空き家問題が、ニュースなどでよく話題となっており、特に、少子高齢化とからめて取り沙汰されています。相続のときほど、空き家問題が起こるタイミングは他にありません。
しかし、空き家問題の、何がどのように問題なのかについて、きちんと理解している人は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、相続のときにおこる空き家問題について、どのような問題なのか?どう解決したらよいのか?という疑問について、相続に詳しい弁護士が解説します。
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そもそも空き家の何が問題?
「空き家問題」といっても、そもそも空き家の何が問題なのかを理解して頂かなければ、空き家問題の解決策を考えることは困難です。
高齢化社会の進行によってますます増加する一途をたどる空き家ですが、空き家が増えることによって起こるトラブルについて、弁護士が順に解説していきます。
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管理不備による悪影響
「空き家問題」の1つ目は、空き家の管理不備による悪影響という問題です。
建物は、人が居住して、管理をしなければ、すぐに劣化していきます。その結果、屋根瓦が落ちて来たり、外壁がはがれおちたり、空き家のまま長年放置されつづけていると、建物自体が倒壊してしまうこともあります。
空き家が、ゴミ捨て場のようになってしまうと、不法投棄がおこり、衛生面でも、周囲の環境に悪影響を与える原因となります。
治安の悪化
「空き家問題」の2つ目は、空き家が存在することが治安を悪化させるという問題です。
空き家は、侵入して悪さをしても、文句をいう住人がいません。そのため、不審者のたまり場になったり、違法薬物の受け渡し場所など、悪事の実行場所として活用されてしまっていることもあります。
また、空き家に放火された場合には、発見が遅れて延焼が進み、周囲の住宅に火事の被害を拡大してしまうこともあります。
景観の悪化
「空き家問題」の3つ目は、空き家が、街並みなどの景観に及ぼす悪影響の問題です。
空き家は、誰も居住せず、管理もしていないことから、古くなっても建てなおされずに放置されます。壁にツタがまきついたり、植木がのび放題になっていたりしても、除去する人もいません。
空き家を放置することによって、その周囲の景観はいちじるしく害されます。空き家そのものの価値はもちろんのこと、空き家に隣接する不動産(家・土地)の価値も低下することがあります。
土地活用の非効率さ
「空き家問題」の最後は、空き家をそのまま放置しておくと、土地活用の効率が悪くなるという問題です。
空き家が建っているということは、その土地の活用は全くなされていない状態ということです。本来であれば、その土地に住まないとしても、マンションを立てたり、駐車場にしたりなど、さまざまな土地活用を考えることができたはずです。
限られた土地が十分に活用されないこともまた、空き家の非常に重要な問題点です。
相続で発生する空き家問題とは?
では、空き家問題がこれほど取り沙汰されているにもかかわらず、なぜ空き家問題が派生し続けるのでしょうか。
空き家問題が増加し続けている背景には、高齢化社会の進行があります。
高齢化が進行したことにより、高齢者の1人暮らし(いわゆる「独居老人」)が増えます。そして、少子化が進行したことにより、その高齢者の自宅を相続する受け手もまた減少しています。
その結果、独居の高齢者がお亡くなりになっても、相続人である子どもは既に自宅をかまえており、相当いい立地の場所にない限りマンションなどを建てて活用することも困難となり、その結果、空き家のまま放置されることになります。
解体して更地にすればよいのですが、解体費がかかるため、そのまま空き家として放置してしまいやすいことも問題です。空き家を取り壊して更地にしたとしても、立地的な価値が高くない限り、適正価格ですぐに売却できるわけではありません。
空き家対策特別措置法とは?
2015年(平成23年)、空き家問題を解決するための法律がつくられました。それが、「空家対策の推進に関する特別措置法」(空家対策特別措置法)です。
この法律によって、防災、衛星、景観などに悪影響のある、適切な管理の行われていない空き家は、「特定空家等」とされ、特定空き家等に当たる場合には、行政による助言、指導、勧告、命令などを行うことができることとされました。
更には、行政代執行の方法によって、空き家を強制的に撤去することも可能とされました。
そのため、「空き家として放置しておいたほうが費用がかからない」というメリットをなくし、空き家として放置しておくことによって解体費などの費用が嵩んだり、行政によるペナルティを受けるリスクが発生するようになりました。
空家対策特別措置法では、空き家の要件について、次のように定めています。
空家対策特別措置法2条1項『「空家等」とは、、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。』
空家対策特別措置法2条2項『「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。』
空き家を相続する人は、どう対応したらよい?
