★ 相続の専門家の正しい選び方!

公証人に出張してもらって遺言を作成する方法は?

遺言の種類にはいくつかありますが、公正証書遺言が最も確実。しかし、そのためには公証人の協力が必要で、公証役場に出向かなければなりません。遺言書を書きたいが、高齢や病気で外出ができない方にとって、このことが大きなハードルとなります。

遠出は難しいけれど公正証書遺言を作成したいときは、公証人に出張を依頼することができます。今回は、公証人に出張してもらって遺言を作成する方法と、その場合の費用や注意点を解説します。

目次(クリックで移動)

公証人に出張してもらうことができる

遺言のなかでも、公正証書遺言は、公証人の協力を得て作成する最も確実な方法です。正式な手続きを踏むため、無効になりづらく、紛失や隠匿、偽造の危険も低いためお勧めです。ただ、公正証書遺言を作るには、証人2名とともに公証役場を訪れる必要があり、病気や高齢などで体が不自由な方などには利用しづらい面があります。

一方で、公証役場まで出向くのが難しい場合にも、公証人に出張してもらい、公証役場以外の場所で遺言を作成する方法があります。公証人には管轄があり、その範囲内であれば出張してもらうことができます。

公証人に出張してもらう手続きの流れ

次に、公証人に出張してもらう手続きの流れについて解説します。

公証人と事前相談する

公正証書遺言は、当日その場で作成してもらえるわけではなく、まずは公証人との事前相談が必要です。事前相談にて、作成したい遺言の内容を伝え、公証人にチェックしてもらいます。

事前相談は、公証役場に出向いて行うこともありますが、電話やメール、FAXなどのやり取りも可能な場合が多いので、公証人に相談してみていください。作成したい遺言の内容を正確に伝えるため、内容をまとめたメモや相続関係図、戸籍謄本などがあると良いです。事前相談は、公証人に出張を依頼する場合にも必ずしなければなりません。

遺言の文案を作成する

公証人に遺言の内容を伝えるにあたり、あらかじめ文案を作成しておきましょう。この段階では、文章にする必要はなく、メモ程度のものでも構いません。ただ、財産に抜け漏れがあると、後からトラブルになるので、財産調査はしっかり行う必要があります。

遺言をする人の文案を見て、公証人が遺言書の案を作成してくれます。その内容を叩き台にしながら、メールやFAXのやり取りで、詳しい内容を詰めていきます。

公正証書遺言について

必要書類を準備する

公正証書遺言の内容を詰めるのには一定の時間を要するため、並行して必要書類の準備を進めます。事前相談の時点から収集を始めれば、より早く遺言を完成させることができますし、公証人に正確な情報を伝達できます。

公正証書遺言の作成に必要な書類は、次の通りです。

  • 戸籍謄本
    遺言者と相続人の関係がわかるもの
  • 相続人以外で遺贈を受ける人の住民票
  • 遺言者の印鑑証明書
    (発行から3ヶ月以内)
  • 遺言者の財産の内容や価値がわかる資料
    不動産の場合、登記簿謄本と固定資産評価証明書、預貯金であれば通帳のコピーなど
  • 公正証書遺言の作成に立ち会う証人の身分証(写し)

遅くとも、必要書類は、遺言を実際に作成する日までに揃っている必要があります。

相続に必要な戸籍の集め方について

作成日時を予約する

事前相談をしながら、内容が固まってきたら公証人に出張してもらう日時を予約します。公証人は多くの案件を抱えており、毎日出勤していない方もいるので、すぐ予約をするのが難しい場合もあります。

特に、出張を依頼する場合は、往復の移動時間を含むため、調整は柔軟に行いましょう。この日までに遺言書を作成したいという希望があるときは、スケジュールに余裕をもって進めてください。

証人に依頼する

公正証書遺言の作成には、その場に証人2名を立ち会わせる必要があります。公証人の出張は平日の日中になるため、仕事の予定と調整する必要がある方もいます。出張日時を調整する際に、証人となる人にも予定を確認しなければなりません。

自身で証人を探せない場合には、公証人に相談してください。証人を依頼したら、証人の本人確認のできる身分証明書を持参してもらえるよう伝え、公証人にはあらかじめ証人の氏名、住所を伝えます。また、出張してもらう場合は、遺言者がいる病院や介護施設などに来てもらうため、場所は正確に伝えるようにしましょう。

未成年者や、相続人になると見込まれる方(推定相続人)は証人にはなれません。

遺言書作成の当日の注意点

次に、遺言書を作成する当日の注意点を解説します。

当日準備するもの

当日は、遺言者の実印、証人の認印、証人の身分証明書の原本などが必要です。公証人が、当日用意する必要のあるものを教えてくれるので、忘れないよう用意してください。公証人に支払う手数料分の現金も忘れないようにしましょう。

遺言書の読み上げと署名押印

当日は、公証人が、遺言者と2名の証人の前で、遺言書の内容を読み聞かせます。あらかじめ調整した文章の通りですが、内容に間違いがないか最終確認するためです。間違いのないことを確認したら、遺言者と2名の証人がそれぞれ遺言書の原本に署名、押印し、最後に公証人が署名します。

出張を依頼したケースでは、遺言者の意思能力が問題になりがちなため、有効に作成されたことを証明するために、写真撮影して状況を証拠に残す場合もあります。

遺言書の交付と費用の支払い

これらが終わると、公証人が、そのまま公正証書遺言の正本と謄本を、遺言者に交付します。大切な書類なので失くさないよう保管してください。最後に手数料を現金で支払って終了です。公証人に出張を依頼する場合は、できるだけお釣りの出ない準備し、出張へのねぎらいの言葉を忘れずに。

公証人の出張にかかる費用

公証人に支払う手数料は、法務省の定める手数料令で決められており、全国一律です。基本手数料は、遺言書で扱う財産の評価額に応じて変わり、目的の価額が大きくなるほど手数料も高額になります。

スクロールできます
目的の価額手数料額
100万円以下5000円
100万円超え、200万円以下7000円
200万円超え、500万円以下11000円
500万円超え、1000万円以下17000円
1000万円超え、3000万円以下23000円
3000万円超え、5000万円以下29000円
5000万円超え、1億円以下43000円
1億円超え、3億円以下4万3000円
+超過5000万円ごと1万3000円加算
3億円超え、10億円以下9万5000円
+超過5000万円ごと1万1000円加算
10億円超え24万9000円
+超過5000万円ごと8000円加算

公証人に出張してもらう場合は、公証役場で遺言を作成する場合よりも基本手数料が高くなったり日当がかかったりするなど、出費が少しかさみます。出張を依頼する場合に追加でかかる費用は、次の通りです。

  • 公正証書作成の基本手数料の1.5倍
  • 日当(半日1万円、1日2万円)
  • 交通費の実費

なお、手数料は、財産を受け取る人ごとに計算して合計するなど、やや複雑な計算が必要となるため、実際に払うときは、財産の内容を説明し、公証人に計算してもらいます。

まとめ

今回は、公証人に出張してもらって遺言を作成するときの手続きの流れや費用を解説しました。

公正証書遺言を作るときは、遺言の内容を正確に伝えれば、公証人が遺言書の文案をまとめてくれます。ただ、その遺言の内容が適正化どうかは、争いにならない公平な分け方としたり、税務面に注意を要したりなど、自身で考えなければならない部分も多くあります。専門家への相談は、遺言書を記載する前に行うようにしてください。

目次(クリックで移動)