相続財産(遺産)を守る専門家(弁護士・税理士)が解説!

相続の専門家(弁護士・税理士)が教える相続の相談窓口│相続財産を守る会

遺産分割

持戻し免除の意思表示とは?遺留分との関係を、弁護士が解説!

投稿日:

お亡くなりになった方(被相続人)から生前に特別の利益を受けていた相続人がいる場合、「特別受益の持戻し計算」といって、特別受益分を、相続財産(遺産)に加えて計算することで、不公平を取りのぞくこととなっています。

しかし、この方法によると、被相続人が、ある相続人に対して特に多く財産を相続させるはずであったという意思が実現できなくなります。そこで活躍するのが「持戻し免除の意思表示」です。つまり、「特別受益であっても、持戻し計算はしなくていい」ということです。

「持戻し免除の意思表示」を行った場合、相続分の計算、遺留分の計算が、難しい取り扱いとなる場合があります。そこで今回は、相続に強い弁護士が、持戻し免除の意思表示についての基礎知識と、遺留分の関係を、わかりやすく解説します。

「遺産分割」の人気解説はこちら!

遺産分割

2018/12/18

相続財産(遺産)が少ないのでは?と感じたときのチェックリスト

遺産相続に関するトラブルは、相続財産(遺産)のたくさんある富裕層特有の問題というわけではありません。相続財産(遺産)が少ない方がむしろ、奪い合いが加速し、相続トラブルが激化することもあります。 一方で、遺言や遺産分割協議の結果、「相続財産(遺産)が思ったより少ないのでは?」、「生前にはもっと財産があると聞いていたのだが。」といった不満、疑問を感じる相続人の方もいます。 本当はもらえるはずだった相続財産(遺産)を損していないかどうか、「相続財産(遺産)が少ないのでは?」と感じた方は、今回の解説を参考にして、 ...

ReadMore

遺産分割

2019/1/30

相続における「養子」の全ポイントを弁護士がわかりやすく解説!

相続のとき養子がいることがありますが、養子がいるのといないのとで、相続手続きがどの程度変わるか、ご存じでしょうか。 養子は、「養子縁組」をすることで発生する身分関係ですが、相続と養子の関係について、「養子であっても、実子と同様に取り扱うもの」、「養子であることで特別扱いとなるもの」などがあり、相続の場面に応じて養子の取扱いを変えなければならないことがあります。 今回は、相続と養子の関係する問題点をすべて、相続に強い弁護士が解説します。 「遺産分割」の人気解説はこちら! 目次1 養子縁組をする場合としない場 ...

ReadMore

遺産分割

2019/2/20

持戻し免除の意思表示とは?遺留分との関係を、弁護士が解説!

お亡くなりになった方(被相続人)から生前に特別の利益を受けていた相続人がいる場合、「特別受益の持戻し計算」といって、特別受益分を、相続財産(遺産)に加えて計算することで、不公平を取りのぞくこととなっています。 しかし、この方法によると、被相続人が、ある相続人に対して特に多く財産を相続させるはずであったという意思が実現できなくなります。そこで活躍するのが「持戻し免除の意思表示」です。つまり、「特別受益であっても、持戻し計算はしなくていい」ということです。 「持戻し免除の意思表示」を行った場合、相続分の計算、 ...

ReadMore

遺産分割

2018/12/17

遺産相続を弁護士に相談・依頼する方法と、解決までの流れは?

遺産相続問題を、弁護士に相談・依頼し、解決するまでの流れを、わかりやすく順番に解説します。弁護士に初回相談した後は、弁護士の指示にしたがって進めていけばよいですが、基本的な流れについては理解して、不安を取り除いておきましょう。 ちなみに、遺産相続について弁護士にお願いするとき、法律相談をしても依頼しなければならないわけではなく、依頼もまた中途で解約できます。「解決まですべて任せる」というのでなくても、現在のお困りごと、お悩み事について弁護士に任せることができます。 他方で、弁護士に法律相談し、遺産相続に関 ...

