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相続税の未成年者控除とは?要件や計算方法と申告時の注意点

未成年の相続人がいるとき、相続税の未成年者控除によって、その相続税額を減らすことができます。相続税の計算は複雑であり、多くの要素を考慮に入れる必要がありますが、少しでも安く済ませるための「控除」を見逃してはなりません。本解説では、相続税の未成年者控除について、その内容や要件、計算方法などの知識を解説します。

未成年者が相続人となるとき、未成年者控除や特別代理人の選任など、複雑な問題が多くあるため、相続税の申告には特に注意が必要です。

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相続税の未成年者控除とは

相続税の未成年者控除とは、未成年の相続人が存在するケースにおいて、その未成年者が支払うべき相続税から一定の金額を差し引くことのできる制度です。

たとえ未成年者であっても相続税の支払い義務があります。年齢に関係なく、遺産は公平に分担されるべきであって、その分配を受けたならば税金もまた公平に分担すべきだからです。しかし一方で、未成年の相続人は、成人に達するまでに教育や生活のための多くの費用を必要とします。この点を加味して、未成年者の経済的な負担を軽減し、その成長を支援するために、相続税を一定程度軽減するのが、未成年者控除の趣旨です。

未成年者控除は、遺産額から差し引くのではなく、算出された税額から控除する、いわゆる「税額控除」の制度の1つです(これに対し、相続税の基礎控除は、遺産額から差し引かれます)。そのため、相続税額を減らす効果が非常に大きく、見逃すと損してしまいます。

相続税の未成年者控除が適用される要件

相続税の未成年者控除は、その名の通り「未成年」の「相続人」に適用されますが、対象となる人には一定の条件があります。以下の国税庁のタックスアンサーを参考に、4つのポイントで、対象となる人の要件を解説します。

未成年者控除が受けられるのは次のすべてに当てはまる人です。

(1) ①相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)、または②相続や遺贈により財産を取得したときに日本国内に住所がない人でも次のいずれかに当てはまる人

イ 日本国籍を有しており、かつ、その人が相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがある人

ロ 日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人(被相続人が、外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)

ハ 日本国籍を有していない人(被相続人が、外国人被相続人、非居住被相続人または非居住外国人である場合を除きます。)

(注) 「一時居住者」、「外国人被相続人」、「非居住被相続人」および「非居住外国人」については、コード4138「相続人が外国に居住しているとき」をご覧ください。

(2) 相続や遺贈で財産を取得したときに18歳(注)未満である人

(注) 「18歳」とあるのは、令和4年3月31日以前の相続または遺贈については「20歳」となります。

(3) 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であること。

No.4164 未成年者の税額控除(国税庁タックスアンサー)

相続開始時に満18歳未満(未成年者)であること

まず、相続開始時点で、満18歳未満であることが要件です。

生まれたばかりの子はもちろん、胎児もまた相続との関係では既に生まれたものとして扱うため、未成年者控除の適用を受けることができます。なお、2022年4月1日より、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられた影響を受け、相続開始時点がいつかによって、適用される年齢が異なります。

  • 2022年3月31日以前の相続
    未成年者控除は「相続開始時点で満20歳未満」であることが要件。控除額は「満20歳になるまでの年数×10万円」。
  • 2022年4月1日以降の相続
    未成年者控除は「相続開始時点で満18歳未満」であることが要件。控除額は「満18歳になるまでの年数×10万円」。

相続又は遺贈により財産を取得したこと

未成年者が、相続又は遺贈によって財産を取得したことが要件となります。たとえ法律上の相続人にはなっていても、遺産分割の結果、全く遺産を取得しなかったなら、未成年者控除を利用することはできません。また、未成年者控除が税額控除であるため、未成年者が、相続税を課される程度の財産を相続したことが条件となります。

遺産分割の基本について

法定相続人であること

次に、相続した未成年者が法定相続人であることが、未成年者控除を適用される要件となります。たとえ遺産を受け取ったとしても、それが相続によるものではなく、遺言によるものであった場合には、未成年者控除を活用することができません。

例えば、法定相続人ではない孫が、遺言によって財産を受け取ったとき、たとえ孫が未成年者だったとしても、相続税の未成年者控除は適用されません。これに対し、養子縁組した孫や、相続放棄した相続人(が遺贈によって遺産を取得した場合)は、法定相続人であるという条件を満たすので、未成年者控除の対象となります。

法定相続人の順位と範囲について

相続開始時に日本国内に住所があること等

最後に、相続や遺贈によって財産を取得した時点で、日本国内に住所があることも要件となります。ただし、日本国内に住所がない未成年者でも、日本国籍を有し、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたなど、一定の要件を満たす場合は、未成年者控除を利用できます。

未成年者控除を利用したときの相続税の計算方法

以上の相続税の未成年者控除の要件を満たす場合に、その相続税額がいくらになるのか、未成年者控除を利用したときの相続税の計算方法について解説します。

国税庁のタックスアンサーの解説は、次の通りです。

未成年者控除の額は、その未成年者が満18歳になるまでの年数(※)1年につき10万円で計算した額です。

※ 年数の計算に当たり、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。

(例) 例えば、未成年者の年齢が15歳9か月の場合は、9か月を切り捨て15歳で計算します。この場合、18歳までの年数は3年になります。したがって、未成年者控除額は、10万円×3年で30万円となります。

なお、未成年者控除額が、その未成年者本人の相続税額より大きいため控除額の全額が引き切れないことがあります。この場合は、その引き切れない部分の金額をその未成年者の扶養義務者(注)の相続税額から差し引きます。

