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口約束の相続は有効?口約束の遺産をもらう2つの方法【弁護士解説】

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亡くなったご家族が、生前に残した口約束が、相続のとき問題となることがあります。「私が死んだら、一緒に住んでいた家は、妻のために残す」と言われていた人は、遺産分割協議のとき強く主張するでしょう。

一方で、共同相続人にとって、「全ての財産をあなたに譲る」と他の相続人が言われていたと主張するとき、相続で取得できる財産の激減を意味しますから、強硬に反対するに違いありません。

よくある相続相談

  • 相続財産をもらう口約束をしてもらった相続人が、財産を確実に取得する方法はありますか?
  • 口頭による相続の約束は、遺言として有効になりますか?
  • 生前の口約束による相続は、死因贈与契約として有効になりますか?

口約束が全て有効だとすると、遺産分割協議の際に、自分に有利な口約束があったと主張する相続人がたくさん出現するおそれがあり、制限が必要となるでしょう。やはり、遺言書を記載してもらうのが一番です。

そこで今回は、口約束で行われた相続について、口約束を確実に証明できるようにし、遺産分割協議を有利に進めるための方法を、相続に強い弁護士が解説します。

「遺言」の人気解説はこちら!

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2018/11/12

口約束の相続は有効?口約束の遺産をもらう2つの方法【弁護士解説】

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2018/8/8

自筆証書遺言が作成しやすくなりました!【2018年法改正】

「遺言を作ろう。」と考えている方に朗報です。 2018年7月に、相続分野の法律が改正されました。これによって、2019年からは、遺言が、より簡単に残しやすくなります。 というのも、「遺言」とひとことでいっても、「遺言」にはいろいろな形式があり、それぞれの形式ごとに、満たさなければならない要件があります。 「遺言」の法律上認められる要件を欠いてしまうと、せっかく遺言を作ったのに、お亡くなりになった後に「無効」となってしまい、「遺言」を作成した意思が実現できなくなってしまいます。 今回のテーマである「自筆証書 ...

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2019/1/6

複数の遺言書が発見!対応は?どれが優先?【弁護士が解説!】

遺言書とは、お亡くなりになったご家族の、相続財産の分け方についての意向を示す、とても重要な書類です。その効果は絶大で、民法に定められた法定相続分よりも、遺言書に書かれた指定相続分が原則として優先します。 しかし、尊重されるべき重要な書類である遺言書が、複数発見されたとき、どのように対応したらよいでしょうか。どの遺言書にしたがえばよいのでしょうか。優先順位などはあるのでしょうか。特に、全ての遺言書の内容が全く違い、相反するとき混乱することでしょう。 遺言書は、お亡くなりになった方(被相続人)が熟考に熟考を重 ...

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2018/12/22

遺言書を失くしたら?紛失したら?再度作成し直す方法・注意点は?

せっかく作成した遺言書を失くしてしまったら、どうしたらよいのでしょうか。遺言書は重要な書類であり、自分が死んだ後の相続財産の分け方について、自分の意向を反映させるものですから、保管、管理は万全にしなければなりません。 しかし、火災や地震、引っ越しなどの際に遺言書の紛失はどうしても起こってしまう可能性があります。遺言書を失くしてしまったとき、紛失したときの対応は、自筆証書遺言か、公正証書遺言かによっても異なります。 そこで今回は、遺言書を失くしたとき、紛失したときの対応と、再度作成しなおす方法・注意点を、相 ...

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2018/10/18

【弁護士が解説】公正証書遺言の書き方の注意点と4つのメリット

公正証書遺言は、自筆証書遺言、秘密証書遺言といった、その他の遺言の形式に比べて、確実性が高く、偽造、改ざんをされにくい点で、最もお勧めの遺言方法です。 遺言書を作成して遺言を残そうと、弁護士、税理士、司法書士などの相続の専門家に相談にいくと、真っ先に勧められるのが、公正証書遺言の作成であることが多いのではないでしょうか。 公正証書遺言を作成するときには、弁護士などの専門家に依頼する方が多いですが、公正証書遺言についてのポイントを、最低限理解してご依頼いただくのがよいでしょう。 よくある相続相談 公正証書遺 ...

