相続財産(遺産)を守る専門家(弁護士・税理士)が解説!

相続の専門家(弁護士・税理士)が教える相続の相談窓口│相続財産を守る会

相続手続

相続開始後に養子縁組を解消する「死後離縁」の方法とポイント5つ

投稿日:

死後離縁とは、養子縁組をしていた親子が、親の死亡による相続開始後に、養子縁組の解消を行うことをいいます。養子縁組の方法には、「協議離縁」など、親子の生前に行える方法もありますが、死亡後に養子・養親の関係をなくしたい方が行うのが「死後離縁」です。

死後離縁をした場合には、親子関係は亡くなるわけですが、養親または養子の死亡によって発生した相続関係には影響がなく、問題なく相続財産(遺産)を取得することができます。

そこで今回は、死後離縁の基礎知識と、実際に死後離縁を行ったときどのような効果があるのかや、注意点などについて、相続に強い弁護士が解説します。

「相続手続」の人気解説はこちら!

相続手続

2018/11/23

相続で委任状が必要なケースと、委任状の書き方を弁護士が解説!

相続には、多くの手続きが必要です。相続の準備は手間が多く、時間もかかります。しかも役所や金融機関など、平日の日中しか開いておらず、昼に仕事がある会社員などの方々は、手続を進めることが難しい場合があります。 相続の手続きや準備をする際に、弁護士、司法書士、税理士などの相続の専門家を積極的に活用することで、便利に相続手続きができます。 相続の専門家に手続きを任せる際に記載するのが委任状です。今回は、委任状が必要なケースと、その際の委任状の記載方法について、相続に強い弁護士がご説明します。 委任状をきちんと作成 ...

ReadMore

相続手続

2018/11/28

相続人全員が相続放棄し、相続人がいなくなったら財産は誰のもの?

お亡くなりになった方(被相続人)に、マイナスの財産(借金など)が多い場合に選択される相続手続きが、「相続放棄」です。 相続放棄が行われると、文字通り、相続放棄した人は相続の関係から外れ、相続人ではなくなります。 よくある相続相談 相続放棄を、相続人の全員が行うことはできますか? 相続放棄で、相続人がいなくなったら、相続財産(遺産)は誰のもの? 相続人全員で相続放棄する具体的な方法を知りたい。 相続財産のうち、資産がほとんどなく多額の借金がある場合など、相続放棄をしたほうが有利なケースも少なくありません。相 ...

ReadMore

相続手続

2019/2/6

限定承認が利用されない6つの理由と、有効な活用方法【弁護士解説】

「限定承認」という相続手続きをご存知でしょうか。お亡くなりになった方(被相続人)に多くの借金があるが、自宅不動産など必ず相続したい財産がある場合などに利用される、相続手続きの1種です。 「限定承認」を利用すると、相続した財産の範囲内でしか相続債務(借金・ローン等)を支払わなくてもよくなるため、一見すると便利な制度にも見えますが、実際には限定承認による相続はあまり利用されていません。 そこで今回は、「借金を相続してしまうのではないか」「相続放棄したほうがよいのだろうか」とお悩みの方に向けて、限定承認が利用さ ...

ReadMore

相続手続

2018/12/17

相続手続の期限と、過ぎてしまったときの対応方法を弁護士が解説!

ご家族がお亡くなりになり、相続が発生すると、多くの相続手続きを行わなければなりません。相続手続きの中には、期限があるものがあり、期限に違反すると厳しい制裁(ペナルティ)やデメリットが避けがたいものもあります。 ご家族がお亡くなりになると、通夜、葬儀など相続以外にもやることが多く「今は忙しいので、相続手続は落ち着いてからやろう」とお悩みの方もいます。 そこで今回は、期限のある相続手続のうち、どの期限を過ぎたらデメリット、不利益が大きいのか、どの期限違反に制裁(ペナルティ)があるのかを、相続に強い弁護士が解説 ...

