遺産相続についての法律問題を相談するときに、相談先として考えられる「法律の専門家」には、弁護士と司法書士の2つがあります。弁護士も司法書士も「士業」と呼ばれますが、できることや役割が異なります。
今回は、あなたが直面している遺産相続についての法律問題が、法律専門家のうち、弁護士と司法書士のどちらに相談するのが適切かについて、わかりやすく解説していきます。
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相続の法律相談は、得意な専門家に!
遺産相続の法律問題に、人生で何度も直面するという方はむしろ少ないのではないでしょうか。相続トラブルにお困りの方のほとんどが、「相続問題に巻き込まれて悩むのははじめて」という人ばかりです。
「相続の専門家」というときに思いつくプロとして、税理士や不動産会社、銀行などの相談先もありますが、こと「法律」に関する問題を専門的に取り扱う職業は、「弁護士」か「司法書士」のいずれかです。
相続にお悩みを抱えた方で、弁護士と司法書士の違いを正しく理解している方は少ないかもしれません。中には、「司法書士のほうが安いから、司法書士に依頼する」という方もいます。
しかし、弁護士と司法書士の違いは、かかる報酬や費用の違いを越えた、根本的な役割の違いにあります。お悩みの問題ごとに、適切な専門家を選定しなければ、手間と費用を無駄遣いするおそれもあります。
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弁護士と司法書士の、相続に関する業務範囲は?
弁護士と司法書士とは、それぞれ役割と業務範囲が異なり、適切な専門家に依頼すべきであることをご理解いただけたでしょうか。各士業はそれぞれ、弁護士法、司法書士法という法律で、できる業務の範囲が制限されているからです。
例えば、遺産相続に関する法律問題を抱え、解決を依頼したいとき、弁護士と司法書士の担当できる業務分野には、次のような違いがあります。
弁護士 | 司法書士 | |
---|---|---|
相続人の調査 | ○ | ○ |
自筆証書遺言の作成支援 | ○ | ○ |
公正証書遺言の作成支援 | ○ | ○ |
遺産分割協議の代理 | ○ | × |
遺産分割調停の代理 | ○ | × |
遺産分割審判の代理 | ○ | × |
相続放棄手続の代理 | ○ | × |
遺留分減殺請求の代理 | ○ | △(140万円以下に限る) |
相続登記(相続不動産の名義変更) | ○ | ○ |
ただし、以上の表のうちの、「業務範囲として可能であるかどうか」と、「実際に相談した専門家が担当してもらうことができるかどうか」は、別問題です。
というのも、特に弁護士は、その業務範囲がとても広く、相続だけに限られるものではありませんし、相続問題でも、不動産相続から事業承継までとても多岐にわたっています。そのため、「相続登記」などは、弁護士にも法律上依頼することができますが、慣れていない人が多いため司法書士に依頼したほうが無難です。
弁護士だからこそできる遺産相続業務とは?
遺産相続問題が、相続人間でうまくまとまらずトラブルになり、「争続」が長期化したとき、あなたの代わりに、代理人となって問題解決に尽力してくれるのが、「弁護士」です。
司法書士の場合には、弁護士と同様に「法律の専門家」ではあるものの、裁判所で扱える法律問題が、「金額が140万円以下のもの」に限定されています。行政書士にいたっては、書類の代筆しかできず、代理して交渉、訴訟などを行ってもらうことはできません。
書面の代筆をしてもらって代わりに提出してもらうだけでは相続問題が解決できない場合には、あらためて弁護士に頼まなければならず、費用と手間が余分に必要となるおそれがあります。遺産相続問題の、交渉のストレス、負担は想像以上のもので、「代わりに行ってほしい」と弁護士に依頼しなおされる方は多くいます。
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司法書士だからこそできる遺産相続業務とは?
