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親の終活で子供がすべきことは?親に終活について切り出す方法も解説

親の終活は、家族にとってセンシティブな問題であり、触れづらいかもしれません。しかし、親の死亡と相続は、将来必ずやってくる、避けては通れない課題です。

では、子供の立場で、親の終活をどうサポートすべきでしょう。本解説では、「親の終活における子供の役割」に焦点をあてます。また、親の終活を開始する前提として、その必要性を親自身に理解してもらい、「相続」に家族で向き合う大切さを親に伝える方法も紹介します。

終活をせずに親の相続が開始してしまうと、親の死後になって多くの手間や労力がかかります。親が高齢化してから準備するのは、余計に労力がかかります。親の終活を通じて、親が人生の最後をどのように過ごしたいかを理解し、支援することは、子どもにとっても重要です。

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親の終活を早めに準備すべき理由

まず、親の終活について、早めに準備すべき理由を詳しく解説します。

親の終活は、いわば「親の人生の終わりに向けた準備」。親本人だけでなく、子供にとっても一大イベントといっても過言ではありません。親が高齢になると、居住している住宅の処分や施設入居、老後資金や年金問題など、悩ましい課題が山積みでしょう。全く準備なく死を迎えれば、遺品整理から相続トラブルに至るまで、問題は更に拡大します。

大切な人が亡くなることを考えるのは誰しも気が重いものです。「親だけ」「子どもだけ」で取り組むのは大変だからこそ、互いに協力し、早い段階から終活を進めるのが望ましいです。

親の認知症や突然の死亡に備える

親の終活を、早いうちに準備すれば、認知症や突然の死亡に備えることができます。

親が高齢だと、認知症を発症したり、突然亡くなったりするおそれがありますが、このとき困るのは子供を含めた家族です。例えば、親の判断能力が低下してもなお、家族が勝手に自宅などの不動産を売却したり、口座から預貯金を引き出したりすることはできません。親が生きているうちに進めるなら成年後見人を選任するのが現実的な対処法ですが、早くても1ヶ月はかかります。

生前に親の意思を把握していなかった場合、葬儀や法要、お墓の扱いについて親の希望を反映できません。子供が「親は仕事を辞めてしばらく経つから家族葬でよいだろう」と考えても、葬儀後に友人や知人が次々尋ねてきて右往左往する、といったトラブルもあります。元気なうちに親の終活を進め、希望を聞いておくことは子供の負担軽減に繋がります。

遺産相続を計画的に進められる

親の終活をしておけば、遺産相続を計画的に進められます。

そもそも、親の遺産がどれだけあるか不明な状態で、周囲の親族が相続の話をしても良い解決は見込めません。親が元気なうちに財産を洗い出し、先行して相続財産調査をすれば、争続となるリスクを軽減できます。

また、遺産の全容を把握できてもなお、相続についての親子の希望をすり合わせるのは相当な時間がかかります。親子の気持ちに隔たりがあるとかなり苦労するでしょう。円満な場合でもなお「相続税対策をしたい」「遺産分割でもめるのを避けたい」といった理由で相続の専門家に相談したり、必要な手続き書類を集めたりする時間を考えると、早めに動くに越したことはありません。

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親の意思を明確にして家族間の争いを避けられる

親の意思を明確にして家族間の争いを避けるという点でも、親の終活は重要な意味があります。

家族の意見が特に割れるのが、医療や介護、終末期の希望、葬儀の方法や墓に関することなど。例えば、親が介護を要する場合、在宅介護か、施設に預けるか、兄弟間で意見が割れるケースは珍しくありません。意見がまとまらないことをきっかけに関係が悪化する家族もいます。

これらの将来の選択はいずれも、金銭面の損得が絡む上、お気持ちにも配慮して進めるべきデリケートな問題です。話し合いは急ぎで進めるものではなく、時間がかかります。親が元気なうちに希望を聞いて準備すれば、実際に介護に直面した際も、家族の意見をスムーズにまとめられます。

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家族の絆を再確認できる

親の終活を通じて、家族の絆を再確認できるのも大きなメリットです。

親の死は、誰しも必ず経験する出来事です。いつかは来る最期を、慌てず受け入れるため、終活を通じて少しずつ心の準備をするのが大切です。親にとっても、終活によって人生の終わりに向けた心の準備ができ、感謝の気持ちを持って精神的な平穏を保てるようになります。