ReadMore

遺産分割

2018/11/10

もめる遺産分割協議8パターン、揉める理由と対処法を弁護士が解説

「遺産分割協議」とは、法定相続人や、遺言によって相続人に指定された人が、相続財産(遺産)をどのように分けるかについて話し合いをする協議のことです。 遺産分割協議は、あくまで話し合いですから、円満に解決し、相続人全員の合意のもと、相続財産(遺産)が分割されることも少なくありません。 しかし、遺産分割協議のうち一部は、大きなもめごととなります。相続財産を分けるとき、遺産分割協議がもめる理由、原因ごとに、その対処法を相続に強い弁護士が解説します。 遺産分割協議のもめ事を未然に防ぐため、そして、いざもめてしまった ...

ReadMore

持戻し免除の意思表示とは?

生前に、お亡くなりになったご家族(被相続人)から、通常の程度を超えて、生前贈与遺贈などによって特別の利益を得た場合、「特別受益」と評価され、相続財産を計算する際に「持戻し計算」が必要です。つまり、特別受益で得た財産額を、相続財産に加えて計算します。

この持戻し計算をすることで、特別受益として得た金額は、「相続財産の前渡し」的に考えることができ、生前贈与を得ていた相続人も、生前贈与を得られなかった相続人も、不公平感なく相続することができるのです。

しかし、お亡くなりになった方(被相続人)の意思表示によって、特別受益分を相続財産(遺産)に持ち戻すことを免除できます。これを「持戻し免除の意思表示」といいます。つまり「相続財産の前渡し」ではなく「あげてしまう趣旨」での生前贈与・遺贈ということです。

いわば、特別受益の制度によって生じた、不公平の是正の副作用のような部分を、さらに意思表示によって回避するのが、この「持戻し免除の意思表示」です。

参 考
特別受益が認められる場合と、計算方法は、こちらをご覧ください。

お亡くなりになったご家族から、生前に、学費や住宅の新築、建替えなど、多くの援助をしてもらった相続人と、援助を全くしてもらえなかった相続人との間で、不公平感が生じることがあります。 相続人間の、生前にお ...

続きを見る

持戻し免除の意思表示の方法は?

持戻し免除の意思表示をする方法については、民法をはじめとした法律にも、特に決まったルールはありません。そのため、書面で行っても、口頭で行っても、メールやLINEなどで行っても、持戻し免除の意思表示は有効です。

方法を問わず、また、明示・黙示いずれの意思表示も有効というわけです。

しかし、「持戻し免除の意思表示があったかどうか」は、「特別受益」という相続の不公平を是正するための考え方が適用されるかどうかに影響する大きな問題であって、「争続」の火種になりやすい重要な事実です。

参 考
相続財産(遺産)をもらいすぎた人への対応は、こちらをご覧ください。

遺言や、お亡くなりになった方の生前の贈与によって、相続財産(遺産)をもらいすぎの人がいるとき、相続人はどのように対応したらよいのでしょうか。 相続財産を守る会には、「特別受益」に関する次のようなご相談 ...

続きを見る

持戻し免除の意思表示を書面に記載する方法

持戻し免除の意思表示の方法に決まりはありませんが、争いの元を増やさないよう、確実に、あとから証明しやすいよう、書面に記載する方法が適切です。

そのため、「持戻し免除の意思表示をしたい」という明確な意思のある被相続人の方や、「持戻し免除の意思表示を受けたい」と考える相続人の方は、書面で意思表示を明確に行ってください。遺言書(自筆証書遺言・公正証書遺言など)に持戻し免除の意思表示を記載することも可能です。

例えば、持戻し免除の意思表示を書面に書くための記載例・書式は、こちらを参考にしてください。

「20XX年X月X日に、長男相続太郎に贈与した不動産(XXX所在)について、持戻しを免除する。」

「持戻しを免除する」という難しい専門用語をつかわなくても、生前贈与をしたことを前提として相続分・相続割合を指定することがわかれば十分ではありますが、念のため、「持戻し免除」という書き方をおぼえてください。

持戻し免除の意思表示を記載した書面は、公正証書遺言にするとか、書面を貸金庫に保管しておくなど、紛失したり、偽造されたりしないよう注意が必要です。

参 考
自分で遺言書を作成する方法と注意点は、こちらをご覧ください。

遺言書を作成しておくことで、未然に防げる相続トラブルは多くあります。遺言を作成するのに、早すぎるということはありません。 遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種がありますが、今回は、 ...

