土地を相続したとき、ただ所有するだけではその価値を十分に引き出せません。しかし、相続のタイミングでは、活用方法を思いつけない土地が突然に転がり込むことがよくあります。自宅やマンションなど用途が決まっていれば迷いませんが、活用の難しい土地もあります。
持て余した土地は、その価値に比して、相続人の誰もが興味を持たず、押し付け合いになることも。その結果、行く先の決まらない土地がきっかけで争いが長期化してしまいます。少子高齢化に伴い、田舎の土地や駐車場、山林などを相続して悩む人は増えています。売却するのも1つの手ですが、その前に有効な活用ができないか検討してください。
今回は、相続した土地を活用する方法と、賢い戦略やアイディアを紹介します。適切な活用方法を見つけられれば、その土地はあなたやその家族にとって大きな資産となります。眠らせておくのでなく、賢く活用して資産形成に役立てましょう。
相続した土地の活用について
相続した土地の活用方法を探るには、まず、その土地の特性を理解するのが大切です。
実家の土地やマンションの敷地のように用途が決まっていればよいですが、それ以外の土地を相続したときこそ有効活用に悩むタイミングです。ここでは、特に、遊休地、農地、駐車場といった、相続時に扱いに悩みやすい土地の活用について、考慮すべきポイントを解説します。
遊休地の活用
遊休地とは、現在利用されていない土地のことです。放置され続けると、地価の低下を招くリスクがあります。また、地域の景観悪化、不法投棄など犯罪の温床となるといった問題もあります。相続を機に遊休地を活用できれば、社会課題の解決となり、土地に価値を見い出すチャンスとなります。
遊休地を活用すべく、新たに建物を建設しようとするときは、建設基準法に基づく制限に留意する必要があります。
農地の活用
農地法という法律によって用途が厳しく制限され、農地から他の用途への転用は難しいという性質があります。そのため、相続人が農業経営を引き継がないとき、相続した農地の活用方法を見つけることが難しい場面は少なくありません。活用の選択肢が限られるのが、農地相続の問題点です。
農地の相続について
駐車場の活用
相続した駐車場は、立地や需要によっては高い収益を上げることが可能です。しかし、周辺の開発状況や交通アクセスの変化によって、収入が変動し、思っていたほどの効果が上がらないこともあり、土地の評価が難しいという性質があります。
相続した土地を活用する方法とアイディア
次に、相続した土地を活用する方法について、網羅的に紹介します。また、それぞれの方法ごとにメリットやデメリット、注意点もあるため、活用のアイディアについても言及します。
自家用とする
最も簡単な活用方法は、相続した土地を、相続人が自分で利用することです。自宅を建築してもよいですし、農地や畑として利用する方法もあります。
メリットとしては、自分で使えるという利点があるため、収益を複雑に考える必要はなく、簡便に活用できる点にあります。しかし、デメリットとして、農地として活用するなら農地法に基づく規制や手続きを確認する必要があり、自宅を立てる場合には建築基準法や地域の条例を検討しなければならないなど、自分で利用する分、全て自分で計画しなければなりません。
賃貸マンション経営
賃貸マンションやアパートを経営するのも、良い活用方法です。相続した土地の立地がよく、駅近など需要の高い土地であれば、マンションを建設して賃貸することで、安定した収入源を確保することができます。地主用として、自身の部屋を確保することもできます。
デメリットとして、建設時に大きな初期投資が必要となります。また、入居者管理や建物のメンテナンスなど、将来に渡って継続的にマンション経営に携わる必要があります(自分で全てやるのでなく、管理会社に委託することはできますが、費用がかかります)。
駐車場経営
駐車場経営をするという活用法もあります。相続した土地を駐車場にし、月極や時間貸しで収益を得る方法です。最近では、カーシェアリングやEVカーの充電スポットなどを併用することで、収益アップが見込めます、都市部や観光地など、駐車場需要の高い立地なら収益性も高いでしょう。
デメリットとしては、立地によって収益が大きく変動する点です。マンションよりも更に、その収益はリッチに影響されます。また、車による事故は付きもので、保険に加入するなど、今後も土地の安全管理からは逃れられません。
開発計画を立てる