終活を進めていくなかで、昔の思い出話に花が咲くこともあります。押し入れや身の回りを整理していたら懐かしい写真が出てきて、家族の絆が再確認できるといった例があることも、親の終活に子供が協力する魅力の1つです。

親の終活において家族が準備すること

次に、親の終活を子供がサポートするとき、必要な準備について解説します。具体的にどのように進めるか考える際の指針として役立ててください。

なお、終活で一般にやるべきことは、下記の解説も参考になります。

終活のやることリストについて

親の老後の資金計画は家族全体の問題

親の終活では、老後の資金計画を立てる必要があります。親が、既に十分な貯金をしているなら問題ありません。しかし、親だけでは資金の準備が難しいとき、子供がどうサポートしていくかを、親の終活の一貫として考えておく必要があります。

親の終活で、子供が資金面でサポートできるのは、例えば次の点です。

  • 子供が資金提供をし、ある程度高級な老人ホームで余生を過ごしてもらう
  • 親子二世代ローンを組んで住宅を購入する
  • リバースモゲージやリースバックを活用して老後資金を確保する
  • 両親の片方が亡くなって一人暮らしになった親と同居して生活費を負担する
  • 二世帯住宅に建て替える

親の老後の資金計画は、家族全体の問題です。子供としても、家庭全体の収支を考えながら、親の終活をサポートすべきです。

必要な老後資金は、親の健康状態やライフスタイルでも異なりますが、一例として、夫婦2人で4,300万円程度を目安とします。老後資金の目安は、次の解説で詳しく試算しています。

老後資金の目安と計算方法について

断捨離や生前整理を親子で行う

断捨離や生前整理を親子で進めるのも、親の終活において重要なプロセスです。

生前整理では、必要なものと不要品を分け、財産の目録を作る手順で進めます。親子で協力して行う場合は特に、思い出の品などの扱いを話し合う重要な機会にすることができます。意外と頭と体力を使う作業でもあるので、子供の立場では力仕事を中心に手伝うようにしましょう。早いうちから進めておくことで、その後の遺言書の作成もスムーズになります。

なお、親が持ち物を捨てるのに抵抗を覚えると、断捨離や生前整理はうまく進みません。しかし、頭ごなしに捨てるよう指示するのでは、親子の対立を生んでしまいます。「迷うなら一度取っておこう」などと理解を示し、少し時間をおいて見直すくらいの距離感が大切です。

遺言書やエンディングノートで親の意思を示してもらう

親の終活の最終段階が、遺言書やエンディングノートの作成です。親の意思を示してもらう手段として、終活でも重要な役割を果たします。その作成過程において、終活や相続の方針について頭を整理するのにも役立つので、親子で取り組むのがおすすめです。

法的な要件のある遺言書と違い、エンディングノートは基本的にどのような事項を書いてもよいものです。子供の立場で知っておきたいことは、積極的に盛り込むよう親に働きかけましょう。

例えば、エンディングノートに次の項目を記載する例がありますが、これに限りません。

  • 親自身の基本情報
  • 遺言書の有無
  • 財産や資産の詳細
  • 死後のペットの扱い
  • 家族や友人への感謝
  • 葬儀やお墓、埋葬についての希望
  • 医療や介護の希望
  • 親族・友人・知人の連絡先
  • ローンや定期購入サービスの情報
  • パソコンやスマホのID・パスワード

金融機関やNPO法人が、エンディングノートに関するセミナーや作成会を開催していることもあるので、親と子供で一緒に参加してみるのも良い方法です。

遺言書の書き方について

親の終活を子供がサポートするために必要なこと

次に、親の終活を子供がサポートするうえで、必要なことを解説します。親が、終活をする気持ちになったとき、子供がどのような点でサポートをしたらよいかの参考にしてください。

親の意思を正確に理解する

親の終活を子供が手伝うなら、親の意思を正確に理解するのが重要です。子供の希望を押し付け、主導的に進めないでください。親の遺言書やエンディングノートの作成を手助けするくらいはよいですが、親の意思は自らきちんと決めてもらうべきです。