続きを見る

持戻し免除の意思表示の撤回

ひとたび、持戻し免除の意思表示をおこなったとしても、被相続人は、いつでもその意思表示を撤回することができるものとされています。

故人の最後の意思を尊重すべきであることから、一旦は「あげるつもり」で生前贈与・遺贈を行ったとしても、その後の受贈者の態度の変化、生活状況の変化など、さまざまな事情によってその意思・気持ちが変わることも少なくありません。

このことは、遺言を撤回したり、新しい遺言書を作成したりすることが可能であることと同じです。

黙示の持戻し免除の意思表示とは?

持戻し免除の意思表示が、書面などによって明確に証拠化されていなかったとしても、意思表示があれば有効です。意思表示自体を証明できないときに「それでも実際に意思はあったのだ」と主張したいとすると、「黙示」に意思表示をした、と主張することになります。

つまり、「黙示の持戻し免除の意思表示」とは、故人が意思表示を明らかに外部に示してはいないものの、関連する事情などから考えると「実際にはそのような意思であったのだろう」と推察できることをいいます。

たとえば・・・

相続人全員に同額程度の財産を、不公平とならないようそれぞれ生前贈与したケースでは、被相続人は、持戻し免除の意思表示があったのではないかと考えることができますので、「黙示の持戻し免除の意思表示があった」と主張することになります。

しかし、その他の関連事情によっては、「黙示の持戻し免除の意思表示」は認められない場合もありますので、やはり生前に、しっかりと書面化することがおすすめです。

黙示の持戻し免除の意思表示があったと認定できるかどうかは、裁判例などで、次の点を基準に総合的に判断されています。

ポイント

  • 贈与をした経緯
  • 贈与の趣旨
  • 贈与の内容・金額
  • 贈与が行われた動機
  • 被相続人が受贈者から利益を得ていたか
  • 被相続人と受贈者の関係、同居の有無
  • 被相続人と受贈者の職業、経済状態、健康状態

黙示の持戻し免除の意思表示が認められた裁判例

黙示の持戻し免除の意思表示が認められるかどうかはとても難しく、生前贈与遺贈などの特別受益を受けた相続人と、その他の相続人との間の不公平が大きければ大きいほど、話し合い(遺産分割協議)での解決は難しいです。

そのため、黙示の持戻し免除の意思表示があるかどうかは、遺産分割調停・遺産分割審判など、裁判所での争いになるケースが多くあります。ここでは、意思表示があると認められた裁判例を、弁護士が紹介します。

鳥取家裁平成5年3月10日審判

被相続人が生前に行った、次男に対する土地建物の購入資金の生前贈与について、「次男に家を出て行ってもらわなければならない申し訳なさ」が理由であったという事情から、黙示の持戻し免除の意思表示が認められた裁判例

東京高裁平成8年8月26日判決

妻が高齢であること、被相続人の唯一の資産ともいえる不動産持ち分の譲渡であることなどを理由に、黙示の持戻し免除の意思表示を認めた裁判例

東京高裁昭和57年3月16日決定

受贈者が、贈与を受けた財産を基礎に被相続人の生活維持に寄与したことなどを理由に、黙示の持戻し免除の意思表示の存在を認めた裁判例

福岡高裁昭和45年7月31日決定

被相続人が、生前から家業の農家を長男と営んでいたことや、無効となったとはいえ自筆証書遺言に全財産を長男に譲ると記載されていたことから、農地などの不動産の贈与について、黙示の持戻し免除の意思表示を認めた裁判例

参 考
遺産相続に強い弁護士の選び方は、こちらをご覧ください。

いざ遺産相続が起こり、弁護士に相談、依頼することが決まったとしても、一般の方の中には、「知り合いに弁護士がいない。」という方も多いのではないでしょうか。広告などで法律事務所は知っていても、手元の遺産相 ...