ReadMore

相続手続

2019/3/5

相続した生命保険金の請求には時効がある?いつまで請求できるの?

生命保険金とは、生命保険会社と契約をすることで、保険金発生事由が生じたときにもらえる金銭のことです。「被保険者の死亡」によって、生命保険金のうち、死亡保険金をもらうことができます。 相続をしたときに、相続人が遺品整理をしていて、ある日突然、「生命保険約款」、「保険証書」などを見つけ、亡くなったご家族が生命保険に加入していたことを知るという場合があります。 この場合、「既に、生命保険金請求の時効を過ぎてしまっているのではないか?」、「いつまで生命保険金が請求できるの?」と疑問、不安に思うことがあるのではない ...

ReadMore

[toc]

養子縁組を解消する5つの方法

いったんは養子縁組をしても、何かしらの理由があって将来に解消することは、養子・養親の双方の合意があれば自由に行うことができます。養子縁組の解消のことを「離縁」といいます。

養子・養親関係をなくす「離縁」には、生前に行えるものには次の4つがあります。

ポイント

協議離縁:養子・養親の話し合いで、養子縁組を解消する方法
調停離縁:調停により養子縁組を解消する方法
裁判離縁:裁判(訴訟)の判断で強制的に養子縁組を解消する方法
審判離縁:審判により養子縁組を解消する方法

しかしこれらはいずれも、生前に、養子・養親がいずれも生きていれば行うことができる方法です。そもそも養親が死亡してしまえば、協議によって養親の合意を得て離縁する「協議離縁」はできないことは明らかです。

養親が死亡したとしても、片方が死亡したことによって、それだけで養子縁組関係が解消するわけではありません。

このとき、養親がお亡くなりになり、残された養子が、他の親族との親戚関係を絶ちたいために行うのが、「死後離縁」です。具体的には、養親または養子が死亡後に、家庭裁判所に申請し、許可を得ることで離縁することができます。

遺産相続に強い弁護士の選び方は、こちらをご覧ください。
遺産相続に強い弁護士の選び方の9つのポイント!

いざ遺産相続が起こり、弁護士に相談、依頼することが決まったとしても、一般の方の中には、「知り合いに弁護士がいない。」という方も多いのではないでしょうか。広告などで法律事務所は知っていても、手元の遺産相 ...

続きを見る

死後離縁しても相続関係はなくならない

養子・養親の一方がなくなった後、家庭裁判所の許可を得て死後離縁をしたとしても、養親または養子の死亡によって起こった相続には影響ありません。つまり、法律上の親子関係がなくなったとしても、相続権は発生したままなくならず、相続人の資格も失いません。

被相続人がお亡くなりになった時点(死亡時点)で、法定相続人であったかどうかが問題になるのであり、その後の親子関係の消滅は、相続には影響を与えないからです。

ただし、養親・養子同士の相続は起こるものの、親族との親戚関係は切れてしまいますので、例えば、養親の親など、養親の家族の死亡による相続を受けることはできなくなります。

たとえば・・・

養親がお亡くなりになった後、養親の父(養子から見た「祖父」)が死亡した場合には、養子は、養親に代わって相続権を得ることができます(代襲相続)。

しかし、養親と養子の間の関係が、養親の死亡後の「死後離縁」によって断絶されていた場合には、養子は、養親の親の死亡によって、養親を代襲して相続財産(遺産)を得ることはできません。

参 考
法定相続人の順位・範囲と割合は、こちらをご覧ください。

身近なご家族がお亡くなりになってしまったとき、「誰が財産を相続することができるのだろう。」と不安に思うことでしょう。 遺言・遺書などがのこされていたなど、お亡くなりになったご家族の意思が明らかでない場 ...

続きを見る

死後離縁の許可を得る具体的な方法は?