相続した土地が大規模であったり、周辺の土地の所有者と交渉が可能であったりする場合には、開発計画を立てる手もあります。自分一人では難しいでしょうが、ニーズのある地域ならば、不動産会社の協力を得ることもできます。土地を活用して商業施設を立てたり、大規模なテナントビルにしたりといったケースです。
一方で、この活用方法はとても難しく、不動産の専門的な知識を要する点がデメリットです。また、そもそも開発に適した価値の高い土地を相続しなければ、選択できません。
コインランドリー、トランクルームといった投資
コインランドリーやトランクルームなどといった投資を活用して土地から収益を上げる手もあります。これらの土地活用は、比較的小規模な土地でも設置可能であり、かつ、初期投資がそれほどかからず、将来の手間もマンションや駐車場に比べて小さい点がメリットです。
フランチャイズビジネスとなっていることが多く、ノウハウも自身で蓄積する必要はありません。一方で、収益が上がるかどうかは立地や周辺環境、利用者数によって異なるため、期待通りの収益が保障されているわけではありません。
太陽光発電
もう少し広い土地ならば、太陽光パネルを設置する投資もあります。土地に設置した太陽光パネルで発電した電力を売電して、収益を得る方法です。環境に優しく、長期的な収益モデルとして注目されていますが、その一方で、初期投資が大きく、地理的な条件によっては収益があまり見込めないこともあります。
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売却する
最後に、ここまでの有効活用の手段を講じるのが難しいならば、売却してしまう手もあります。相続した土地を売却すれば、一時的に大きな収入を得ることができ、相続税の資金を確保するのにも役立ちます。また、土地を活用する方法と違って、将来も土地と付き合っていく負担から解放されます。
ただし、今後の収益には期待できません。また、相続のタイミングで納税資金が不足し、あわてて売却してしまうと安売りになってしまうこともあります。時間的な余裕をもって、適正な価格で売却する努力をするには、不動産会社の選定も重要となります。
相続した土地を活用せず放置するリスク
次に、相続した土地を活用せず、放置しておくリスクについて解説します。
税金や維持費がかかる
不動産には多くの税金がかかります。所有しているだけで固定資産税がかかります。固定資産税は、土地を保有しているだけで、その土地の価値に基づいて算出され、活用していなくても毎年払う必要があります。有効活用して収益を得ていない場合、純粋に負担だけが膨らみます。
また、売却すれば登録免許税がかかり、所有したまま死亡したら相続税がかかります。つまり、相続した土地を活用せずに放置しておいても、収益が生まれない割には、土地を維持するコストが相当高く付くのです。
税金だけでなく、土地を放置して雑草が生い茂り、不法投棄の場所となるリスクがあり、これを防ぐための定期的な清掃やメンテナンスにも費用がかかります。
管理の責任を負わされる
土地の所有者は、その土地に関する法的な責任を負います。例えば、土地やその工作物が第三者に損害を与えた場合には、その所有者が賠償責任を負うおそれがあります(土地工作物責任)。この土地工作物責任については、民法に次の通り定められています。
民法717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
1. 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2. 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3. 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
民法(e-Gov法令検索)
また、法的責任だけでなく、荒れ地となって地域の安全や美観を損ない、地域コミュニティの質を下げれば、近隣周辺に悪影響となります。地域住民からのクレームや、土地所有者の評判の低下を招くといった社会的な責任を負わされるリスクもあります。
空き家の社会課題について
相続した土地の活用は誰に相談すべきか
相続した土地の活用には、様々な方法があるものの、それぞれメリットとデメリットがあり悩む場合が多いです。そして、その土地の性状や内容に合わせて活用法を決めなければならないため、過去の経験やノウハウを活かして行う必要があります。
そのため、相続によってたまたま土地を取得した人には対応が難しく、専門家の力を借りるのが賢明です。ここでは、相続した土地の活用について相談すべき専門家について解説します。