子供の役割は、示された親の希望を実現することにあり、親の意思をコントロールしてはいけません。特に、相続人となる子が複数いるとき、親の終活に積極的に関わりすぎると、他の共同相続人から不公平感が生じ、相続トラブルのもととなります。

子供の思いを親にしっかり伝える

親の終活において、親の気持ちは尊重されるべきですが、子供も思ったことを伝えるのは構いません。むしろ、希望があるならしっかりと親に伝え、考えてもらう必要があります。

例えば、医療や介護、葬式や墓といった項目は、親の気持ちだけでなく、子供の感情や、この先の資金繰りにも関わってきます。子供としても、その墓に自分も入る可能性がありますし、まして、今親と子が一緒に済んでいる家の処分やリフォームといった話題は、子供の生活に直結します。

相続の必要な知識を整理して伝える

相続に必要な知識を子供が整理し、親に伝えるのも重要です。終活において知っておくべき相続の知識は、法律や税金、登記など多岐にわたります。複雑で難解なものも多く、高齢者には理解しづらいおそれもあります。子供が理解したうえで分かりやすく整理して説明すれば親も安心するでしょう。

自分ひとりでは対応の難しいときは、弁護士や税理士などの専門家と、親子そろって面談したり、子供がセミナーやワークショップに参加して親に教えたりするのもおすすめです。すべきことは多く、いきなり全て話しても親の理解が追いつかない可能性があります。親の理解度に合わせ、納得感をもって進めるためには時間的な余裕も必要です。

相続の解説について

終活における親子のコミュニケーションの注意点

次に、終活における親子のコミュニケーションの注意点を解説します。

終活は親だけでなく、家族の人生に大きく関わります。そうである以上、子供の立場でも、無責任な態度は好ましくありません。親が亡くなれば、次は自分の相続の順番が回ってきます。親の終活にも真剣に取り組まなければ、後世に負担を先送りしてしまいます。

親に終活の必要性を優しく説明する

親に終活の必要性を示し、どのように準備を進めるべきか、優しく説明しましょう。

終活は、相続や死との関連も深く、伝え方を誤ると親の気分を害してしまいます。「終活」や「相続」といった言葉に嫌悪感を抱かせてしまわないよう、言葉使いやタイミングに配慮した伝え方をすべきです。親が乗り気でなかったり、子供と異なる意見を持っていたりしても、感情的に衝突するのは避けなければなりません。

例えば、身近な人や芸能人の例を出して「うちはどうしたらいい?」と親に聞く方法があります。子供が先に終活に取り組んでいると伝えれば、より身近に感じてもらえるでしょう。相続法の改正など、時事ニュースを引き合いに出して必要性を説明するのも有効です。

また、親の年齢や健康状態に応じて説明を変えるのもよいでしょう。親が若いうちなら「まだ先の話だけど」と事前に伝えたり、逆に高齢なら「いざというときに慌てると大変だから」など、親の状況に応じた終活の切り出し方を工夫してください。

家族全員でサポート体制を整える

親の終活に取り組むとき、家族全員で役割を決めて分担し、サポート体制を整えましょう。一人の子供だけが親の終活に密接に関わり、他の子が無関心といった家族は、将来いずれの立場からも不公平感が生まれて、相続トラブルを引き起こす可能性が高いです。

離れて住んでいる親の場合、定期的なフォローや進捗確認は、子供の役割です。終活に関する記事を読んだりセミナーに参加したりして情報収集をし、定期的に親に伝えるのがよいでしょう。見守りシステムの導入など、親が遠方にいてもできるサポートは多くあります。

具体的な終活の進め方を提案する

終活の進め方は「具体的に」提案しましょう。

親と終活に取り組むとき、子供が全体像を把握しておきながら、親がすぐに取り組みやすいよう、目先のステップを伝えて着手しやすくした方がよいです。例えば、「自分も手伝うから一緒にクローゼットの整理をしよう」など、具体的にやるべきことを示してサポートするのが効果的です。

また、子供の意見を無理に押し付けるのではなく、親の意向を積極的に取り入れ、お互いの理解を噛めるようにします。親と子供だけで話し合いがまとまりそうにないなら、弁護士など、中立の立場にある第三者に相談して、必要なことを指示してもらうのもおすすめです。

