事業承継をせず、もう会社をやめてしまいたいと考えたときに、会社をたたむ方法として、「解散」、「清算」、「破産」という、3つの用語の違いをご理解いただけていますでしょうか。
いずれも身近な一般用語となって使われることもありますが、それぞれ法的には区別されています。どの方法で会社をたたむかによって、残った財産や債務をどのように処理するかなど、細かい手続が異なるからです。
「解散」、「清算」、「破産」のうちで、適切な方法を選択しなければ、会社に見切りをつけるタイミングを誤り、事業承継も、会社をやめることも難しくなってしまう危険があります。
今回は、会社をたたむ3つの方法(解散・清算・破産)の違いと、それぞれのメリット・デメリットの比較について、相続・事業承継を多く取り扱う弁護士が解説します。
「事業承継」の人気解説はこちら!
[toc]
会社の「解散」とは?
会社の「解散」というのは、最も広い意味で、会社をたたむ場合のすべてにあてはまる用語です。
会社を「解散」する理由には、会社にまだ余力があり、自身の力で引き際を決められる場合と、会社にもはや余力がなく、裁判所に申立てをすることによって法的手続きによって会社を閉めてもらう方法の2つにわかれます。
取引先、債権者のためだけでなく、会社経営者自身のためにも、できる限り、会社に余力があり、自らの力で進められる解散方法によるほうが、再出発も容易です。
会社自身の力による解散
会社自身の力による解散方法には、次の4つがあります。これらはいずれも、会社が自分の力でとじることができ、その判断も、会社自身が検討の上で決定することができるものですので、円滑に進めれば、紛争化しないこともあります。
ポイント
定款上の会社の存続期間の満了
定款上の解散事由の発生
株主総会の決定
合併による消滅会社の解散
特に、定款で、会社の存続期間、会社の解散事由などを定めているケースでは、そもそも会社が数年単位でしか活動しないとか、特定の事業のためにしか継続しないことを予定しており、「計画通りの会社解散」となります。
会社の意思を決定する、会社の所有者による会議を「株主総会」といいます。株主総会で、解散が決定されると、次に解説する「清算」を行う流れに進みます。
裁判手続による解散
会社の意思によらない解散方法には、次の3つがあります。これらはいずれも、会社に余力がなく、資力も十分ではなくなった後に、弁護士などの専門家と、裁判所などの公的機関によって行われるのが通常です。
ポイント
裁判所による破産手続き開始決定
裁判所による解散を命じる裁判
みなし解散
破産手続は、会社の資力が乏しく債務を返済しきることができないときに、残余財産を債権額に応じて分配して、残りの債務は支払わなくてもよいこととする裁判所における手続です。
債務を免責することとなるため、公平性・公正性を担保する必要があり、裁判所から選任された「破産管財人」が、会社の財務状況をチェックし、免責が相当かどうかを調べます。
また、次の場合には、裁判所は、会社を解散することを強制的に命令することができます。
解散命令 | 公益を確保するため会社の存続を許すべきではないと認める一定の事由があるとき |
---|---|
解散判決 | 議決権または発行済株式総数の10分の1以上を有する株主の訴えがあったとき |
一定期間の間、役員変更登記などがなされずに放置された会社について「みなし解散」の制度が設けられています。
-
-
休眠会社とみなし解散については、こちらをご覧ください。
会社の経営がうまくいかなかったり、後継者が見つからず事業承継が円滑に進まなかったりしたとき、会社を破産・解散させるのではなく、会社を放置しておく経営者の方もいます。会社を放置することに、リスクや危険は ...
続きを見る
会社の「清算」とは?
会社の「清算」とは、会社の「解散」の後に、債権債務、資産などを法的に整理してきれいにするための手続のことです。
なお、破産申立を行った場合には、破産管財人が調査をし免責へと進むため、「清算」は、「解散」の中でも会社自身の力で会社をとじることができた場合に行われる手続です。
会社の取締役が原則として、「清算」の期間中は「清算人」となり、手続を進めます。清算中も会社は存続していますが、清算という目的の範囲内の行為しか行うことができません。
通常清算
通常清算は、会社の解散決議を行った後で、法律の規定にしたがって行う清算のことです。
通常清算は、特に支障がなくスムーズに進む場合に行われる手続であることから、破産や次に解説する特別清算と異なり、裁判所の監督はいりません。
逆に、債務超過の疑いがある場合など、特別清算が適切と考えられる場合には、通常清算の手続きによって清算処理を進めることはできません。
特別清算
特別清算とは、通常清算とは異なり、裁判所が清算手続きを監督する方法のことです。特別清算は、債務超過の疑いがあるなど、清算の遂行に著しい支障をきたすべき事情がある場合に行われます。
特別清算は、会社が破綻しかかっているときの手続という意味では破産と似ていますが、管財人による財産調査、否認権の行使による財産の回収などが不要な点で、より簡便な手続きです。
したがって、債権者が協力してくれる場合であっても、不正経理の疑いがあるなど、債務をより多く解散できる可能性があるときは、特別清算ではなく、破産の申立てを行うこととなります。
会社の「破産」とは?
破産とは、会社を継続することができず、現在ある債務を支払いきることもできないときに、裁判所に申し立てて法的に清算するための制度で、裁判所から「管財人」という弁護士が選任されて、財産の監督を受けます。
破産と似たことばに「倒産」ということばがありますが、「倒産」はより広い意味で、破産手続だけでなく、さきほど解説した特別清算や、民事再生、会社更生などを含むことばです。
その中でも代表的な手続きである破産手続は、「破産法」という法律に基づき、行われる制度です。
破産手続きでは、会社の財産・資産はすべてお金に換え(換価)、債権者に対して債権額に応じて配当をした上で、残った債務を免責して会社をとじる、という制度です。
事業承継は、「相続財産を守る会」にお任せください!
今回は、事業承継とともに検討される会社の廃業について、よく聞くキーワードである「解散」、「清算」、「破産」、「倒産」といった似たことばの違いと使い分けについて、弁護士が解説しました。
実際に、事業承継やM&Aの可能性がなく、会社を廃業したいと考えるときには、その手続きにはさまざまな種類があり、それぞれ一長一短で、適切な手続きを選ばなければ損する可能性もあることをよくご理解ください。
「相続財産を守る会」では、事業承継を得意として取り扱っていることはもちろんのこと、後継者がいない、事業価値が低いといった理由で、承継やM&Aが困難な場合であっても、適切な手続きで会社をたたむお手伝いを、弁護士がサポートいたします。