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2018/11/7

自分で遺言書を作成する方法と注意点を、弁護士が解説

遺言書を作成しておくことで、未然に防げる相続トラブルは多くあります。遺言を作成するのに、早すぎるということはありません。 遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種がありますが、今回は、最も簡単に作成でき、自分ひとりで作成できる「自筆証書遺言」を作成する方法と注意点を、相続に強い弁護士が解説します。 よくある相続相談 自分で遺言書を作成する方法を、手順に応じて知りたい。 自分で遺言書を作成しても無効にならないための注意点を知りたい。 遺言がない場合には、相続は法律のルールどおりに行われ、相続 ...

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2019/1/5

親に遺言書を書いてもらう方法・テクニック7つ【弁護士解説】

15歳以上の人は、遺言を残す能力(遺言能力)がありますが、遺言を書くも書かないも遺言者の自由であって、実際には、遺言書を書かずにお亡くなりになる方も大勢います。「遺言自由の原則」があるからです。 しかし、お亡くなりになる方(被相続人)にとっては、「自分の死亡した後のことは、子に任せる」という方もいますが、実際に家族が亡くなったとき残された者の立場では、遺言書がないととても手間がかかったり、「争続」となって丸く収まらないことも少なくありません。 「遺言書の話は気が重い」、「死後の相続のことを生きているうちに ...

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2018/12/19

遺言能力とは?遺言が有効にある場合、無効になる場合の判断基準

遺言能力とは、遺言を有効に行うことができる能力のことをいいます。相続の生前対策で、「遺言を残しておいた方がよい」というアドバイスをよく受けるかと思います。しかし、遺言能力のない状態で残した遺言書は、無効です。 せっかく相続税対策、揉めない遺産分割対策などの目的で残した遺言が無効となってしまわないためにも、遺言能力があるかどうか、の判断基準をしっかり理解してください。特に、認知症にり患してしまった後の遺言書作成には要注意です。 また、相続人の立場でも、不利な遺言が残っているとき、「遺言能力のない状態で作成さ ...

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2018/12/6

遺言書がトラブルの原因となるケースと解決法を、弁護士が解説!

相続の生前対策として「遺言書を書くこと」がよくあげられます。しかし、お亡くなりになったご家族残していた遺言が、かえってトラブルの原因・発端となることもあります。 「遺言書がなくて遺産分割でもめた」という話はよく聞きますが、逆に「遺言があったことでもめた」という相続相談も、弁護士のもとには多く寄せられています。遺産分割でもめると、相続税申告、相続登記などにも影響します。 そこで今回は、遺言書がかえってトラブルの原因となるケースと解決法を、相続に詳しい弁護士が解説します。遺言書は、争い回避の手段ですが、不適切 ...

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2019/2/11

遺言者より先に相続人が死亡した場合の対応は?代襲相続できる?

遺言をのこしてくれたご家族(遺言者)が、「全ての財産を相続させる」と遺言に書いてくれたのに、その遺言者よりも先に、財産をのこされる側の相続人(受遺者)がお亡くなりになってしまった場合、どのように対応すればよいのでしょうか。 受遺者はもはやこの世にいないわけですから、遺言書の通りに相続させることはできません。相続問題において、相続人が先に死んでしまったときにその子が代わりに相続する「代襲相続」がありますが、遺言の際には同様の状況でも「代襲相続」とはなりません。 そこで今回は、例えば祖父が、「長男にすべての財 ...

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2019/2/8

「相続させる旨の遺言」とは?遺贈との違いは?弁護士が詳しく解説!

遺言書においてひんぱんに登場するのが、「不動産は妻に相続させる」、「A銀行の預金は長男に相続させる」といった、「~を相続させる」という言葉です。このような内容の遺言は「相続させる旨の遺言」と呼ばれます。 遺言書において特定の財産を特定の方に与える方法には、「遺贈(いぞう)」もあります。正確には、特定の財産を与える遺贈は、「特定遺贈」と呼びます。 では、「相続させる旨の遺言」と「遺贈」は、どのように違うのでしょうか。遺言書において「相続させる」と書いた場合に、どのような意味があるのでしょうか。 遺言をのこさ ...