相続に強い弁護士の選び方について

親に終活の話題を自然に切り出す方法

次に、自然に切り出すために意識して欲しいポイントについても解説します。親に終活について伝えるべきとは思っても、いざ親に直接切り出すとなると、その方法に悩む方も多くいます。

適切なタイミングを見極める

親に終活の話を切り出す際は、適切なタイミングを見極める必要があります。唐突に聞かれても、親としては応えようがありません。親の性格や考え方によっては嫌悪感を示す方もいます。そこで、終活の話を切り出すのに適したタイミングの具体例を紹介するので、参考にしてください。

  • 日常会話の中で自然に切り出す
  • 家族の誕生日、子供側の結婚、離婚、退職など特定のイベントをきっかけにする
  • 年末年始やお盆など、家族の集まるタイミングに切り出す
  • 相続法の改正に関するニュース、有名人の訃報などの時事ネタに関連付ける
  • 「もし、万が一のことがあった場合に備えてどうすればよい?」など、親の健康に気遣いを示す形で切り出す
  • 雑誌やWebサイトの終活に関連する記事を見せて話題にする

話しやすい環境を作る

話しやすい環境づくりも重要です。しっかり時間が取れるタイミングと、安心できる環境を作り出せる場所を選んで話すようにしてください。

センシティブな話題である以上、話し合いへの参加者の選定は慎重に行う必要があります。自分や親が、話を聞かれたくないと思うような相手は、同席させない方が無難です。

普段の日常生活で切り出しづらいなら、思い切って旅行に連れ出して雰囲気を変えるといった方法も効果的です。

円滑なコミュニケーション

円滑なコミュニケーションを取るには、導入は柔らかにし、利益に手をのばさないように気をつけてください。間違っても「うちの遺産っていくらぐらいあるの?」など、お金の話から入ってはいけません。このような切り出し方は「がめつい」というイメージを抱かれ、逆効果です。親の終活に取り組むのは子供のためではなく、あくまで親や家族全体のメリットだと伝えなければなりません。

子供が自分の意見を押し付けるのではなく、あくまで聞き手として親の意見や不安を傾聴し、受け入れるのも重要です。「どうしたいのか」という親の希望を、質問を通じて引き出し、共感を示して理解する姿勢を見せましょう。

必要な協力を惜しまないことを伝える

最後に、親から安心して終活の話題を振ってもらうために、子供が必要な協力を惜しまない姿勢を示すことが大切なポイントです。せっかく腹を割って話しても「子供は興味がないのではないか」「手伝ってくれないのではないか」と思われては、それ以上深い話はできなくなってしまいます。

具体的な情報を提供したり、専門家を紹介したりするのは重要ですが、何よりも味方であることを伝え、継続的なサポートを惜しまないように心がけてください。

親の終活についてのよくある質問

最後に、親の終活についてのよくある質問に回答しておきます。

親の終活はいつから始めるべき?

親の終活を始めるタイミングに決まりはないですが、できるだけ早い方が選択肢の幅が広がります。まずは、気軽に始められる親子のなにげない雑談から始め、親の死後のことを少しずつ話し合ってください。

デリケートな問題だからこそ、しっかりと話し合い、重要なことを決めるには期間をかけなければなりません。親だけでも、子どもだけでも、いずれも一人では進められません。「親の終活は、家族の問題」と理解し、真剣に向き合うようにしましょう。

親が元気なうちに確認しておくことは?

親が元気なうちだからこそ、まずは「元気でなくなったらどうしたいか」という希望を確認してください。法律や税金といった難しい話だけでなく、価値観や好き嫌い、気持ちといった簡単な内容から始めるので構いません。

幸いにも長生きしたときも、親の万が一のときの希望を子供が知っていることは、余生を有意義に過ごす役に立ちます。早期に話し合ったことは無駄にはなりません。

まとめ

今回は、親の終活についてどのように向き合うか、子供の立場の方に向けて解説しました。

親が認知症などの病気を発症したあとだとコミュニケーションを取りづらくなるので、できるだけ元気なうちから準備を始めてください。親と離れて暮らしている場合、伝える機会が限られてしまう部分もあるので特に重要です。

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