また、その未成年者が今回の相続以前の相続においても未成年者控除を受けているときは、控除額が制限されることがあります。

(注) 扶養義務者とは、配偶者、直系血族および兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者をいいます。

No.4164 未成年者の税額控除(国税庁タックスアンサー)

控除がなければ未成年者が納める相続税の額を計算する

まず、控除がなければ未成年者が納める相続税の額を計算します。この額から、未成年者控除を差し引いた額が、実際に納付すべき税額となります。

未成年者の控除額を計算する

未成年者控除の額は、次の計算式で算出します。

  • 未成年者控除の額 = 満18歳になるまでの年数 ×10万円

※ 1年未満の端数は切り上げる。

例えば、現在10歳4ヶ月の子が相続人となったとき、「満18歳になるまでの年数」は7年8ヶ月となり、1年未満の端数を切り上げて8年となります。したがって、この場合の未成年者控除の額は、80万円(=8年×10万円)です。このとき、この未成年者が納めるべき税額が120万円だったなら、実際の相続税の額は40万円(120万円-80万円)です。

余った控除額を扶養義務者に振り分ける

未成年者の相続税額が、控除額を下回るときには、その未成年者に相続税は課されません。また、引ききれずに余った控除額は、その分について未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。

扶養義務者とは、次の人のことです(実際に扶養しているかどうかにはよらず、あくまでも続柄によって決まります)。

  • 配偶者(夫または妻)
  • 直系血族(両親・祖父母や子・孫など)
  • 兄弟姉妹
  • 3親等内の親族のうち一定の者

その未成年者が、以前にも、相続税の未成年者控除を受けていた場合(複数回の未成年者控除の場合)には、今回の相続において利用できる控除額が減額されることがあります。

先程の例で、未成年者の納めるべき税額が40万円で、未成年者控除の額が80万円だったとき、未成年者の相続税は非課税となり、かつ、余った40万円については、扶養義務者の税額から差し引くことができます。

未成年者控除を利用した申告時の注意点

最後に、未成年者控除を利用した場合の、相続税申告の際の注意点を解説します。

相続放棄があったときの対処法

相続放棄をすると、相続人ではなかったことになり、遺産は取得することはなく、負債も承継しません。そのため、相続税を納付することもありません。

ただし、相続放棄したとしても、遺贈によって財産を取得する場合があり、その際は相続税を納付する必要があります。このとき、放棄をしていたとしても法定相続人である限りは、未成年者控除を適用することができます。また、生命保険の死亡保険金は受取人固有の遺産なので、相続放棄をしたとしても受け取ることができます。

相続放棄の手続きについて

婚姻しても未成年なら未成年者控除が適用できる

民法では、未成年が結婚するには父母の同意を要し(民法737条1項)、婚姻した場合には成年に達したものとみなされます(成年擬制、民法753条)。ただし、これはあくまで意思能力に関するルールであり、相続税の未成年者控除は、結婚した後でも適用を受けることができます。

相続税の未成年者控除の目的は、未成年者の負担を減らすことにあり、結婚しているかどうかによってこの目的は影響を受けないからです。

なお、成年が18歳に引き下げられたので、「婚姻しても未成年である」というケースは「経過措置の適用される18歳未満の女性」など、ごく例外的な場合に限られることとなります。

成年年齢が20歳から18歳に引き下げられた(民法改正)

民法が改正され、成年年齢が2022年4月1日より満20歳から満18歳に引き下げられました。これにより「未成年」というのは20歳未満ではなく、18歳未満を指すこととなりました。

したがって、前章にも解説した通り、2022年3月31日以前であれば満20歳未満、2022年4月1日以降なら満18歳未満の子に、未成年者控除が適用されることとなります。また、未成年者控除の額についても、「満20歳になるまでの年数×10万円」から「満18歳になるまでの年数×10万円」に変更され、端的に言えば、未成年者にとって控除される税額が少なくなります。

未成年の相続人がいると特別代理人が必要な可能性がある

未成年の相続人がいる場合、4つの要件をクリアし未成年者控除が適用されるとして、遺産分割についても重要な注意点があります。未成年者は通常、法的な行為を自身で行えず「遺産の分割」という法律行為も親権者が代理してするのが通常ですが、親権者もまた相続人の場合には利益相反が発生します。この状況を回避するために、特別代理人の選任を要するケースがあります。

子供と親が同時に相続人となるのが典型例で、このとき、親は子の代理をできず、特別代理人を選任する必要があります。特別代理人は、共同相続人でなければ誰でもなることができ、一般には相続人でない親族を選ぶことが多いです。

特別代理人は、家庭裁判所に申立をし、選任の指名を受けます。申立ては、未成年相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に、以下の必要書類を提出することによって行います。

特別代理人の指名に必要な書類は下記の通りです。

  • 申立書
  • 未成年相続人の戸籍謄本
  • 申立人の戸籍謄本
  • 特別代理人候補の住民票または戸籍謄本
  • 利益相反の状況を示す資料
    遺産分割協議書の草案など)

あわせて、申立てには800円の収入印紙と連絡用の郵便切手が必要となります。

特別代理人の基本について

まとめ

今回は、未成年者が相続人にいるときに、税額を差し引くことができる、相続税の未成年者控除について解説しました。

相続税の未成年者控除をうまく活用するには、その要件や計算方法をよく理解し、相続税申告のとき、正確に計算する必要があります。

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