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2019/3/5

夫婦で一緒に遺言書を作成するときの注意点と、共同遺言の禁止

相続対策を検討するとき、相続問題は、ある1人の問題ではありません。ご家族全体の問題であるという自覚をもって、家族全員で話し合いをしながら、遺言書の作成など生前対策を進めるのはとても効果的です。 しかし、夫婦で一緒に遺言書を作成しようと考えるときには、注意点があります。それは、「共同遺言」が禁止されているということです。 夫婦の相続財産(遺産)の行方について、将来のことは未定ですので、「原則として配偶者(夫や妻)に残す。しかし、配偶者が死亡している場合には、長男に残す」と遺言したいとき、どのように進めたらよ ...

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2018/7/27

遺言は作り直せる?自筆証書遺言の修正・変更の5つのポイント

あなたは、遺言を作っていますか? 「遺言」は、遺言をのこす人が、ご家族や、お世話になった人などのために、遺言をのこす人の「想い」にそって財産をわたすための、大切な手紙のようなものです。 「遺言」を、書面の形で示したのが「遺言書」ですが、「遺言書」は、自分ひとりで書くもの(「自筆証書遺言」といいます。)でものこすことができます。 私達弁護士が相続についての法律相談を受けて、このような話をすると、「実は仏壇の下に・・・」など語りだす方も少なくありません。 しかし、ご自分ひとりで書く「自筆証書遺言」は、専門家が ...

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2019/2/7

遺言書に書いた財産がなくなった場合の対応は?書き直さないと無効?

相続対策として遺言書を作成している人の中でも、「争続」の大変さを理解している人は、かなり若いうちから遺言を残している人もいます。しかし、生前早くから相続対策をすればするほど、「遺言書に書いた財産がなくなった」「処分してしまった」ということが起こりえます。 遺言書の財産目録に記載をしたからといって、その財産の処分、売却などが禁じられるわけではありませんが、その財産がもはや手元になくなってしまえば、遺言書どおりに遺産分割をすることは困難です。 そこで今回は、遺言書に書いた財産を既に処分してしまったなど、遺言を ...

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2019/1/14

【2019年1月13日施行!】自筆証書遺言の財産目録の改正ルール【完全版】

2018年7月の相続法の改正で、自筆証書遺言の作成ルールが変わります。 この改正は、2019年(平成31年)1月13日に施行されます。施行日に、この記事は修正しました。 遺言書は、のこされる家族などのために、自分の財産の分け方を決めておくための、大切な文書です。せっかく作った遺言書を後から無効とされてしまわないように、正しい作成方法を知っておくことが重要です。 今回は、この自筆証書遺言の作成ルールの変更について、施行日直前ということで詳しい解説を、相続に強い弁護士が解説します。 [toc] そもそも自筆証 ...

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2018/11/26

遺言書の調査方法(調べ方)と検認手続のポイントを弁護士が解説!

「遺言書」が、相続において非常に重要であることは、一般の方でもご理解いただけているのではないでしょうか。遺言が存在する場合には、民法の原則にしたがわない遺産分割を行わなければならないことが多いからです。 しかし、遺言書の存在を、全ての相続人が知っている場合は、むしろ稀かもしれません。 よくある相続相談 相続人の一部の人が、自分に有利な公正証書遺言を書くよう強要した。 相続人に知られず作成された自筆証書遺言が仏壇から発見された。 自筆証書遺言で必要となる検認手続について知りたい。 身近な相続人すら知らなかっ ...

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2018/12/22

遺言執行者とは?2018年の法改正で権限が明確化!

