★ 相続の専門家の正しい選び方!

相続問題の解決は弁護士と司法書士のどちらに相談すべき?

相続に関する問題は複雑で、様々な専門家から、各専門分野のアドバイスが必要です。そのなかでも多くの人が迷うのが、弁護士と司法書士のどちらに相談すべきかという点です。いずれも相続の場面では法律問題のアドバイスを提供していることが多いからです。

今回は、それぞれの専門家の持つ役割と、状況に応じた相談先について解説します。適切な専門家を選んで相談することが、相続問題の解決への近道となります。

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相続問題とは

相続は、故人が残した財産や権利義務を承継する行為です。

これには、不動産や預金、株式といった資産だけでなく、借金などの負債も含まれます。そして、相続のプロセスは、遺言がある場合とない場合とで手続きが異なります。遺言がない場合、民法に定められた法定相続分によって遺産が分割されます。

相続には多くの複雑な問題が伴います。一例を挙げると次の通りですが、これに限りません。

  1. 遺産分割の争い
    遺産の分割方法について相続人間で意見が対立することが多く、紛争の原因となります。
  2. 遺言書を巡るトラブル
    遺言書がない場合は法定相続分に基づいて分割されますが、遺言書があるとその内容が優先されます。一方で、遺言に不満ある相続人がいるとトラブルが起きます。
  3. 相続税の問題
    相続税の計算は複雑であり、大きな財産を相続する場合、適切な計画が必要です。
  4. 負債の相続
    故人が残した借金も相続の対象となり、相続人がその負担を負うことが問題となります。
  5. 不動産の取扱い
    遺産に不動産が含まれると、その評価が高いことが多く、相続人間の意見の相違が大きな紛争に発展します。

これらの問題の解決には、法律に関する専門的な知識が必要となり、適切なアドバイスをするためには弁護士や司法書士の専門性を活かす必要があります。

弁護士と司法書士の役割と専門性の違い

相続に悩む方は、弁護士と司法書士の違いを正しく理解してください。このとき、誰に相談するかは、近くかどうかや安さといった要素ではなく、「専門性」の違いで判断をするようにします。そのため、弁護士と司法書士の役割と、専門性の違いを理解してください。

弁護士と司法書士とは役割や業務範囲が異なります。それぞれ、弁護士法、司法書士法という法律で、できる業務の範囲が定められます。取り扱える業務の違いをまとめた表をご覧ください。

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弁護士司法書士
相続人調査
遺言の作成支援
遺産分割協議の代理
調停・審判の代理
相続放棄の代理
遺留分請求の代理140万円以下のみ
相続登記専門性がない可能性

なお、以上の表で業務として扱えても、相続問題を得意としない専門家もいるため、どのようなサポートをしてもらえるかは相談した人によって異なります。

弁護士の役割と専門性

まず、弁護士が扱う相続問題の種類と、その専門性について解説します。弁護士が扱う業務は、例えば次のものがあります。

  1. 遺産分割協議の代理
  2. 調停や審判の遂行
  3. 遺言書の作成や執行
  4. 相続に関する訴訟の代理
    遺留分侵害額請求訴訟など)
  5. 相続放棄の手続き

総じて言えば、弁護士の役割は、相続人間の対立が顕在化し、争続になった際のもので、依頼者にとって有利に進むようサポートしてくれます。そして、争いになった後を見据えて動ける弁護士の特性は、事前の対策にも生きてきます。したがって相続人間の意見に不一致のあるとき、弁護士への相談が適しています。

争いごとについて、司法書士だと訴額140万円以下の事件しか扱えませんが、弁護士は制限なく、全ての紛争や裁判を担当することができます。

その他、弁護士に相談すべき悩みには、次のものがあります。

  1. 相続人間で意見の不一致がある場合
  2. 感情的な対立があり直接交渉のストレスが大きい場合
  3. 遺言書の有効性や内容に疑義がある場合
  4. 法的手続きを必要とする場合
  5. 相続争いが裁判に発展する可能性が高い場合

