「相続人が誰か?(誰が相続権を持っているか?)」を考えるとき、現代の家族関係の複雑さが、問題を難しくすることがあります。
近年では、「3人に1人が離婚する」といわれているように、離婚率が非常に高い状況となっています。そのため、離婚にともなって、意図している場合、意図しない場合いずれも、「異母兄弟」が相続人となるケースがあります。
特に、バツイチ同士が、子連れで再婚した、という場合、誰が相続権を持つのか、また、異母兄弟の具体的相続分はいくらなのか、計算が複雑化することも少なくありません。
今回は、異母兄弟の相続権と、相続分の割合について、相続に強い弁護士が解説します。
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そもそも「異母兄弟」とは?
異母兄弟(いぼきょうだい)とは、その名のとおり「母が異なる兄弟」のことをいいます。つまり、父親は同じだけれども、母親が異なる兄弟関係にある親族のことです。
生まれてきた母が違うことから、「腹違い」と俗称することもあります。当然、「父が異なる兄弟」、つまり、「異父兄弟」もあります。
離婚件数の増加に伴い、次のように親族関係が複雑なケースがあります。
ポイント
離婚前に隠し子がいた
前婚でできた子が連れ子となって、後婚で養子縁組をした
バツイチ同士の再婚で互いに連れ子がいるが、養子縁組はしなかった
結婚時に、前もって前婚時の子どもの有無を正直に教えていれば、あらかじめ生前に対策もできますが、異母兄弟がいることを伝えていなかった場合、お亡くなりになり相続が開始してはじめて発覚するという場合もあります。
異母兄弟にも原則として相続権がある
異母兄弟であっても、同じ父親の子どもです。血のつながりがあるので、異母兄弟にも相続権があります。
もっとも、両親がともに同じである兄弟と、異母兄弟とでは、扱いが違う場合があります。
共通の父親が亡くなった場合の相続権
父親が亡くなった場合、異母兄弟は、同じ父親の子ですので、当然に相続権があります。
一方、前妻の子と、後妻の間には、血のつながりも家族関係もないので、後妻が亡くなった場合でも、前妻の子に相続権はありません。前妻の子が亡くなった場合も、後妻に相続権はありません。
後妻の子と、前妻の間の関係も同様に、相続権はありません。
兄弟姉妹が亡くなった場合の相続権
兄弟姉妹が亡くなった場合の、異母兄弟の相続権はどうでしょうか。
「兄弟姉妹」は、もともと、法定相続人としての優先順位が低くなっています。というのも、兄弟姉妹は、その他の法定相続人である配偶者(夫または妻)、子、両親などよりも、お亡くなりになった方(被相続人)との財産的関係が薄い場合が多いからです。
そのため、異母兄弟もまた「兄弟姉妹」として相続権がありますが、兄弟姉妹は、お亡くなりになった方(被相続人)に、法定相続人の第1順位である「子」や、第2順位である「直系尊属(両親・祖父母)」がいないときにはじめて、相続権をもつことができます。
「子」も「直系尊属」もいなければ、被相続人に配偶者がいるかどうかにかかわらず、相続権をもつことになります。
非嫡出子の場合に注意
ただし、異母兄弟であっても、非嫡出子(ひちゃくしゅつし)の場合には、注意が必要です。非嫡出子とは、法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子のことです。
血のつながりがあっても、認知も養子縁組もしなければ、法律上の親子関係がみとめられず、相続権もみとめられません。
また、法律上の親子関係がなければ、血のつながりのある異母兄弟との間でも、法律上の兄弟姉妹とはみとめられず、やはり相続権がみとめられません。
異母兄弟の法定相続分は?
次に、異母兄弟に相続権があるときの、相続分(相続できる割合)について、弁護士が解説します。関連する条文は、民法900条4項です。
民法900条4項ただし書きの定め
民法900条4項は、次のように定めています。
民法900条4項子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
異母兄弟や異父兄弟は、「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹」にあたります。これを「半血」の兄弟姉妹ということもあります。「父母の双方を同じくする兄弟」のことは、「全血」の兄弟姉妹ということがあります。
「半血」(異母兄弟や異父兄弟)か、「全血」かで、法定相続分が変わらないこともあれば、法定相続分がことなることもあります。
異母兄弟でも法定相続分が同じになるケース
異母兄弟の、共通の父親が亡くなった場合、異母兄弟は同じ父親の子ですので、当然に相続権があります。
そして、共通の父親が亡くなり、前妻も後妻もいないとき、2人の異母兄弟の相続分は、同じ割合(2分の1ずつ)となります。
お亡くなりになった方(被相続人)の子として相続する場合には、全血か半血かで、法定相続分にちがいはありません。
平成25年の最高裁判所の判決によって、非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定は、違憲であるとされました。その結果、民法もあらためられ、現在では、嫡出子と非嫡出子とでは、法定相続分にちがいはありません。
異母兄弟で法定相続分が異なるケース
一方、次のような事例では、異母兄弟(半血)か、共通の父母をもつ(全血)かで、相続分の割合がことなります。
たとえば・・・
被相続人の相続財産が2000万円で、相続人が、被相続人と父母を共通にする兄弟姉妹(全血)A・B2名と、異母兄弟(半血)であるC1名であるとします。
この場合、A・Bの法定相続分は同じになりますが、Cの法定相続分は、A・Bの2分の1となります。これは、民法900条4項ただし書きに、「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする」と定められているためです。
したがって、法定相続分は、Aが2/5、Bが2/5、Cが1/5となり、相続できる財産の金額は、Aが800万円、Bが800万円、Cが400万円となります。
相続関係を明確にする!
以上のように、「異母兄弟」でも、法定相続分のちがいのないケースもあれば、法定相続分が異なってくるケースもあります。
「異母兄弟」が子として相続する場合と、兄弟姉妹として相続する場合とで、扱いがかわるのです。
なお、上でも解説しましたが、兄弟姉妹が相続人になるのは、お亡くなりになった方(被相続人)に、子や孫、直系尊属(父母や祖父母)がいない場合にかぎられます。
異母兄弟の相続権や相続分が問題となる場合には、家族関係・相続関係をきちんと整理して確認する必要があります。
相続問題は、「相続財産を守る会」にお任せください!
今回は、「異母兄弟」の相続権や相続分について解説しました。
「異母兄弟」の相続が問題となる場合には、母親がそれぞれ異なることなどから、通常の相続よりも、感情的なもつれが大きくなり、相続で争いとなることが多くなりがちです。
「相続財産を守る会」では、相続関係の整理や、遺産分割手続きなどから、「争続」となった場合のすみやかな解決まで、相続に関する幅広い問題を、専門家が協力しあってサポートしています。
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