相続財産(遺産)を、大切な家族やお世話になった方にどう分けてもらうかを生前に決めておく方法に、「遺言」の制度があります。遺言の中に、不動産は配偶者(妻や夫)に、預金は子どもに、などと財産の分け方を書いておくのです。 財産の分け方を遺言で決めても、いざ遺言者がお亡くなりになると、財産を遺言書どおりに分けるための手続きが必要です。 遺言に書かれた内容を実現する行為を、「遺言の執行」と呼び、この遺言の執行をする役割を負う人のことを、「遺言執行者」といいます。 2018年(平成30年)7月の相続法の改正で、遺言執 ...

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2018/12/7

遺言を残さないと危険?遺言書を絶対に書いておくべき人とは?

「遺言を書いておいたほうがよいのでしょうか?」という相続相談が、弁護士のもとに多く寄せられています。結論からいうと「遺言を書かないほうがよい」という人はいません。 相続人も相続財産も、相続債務も全くない、という人でない限り、「遺言を書いた方がよい。」というアドバイスを差し上げることとなります。むしろ、「遺言書かないと危険だ」というリスクある方もいます。 今回は、その中でも「絶対に遺言書を書いておいた方がよい(むしろ、遺言を書かないと不利益がある、損をする)」と強くお勧めしたい方について、相続に詳しい弁護士 ...

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2018/12/6

自筆証書遺言と公正証書遺言の比較!結局どちらがいい?弁護士が解説

数ある遺言書の種類のうち、特によく利用されているのが「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類です。この2つの遺言については聞いたことがある方が多いでしょう。他方、秘密証書遺言や緊急時の遺言の利用頻度は非常に低いです。 自筆証書遺言にも公正証書遺言にも、いずれもメリット、デメリットがあると解説されています。メリット、デメリットとして非常に多くの項目を比較していくと、結局どちらを利用したらよいかわからなくお悩みの方も少なくないのではないでしょうか。 そこで今回は、ご状況に合わせて結局自筆証書遺言と公正証書遺 ...

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2019/4/15

公証人に出張してもらい、公正証書遺言を作成する方法は?

遺言書を書こうにも、高齢や病気などが理由で、なかなか外に出ることができないという方がいます。 遺言の中でも「自筆証書遺言」という形式であれば、自分ひとりで、自宅で作成することが可能なのですが、「自筆証書遺言」は、「全文手書きでなければならない」など、有効とするための要件が厳しく設定されており、要件を満たさなければ遺言が無効となってしまいます。 これに対して、公証人につくってもらう「公正証書遺言」の場合には、公証役場まで出向かなければならないことが原則です。 そこで今回は、「遠出は難しいけれど、公正証書遺言 ...

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相続財産を守る会を運営する、弁護士法人浅野総合法律事務所では、相続問題と遺言作成のサポートに注力しています。

[speech_bubble type="std" subtype="L1" icon="asano.jpg" name="弁護士
浅野英之"]

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士の浅野です。

遺産分割協議のとき、口約束のみでは、他の相続人に対して相続権を主張するための証明が不十分となってしまうおそれがあります。口約束を知らない他の相続人にとって、「寝耳に水」なことで、強い反対を受けます。

被相続人に対する十分な貢献を評価され、「相続財産を与える」という口約束を得たら、遺言書死因贈与契約書を作成しましょう。特に、法定相続分のない第三者の場合、これらがないと全く財産を得られないおそれがあります。
[/speech_bubble]

口約束の相続とは?

口約束の相続とは、生前に被相続人が、「私が死んだら、全ての財産をあなたに与える。」といったように、口頭で相続財産の分け方について指示したケースのことをいいます。

口約束の相続といえども、故人の遺志があることは明らかであり、意思表示は有効です。しかし、遺産分割協議になったとき、口約束の相続によって不利益を被る他の相続人が、口約束にしたがった分割方法に反対します。

そのため、口約束しかない場合には、証拠がなければ法定相続人が優先し、口約束で相続しようとした人は財産を得ることができません。法定相続人であれば、法定相続分だけは得られます。

口約束の相続を主張する人が、法定相続人ですらない人(例えば、孫、近所の知人、内縁の妻など)であった場合には、その口約束を証明する証拠(遺言書、死因贈与契約書がなければ、相続財産を一切得られません。

参 考
法定相続人の範囲・順位と割合は、詳しくはこちらをご覧ください。

身近なご家族がお亡くなりになってしまったとき、「誰が財産を相続することができるのだろう。」と不安に思うことでしょう。 遺言・遺書などがのこされていたなど、お亡くなりになったご家族の意思が明らかでない場 ...