ここまでお読みいただければわかるとおり、次のような方は、今後、空き家を相続する可能性が高いといえます。
たとえば・・・
- 両親が高齢で、既に自分は独立して家庭を築いている
- 両親の自宅以外に、自分の自宅を所有している
- 両親の自宅が、自分の自宅から遠方にある
- 両親が死亡した後、その自宅に居住する予定がない
- 両親の自宅が、立地的に活用方法が少ない
これらの条件にあてはまり、空き家を相続する可能性の高い方が事前にできることは、空き家の活用方法について、被相続人の生前からよく考え、話し合っておくことです。
空き家を活用する方法ごとに、空き家問題への対応策について紹介していきます。
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空き家を売る方法
空き家を、将来的に利用する可能性がまったくない場合には、空き家を売却する方法によって空き家問題を解決することを検討してください。
空き家の売却を考える相続人の方は、まずは相続不動産を取り扱っている不動産会社に相談してください。
空き家の場合、その家の価値や土地の立地によって、そのまま売却したほうがよいのか、それとも、空き家をリフォームして売却したほうがよいのか、解体して更地にすべきなのか、最も価値が高く、売却しやすい方法を、専門家とともに検討すべきだからです。
空き家を貸す方法
当面の間は、空き家を自分で利用する可能性はないけれども、空き家を売却してしまうのはもったいない、という場合、自分が使うときが来るまで、空き家を人に貸しておく方法があります。
ただし、この方法が使えるのは、空き家に賃貸需要がある場合です。空き家が既に老朽化し、人の住める状態でないようなケースでは、空き家を貸す方法によって解決しようとすると、リフォーム費用をかけなければなりません。
空き家を維持管理する方法
空き家を、将来は自分で使う可能性があるという場合、売ることはできませんし、貸す方法をとった場合に借主をすぐに追い出すことは困難な場合もあります。
そのため、将来、空き家を活用する機会がきそうな方は、空き家のまましばらくは維持管理して、将来の必要に備える、という方法もあります。
この場合には、空き家が、冒頭で紹介したような防災、衛生、治安などへの悪影響のもととならないよう、定期的な見回りとメンテナンスが必須です。
空き家を解体する方法
最後に、空き家が、相続した時点ですでに周囲への悪影響があるようなケースでは、空き家を解体する方法を考えておかなければなりません。
空き家を解体する方法によると、解体費用がかかりますが、そのまま放置していた場合、空き家が他人に迷惑をかけたことから、空き家の所有者が管理責任をとわれ、損害賠償を請求される危険もあります。
「争続」が空き家を生まないために・・・
空き家問題が起こりそうな場合には、ますます相続の生前対策が重要となります。
両親の自宅を承継したい人が、相続人の中にいない場合には、ご両親の存命中に、自宅を売却したり、有効活用を考えたりする方が有益です。
また、遺産分割協議がうまく円満にまとまらずに「争続」に発展し、相続トラブルが長期化している間に、空き家をうまく承継できなくなってしまい放置されるというケースもあります。
そのため、ご両親がお亡くなりになった後にその自宅が空き家になる可能性が高い場合には、生前から、ご自宅をどのように処分、活用するかについて、相続人間での話し合いをしておくべきです。
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相続問題は、「相続財産を守る会」にお任せください!
今回は、少子高齢化の進行で、とくに相続の際に起こりがちな空き家の問題について、空き家問題の原因と解決策を、弁護士が解説しました。
特に、相続人の間で、ご両親の自宅を相続する人が決まっていないなど、空き家を相続してしまう可能性の高い方は、事前に早めから、弁護士など専門家のアドバイスを聞いて、対策を進めてください。