養子・養親のいずれかの死亡後に、死後離縁をするときには、家庭裁判所の許可が必要であると解説しました。死後離縁についてのルールを定める民法の条文にも、次の通りの規定があります。

民法第811条第6項

縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。

死後離縁の許可申立ては、申立人の本籍地または住所地を管轄する裁判所に対して行うこととなります。審判申立書を作成、提出し、許可の審判を受けることができれば、死後離縁をすることができます。

許可審判が確定した後で、市区町村役場に対して、離縁届、審判所謄本、確定証明書を提出します。死後離縁は、離縁届を提出し、受理がなされた時点で効果を生じます。したがって、この受理の時点までは、養親の血族との親族関係は続き、離縁届によって終了します。

家庭裁判所における死後離縁を許可するかどうかの判断は、恣意的、濫用的なものでない限り、基本的には許可されるものという運用です。

民法第729条(離縁による親族関係の終了)

養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。

配偶者の死亡後に、配偶者の親族との、「姻族関係」を終了するために行う「死後離婚」の手続の場合では、家庭裁判所の許可を得る必要のない点が異なります。

参 考
死後離婚の基本と、メリット・デメリットは、こちらをご覧ください。

「死後離婚」という言葉をテレビで耳にすることが多いのではないでしょうか。「死後離婚」とは、配偶者(夫や妻)の死亡後に、姻族(配偶者の親族)との関係を絶つことをいいます。 配偶者(夫や妻)が死んだ後(死 ...

続きを見る

死後離縁により扶養義務がなくなる

死後離縁をすると、養親の血族と、養子との間で、親族関係が終了します。そのため、親族であれば民法上負わなければならない扶養義務がなくなります。つまり、親族に対して行うべき介護や看病、金銭的援助などを、法的に行わなくてもよくなるということです。

この死後離縁の効果は、配偶者の親族との姻族関係を終了する、死後離婚と同様のものです。

死後離縁後の子の氏(名字)は?

養子は、養子縁組をすると、養親の氏(名字)を名乗ることができます。この場合に、死後離縁したときは、養子の氏(名字)は、元に戻るのでしょうか、それとも、養親の氏(名字)のままなのでしょうか。

死後離縁後の子の氏(名字)についても、民法に定めがあります。

民法第816条(離縁による復氏等)

1.養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。
2.縁組の日から七年を経過した後に前項の規定により縁組前の氏に復した者は、離縁の日から三箇月以内に戸籍法 の定めるところにより届け出ることによって、離縁の際に称していた氏を称することができる。

つまり、原則としては、死後離縁をした場合には、子の氏(名字)は、養子縁組前に名乗っていた元の氏(名字)に戻ります(復氏)。

例外的に、①配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁したときと、②7年を経過し、届出をしたとき、には、養子縁組後の氏(名字)を使い続けられます(氏の続用)。

相続手続は、「相続財産を守る会」にお任せください!

いかがでしたでしょうか?

今回は、養親もしくは養子の死亡によって相続が開始した後で、養子縁組を解消する手段である「死後離縁」について、方法、手続、注意点などを解説しました。

死後離縁は、家庭裁判所の許可が必要となりますが、原則として許可が得られることとされており、残された養子が自分自身でも行うことができます。しかし、相続手続きについて1人で進めることが難しい場合や、死後離縁の認められる判断基準がわからない場合には、相続の専門家である弁護士にご相談ください。

「相続財産を守る会」の弁護士が、ご家庭の状況をじっくり伺い、確実な死後離縁を徹底サポートいたします。

ご相談の予約はこちら

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所は、銀座(東京都中央区)にて、相続問題、特に、遺言・節税などの生前対策、相続トラブルの交渉などを強みとして取り扱う法律事務所です。 同オフィス内に、税理士法人浅野総合会計事務所を併設し、相続のご相談について、ワンストップのサービスを提供しております。

-相続手続
-,

Copyright© 相続の専門家(弁護士・税理士)が教える相続の相談窓口│相続財産を守る会 , 2023 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.