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口約束の遺言は有効?無効?

そもそも、お亡くなりになったご家族(被相続人)が、相続財産を相続させる旨の発言を口頭で行っていた事実は、「遺言」として効力があるのでしょうか。

結論からいうと、口頭では遺言とは評価されません。遺言は、相続問題の争いの火種ともなりかねないことから、民法で認められた自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言のいずれも、方式が厳格に定められているからです。

民法に定められた有効要件を満たさないものは、かえって混乱、トラブルの原因となりかねず、遺言とは認められません。遺言は書面で行う必要があるため、口約束の相続は遺言として無効です。

参 考
公正証書遺言の書き方とメリットは、こちらをご覧ください。

公正証書遺言は、自筆証書遺言、秘密証書遺言といった、その他の遺言の形式に比べて、確実性が高く、偽造、改ざんをされにくい点で、最もお勧めの遺言方法です。 遺言書を作成して遺言を残そうと、弁護士、税理士、 ...

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口約束の生前贈与は有効?無効?

遺言書という書面がなければ、口約束の贈与は、「遺言」としての効果がないことをご理解いただけたことでしょう。しかし、生前の口頭での口約束が、全く意味がないかというとそうではありません。

「贈与」は、口頭でも成立するからです。被相続人から、「財産を贈与する」という意思表示があり、相続人から「財産の贈与を受け取る」という意思表示があれば、意思表示の合致があり、贈与が成立します。

贈与の成立には、書面は必ずしも必要ありません。贈与契約書などの書面はあくまでも、贈与があった事実を証明するために必要となるものだからです。

生前に、「相続財産をあげる」という発言が口頭であったとき、それが単なる口約束であったとしても、生前贈与として有効であると評価されるケースがあります。

たとえば・・・

相続人である兄は、お亡くなりになったご家族(被相続人)と生前同居していて、その際に、被相続人の預貯金通帳から、毎月一定額を引き出して使っていました。

預貯金を勝手に使う行為は問題であり、遺産分割協議のときには、勝手に使った分もまた、相続財産の範囲であるとして遺産分割をすべき場合があります。

しかし、贈与契約書などがなく、口頭の口約束に過ぎないとしても、贈与する約束があったとすれば、その預貯金の贈与は、生前贈与として有効です。

生前贈与が有効であった場合であっても、その贈与の理由をよく検討する必要があります。

被相続人の生前に、特別な利益を享受できた相続人には、遺産分割協議の際に「特別受益」が認められ、「持戻し計算」という特殊な計算方法によって具体的な相続分を決める必要があるからです。

参 考
「特別受益」と認められるケースと計算方法は、こちらをご覧ください。

お亡くなりになったご家族から、生前に、学費や住宅の新築、建替えなど、多くの援助をしてもらった相続人と、援助を全くしてもらえなかった相続人との間で、不公平感が生じることがあります。 相続人間の、生前にお ...

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口約束の死因贈与は有効?無効?

口約束による財産を与えるという意思表示(口約束の相続)が、遺言としてはもちろん、生前贈与としては評価できなかった場合であっても、「死因贈与」と評価できる場合があります。

死因贈与とは、死亡を原因として発生する贈与の約束のことをいいます。生前贈与と同様に、死因贈与もまた、死因贈与契約書などの書面がなければ必ず無効となるわけではなく、口頭でも成立する可能性があります。

