★ 相続の専門家の正しい選び方!

空き家の相続問題とは?社会的状況と解決策について解説

空き家は、社会問題化し、ニュースなどでもよく話題になります。昨今の少子高齢化や、地方の空洞化などと絡めた文脈で議論されることが多く、実際に空き家は増え続けています。

相続の場面は、これまで高齢の親が使っていた自宅が不要になり放置されるなど、空き家が発生する可能性の高いタイミングです。しかし、相続人としても空き家をどうしてよいか、対応に困る方もいるのではないでしょうか。空き家問題の深刻さをよく理解し、解決策を講じなければなりません。

今回は、空き家の相続問題とその解決策を、社会的な状況も交えて解説します。

目次(クリックで移動)

空き家問題の社会的影響

空き家問題とは、使用されていない家屋が増加し、様々な社会的な課題の遠因となっている状況を指していいます。日本では、人口減少や高齢化の進行、都市部への集中などによって、空き家の数が増え続けています。

この問題は、ただ単に住まない家が増えるという以上に深刻な影響があり、地域社会や経済、環境に深刻な影響をもたらしています。

環境・衛生面の悪影響

空き家は管理がされておらず、人が居住していないことにより劣化していきます。その結果、屋根瓦が落ちたり外壁が剥がれたり、長年放置されると建物が倒壊してしまうこともあります。

また、管理されていないためにゴミ捨て場のようになり、不法投棄の場所として利用されるおそれがあります。荒れ放題の庭は、害虫や野生動物のすみかとなり、周囲の環境に悪影響を与えます。

治安の悪化

空き家が存在することによって治安を悪化させ、地域社会に影響を及ぼす問題もあります。

空き家は、侵入しても文句を言う住人がおらず、不審者のたまり場になったり、違法薬物の受け渡し場所として活用されるなど、犯罪の温床となっています。また、放火された場合に発見が送れ、延焼が進み、周囲の大火事に拡大してしまう例もあります。

不動産価値の下落

空き家の価値が下落するのは当然です。そして、そのまま放置すれば土地活用の効率も悪くなります。本来なら、その土地に住まないとしてもマンションを立てたり周囲の開発に協力したり、駐車場にしたりといった様々な活用方法があるはずです。このままでは、不動産市場における価値を失うのは当然です。

所有者個人の財産が目減りするだけではありません。空き家によって地域の景観が悪化したり、悪臭の被害があったりすると、その周囲の不動産の価値も下がります。

土地相続の完全ガイド

空き家の相続問題の基本

では、空き家問題が悪影響を与えているのに、なぜ空き家は増加し続けるのか、その背景に、高齢化社会の進行と、それに伴う相続問題があります。高齢化の進行により独居老人が増える一方、少子化が進行し、その自宅を相続する受け手が減少しています。その結果、相続のタイミングで、高齢者の生家が空き家になるので。

次に、空き家と相続問題の関係について、解説します。空き家と相続の知識を身につければ、自分が空き家所有者になるのを避け、適切な資産管理ができます。

遺産分割と空き家

遺産分割の場面では、空き家といえど不動産であり、他の資産と同じく扱われます。そのため、遺産分割の対象となり、相続人がその権利を承継します。

ただし、空き家の特性として、利用価値がなく、将来も利用が予定されていないとき、管理ばかりが面倒であり、遺産分割では押し付け合いになります。その結果、空き家の承継先が決まらず、遺産分割協議が合意に達しない事態となるおそれがあります。空き家があることにより、相続問題が対立を生みやすい状態となっているのです。

遺産分割の基本について

相続税と空き家

空き家は、相続税の計算対象にも含まれます。その評価額は、取引価格や路線価などに基づいて算出されますが、空き家であることから、周囲の他の不動産よりも低い評価を受けることが多いです。にもかかわらず、管理は面倒であり、遺産が一定以上あると相続税も払わなければなりません。

したがって、税務面からも、空き家は相続の大きな重荷となってしまいます。

空き家を相続する人がすべき対応3ステップ

両親が高齢であり、一緒に暮らしていないとき、空き家を相続してしまう可能性の高いケースであると考えて、準備しておかなければなりません。親から離れて遠方で暮らし、実家が立地的に活用方法の少ないとき、生前の対策が特に重要です。

空き家を相続する人が検討しておくべき重要な対応を、3ステップで解説します。

遺産分割協議をする

まず、空き家を相続しそうなとき、誰がどのような割合で相続するかを決めるため、遺産分割協議を行います。なお、生前対策が行われており遺言書があるときは、遺言が優先するためそれにしたがって分割します。

現実問題として管理できる人が相続すべきであり、かつ、管理に費用や手間がかかる可能性があるので、単純に財産価値のある不動産として見るのでなく、責任を持つ人に合わせて必要な費用を相続させるといった工夫が必要となります。