では、全ての相続に関する業務を弁護士に依頼すればよいのかというとそうではありません。弁護士は、司法書士のできる業務をすべて含んでいるかのように見えますが、実際には弁護士と司法書士の違いは、それほど簡単なものではありません。
さきほど解説したとおり、弁護士の業務範囲はとても広く、相続だけを行っているわけではありません。そのため、相続を専門的に取り扱う弁護士であっても、司法書士が得意とする「相続登記」の分野については司法書士に依頼しており、自分で行う知識、経験、ノウハウはない人が多くいます。
これに比べて、司法書士の業務範囲は、登記に関することが大半であり、相続登記だけでなく、不動産(家・土地)の売買、贈与の際など、不動産に関する登記業務を数多く担当している司法書士がほとんどです。登記に関しては、司法書士のほうが専門性が高いといってよいです。
弁護士は「なんでもできる」士業である反面、司法書士が専門特化している登記分野には疎く、「何でも屋」であるからこそニッチな分野には強みがないのです。
相続にともなって発生する、遺言による相続登記、遺産分割協議による相続登記、法定相続分による相続登記などをすすめるにあたって、登記手続きの部分については司法書士に依頼した方が、ミスなく円滑に進みます。
もっとくわしく!
司法書士の中でも、一定の試験に合格し、法務大臣から訴訟を遂行するのに必要な能力があると認められた司法書士のことを「認定司法書士」といいます。
司法書士の中でも「認定司法書士」は、訴額140万円以下の問題について、簡易裁判所で、依頼者を代理して訴訟を遂行することができます。
ただし、争いとなっている金額が140万円を越えることが明らかになったときは、たとえ「認定司法書士」であっても訴訟を担当できないため、改めて弁護士に依頼する必要があります。
「非弁行為」とは?
「非弁行為」とは、弁護士ではない人が、「弁護士でなければできない行為」を行うことをいいます。「弁護士でなければできない行為」とは、弁護士法によって弁護士の業務範囲であると定められた、争いごととなった場合の当事者の代理人となる行為のことをいいます。
司法書士であれば、140万円までの訴額の争いについては、代理人となることができるわけですが、それを越えた争いの代理をすることは「非弁行為」として許されません。このことは、相続業務であっても同様です。
ましてや、司法書士ではなく、行政書士や、無資格の業者などが、既に「争続」となることが明らかになったトラブルについて、当事者である相続人を代理して解決のサポートをすることが「非弁行為」として違法なのは明らかです。
注意ポイント
この「非弁行為」となることを避けるために、司法書士の中には、遺産分割協議を事実上、本人の後方支援として担当したり、本人が訴訟などを行っている体裁にして、その支援で報酬をもらったりといった提案を行う司法書士もいます。
しかし、本当に依頼者にとって「後方支援」が必要であり、有効なサポートであればよいですが、実際には弁護士に依頼して代理して活動してもらうべきなのに、司法書士に依頼したばかりに後方支援で余計な費用がかかるといったことにならないよう、十分注意が必要です。
弁護士と司法書士の、相続業務を相談・依頼する費用の差は?
最後に、弁護士と司法書士の業務範囲、役割の差について解説し、どちらに依頼したらよい場合かを選択する必要があると説明すると、「司法書士のほうが安いのではないか」「弁護士は高いから頼めない」というお考えの方もいます。
しかし、「弁護士のほうが司法書士よりも割高だ」というのは、必ずしもすべての場合にあてはまることではありません。特に、さきほど解説したように司法書士のほうが専門性が高く、司法書士に依頼すべきである登記分野では、司法書士であっても相応の報酬が必要です。
要は、適正な報酬で依頼すべきなのであって、「安いから司法書士を選ぶ」という選び方が、相続に強い専門家の正しい選び方でないことは明らかです。
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相続問題は、「相続財産を守る会」にお任せください!
いかがでしたでしょうか?
今回は、相続問題のうち、特に法律問題を担当する専門家である「弁護士」と「司法書士」の違いについて解説しました。
弁護士と司法書士は、どちらが優れているといった問題ではありませんし、費用の高低で決めるものでもありません。遺産相続問題を円滑に、かつ、有利に解決したいのであれば、より専門性の高い適切な専門家を、状況に応じて選択する必要があります。
「相続財産を守る会」では、それぞれ、相続問題を多く取り扱う弁護士、司法書士がいずれも在籍し、相談内容に応じて、どちらの専門家に依頼するのがより適切か、よりお得かを、積極的にご提案します。