになったとき」「お困りになったとき」にはすぐ、とお考えください。
法律事務所にご相談いただく方の中には、自分ひとりで悩みぬいて、インターネットや書籍で多くの知識をつけている方もいます。しかし、インターネットや書籍の知識はいずれも、一般的な知識であって、あなたの立場で書かれたものではありません。
相談者の状況に応じて、一般的な知識を利用して解決まで導くことが弁護士の仕事です。インターネット上のコラムなどを鵜呑みにして「不利なのだ」と落胆してしまう方もいますが、現状よりも有利な解決のために尽力すべきです。
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納得いくまで法律相談する
遺産相続問題の相談は、1度しかしてはいけないわけではありません。途中から遺産相続業務を依頼することもできますし、遺産相続業務を全く依頼せずに法律相談を終えることも、依頼せずに何度も相談だけ受けることもできます。
遺産相続問題がそれほど複雑でなく、相続人間の話し合いでも解決できそうなときは、弁護士が依頼を受けることで逆に態度が硬化し、問題解決が困難になることもあります。この場合に、弁護士は後方支援に徹することもあります。
遺産相続問題は、状況によって適切なアドバイスが変わります。そのため、お悩みになったタイミングで次の選択、決断をするために、弁護士の法律相談はどの時点でも有効です。
例えば、次のような法律相談も可能です。
ポイント
遺産相続問題を自分で解決するために、継続的な後方支援のための法律相談をしてほしい。
遺産相続問題を現在依頼している弁護士の意見が正しいか、セカンドオピニオンを聞きたい。
遺産相続問題が当事者間で解決しそうだが、損していないかどうか知りたい。
弁護士費用のお見積り、方針の説明
遺産相続問題で、初めて弁護士に依頼するという方にとって、弁護士費用はとても高額に感じることもあるのではないでしょうか。重要なのは、どのような方針で、弁護士が何をしてくれて、なぜその費用になるのかについて、わかりやすく説明を受けることです。
費用体系がわかりづらかったり、なぜその金額になるのかの説明がかけていたり、方針と行ってくれる業務の内容からして依頼者に不利益になりそうな費用体系であったりするときは、その弁護士に依頼すべきではありません。
法律相談時に費用の説明を受け、その場で依頼するかどうかを決めることができない場合には、見積もり書をもらって、持ち帰ってご家族と検討することもできます。
弁護士との委任契約締結
法律相談を納得いくまで行い、きちんと理解できるまで弁護士に質問をしたら、いよいよ、弁護士にご依頼をいただく手続きを行います。弁護士は、依頼を受けるとき、必ず委任契約書の作成、締結をする義務があります。
委任契約書を締結することで、どのような業務を行ってもらえるか、その際の費用はどの程度かかるかを、明確に証拠化し、わかりやすく説明してもらうことができます。
弁護士に依頼する遺産相続業務の内容によっては、委任契約書と同時に、次の書類を作成してもらうことがあります。
ポイント
- 遺産分割調停、遺産分割審判、遺留分減殺請求訴訟などの裁判所の手続の代理
→裁判所宛の委任状 - 預貯金の凍結解除、名義変更、解約
→金融機関宛の委任状
ただし、金融機関宛の委任状には、金融機関の届出印や実印と印鑑証明書の添付などを求められることがあるため、必ずしも委任契約書を締結する日にすべて持参いただく必要はありません。
弁護士による遺産相続問題の解決・終了
弁護士との間で委任契約書を締結し、契約書に応じた弁護士費用(着手金など)をお支払いいただくと、弁護士が、相手方との交渉(協議)や遺産相続に関する裁判手続きなどの業務を進めます。
遺産相続問題を解決するために、どのような業務や手続きを行う必要があるかは、依頼者が抱えている問題の状況によってさまざまです。
法律相談のときや、委任契約時に説明をした方針が、状況に応じて変更する必要が生じたときには、事前にしっかりと弁護士から説明を受けるようにしてください。
弁護士に依頼すれば、遺産相続に関することのうち、面倒な多くのことは丸任せにすることができますが、弁護士の報告は頻繁に聞き、その内容が理解できるまで質問をして状況把握をしなければなりません。
遺産相続は、「相続財産を守る会」にお任せください!
いかがでしたでしょうか?
今回は、遺産相続の問題でお悩みの方が、「弁護士に法律相談するのはハードルが高い」というイメージを消し去ってもらえるよう、弁護士に相談、依頼し、解決に至るまでの流れをまとめました。
弁護士に依頼したほうが有利になるかどうか、得かどうかは、そのご家庭の抱える相続問題の状況によりますので一概にはいえませんが、「弁護士に相談しないほうがよい」という方はいません。
「この先どうしたらよいか」と、遺産相続問題でお悩みの方は、ぜひ、「相続財産を守る会」の遺産相続に強い弁護士へ、初回法律相談をお申込みください。