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経営者が作成すべき遺言書のポイント6つ

会社経営していて、引退時期が近づいたのを感じると、いよいよ相続について意識しなければなりません。特に、創業から一環して100%の株式を保有する、いわゆる「オーナー社長」の場合、生前の対策をしっかりしなければ、死後、企業の経営を維持できなくなる危険があります。

オーナー企業では、株式が家族の所有となっていたり、個人資産を事業用に供していたりして、相続によって意図しない人に財産が渡るとトラブルになりがちです。株式は、会社の所有権ないし経営権そのものであり、相続の対象となります。対策をしなければ、法定相続分にしたがって分割されるのが原則ですが、手渡したくない相続人がいることも多いでしょう。

今回は、経営者が作成しておくべき遺言のポイントについて解説します。

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経営者が遺言を残すべき理由

まず、経営者が、相続問題に備えて、遺言を残すべき理由を解説します。

会社の乗っ取りを防ぐ必要がある

経営者であり、かつ、会社の株式を所有している場合には、その株式には財産的価値があるため相続の対象となります。その結果、遺産分割が行われ、株式が分割されてしまうと、意図しない親族に会社を乗っ取られる危険があります。

株式は、会社の所有権ないし経営権を表します。株式を過半数持っていれば、企業の経営に関する重要事項を1人で決めてしまうことができます。このような点から、経営者は、相続問題に備えて遺言書を作成しておく必要性が非常に高いです。

株式には重大な価値があり、少なくとも企業内に残る資産分の価値は下回りません。事業二将来性があれば、それ以上の評価をされることもあります。

株式の分散を回避する必要がある

株式には大きな財産的価値があるため、遺産分割においても相続人の取り合いになることは少なくありません。遺産に株式が含まれている相続では、遺言によって相続割合を定めなければ、法定相続分に応じて分割するのが原則です。

亡くなった方(被相続人)1人が有していた株式が、遺産分割の結果、複数の相続人に分散してしまうと、会社の意思決定プロセスが複雑になってしまいます。経営権が分散し、事業が停止してしまう危険を避けるべく、106条は次の通り、共有状態の株式の権利行使について、代表者を決めることを認めています。

会社法106条(共有者による権利の行使)

株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

会社法(e-Gov法令検索)

しかし、そもそも争続となり、相続人の対立が激化すると、代表者を決めること自体が困難なケースも少なくありません。

事業用資産を継続的に使用できる

中小企業では、経営者の個人資産を、事業用に使っていることも多いです。このとき、相続によってその資産が分割して承継されると、会社経営に反対する相続人に、その資産の利用を止められてしまう危険があります。このことを防ぐにも、遺言書を作成するのが有効です。

例えば、次のような代表者個人名義の資産に配慮しなければなりません。

  • 会社の売上が、代表者名義の口座に着金される
  • 代表者名義の不動産にオフィスが建っている
  • 代表者が個人資産を会社に貸し付けている

これらの事情があった場合、「会社」という法人と「社長」という個人は法的には別物なのに、財産関係が混じり合っています。しっかり整理しないと、代表者の死亡によって、会社経営にとって重要な財産が失われてしまいます。

現在100%の株式を持つオーナー社長にとっては、「会社=自分」「法人の資産は全て自分のもの」という意識が強いでしょうが、完全に私物化できるわけではありません。相続のタイミングでは、その歪みが顕著に生じます。

株式を分散させないための遺言書の書き方【書式付き】

以上の通り、会社の後継者を決め、株式を含めた経営に関わる資産を間違いなくその人に承継するには、遺言書を書く必要があります。会社の経営を円滑に引き渡し、争続を回避するためにも、ぜひ遺言書の作成を検討してください。

遺言があれば、遺言で定めた指定相続分は、民法の定める法定相続分に優先します。後継者が既に決まっていれば、その人に全株式を相続させる旨の遺言を残すのが、株式分散を防ぐ対策になります。株式を集中化させるために、次の遺言書の書式を参考にしてください。なお、あくまで最低限の記載であり、個別の事情によって加筆が必要です。

遺言書

第1条 遺言者は、遺言者の有する預貯金を、すべて妻相続花子(昭和XX年XX月XX日生)に相続させる。

第2条 遺言者は、遺言者の所有する以下の株式を、遺言者の長男相続一郎(平成XX年XX月月XX日生)に相続させる。
⑴ ◯◯株式会社の株式 100株
⑵ 株式会社◯◯の株式 100株

20XX年XX月XX日○○年○月○日

 住所 
 遺言者 

遺言者自身の作る自筆証書遺言なら、以上の書式を全て手書きし、自筆で署名押印し、作成日を記載しなければ遺言が無効となってしまいます。公正証書遺言の場合には、公証人の協力や手数料が必要となる代わり、遺言の有効要件について公証人のチェックを受けることができます。

公正証書遺言について

経営者が遺言書を作成するときの注意点

最後に、経営者が遺言書を作成するときの注意点を解説します。

家族間の協議を先行させる

経営者の相続問題といえど、遺言書の作成を重視するあまり、事前に協議を忘れてはいけません。遺言は重要ですが、家族の納得あってこそ活かすことができます。

株式の価値の大きさなどによっては、遺言だけでは解決できず、遺留分侵害の問題に発展するおそれもあります。このとき、他の家族が故人の意思を尊重し、後継者を認め、少なくとも株式や事業用資産の承継については争わないとすれば、経営者の遺言で果たしたかった目的を達成することができます。

遺留分侵害に注意する

株式の分散化を避けるために、後継者となる相続人1人に株式を集中させる遺言を作るにあたり、注意しなければならないのが遺留分です。遺留分は、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の相続分で、株式を1人に集中させた結果、その評価額が高いと、他の相続人の遺留分を侵害する可能性があります。

とはいえ、株式を、後継者となる相続人1名に相続させるのは大前提でしょう。この遺言書を作るにあたり、遺留分侵害とならない対策には次の2つの方法があります。

  • 株式の評価額が低くなるようにする
  • 遺産の総額が高くなるようにする

いずれの方法も、要は、遺産全体に占める株式の割合が低くなるようにするのがポイントです。遺産のうちほとんどが株式や事業用資産だという場合には、遺留分侵害の争いは避けられません。

遺留分の基本について

会社と代表者間の債権債務を整理しておく

法人と個人とは、たとえ代表者でも、法律上は全くの別です。中小企業ほど、実質は「会社=社長」というところも多いですが、これはあくまで社長が存命中にしか成り立ちません。

社長が、会社の口座を自分の財布のように考えていても、相続人はそうではありません。そのため、相続が開始するまでに、会社と代表者の間の債権債務関係は解消しておく必要があります。整理すべき関係には、次のものがあります。

  • 社長から会社への貸付
  • 会社から社長への借入
  • 役員報酬の未払い
  • 事業用借入への社長の個人保証

ただし、社長の個人保証のように対外的な関係については、解消するには債権者の同意を要するため、交渉しなければなりません。難しい場合には、後継者への引き継ぎなども含めて検討してください。

まとめ

今回は、経営者が相続で気をつけておくべきことを、特に生前対策の要となる遺言にポイントを絞って解説しました。「社長なら、必ず遺言書を作成すべき」といっても過言ではありません。

紹介した遺言書の文例を参考に、ぜひ作成してみてください。経営者の遺言は、会社の状況、家族の状況の双方を踏まえ、慎重に考える必要があります。また、企業規模が大きくなるほど、相続税についてもどのような分け方にするのが税務面で有利か、という視点も必要です。

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