ご家族がお亡くなりになったときに必要となる、相続のための手続は数多く存在し、特に、法律・税金についての知識が必要となる手続は複雑です。
相続手続きを、正しい方法で進めなければ、相続人間のトラブルを助長することとなるため、相続の専門家からアドバイスを受けることが有益です。特に、法律、税金について、次の点で、専門家に依頼するメリットがあります。
よくある相続相談
- 相続の法律について、専門家に依頼するケース
:遺産分割協議が円滑に進まず、相続人間に争いがある場合に、相続の法律、裁判例に照らして損のない分割を実現するため、弁護士に依頼した。 - 相続の税金について、専門家に依頼するケース
:遺産分割協議を進めているうちに、相続税の申告期限が迫っていたため、相続税申告について、税理士に依頼した。
遺産分割協議のトラブルは、弁護士に依頼せず長期化すると、遺産分割調停、遺産分割審判へと、重大事になりかねません。相続税申告を税理士に依頼せず放置すれば、延滞税、加算税などの制裁(ペナルティ)があります。
どのようなケースで、「相続手続きの専門家に依頼した方がよいのか?」、そして、相続の専門家に依頼するときの費用の目安について、相続に強い弁護士が解説します。
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「法定相続人」についての基本的な考え方は、こちらをご覧ください。
身近なご家族がお亡くなりになってしまったとき、「誰が財産を相続することができるのだろう。」と不安に思うことでしょう。 遺言・遺書などがのこされていたなど、お亡くなりになったご家族の意思が明らかでない場 ...
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法定相続分とは、その名のとおり、「法律」で定められた「相続分」のことをいいます。民法で、「誰が、どの程度の割合の相続財産を得ることができるか」ということです。 法定相続分は、お亡くなりになったご家族( ...
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相続財産を守る会を運営する、弁護士法人浅野総合法律事務所では、相続問題と遺産分割協議のサポートに注力しています。
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浅野英之"]
弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野です。
相続の手続が複雑であり、残されたご家族だけで対応するのが難しいことから、「相続財産を守る会」では、弁護士、税理士、司法書士が一丸となって、相続手続きのサポートを行っています。
しかし、相続手続きの専門家の助けがなくても可能な手続きも多くあるため、どのような場合に専門家の助けを得た方がよいのかを、正確に理解しておいていただくことが有益です。
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相続手続きを法律の専門家(弁護士)に依頼したほうがいい場合
相続手続きを専門家に依頼するとき、気になるのは、費用がいくらかかるのか、という点ではないでしょうか。必要な場合に、必要な士業だけに依頼をすることで、相続にかかる費用を抑えることができます。
相続人が、1人しかいない場合には、相続財産を分割するための手続は不要ですが、相続人が複数いると、相続財産を取得するためには、遺産分割協議による話し合いで、遺産の分け方を決めなければなりません。
遺産分割協議について、次のケースは、相続手続きを法律の専門家(弁護士)に依頼したほうが良い場合といえます。
相続手続きを弁護士に依頼したほうがいい場合
- 相続人が多数いて、相続人調査、相続分の確定の手続が複雑なケース
- 相続人の一部が、特別受益、寄与分など、特別な相続分を主張しているケース
- 相続人の一部が、法定相続分に従った相続に反対して争っているケース
- 遺言書が存在するが、遺言の有効性に争いがあるケース
注意ポイント
相続の手続きが、相続人間で揉め事となり、争いが生じたときは、当事者の代理となって交渉をすることができるのは、法律の専門家である弁護士だけです。
そして、法律の専門家である弁護士は、「間に入って仲裁する」のではなく「当事者の代理となって交渉」をします。そのため、
弁護士に相続手続きを依頼するメリット
相続手続きを弁護士に依頼するメリットは多くありますが、一番は、当事者同士ですとどうしても生じてしまう感情的な対立を避けることができる点にあります。弁護士を依頼するのは、相続人間に争いがある場合だからです。
遺産分割協議を相続人が当事者間で行った場合、相続人間が親密であったり、お亡くなりになったご家族(被相続人)に思い入れがあればあるほど、話し合いが困難になってしまうことがあります。