しかし、口約束による、口頭の死因贈与が、死後の遺産分割協議において有効であると認めてもらうために、次の2つの条件を満たす必要があります。

  • 証人が存在すること
  • 相続人全員が承諾すること

死因贈与の要件①:証人の存在

口約束の相続の約束を、死因贈与として有効なものと認めてもらうためには、単に「亡くなる前にそのように言っていた。」と、相続人が言うだけでは足りません。

相続人は、口約束の死因贈与が認められれば、大きな利益を受けることができるため、嘘をついている可能性もあるからです。

そこで、口約束の死因贈与を有効なものと認めてもらうための有効要件の1つ目は、死因贈与があったことを証明してくれる証人が存在することです。死因贈与を受けたと主張する人以外の証人が必要ということです。

死因贈与を証明する証人とは、被相続人が生前に、死亡を原因として贈与する意思があったことを見聞きし、その旨を証言してくれる人のことをいいます。血縁、親族である必要はなく、友人、知人、近所の人でも足ります。

もっとくわしく!

証人が存在しなくても、証人と同様に死因贈与を証明してくれる客観的証拠(書類)があれば、死因贈与があったことを証明することができます。「死因贈与契約書」といった名称の契約書を締結することが一般的です。

遺言の場合、被相続人の一方的な意思表示であるため、遺言書には、被相続人の署名・押印などがあればよく、相続人の関与は不要です。

これに対して、死因贈与契約書は、被相続人と相続人の、贈与に関する意思表示の合致が必要であるため、死因贈与契約書には、相続人の署名・押印も必要となります。

死因贈与の意思表示を受け、契約書を作成してもらえそうな場合には、いざとなったとき無効と評価されないよう、死因贈与契約書の作成を相続に強い弁護士へご依頼ください。

死因贈与の要件②:相続人全員の承諾

死因贈与が有効となる要件の2つ目は、相続人全員の承諾があることです。相続人の中に、一人でも口約束の相続に反対する人がいれば、その口約束は死因贈与として有効にはなりません。

遺産分割協議と、その後に続く相続財産の名義変更の手続において、他の相続人が協力することが、相続人全員の承諾があったものと評価すべき事情となることがあります。

たとえば・・・

相続財産に不動産(土地・建物)があるとき、遺産分割協議を行った後、その結果に応じて不動産の名義変更手続き(相続登記)を行う必要があります。

不動産の名義変更手続き(相続登記)には、相続人の印鑑証明書などが必要となりますが、死因贈与によって不動産を譲り受けたことを主張する相続人に、印鑑証明書などの必要書類を渡すことが、相続人による承諾があったと評価されます。

口約束の相続で財産を得るための生前対策は?

口約束の相続を、被相続人がお亡くなりになった後で、遺産分割協議において主張し、有効なものと認めてもらうためのハードルがかなり高いことをご理解いただけたのではないでしょうか。

口約束の相続を約束してもらえたとき、これを有効なものとして、被相続人の死亡後にも実現してもらうためには、やはり、生前からの相続対策(生前対策)が非常に重要です。

被相続人が元気なうちであれば、「遺言書を作成する」、「死因贈与契約書を作成する」という2つのいずれかの方法で、口約束の相続を現実的なものにすることができます。

遺言書、死因贈与契約書の作成の基礎知識と、遺言と死因贈与の違い、メリット、デメリットなどについて、相続に強い弁護士がまとめました。

参 考
自分で遺言書を作成する方法と注意点は、こちらをご覧ください。

遺言書を作成しておくことで、未然に防げる相続トラブルは多くあります。遺言を作成するのに、早すぎるということはありません。 遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種がありますが、今回は、 ...

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遺言書による準備

相続人の立場からして、被相続人から「財産を死後に相続してほしい」という意思を受けたら、遺言を書いてもらうようにお願いしましょう。特に、法定相続人以外の場合には、遺言がないと相続財産が得られない可能性が高まります。

日本の民法では、民法に定められた相続割合(法定相続分)より、遺言で定めた相続割合(指定相続分)が優先し、法定相続人は、「遺留分」の分だけ保護されるに過ぎないからです。

法定相続人以外の人に相続財産をあげたい場合には、遺言書が必要です。例えば、次のようなケースです。

たとえば・・・

  • 妻と子がいるが、孫に預貯金を相続させたい。
  • 子がいるが、一緒に家業を経営している弟に事業用不動産と株式を相続させたい。
  • 内縁の妻(事実婚のパートナー)に相続財産を全て渡したい。