遺産分割協議について

相続登記をする

空き家といえど不動産ですから、登記がされています。相続による所有権の移転が決まったら、必ず登記しておかねばならず、空き家だからといって放置してはいけません。

相続登記の手続きについて

相続放棄も検討する

最後に、空き家がどうしても利用価値がなく、負担しかないといった場合、その他の遺産に承継したいものがないならば、相続放棄することも検討してください。放棄をすれば空き家を承継することはありませんが、その他の相続財産や負債も全て失います。

相続放棄は、相続開始があったことを知った時から3ヶ月以内にする必要があるため、余裕を持って行いましょう。

相続放棄の基本について

空き家問題の法的な解決策

空き家の問題は、社会的な課題であり、相続人だけで解決するのは難しいのが現状です。そのため、国、自治体としても、空き家問題の解決に積極的に取り組んでいます。自身の空き家問題が、これらの解決策によって対応可能ではないか、検討してください。

空き家法とは

2015年、空き家問題を解決するための法律、「空き家対策推進に関する特別措置法」(いわゆる「空き家法」が作られました。

同法は、防災や衛生、景観に悪影響のある、適切な管理がされていない空き家を「特定空き家等」とし、行政による助言指導、勧告、命令などをすることができると定めています。更に、行政代執行の方法による空き家の強制撤去も可能となっています。

そのため今後は、空き家を放置しておくと、行政のペナルティを受けるリスクもあります。

地方自治体の空き家対策

多くの自治体、特に地方都市では、増加する空き家は大きな問題となっており、対策が講じられています。これらの対策は、空き家の危険を防止するだけでなく、地域の活性化や経済の円滑化にも資することが目的となっています。

空き家バンク制度を設け、空き家情報を一元化して賃貸や売買のマッチングを行ったり、補助金や助成金を提供して再利用を促したりといったサポートがあります。また、役所などにおける相続相談もまた、空き家問題を解決する一助となっています。

空き家を活用する方法

空き家問題を起こさないためには、空き家を活用する方法を知る必要があります。

不動産の活用方法は、その土地や建物の状況や立地、広さなどによっても変わるため一概には言えませんが、空き家の場合には次の方法を検討してください。

リフォームやリノベーションの可能性を探る

まず、リフォームやリノベーションの可能性を探ることです。建物は古いけれど立地は良い空き家だと、これによって大きく価値を向上させ、生まれ変わることができる場合もあります。その場合、高い賃料で貸したり、高値で売却したりといった選択肢の幅が広がります。

この場合、空き家を自分の手元に維持しておくため、管理はしっかりと行わなければなりません。防災や衛生、治安への悪影響のもととならないよう、定期的な見回りとメンテナンスが必須です。将来住むこととなったとして、迷惑をかけていると近隣の目も良くないでしょう。

貸家にする

当面の間は自分で利用する可能性はない場合、貸家にする方法もあります。ただし、貸家としても需要ある空き家に限られるため、人の住める状態にしてからしか貸せず、リフォーム費用がかさむ可能性もあります。

なお、将来自分で使う際、借り主をすぐ追い出すのは困難な場合があるため、信頼できる親族に貸すなどの方法も検討してください。

相続した土地の活用方法について

空き家を売却する

自身で利用する可能性が全くない場合は、空き家を売却する方法が良いです。まずは、空き家を取り扱える不動産会社に相談することから始めてください。

空き家の場合、その家の価値や土地の立地によって、現状のまま売却するか、リフォームするか、解体して更地にするか、どの選択肢が最も価値が上がりやすいのか、不動産の専門家のアドバイスが重要です。

相続の不動産会社の選び方について

空き家を解体する

最後に、空き家を相続した時点で、既に周囲への悪影響が広がっている場合など、解体する方法も視野に入れておきましょう。この際は解体費用がかかりますが、周囲に迷惑をかけ、所有者として管理責任を問われ、損害賠償を請求されるリスクもあるため、放置はできません。

争続が空き家を生まないために相続対策が重要

空き家問題が起こりそうな場合には、生前対策の重要性が増します。死亡すると空き家になってしまいそうな家がある場合には、居住者の存命中に、自宅を売却したり、有効活用したりすることを考えなければなりません。

また、遺産分割協議がうまくまとまらず争続になると、相続トラブルが長期化し、承継できていない空き家は管理されずに放置されてしまいます。まずは両親が生きているなら、亡くなった後の自宅をどう処分、活用するか、相続人と被相続人がしっかり話し合うことが大切です。

まとめ

今回は、少子高齢化の進行によって、近年特に社会課題となっている空き家問題について、その原因と解決策を解説しました。

特に、相続人の間で、両親の自宅を相続する人が決まっていないなど、空き家を相続してしまう可能性の高い方は、事前に弁護士のアドバイスを聞きながら、相続も含めた対策を進めるべきです。

目次(クリックで移動)