続きを見る

持戻し免除の意思表示の具体例

持戻し免除の意思表示があると、生前贈与をされた額は、特別受益として持戻し計算をすることはありません。つまり、相続財産(遺産)に加算しないまま、残りの財産を、相続人間で分割することになります。

たとえば・・・

ある方(被相続人)がお亡くなりになり、相続人は、妻、長男、長女の3名、相続財産は1億円であったとします。このとき、生前に、家業の継承者である長男に対して、事業に利用するため2000万円の生前贈与があったとします。

持戻し計算をする場合
2000万円の生前贈与が特別受益と評価されると、まずはこの分を持戻し、相続財産(遺産)は1億2000万円です。法定相続分は「妻:2分の1、長男4分の1、長女4分の1」ですので、「妻:6000万円、長男3000万円、長女3000万円」となります。

このうち、長男は既に生前贈与(特別受益)として2000万円を得ているので、相続時に得られる財産は「1000万円(3000万円―2000万円)」です。

持戻し免除の意思表示がある場合
2000万円の生前贈与を持ち戻しませんので、1億円の相続財産をさきほどと同様の法定相続割合にしたがって遺産分割すると「妻:5000万円、長男2500万円、長女2500万円」となります。

長男は、生前贈与分もあわせると、被相続人から4500万円を得ていることになります。

持戻し免除の意思表示と、遺留分の関係

持戻し免除の意思表示は、遺留分を害しない範囲においてしか効力を有しないものと、最高裁判例(最高裁平成24年1月26日決定)で判断されています。つまり、持戻し免除の意思表示よりも、遺留分のほうが優先します。

遺留分とは、法定相続人のうち兄弟姉妹以外の人が有する、最低限相続財産を確保できる割合のことをいいます。遺留分を侵害された場合、遺留分減殺請求権を行使して、財産を回復することができます。

特別受益と、持戻し免除の意思表示が、他の相続人の遺留分を侵害しない場合には、その意思表示のとおり、「持戻し計算」をせずに、生前贈与や遺贈をもらった人が得をする結果となりますが、遺留分を侵害する場合には、持戻し免除の意思表示があっても「持戻し計算」をするということです。

このことは、遺留分減殺請求権を行使した場合に、持戻し免除の意思表示が、遺留分を侵害する限度において効力を失うことによってこの結果が実現されることとなっています。

注意ポイント

なお、このような結果を避け、お亡くなりになるご家族の意思を最大限実現したいがあまり、遺言書に「遺留分減殺請求権を行使しないように」と記載する例があります。

しかし、遺留分は、法律によって認められた相続人の権利であって、遺言書にこのように書いても、遺留分に関する権利がなくなるわけではありません。故人の遺志を尊重するかどうかは、相続人の判断に委ねられます。

参 考
遺留分の基礎知識と計算方法は、こちらをご覧ください。

相続の専門用語である「遺留分」の考え方について、弁護士が、わかりやすく解説します。 「遺留分」とは、ご家族がなくなったときに発生する、「相続人が、これだけはもらえる。」という財産の割合のことです。 相 ...

続きを見る

相続問題は、「相続財産を守る会」にお任せください!

いかがでしたでしょうか?

今回は、特別受益という不公平を解消する制度の、更なる例外である、「持戻し免除の意思表示」について、遺留分との関係も踏まえて、相続に強い弁護士が解説しました。

生前贈与や遺贈によって、ある特定の相続人に対して多くの財産を相続させたい、という被相続人の思いは、「持戻し免除の意思表示」を書面など証拠にのこる形で行うことで、一定程度実現できます。

「相続財産を守る会」では、持戻し免除の意思表示を活用し、相続対策のための生前贈与や遺言書作成などについて、お亡くなりになる方の意思に沿った結果となるよう、弁護士が最大限サポートいたします。

ご相談の予約はこちら

相続のご相談は
「相続財産を守る会」
相続にお悩みの方、相続対策の相談をしたい方、当会の専門家にご相談ください。
お問い合わせはこちら
  • この記事を書いた人
  • 最新記事
弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所は、銀座(東京都中央区)にて、相続問題、特に、遺言・節税などの生前対策、相続トラブルの交渉などを強みとして取り扱う法律事務所です。 同オフィス内に、税理士法人浅野総合会計事務所を併設し、相続のご相談について、ワンストップのサービスを提供しております。

-遺産分割
-,

Copyright© 相続の専門家(弁護士・税理士)が教える相続の相談窓口│相続財産を守る会 , 2019 All Rights Reserved.