特に、相続財産(遺産)が現金・預貯金だけではなく、不動産、貴重な動産など、分割することが難しい資産があるとき、その所有者を誰にするかが、遺産分割協議の際の争点となります。
交渉の専門家である弁護士に相続手続きを依頼し、相続人を代理して、当事者の間に入って話し合いを進めることで、遺産分割協議などの相続手続きがスムーズに進むことが、弁護士に依頼するメリットです。
弁護士に相続手続きを依頼する費用
相続手続きを弁護士に依頼するとき、どの程度の費用が必要かについても説明します。「相続の相談無料」といった広告も多いですが、実際に相続手続きを依頼するときには、弁護士費用が発生するのが通常です。
旧日弁連報酬基準
相続手続きを弁護士に依頼するときの弁護士費用は、日弁連が過去に発表していた旧日弁連報酬基準に従うものが一般的です。
以下の表では、旧日弁連報酬基準についてまとめました。なお、弁護士費用は自由化されていますので、必ずしも旧日弁連報酬基準通りの費用ではない弁護士、法律事務所も少なくありません。
相談料 | 30分ごとに5000円から2万5000円の範囲内の額 |
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着手金 |
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報酬金 |
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日当 |
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相続手続きについて法律の専門家(弁護士)に依頼すべき場合には、「事件の経済的利益」とは、専門家に依頼する人が、実際に相続することができる遺産の金額とすることが一般的です。
相続手続きを、法律の専門家(弁護士)に依頼した方が経済的な利益があるかどうかは、弁護士に相談する際、「どの程度の相続財産の増加が見込めそうかどうか」を相談して決めるとよいです。
なお、以上の表の金額は、いずれも消費税別の金額となります。
弁護士費用の用語説明
弁護士費用の説明のとき使われる用語は、専門的なため、その意味について説明します。
相続手続きについて、法律の専門家(弁護士)に依頼するときは、費用の安さだけでなく、十分な専門性を持っているかどうか、同種の問題を解決した実績があるかどうかを重視して選びましょう。
ポイント
相談料
弁護士に法律相談するときにかかる費用が、「相談料」です。相談料は、「30分5000円」、「1時間1万円」が多いですが、得意分野について初回の相談料を無料としている弁護士、法律事務所もあります。
着手金
弁護士に、弁護活動を依頼するとき、着手をする前にかかる費用が「着手金」です。着手金は、原則として一括支払いですが、経済的な状況によっては分割が可能な場合もあります。着手後は、返還されないのが一般的です。
報酬金
弁護士に業務を依頼した結果、一定の成果が出た場合にかかる費用が「報酬金」です。報酬金は、成功の程度に応じて支払われるもので、得られた経済的利益がゼロの場合には、報酬金は発生しない場合もあります。
日当
弁護士が、事務所外で活動するときに必要となる費用が「日当」です。遠方で発生する場合にかかるのが通常ですが、一定額の日当が、着手金の中に含まれている契約内容の場合もあります。
相続手続きの弁護士費用は?
弁護士費用は、自由化されているため、相続を多く取り扱っている弁護士、法律事務所の中には、相続問題についての依頼の場合には、旧日弁連報酬基準を参考にした弁護士費用以外の費用体系をご提案する場合があります。
相続問題は複雑で、非常に高度な業務であるため、相続の法律問題を専門家(弁護士)に依頼する場合には、相続問題の解決実績を多く有する法律事務所に依頼すべきです。
相続問題のうち、よくある相続相談についての弁護士費用には、例えば次のような決め方があります。
ポイント
遺言作成の弁護士費用
手数料10万円。その他、公正証書遺言を作成する際に、日当が生じる場合があります。
遺産分割協議の弁護士費用
着手金20万円、報酬金20万円+経済的利益の10%
※別途日当が発生するか、日当の一部が着手金に含まれているかを、事前に確認しておきましょう。
遺産分割調停の弁護士費用
着手金30万円、報酬金30万円+経済的利益の10%
※別途日当が発生するか、日当の一部が着手金に含まれているかを、事前に確認しておきましょう。
相続問題に特別の費用体系を用意している弁護士、法律事務所の多くは、相続問題を得意としており、その方針にしたがって解決をすれば、旧日弁連報酬基準にしたがって費用を計算するよりも割安になる場合が多いです。
具体的な事件についての方針、勝算や、その場合の費用の見積もりについては、法律相談の際に、相続の法律の専門家(弁護士)に確認するのがお勧めです。
相続手続きを税金の専門家(税理士)に依頼したほうがいい場合
相続財産(遺産)が一定額以上ある場合、相続税の申告・納付が必要です。相続税の計算に間違いがあると、後に追加の納付が必要となってしまうおそれがあるため、相続税の申告は、税金の専門家(税理士)に相談しましょう。
