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連帯保証人の保証債務を、複数人で相続したとき、どう分割する?

亡くなった方(被相続人)の有する「連帯保証人」という地位は、相続の対象となります。例えば、親が誰かの借金を連帯保証していたとき、相続した子もまた連帯保証人となります。保証人の地位を相続したくないなら、相続放棄するしかありません。

しかし、実際に物が存在する不動産などと異なり、連帯保証人としての地位は、遺産分割をどのようにするのか、イメージしにくいのではないでしょうか。特に「連帯して」保証している場合、分別の利益がなく、債権者から請求されたら、共同保証人がいたとしても全額返済する必要があります。

今回は、連帯保証人の地位を相続した複数の相続人が、その債務をどう分割するか、いくら負担しなければならないかといった法律問題を解説します。

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連帯保証人の保証債務を複数で相続する場合とは

相続の場面では、相続人が複数となることはよくあります。民法の法定相続人の定めからしても、配偶者(夫または妻)がいるときは必ず相続人となり、それと同時に子や孫、親などが、民法に定められた順位にしたがって相続人となります。

このとき、亡くなった方(被相続人)が借金の連帯保証人となっているとき、その地位ないし連帯保証債務は、相続によって承継されます。マイナスの財産(相続債務)なので押し付け合いになることが多く、相続人が複数いると、その行き先が大きな争点となります。

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連帯保証人の保証債務の相続割合について

次に、連帯保証人の保証債務の相続割合について、どのように分けられるかを解説します。

遺産分割の対象にならない

相続によって得た財産を、相続人間で分割するのが遺産分割です。複数の相続人がいるときには、遺産分割協議を行うこととなりますが、このとき、遺産のなかにある連帯保証人の保証債務は、法定相続分の割合応じて当然に分割されて相続されることになっています。

そのため、遺産分割協議の対象とはなりません。

例えば、相続人が子3人で、被相続人の保証債務が300万円だったとき、相続開始と同時に、子1人あたり100万円ずつの保証債務を当然に相続します。

負担割合の変更には債権者の同意が必要

連帯保証人の保証債務は、遺産分割協議の対象とならず法定相続分に応じて分割されると解説しましたが、複数の相続人間で、その負担割合を変更したい場合もあるでしょう。

しかし、債権者との関係では、その同意を得ない限り、負担割合を変えることはできません。「1人の相続人に財産を全て承継させ、他の相続人が保証債務を相続する」といった決め方をされると、債権者を害するおそれがあるからです。

相続人の内部で負担を変えるのは可能

連帯保証人としての負担の割合を変えるのに債権者の同意が必要なのは、あくまで「対外的」な負担の話です。これは、債権者の期待と利益を守ることが目的です。

これに対して、相続人同士で、合意によって保証債務の負担割合を変更するのは自由です。つまり「対内的」には、保証債務を引き継いだ相続人間で話し合い、負担割合を変えることができます。

相続放棄した相続人には承継されない

相続放棄した人は、最初から相続人でなかったことになるため、財産も負債も承継することはなく、連帯保証人の保証債務も引き継ぎません。その結果、他の相続人の負担割合は、その分だけ増加することとなります。

相続財産が少なく、放棄した人の分まで負担が増えるのは酷だと考える場合には、自身も相続放棄を検討したほうがよいでしょう。

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遺言書で連帯保証債務を相続する人を選べる?

保証債務は、遺産分割の対象にならないと解説しましたが、遺言書を作成して相続する人を指定するのもまた、債権者の同意がなければできません。前章と同様に、財産を承継しない相続人のみに遺言で指定することを許せば、債権者に不利益となってしまうからです。

相続させる旨の遺言の場合

相続させる旨の遺言は、ある財産を特定の相続人に「相続させる」と記載した遺言のことです。結論として、「連帯保証人としての地位を◯◯に相続させる」といった遺言には、強制力がありません。

相続させる旨の遺言は、遺産分割方法の指定であると考えられています。しかし、前章で解説した通り、被相続人の保証債務は、死亡と同時に当然に分割して相続され、遺産分割の対象にはなりません。したがって、遺産分割方法の指定をしても無効となってしまうのです。

なお、相続人間の合意と同じく、相続人の内部の負担割合を遺言で指定することはできます。

特定遺贈の場合

特定遺贈は、特定の財産を与えるという内容の遺言ですが、プラスの財産にのみ認められた方法なので、保証債務を特定遺贈することはできず、そのような遺言の定めも無効です。なお、故人の意思を尊重し、相続人の対内的な負担割合を変更する参考といった役割を果たすことはあります。

包括遺贈の場合

包括遺贈は、割合を定めて財産を相続させるという内容の遺言です。「相続財産の4分の1を◯◯に相続させる」といった記載であり、この場合はプラスの財産だけでなくマイナスの財産(相続債務)も承継させることができます。

したがって、包括遺贈を受けた場合には、連帯保証債務も相続することになります。ただし、包括遺贈もまた、債権者の利益を害する可能性があるため、債権者としては、包括遺贈を無視して法定相続人に対して保証債務の履行を求めることができます。

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相続分の指定の場合

相続分の指定は、遺言で、相続人の相続分を指定することで、法定相続分を変更する効果があります。この場合も包括遺贈と同じく、相続人間で、指定された割合で保証債務を承継しますが、債権者の同意がない限り、債権者との関係ではその割合を主張できません。

相続分の指定の方法について

保証人の地位を相続しない例外的なケース

以上の通り、連帯保証人の保証債務を、複数の相続人が相続したときの、分割の方法についての原則的なルールは、まとめると次のとおりです。

  • 原則:相続開始と同時に、法定相続分に応じて分割される。
  • 相続人間の合意によって、内部的な負担割合を変更できる。
  • 内部的な負担割合を、債権者に主張するにはその同意が必要となる。
  • 相続放棄した人は、保証債務を承継しない。

しかし、これに対し、同じ「保証」と付くものでも、例外的に相続の対象てゃならない特殊なケースがあります。

  • 身元保証
    身元保証は、雇用された会社に損害を与えた場合の賠償責任を保証する契約ですが、裁判例では相続が否定されています。
  • 信用保証
    信用保証は、継続的取引から生じる不特定の債務を包括的に補償するもので、保証人の負担が思いため、裁判例では相続が否定されています(最高裁昭和37年11月9日判決)。
  • 貸金等根保証
    貸金等根保証は、不特定の債務を保証する「根保証契約」のうち、対象となる債務に貸金等の債務が含まれるもの(保証人が法人であるものを除く)です。保証人は、極度額という上限まで保証債務を負うが、保証人の死亡によって極度額が確定し、相続人はそれ以上の債務は負いません。

まとめ

今回は、連帯保証人となっていた人が亡くなったときに、保証債務がどう扱われるかを解説しました。

連帯保証の場合、遺言や遺産分割協議で特定の相続人のみに相続させたとしても、債権者に対してはその効力を主張できない点に注意が必要です。また、保証債務のなかでも、保証人が亡くなった場合はそれ以上の責任を負わなくてよい場合もあります。プラスの遺産が潤沢ならよいですが、そうでないとき、他人の保証人になってしまった方の遺産分割は、慎重に決めなければなりません。

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