それぞれに特徴があり、デメリットもあるので、最善なのは全ての専門家に相談して、総合的にアドバイスを受けて、自分で判断することです。
弁護士
弁護士は、法的なアドバイスを提供し、相続した土地についても、利用や転用の規制、有効活用のリスクや将来のトラブル防止といった点についてアドバイスをします。相続が複雑で、土地活用を巡って相続人間で争いのあるケースで、特に弁護士の力が行きます。
相続に強い弁護士の選び方について
税理士
税理士は、税務に関する専門家であり、土地活用に伴う税負担の最適化、タックスプランニングといった助言に長けています。また、土地には税金が付きものであり、税務申告が必要なときには税理士のサポートを受けるべきです。
ファイナンシャルプランナー(FP)
ファイナンシャルプランナーは資産形成の専門家であり、相続や資産運用などについての幅広い知識を持っています。そのため、個人の資産についての相談をすることができ、土地活用による資産形成についてもサポートしてもらうことができます。資産税対の総合的なプランニングが可能ですが、法律や税務などの特化した知識が薄い場合があるのがデメリットです。
不動産会社
最後に、土地活用は、不動産の問題ですから、民間の不動産会社にまずは相談する人も多いでしょう。不動産会社は、過去の土地の売買や活用について、実務的な知識と経験を有しています。また、地域密着の会社であれば、その地域の不動産市場に精通し、その土地に合った活用策の提案を受けることができます。賃貸管理など、将来のサポートを受けられるのも利点です。
一方で、法律や税務についての専門的な知識には乏しく、また、悪質な会社だと、自社の利益を優先した提案しかせず、顧客目線がないおそれがあります。
相続の不動産会社の選び方について
相続した土地を活用する際の注意点
最後に、相続した土地を活用する際の注意点について解説します。
相続の対策をしておく
まず、土地活用では、相続の対策をしておくことが大切です。相続は、誰の身にも必ず起こります。相続した土地を活用しようと苦戦していても、いずれ次は自分が死亡し、相続が発生することとなります。そのため、事前に相続計画を立てることが、土地の活用計画にとっても重要です。
遺言書を作成し、その土地の次の行く先を決めたり、相続人となる人に情報を共有し、事前に協議をしたりといった対策によって、土地をより長期に、継続的に活用できるようにしておきましょう。特に、投資によって運用する場合には、「時間」が「収益」に直結します。
土地活用のリスクも把握する
次に、土地活用にはリスクもあることを知り、どれほどのリスクがあるか、上限を把握しておくことが大切です。土地の活用は、不動産の市場動向に大きく影響されます。特に、相続で得た土地は、思いがけないタイミングで活用が始まることがあり、当初の計画通りに全てうまくいくことはむしろ稀だと考えるべきです。
潜在的なリスクを見極め、それを加味した収支計画を立てるようにしてください。
このとき、不動産会社や、投資についてアドバイスをする第三者の助言は、不測の事態もあり得ることを念頭において、最終的には自己責任で決定しなければなりません。
活用計画は生前から立てる
相続した土地の活用計画は、少しでも早く進めておく方が有意義です。土地の特性を見極め、市場のニーズに合わせながら活用していくには、長期的な計画が不可欠だからです。
本解説は相続した土地に関するものですが、土地の価値を最大化するためには、生前から計画を立てておくに越したことはありません。生前から、相続を見据えて土地活用を検討しておくことには、次のようなメリットがあります。
- 相続税の節税
土地を相続すると、基礎控除を超える遺産があるときには相続税がかかります。生前から、土地を承継したい人に贈与をしたり、小規模宅地等の特例を利用できるよう準備したりすることで、相続税を節税することができます。 - 安定した収益と納税資金の確保
土地の価値を高める努力をすれば、死亡までにも安定的な収益を得ることができます。その収益を貯蓄したり投資したりして資産形成をすれば、相続税の資金の準備にもなります。
まとめ
今回は、相続した土地の活用について、検討すべき方法を解説しました。
土地活用については、不動産会社に相談することが多いでしょうが、相続の局面においてこれまで利用してこなかった土地の用途を変更し、有効に活用し直すには、法務、税務といった様々な観点からの検討が必要となります。