★ 相続の専門家の正しい選び方!

子供に相続させたくないときにすべき対策と6つの方法

多くの方は、できるだけ子供に財産を承継したい親心があるでしょう。しかし、家庭内の事情で「子供に遺産を残したくない」と相談する方もいます。「勘当した」「縁を切った」「子の行方が知れず生死も不明」という家庭もあります。

相続される財産を少なくする方法はあれど、全く財産を与えないようにする方法はありません。一方で「子供に与えるなら友人にもらってほしい」という故人の想いを実現する方法もあります。例外的な遺産分割を試みるケースほど、特に争続になりやすいので注意して対策してください。

今回は「子供に財産を残さない」という観点から、相続に関わる様々なノウハウの活用を解説します。

目次(クリックで移動)

子供に相続させない6つの方法

まず、子供に相続させない方法について、6つ解説します。

なお、子供に相続させないのは、あくまで例外であり、次章の通り、子供の相続権を一方的に奪えないのが原則です。

相続欠格によって相続権を失わせる

相続欠格は、被相続人の死亡後に、相続人としてふさわしくない行為があったとき、被相続人の意思を必要とすることなく相続権を失わせることのできる制度です。相続欠格の要件は、民法に定められており、子供の1人に相続させたくないときに活用することができます。

  • 故意に被相続人や先順位・同順位の相続人を殺害、または殺害しようとして刑を受けた者
  • 被相続人が殺害されたことを知ったうえで、告訴や告発をしなかった者
  • 詐欺や強迫により、被相続人の遺言作成・取り消し・変更を妨げた者
  • 被相続人の遺言を偽装・破棄・変造・隠匿した者

相続欠格があれば、子供には相続させないことができます。

相続放棄の基本について

相続廃除によって相続させない

推定相続人の廃除の制度を利用すれば、ある相続人について、遺留分も含めた全ての遺産を相続させないことが可能です。

この制度は、相続人としてふさわしくない行為を行ったことを理由に、被相続人が生前に家庭裁判所に廃除を請求するか、遺言書に記載することによって相続資格を剥奪できる制度です。相続排除の要件は、次の通りであり、要件に該当するかどうかは、家庭裁判所で判断されます。

  • 被相続人に対する一方的な虐待や重大な侮辱を加えたとき
  • 著しい非行があったとき

相続資格を剥奪するという重大な効果を生むため、これらの行為によって被相続人に精神的、財産的な損害を与える重大な行為があることが必要です。例えば、「犯罪を起こした」というだけでは足りず、被相続人の財産を勝手に処分してしまったなど、被相続人に対する影響の大きさによって判断されます。

なお、子供を相続排除をしても、その子(被相続人の孫)がいるときは代襲相続されます。

親の遺産を減らしてゼロにする

最終手段として、どうしても子供に相続させたくないなら、遺産を減らしてゼロにしてしまう方法もあります。次章以降の遺言や贈与による方法では、どうしても子供の遺留分をなくすことまではできませんが、親の財産が全くなくなれば、遺留分は関係なく、子供は財産を得られません。

無駄遣いしたり財産を捨ててしまったりするのは無意味ですが、早めに対策を始めれば、生前贈与を活用することによって、与えるべき人に財産を与え、遺産を減らすことができます。ただし、生前贈与をする場合には、特別受益に該当して持戻し計算をすべき場合があることに注意して進めてください。

遺言を残す

子供に相続させたくないときには、遺言が活用できます。

遺言を活用する方法の1つ目は、遺贈や死因贈与によって、財産を与えたくない子供以外の人に財産を相続させる旨を遺言することです。ただし、子供は相続順位が高いため、遺留分侵害請求権を行使すれば、一定の財産は取得することができます。

遺言を活用する方法の2つ目は、より直接的に、遺言書に「〇〇に一切相続させない」「〇〇の相続割合をゼロにする」と記載する方法です(相続分の指定)。この方法でも、遺留分を害することはできない点は同じです。

なお、全く相続させたくないわけではなく「ある財産(例えば自宅不動産など)だけは与えたくない」という場合には、遺留分に相当する現金や預金を相続させるように指定しておけば、遺留分侵害にはなりません。この点で、生前によく話し合い、子供側の理解を得ることも大切です。

養子縁組をする

最後に、養子縁組をすることによって、相続人となる人を増やせば、相続させたくない子供の手に渡る遺産を少しでも減らすことができます。「世話になった人に財産をあげたい」「愛情ある親族に相続させたい」といった意思は、その人を養子にして、親子関係を作ることによって解決できます。

実際、相続税対策などの理由で、孫などを養子に迎える人は少なくありません。ただし、この場合、養子を利用した不当な脱税をさせないために、相続税法上は、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までしか、相続税の基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)の計算において算入されません。

子供が相続する権利は奪えないのが原則

家庭環境によっては、子供に相続させたくないという想いを持つ方は、決して少なくありません。親心がある、というのはあくまで基本で、それでは子供が親孝行を必ずするのかといえば、孝行をしない子供もいます。このとき、ないがしろにされた親は、相続させたくないという希望が強くなるでしょう。

しかし、民法には、法定相続人についてのルールが定められており「子」は存命であれば必ず法定相続人となります。その相続分は「配偶者(夫または妻)と共に相続するとき」は相続財産の2分の1、「子のみが相続人のとき」は相続財産の全てです(子供が複数いるときには均等に按分します)。

子供は、特に年齢が若い場合は、被相続人の扶養に入り、生活費を負担してもらっていることが多いため、相続する権利が強く保証されているのです。

ただし、あくまで原則的なルールであり、子供のなかには相続人としてふさわしくない行為をしていたり、親に反抗的だったり、何年も連絡をとっていなかったりすることもあります。そのときにも、親の側から一方的に相続権を奪うことはできませんが、本解説の事前対策によって、取得する財産をできるだけ減らすことはできます。

まとめ

今回は、相続人のなかに、遺産をどうしても与えたくない子供がいるという家庭事情を踏まえ、子供に相続させたくないときにすべきことを解説しました。

遺留分などによって相続する権利を保護される「子」の続柄にある相続人を、相続から外すのはかなり難しいことは確かです。ただ、生前贈与と遺言を組み合わせることで、できるだけ手に渡る財産を減らすことができます。「できるだけもめないように」進めるのがポイントです。

目次(クリックで移動)