相続に強い弁護士の選び方について

司法書士の役割と専門性

司法書士は、主に登記に関する専門性を持つ士業です。相続においても、資産が移動した際の登記や、法律文書の作成に関わります。また、争いにならない範囲であれば、遺言書や遺産分割協議書の作成、相続手続きのサポートといった支援を担当することもできます。

以下のような場合は司法書士の専門性を活用することができます

  1. 不動産の相続登記が必要な場合
  2. 争いのない相続の進め方を知りたい場合
  3. 相続手続きについて一般的なアドバイスで解決できる場合

特に、相続登記については、弁護士でも行うことは可能ではありますが、日常的に登記業務をしているわけではないため経験が不足している人が多く、司法書士に任せるべきです。なお、認定司法書士の資格を有する場合には、訴額140万円以下の問題については、簡易裁判所で代理して訴訟を遂行することができます。

相続に強い司法書士の選び方について

相続問題における弁護士と司法書士の選択は?

相続問題において、弁護士と司法書士の選択は、ケースの状況や専門性によって結論が異なります。

紛争をはじめとした複雑な法律問題なら弁護士の支援が適切であり、一方で、登記や文書作成が課題となっているならば司法書士の専門性が役立ちます。重要なのは、それぞれの専門家が提供するサービス内容を理解し、状況に合わせた選択をすることです。

弁護士に相談すべき状況

弁護士に相談すべき状況とは、紛争が生じている場合です。これは、顕在化している場合はもちろん、将来の紛争が潜在的にある場合にも、早めに気づいて相談すべきです。相続における紛争は、遺言の有効性や遺産分割の不公平、相続人間の意見の不一致など多岐にわたります。

弁護士なら、法的な側面から、紛争を早期に解決するためのアドバイスを提供し、実際に解決に向けて進めるサポートもしてくれます。場合によっては交渉だけでなく調停や裁判といった法的手続きを通じて進めるための知識とノウハウを有しています。

司法書士に相談すべき状況

司法書士に相談すべき状況とは、登記が重要な役割を占めるケース、特に、遺産に不動産が含まれる場合です。不動産を相続するとき、その登記の手続きは司法書士の専門分野です。その他、簡易な文書作成であれば、弁護士よりも安価に依頼することが可能です。

ただし、法律問題が複雑か、簡単か、見た目で安易に判断するのは禁物です。

相続問題解決に最適なのはチームによる対応

ここまで弁護士と司法書士の違いを解説しましたが、相続問題では他にも税理士や会計士、不動産鑑定士など、様々な専門家が関わります。そして、問題解決に最も適切なのは、専門家のチームによって対応してもらうことです。

特に、複雑な遺産分割が絡む紛争や、遺産ば大規模となるケースでは、全ての士業の協力関係が必須となります。このような場合、専門知識を結集して対応しなければ、良い解決は望めません。チームを組むことによって、各専門家単独では思いつかない、多面的な視点からのアドバイスが可能です。

相続問題を解決するには、弁護士と司法書士の両方の専門性を活用することが重要です。各専門家の知識と経験を組み合わせることで、相続に関するあらゆる側面に対応し、最適な解決策を見出すことができます。このとき、例えば、弁護士から司法書士を、司法書士から弁護士を紹介してもらう方法が効果的です。

まとめ

今回は、相続問題のうち、特に法律面を担当する専門家である弁護士と司法書士の違いを解説しました。

どちらが優れているか、どちらが安いか、といった誤った観点ではなく、それぞれの状況や悩みに応じて、解決に適した相談先を選ぶようにしてください。そのために、弁護士と司法書士それぞれの専門性と役割を知っておく必要があります。なお、相続問題を多く扱う弁護士と司法書士は緊密な連携関係にあり、チームで対応してくれますから、紹介を依頼するのがよいでしょう。

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