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生命保険の受取人が死亡していたときの対応方法と注意点4つ

相続において、生命保険の死亡保険金が相当額に及ぶことはよくあります。しかし、相続の発生した時点で、受取人として指定された人もまた既に死亡しているケースは、どう対処すべきか判断に迷うのではないでしょうか。互いに生命保険の受取人に指定し合っている夫婦だと、どちらかが先に亡くなり、必ずこの問題が起こります。

保険金は、被保険者の死亡によって払われるため、その時点より少しでも早く受取人が死亡していると、誰に死亡保険金を受け取る権利があるのか、検討しなければなりません。

今回は、生命保険の受取人が死亡していた場合の対応と注意点を、弁護士が解説します。

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「受取人の相続人」が保険金を受け取る

被保険者が亡くなった時点で、生命保険の受取人も既に亡くなっていたという場合には、もはやその人はこの世にいないわけですから、当然ながら生命保険金を受け取ることができません。つまり、死亡した人が権利を有し続けるということはないのです。

このケースでは、既に亡くなった受取人に代わり、「受取人の相続人」が生命保険金を受け取ることができます。その理由は、生命保険を受け取る権利が相続されるからです。つまり、受取人が亡くなった時点で、保険金の請求権が、受取人の相続人に、相続によって移るのです。

したがって、受取人の相続人は、保険会社に対し、保険金の請求をすることができます。このとき、生命保険会社によっても異なりますが、次のような資料を収集しておいてください。

  • 相続関係を証明する資料
    戸籍謄本、住民票など
  • 身分証

各自がそれぞれ、自分の権利を請求することもできますし、代表者が一括して、代表受取人として全員分を請求することも可能です。

相続手続きに必要な戸籍の収集について

受取人の相続人が請求できる保険金の割合は?

前章で、生命保険の受取人が死亡した後は、受取人の相続人が請求できると解説しました。このとき、受取人の相続人が複数いるときには、それぞれどんな割合で請求できるかは、相続に関するルールに従うこととなります。

民法の定める相続人の範囲のことを「法定相続人」と呼びます。民法には、この法定相続人ごとの優先順位と、それぞれが相続できる割合が「法定相続分」として定められています。

スクロールできます
法定相続人法定相続分
配偶者(夫又は妻)と子配偶者 1/2
子 1/2
配偶者と直系血族(父母など)配偶者 2/3
直系血族 1/3
配偶者と兄弟姉妹配偶者 3/4
兄弟姉妹 1/4

しかし、今回解説する「生命保険を受け取る権利」の相続では、法定相続割合によらず、法定相続人の人数に応じて均等に分割して相続されることになっています。つまり、既に死亡した受取人の相続人の構成によらず、それぞれが均等に死亡保険金を受け取ることができるようになります。

法定相続分の割合について

生命保険の受取人の死亡に備えるには?

次に、生命保険の受取人が死亡する場合に備えて行っておくべき対応を解説します。

生命保険は、保険契約の際に受取人に指定したとしても、その後の死亡する順番によっては、望んだ受取人に死亡保険金を渡すのが難しいことがあります。残念ながら「親より先に子が死ぬ」といった不幸もあり得ます。そのため、ライフプランにあわせて生命保険を見直すなど、適切な調整をしなければなりません。

生命保険の受取人を選定する

まず、生命保険の受取人を選定するにあたり、適切な人選が必要です。少なくとも、自分より先に死ぬ可能性のある人を積極的に選ぶのは止め、自分より長生きする可能性の高い人を指定しましょう。例えば、他に候補がいるのに自分の親を受取人にすれば、「自分より先に受取人が死亡した」という事態を招きやすくなってしまいます。

受取人に指定できるのは、「配偶者もしくは2親等以内の血族」などと指定されるのが通例ですが、一定期間の同居などの要件を満たせば内縁の配偶者、事実婚のパートナーを受取人と認めてくれる保険会社もあります。なお、保険金の受取人は、必ずしも法定相続人でなくてもよいです。

生命保険の受取人を複数にする

生命保険の受取人は、複数にすることもできます。受取人が先に死亡すると争いが起こると予想される場合、あえて受取人を複数に分散しておく手もあります。

ただし、生命保険の受取人を複数にする場合、死亡保険金の受取の手続き、必要書類の収集や支払い手続きに手間がかかるおそれがあります。

生命保険の受取人を変更する

生命保険の受取人は、途中で変更することもできます。そのため、自分が生きているうちに受取人が死亡してしまったとき、そのまま放置するのでなく、新しい受取人を選びなおすことができます。なお、受取人の死亡だけでなく、夫婦の離婚や事情の変更、心変わりなどでも、変更届を提出することができます。

新たな受取人の記載された保険証券を発行してもらい、生命保険の受取りに関する遺言を作成していたときは忘れず変更、再作成をしておいてください。

遺言による生命保険の受取人を変更する

遺言によって生命保険の受取人を変更することもできます。

この方法は、現在の受取人に知られないようにして変更したい場合や、受取人変更の手続きをする余裕のない緊急時などに役立ちます(緊急時には、特別形式の遺言を活用することができます)。ただし、遺言による受取人の変更は、死亡後さらに遺言の有効性に関する争いが起こるおそれがあるので、注意して進めなければなりません。

公正証書遺言の書き方と注意点について

生命保険の受取人の相続人には税金がかかる

生命保険の受取人には、その保険金に対して税金がかかります。このことは、受取人が既に死亡しており、その相続人が保険金を受け取ったときにも同様です。課税される税金の種類は、生命保険の契約者、被保険者、受取人がそれぞれ誰かによって、相続税、贈与税、所得税のいずれかとなります。

  • 契約者=被保険者の場合
    → 相続税
  • 契約者≠被保険者、契約者≠受取人の場合
    → 贈与税
  • 契約者≠被保険者、契約者=受取人の場合
    → 所得税(一次所得)

相続税、贈与税、所得税のいずれが課税されるかにより、税金の計算方法が違い、使える節税方法も異なります。そのため、受取人の相続人の立場で保険金を得るときは、どんな税金がかかるか理解しておく必要があります。特に、相続税の課税対象となる場合は、生命保険の非課税限度額(500万円×法定相続人の人数まで非課税)を活用すべきです。

相続税を少しでもやすくする方法について

まとめ

今回は、生命保険の受取人が、被保険者より前に死亡したときの対処法、注意点を解説しました。

生命保険の死亡保険金は、相続財産ではなく、受取人固有の財産です。だからこそ、受取人が先に死亡してしまったときに「誰が保険金を受け取れるのか」は、大きな財産の動く深刻な問題となります。生命保険を活用した相続対策はよく行われますが、かえって争いが激化しないよう、細心の注意が必要です。

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