相続税の申告・納付が必要なケースとは、相続財産(遺産)の合計額が、「3000万円+600万円×相続人の人数」を越える場合です。例えば、次の計算をご覧ください。
たとえば・・・
お亡くなりになったご家族の法定相続人が、妻と子2名であった場合、相続人の人数は、法定相続人についての民法の定めに従い「3名」です。
この場合、相続財産(遺産)の合計額が、4800万円(=3000万円+600万円×3人)を越えなければ、相続税の申告・納付は不要となりますが、この金額を超える財産をお持ちの場合には、相続税の申告・納付が必要です。
ただし、マイナスの財産(借金など)がある場合控除して計算しますので、例えば、5000万円の財産があるけれども、1000万円の借金があるという場合、相続税の申告・納付は不要となります。
相続税の申告・納付が必要な場合には、原則として税金の専門家(税理士)に依頼するのがよいでしょう。
相続税の申告期限を徒過したり、相続税の計算方法を誤って過少に申告してしまったりした場合、延滞税、加算税などを支払わなければならない結果、より多くの相続税の支払が必要となってしまうおそれがあるからです。
注意ポイント
遺産分割協議を進めていて、相続財産の分け方が決まらず、紛争が激化してしまっている場合であっても、相続税の申告・納付は必要となります。
したがって、遺産分割がまとまらない場合、相続の法律の専門家(弁護士)と共に、相続の税金の専門家(税理士)にも、並行して相談する必要があります。
「相続財産を守る会」では、両方の専門家に、同時に相談することができます。
税理士に相続手続きを依頼するメリット
相続手続きを、税金の専門家(税理士)に依頼する方とは、最低でも相続財産が3600万円以上ある方です。相続財産が少ない場合には、税理士に依頼するメリットは少ないです。
とはいえ、相続手続きのあらゆる場面において、「相続税の面で有利になるかどうか」を考慮して判断しなければならないことがほとんどです。遺産分割協議の際にも、相続税を知らなければ有利な分割方法は考えられません。
相続財産が3600万円を越え、相続税の申告・納付が必要となる場合には、早めに税理士に相談しておくことで、少しでも相続税を節税できる有利な相続の準備をすることができます。
注意ポイント
税理士の業務には、個人の所得税・法人税などの所得税を申告する業務と、相続に関する資産税を申告する業務とがあります。
会社などの法人を経営していれば、毎年税務申告が必要となることから、税理士の中でも多くの方は、所得税の申告業務を中心に行っている事務所が多いです。
相続手続きについて、税金の専門家(税理士)に相続税の申告を依頼するときは、相続税の申告・納付の実績を数多く有する税理士事務所に依頼するほうが、幅広い節税アドバイスを受けられる点で大きなメリットがあります。
税理士に相続手続きを依頼する費用
法律の専門家(弁護士)の費用と同様、税理士費用についても、税理士会が出していた旧報酬規程を参考にして、税理士費用を決めている税理士、会計事務所が多くあります。
そこで、まずは、旧税理士会報酬規程についてまとめました。
遺産総額5000万円未満 | 20万円 |
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遺産総額5000万円以上7000万円未満 | 35万円 |
遺産総額7000万円以上1億円未満 | 60万円 |
遺産総額1億円以上3億円未満 | 85万円 |
遺産総額3億円以上5億円未満 | 110万円 |
遺産総額5億円以上7億円未満 | 135万円 |
遺産総額7億円以上10億円未満 | 180万円 |
以降、遺産総額が1億円増すごと | +10万円 |
この表の基準から、共同相続人が1人増えるごとに、10%を加算します。
また、財産の評価が難しい場合(特殊な土地、非上場株式などの相続財産がある場合)などには、基本報酬の100%を基準に、税理士報酬を加算することができるものとされています。
相続問題は、「相続財産を守る会」にお任せください!
いかがでしたでしょうか。
今回は、相続手続きを進めるにあたって、「専門家に相談・依頼したほうがよいケースは、どのような場合でしょうか。」という相続相談に回答するとともに、相談の際のメリット、費用について、相続に強い弁護士が解説しました。
相続手続きの専門家といっても、法律については弁護士、税金については税理士、登記については司法書士と、多くの専門家が関与します。「どの専門家に依頼してよいかわからない。」というご相談も、よくお聞きします。
相続手続きの専門家に、一括でまとめてお任せしたいときは、弁護士・税理士・司法書士といった資格だけで選ぶのではなく、相続の専門家集団に依頼するのが一番です。
「相続財産を守る会」には、相続に強い弁護士のほか、税理士、司法書士が在籍しており、すべての相続問題について、同時に無料相談をお受けできます。