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タンス預金も相続される!相続税の節税にはならないので注意

タンス預金はその手軽さから多くの人がこっそりしていますが、相続が絡むと一筋縄ではいかない難しい問題を抱えてしまいます。相続の場面で、タンス預金の存在はしばしば見過ごされがちですが、適切な手続きを経ないと後からトラブルに発展するリスクがあります。

結論として、タンス預金も相続の対象になります。つまり、遺産に含まれます。そして、タンス預金もまた相続税の対象となります。隠しておいたからといって節税にはならず、むしろ相続税の期限を過ぎると延滞税によって納税額が増えてしまいます。

今回は、タンス預金と相続の関係について、トラブル事例を紹介しながら解説します。

目次(クリックで移動)

タンス預金と相続の基本

まず、タンス預金が相続法の分野でどのように扱われるか、基本的な法律知識を解説します。

タンス預金は遺産分割の対象となる

タンス預金は、銀行や証券会社などに預け入れられず、個人が原因で保管している金銭のことです。タンス預金といいますが、金庫や押し入れ、仏壇や冷蔵庫など、保管場所は様々です。

相続法において、タンス預金も他の財産と同じく遺産に含まれます。タンス預金は、銀行預金などとは違って記録に残りづらい性質があるため、適切に管理されないと相続の際に見落とされることがしばしばあります。しかし、法的には預貯金や不動産、株式などと同じように相続人間で分割すべき財産に変わりはありません。

タンス預金を正確に把握するために、発見した相続人は、そのタンス預金の存在と金額を、他の相続人にも公表し、その分け方について話し合いをした上で、その結果を遺産分割協議書に明記し、全相続人が合意の上で署名押印しなければなりません。

遺産分割の基本について

タンス預金は相続税が課税される

タンス預金もまた、相続財産に含まれることから、相続税の課税対象となります。そのため、預貯金や不動産などはもちろんのこと、自宅に保管されている現金も全て集計して、相続税の申告、納付をする必要があります。このとき、タンス預金を隠して、相続税の計算の際に考慮しなければ、脱税となってしまい違法です。

タンス預金は、不動産や預貯金などに比べれば記録に残らないので「隠して通せるのではないか」と甘く見る人も多いです。しかし、実際には、発覚した際には大きなリスクとなるため、決して節税にはならず、ただの脱税に過ぎません。税務署には、税務調査を行う強力な権限があり、不審な点があれば徹底調査しますから、タンス預金を隠し通すのは困難です。

相続税の税務調査について

タンス預金の相続におけるトラブルとその対策

タンス預金の相続に関しては、その隠蔽性から多くのトラブルが生じがちです。トラブルを避けるためには、透明性のある遺産管理が不可欠です。

タンス預金を隠しておけば得する相続人もいるかもしれません。しかし、これによって損する相続人がいる以上、隠せばトラブルになります。タンス預金を巡る相続のトラブルを未然に防止するには、相続人全員で情報を共有し、正確で、公正な分割を目指すべきです。

遺産が散逸するリスク

タンス預金は、銀行口座に記録された資産とは異なり、その存在そのものすら、家族や相続人に知られていないことがあります。このようにタンス預金が認知されないと、正しい遺産分割が行われないリスクがあります。また、発見される前に遺品整理がされてしまい、保管場所ごと捨てられてしまい、遺産が散逸する危険もあります。

このようなことを防ぐために、生前にタンス預金を記録した遺言書を残したり、少なくとも信頼できる人にはその情報を共有したりといった対策を講じるべきです。

不公平な相続が生じる

タンス預金が一部の相続人にのみ知られている場合、その相続人が遺産を不当に多く手に入れる可能性があります。これは他の相続人にとって不公平な結果を招き、家族間の争いの原因となることがあります。全ての相続人が平等に遺産を分けるためには、タンス預金の存在と額を透明にして、公正な遺産分割協議を行う必要があります。

遺産の独り占めについて

相続税の計算を誤る

タンス預金を見過ごすと、相続税の計算を誤ることとなります。タンス預金もまた遺産に含まれ、相続税の課税対象となるからです。

あとから税務調査で指摘されると、過少申告加算税、無申告加算税といった税金が追加で5〜20%課され、更に、隠蔽や偽装など悪質性があると判断されると25〜40%の重加算税を支払わなければならないケースもあります。

税務署は、確定申告や住民税などで故人の所得を把握でき、また、税務調査においては銀行など金融機関の預金額を調べることもできます。生前の収入と比べて預貯金が少なすぎる場合や、不自然に多額の引き出しが多い場合などには、調査が行われ、タンス預金が発覚してしまう危険があります。

タンス預金をスムーズに相続するための対策は?