遺言によって相続財産を贈与することを、「遺贈」といいます。「遺贈」には、次の2種類があります。

ポイント

  • 特定遺贈
    :特定の相続財産について、特定の人に贈与することを、遺言で定めること
    例:「○○銀行の預貯金を、孫に相続させる。」
  • 包括遺贈
    :相続財産の全部または一部を、割合的に贈与することを、遺言で定めること
    例:「相続財産の3分の1を、弟に相続させる。」

遺言を記載するときは、法律に定められた有効要件を必ず満たし、事後に無効とされないものにする必要があります。遺言がかえってトラブルの元とならないためには、法定相続人に認められた「遺留分」を理解しなければなりません。

法的に有効性を認められる、不備のない遺言書を作成するには、相続に強い弁護士に、「公正証書遺言」の作成をご依頼ください。

参 考
「遺留分」が認められる場合と計算方法は、こちらをご覧ください。

相続のときに、「相続財産(遺産)をどのように分けるか」については、基本的に、被相続人の意向(生前贈与・遺言)が反映されることとなっています。 被相続人の意向は、「遺言」によって示され、遺言が、民法に定 ...

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死因贈与契約書による準備

死因贈与契約書を取り交わしておくことによっても、口頭の相続を証拠化し、実現することができます。

死因贈与契約書は、財産を贈与する人(被相続人)と、財産を受け取る人との、双方の合意によって成立します。口頭でも成立はしますが、書面で取り交わしておかなければ、証人、相続人全員の承諾が必要です。

被相続人がお亡くなりになった後、遺産分割調停、遺産分割審判などで争いになれば、死因贈与を主張する人が、客観的な証拠をもって証明する必要があります。

遺言と死因贈与の違い

遺言死因贈与の大きな違いは、遺言は被相続人による単独の行為であるのに対して、死因贈与は、被相続人と贈与を受ける人との合意によって成立する行為であるという点です。

このことから、遺言と死因贈与には、次のようなメリット・デメリットがあります。

遺言のメリット・デメリット 死因贈与のメリット・デメリット
  • 遺言作成後でも、いつでも撤回できる。
  • 遺言による贈与を、相続人はいつでも放棄できる。
  • 公正証書遺言であれば要件の不備はない。
  • 不動産を承継しても不動産取得税がかからない。
  • 法定相続人以外にも財産を与えることができる。
  • 負担付死因贈与の負担の実行前であれば、いつでも撤回できる。
  • 死因贈与は、両者の合意がない限り放棄できない。
  • 要件が遺言ほど厳格ではない。
  • 不動産の贈与について仮登記することができる。
  • 法定相続人以外にも財産を与えることができる。

遺産分割調停のサポートは、「相続財産を守る会」にお任せください

いかがでしたでしょうか。

今回は、「生前に、相続財産(遺産)を全て与えると約束されていた。」と主張する方の相続相談について、口頭の相続が有効となるかどうか、口頭の相続を実現するための生前対策などについて、相続に強い弁護士が解説しました。

口頭の約束は、法律的には弱い立場に立たされます。証拠がなければ、遺産分割調停、遺産分割審判など、家庭裁判所で権利を実現することは困難です。

口頭の約束を得られた方は、遺言書、死因贈与契約書を作成するといった方法によって、自分の権利を実現することができます。残念ながら準備をしていなかった場合でも、口頭の相続を実現できる場合もあります。

相続財産を守る会では、これまで経験してきた遺産分割調停のサポート経験、実績を武器に、ご依頼者にとってより有利な相続の実現を目指します。

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弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所は、銀座(東京都中央区)にて、相続問題、特に、遺言・節税などの生前対策、相続トラブルの交渉などを強みとして取り扱う法律事務所です。 同オフィス内に、税理士法人浅野総合会計事務所を併設し、相続のご相談について、ワンストップのサービスを提供しております。

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