タンス預金で相続のトラブルを招かないためには、生前の対策が必要です。まず、タンス預金も遺産であり、大きな割合を占める場合には事前に対策しなければならないという意識を強く持つことです。

なお、タンス預金として現金を保有する理由がないならば、預金など、記録に残る形に変えておいた方が無難なのは言うまでもありません。

正確な記録を付ける

タンス預金の相続を円滑に行うためには、まず正確な記録を付けておくことが必須です。少なくとも、次の情報は記録に残し、信頼できる人に共有しておきましょう。

  • タンス預金の額
  • 保管場所
  • (金庫などの場合)パスワードや暗証番号など

タンス預金について記録し、周知することは、いざ相続が発生した際に、関係者が迅速かつ正確に資産を把握する助けとなります。複数の相続人に知らせておけば、一部の相続人が勝手に使ったり、死後に横取りしたりする危険を回避できます。

ただし、タンス預金の記録は、誰にでも共有してよいものではありません。相続人間で共有されることが、かえって争いの火種となるおそれもあります。

遺言書を作成して情報を共有する

遺言書は、相続において非常に重要な役割を果たします。遺言書にタンス預金の詳細を記載しておくことで、その存在を相続人に知らせるとともに、分配の方法について故人の意向を伝えることができます。

遺言書には、タンス預金の額、保管場所、相続人への分配方法についての希望などを明確に書くようにしてください。遺言書は、その種類に応じて法律に定められた形式を守って作成する必要があります。形式不備だと、死後に無効と判断される危険があるため、専門家のサポートを受けるようにしてください。

遺言書の基本について

タンス預金を生前贈与する

タンス預金のまま保有し続け、万が一そのまま死亡してしまったときには、遺産に含まれ、相続税が課されることは本解説の通りです。このとき、相続税が課されてしまうくらいなら、生前贈与の方法によって節税対策をしておくのがお勧めです。

生前贈与なら、受贈者1人あたり年間110万円までは贈与税が非課税となります。どうせタンス預金しておくだけの現金なら、時間をかけて少しずつ贈与をすれば、無税で資産を移転することができます。また、教育資金の特例など、贈与で利用できる非課税についても活用できます。

専門家に相談する

タンス預金の相続は、複雑な問題です。疑問が生じたときは、専門家の助けを求めるのが賢明です。税理士は、相続税や贈与税といった税法の専門的な知識を持ち、タンス預金の適切な申告方法、トラブルの予防策や、もっと合法的な節税についてアドバイスを提供できます。

税理士のアドバイスによって、法律に則った形で、スムーズに相続するサポートを受けることができます。また、揉めない遺産分割や、そのための遺言書の作成には、弁護士への相談が有益です。

相続問題の専門家について

タンス預金のメリット・デメリット

タンス預金そのものには、メリットもデメリットもあります。相続においてその扱いに注意する必要があるものの、タンス預金自体を否定する趣旨ではありません。

【タンス預金のメリット】

  • 即時アクセスが可能
  • 銀行のシステム障害や破綻の影響を受けない
  • プライバシーが保持される

【タンス預金のデメリット】

  • 紛失や盗難、火災のリスクがある
  • 金利収入がない
  • インフレが起こると価値が目減りする

相続のことを考えても、家族が死亡した直後は、葬儀費用や香典返し、医療費や介護費の清算など、多くの金銭が必要となり、現金が手元にあるのは安心です。上記のデメリットを少しでも軽減するには、頑丈な金庫を使用し、一箇所ではなく分散して保管するといったリスク管理が有効です。

また、タンス預金が見過ごされないよう、信頼できる人との間では、情報共有しておくことも大切です。

まとめ

今回は、タンス預金の相続について、相続税と遺産分割の両面から解説しました。

タンス預金は、相続財産となり、遺産分割が必要であって、かつ、相続税の課税対象となり、申告が必要です。隠しておいても、いずれは税務署に発覚し、かえって税額がかさむおそれもあります。タンス預金の相続における適切な対応は、トラブルを避け、公平な遺産分割を実現するために不可欠です。

生前に正確な記録を作成し、情報を共有することが大切で、遺言書を作成しておくのが最善の対策となります。隠しておいても、それは違法な脱税に過ぎず、不公平な相続につながれば誰も幸せにはなりません。タンス預金の相続を公正に進めるには、透明性を確保すべきで、家族間の信頼を維持することで将来の紛争を防ぐことができます。

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