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会社を放置すると危険?休眠会社のメリット・デメリットと注意点4つ

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会社の経営がうまくいかなかったり、後継者が見つからず事業承継が円滑に進まなかったりしたとき、会社を破産・解散させるのではなく、会社を放置しておく経営者の方もいます。会社を放置することに、リスクや危険はあるのでしょうか。

会社を放置しておくという消極的な判断は、「休眠」といわれています。「休眠会社」という、会社に事業を放置しておくための制度が定められており、実際、休眠会社の数は、2015年1月の統計でも約8万8000社存在していました。

そこで今回は、会社を放置して休眠会社とすることの意味と、休眠会社のメリット・デメリットについて、相続・事業承継問題を多く取り扱う弁護士が解説します。

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休眠会社とは?

休眠会社とは、会社を経営せずに放置するための制度です。廃業をするのではなく、一旦事業を停止するのが、休眠会社の特徴です。会社の事業を完全に終了させる「廃業」とは異なります。

会社に関するルールを定める会社法では、休眠会社の定義と、会社を休眠させる方法について次の通り条文が規定されています。

会社法第472条

休眠会社(株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したものをいう。以下この条において同じ。)は、法務大臣が休眠会社に対し2箇月以内に法務省令で定めるところによりその本店の所在地を管轄する登記所に事業を廃止していない旨の届出をすべき旨を官報に公告した場合において、その届出をしないときは、その2箇月の期間の満了の時に、解散したものとみなす。ただし、当該期間内に当該休眠会社に関する登記がされたときは、この限りでない。

つまり、この条文をお読みいただければご理解いただけるとおり、休眠会社とは、長期間(12年間)の間経営せずに放置された会社のことであり、事業廃止しない旨の届出をしないといずれは「みなし解散」となる法人のことです。

「廃業」の場合、会社の解散、清算手続きと、清算登記が必要となりますが、休眠は、会社の休業届を出してそのまま存続させ、事業をストップさせることであり、まさに「会社の放置」といえます。

注意ポイント

会社が、社員の給与・退職金、取引先への仕入れ代金の未払い、金融機関から借り入れた事業資金の返済など、負債を抱えている場合には、会社を放置して休眠させることはできません。

債務超過など、このような会社では、債権者からの取り立て・催促も行われるため、休眠会社として放置できないからです。法人破産のほうがお勧めなケースの1つです。

休眠会社のメリット・デメリット

会社の経営をあきらめてしまった場合には、放置して休眠会社とする以外にも、さまざまな方法があります。会社を経営することをやめる場合に、とりうる選択肢には、例えば次のものがあります。

ポイント

会社をM&Aにより売却する
会社の事業を事業譲渡する
会社を解散手続により清算する
会社を法人破産により倒産させる

そして、これらの選択肢とともに、検討すべきが、会社を放置して休眠会社とする手段です。しかし、どの手段が適切かを選択するにあたっては、休眠会社のメリット・デメリットをよく理解していただく必要があります。そこで、弁護士が解説します。

会社を放置し、休眠会社とするメリット

会社を放置して休眠会社とすることのメリットは、一旦停止した事業を、あらたに再開しようと考えたときのコストや手間が少なくて済む点にあります。

会社設立をするときには、登録免許税から司法書士費用などを合わせ、20万円~30万円程度の費用がかかりますが、休眠会社にしておけば、新設の際の費用を節約することができます。

休眠前の税務申告で、繰越欠損金があるときにも、休眠から明けてあらたに再開した事業年度まで繰り越すことができます。

会社を放置して休眠するために、休業届を市区町村役場、税務署にそれぞれ提出しますが、この際、特に費用はかかりません。休業届の提出や、休眠中の税務申告などを弁護士、税理士、司法書士などに任せる場合には、専門家報酬がかかります。

会社を放置し、休眠会社とするデメリット

会社を放置し、休眠会社とすることのデメリットは、事業が進行していないときであっても、税務申告をしなければならない点です。「休眠」といっても、事業を行っていないだけで、会社自体は存続しているからです。

会社を解散・清算したり、破産させたりすれば税務申告は不要ですが、休眠会社の場合には税務申告が必要で、税理士などへの依頼が必要です。そして、休眠期間中に売上がなくても、地方税(法人住民税)の均等割という税金を納付する必要があります。

特に、放置・休眠前の会社が赤字の場合には、繰越欠損金を持ち越すために、税務申告を必ず行っておかなければなりません。

会社が存続していることから、取締役の任期が満了したときには再任手続も必要となります。取締役の任期が2年などとされている場合には、休眠期間中に、取締役再任の手続と登記を行わなければならない可能性が高いです。

会社の役員変更登記などの登記を、2週間以内に行わないときは、会社法によって会社と代表者個人に対して、100万円以下の過料が命じられる可能性があるため、注意が必要です。

会社を放置し、休眠会社とし、再開するまでの全スケジュールは?

会社を休眠させるときの手続とスケジュールについて、弁護士が解説します。また、会社を一旦は放置して休眠会社としたとしても、その後状況が変化し、事業を継続したい場合には、再開することができます。

合わせて、休眠会社を再開して事業を継続するための手続とスケジュールについても解説します。

事業を停止する

会社を休眠させるために、会社で行っていたすべての事業を停止します。これにより、会社には一切の収入、支出、売上、債務などがない状態となります。

会社で少しでも事業を行っていたり、取引先に債務があったり、従業員への給与支払いがあったりする場合には、それは会社の放置ではなく、休眠会社にはなりません。

休業届を提出する

会社を休眠させるために、「異動届出書」、「休眠届」という書類を提出する必要があります。それぞれの書類の提出先は、次の通りです。

異動届出書 税務署
休業届 都道府県税事務所・市区町村役場

異動届出書、休業届の書式は、それぞれの役所に備え置かれていますので、手続の際に窓口でおとりください。

休眠状態となる

休業届が受理されると、休眠状態となります。会社は法人格としては存続し、役員変更登記、税務申告を行う必要がありますが、事業は行わない存在となります。

ただし、休眠期間が12年以上となり、その間登記手続きを行わないと、次に解説する「休眠会社のみなし解散制度」によって会社が消滅してしまうため、事業再開や事業承継、事業買収(M&A)などの予定があるときは注意が必要です。

事業を再開する

休眠会社を再開することができます。状況によって、例えば次のような理由で事業を再開することが考えられます。

ポイント

新規事業を創出できた
既存事業の売上が見込める状況となった
人手不足が解消された
後継者不足が解消され、事業承継できるようになった
事業買収先・出資先が見つかった

この場合には、休業届などの必要書類を提出した都道府県税事務所、税務署、市区町村役場に対して、再開届を提出することで、休眠状態を解消し、事業を再開できます。

休眠会社の「みなし解散」制度とは?

会社を放置して休眠会社としておくことも、永久に可能なわけではありません。つまり、ずっと休眠会社として放置しておくことはできないのです。具体的には、「休眠会社のみなし解散制度」という制度があり、相当期間経過した休眠会社は、強制的に解散させられます。

この休眠会社の整理事業は、直近では平成14年度、平成26年度と行われてきました。

休眠会社のみなし解散制度のスケジュールは、次の通りの流れで進みます。進み方を理解し、解散されたくない休眠会社がある場合には、手続に対応しなければなりません。

  • 官報に、2か月以内に届出がなく、登記がされないときはみなし解散とする旨が公告される
  • 「事業を廃止しない」旨の届出、もしくは、登記(役員変更等の登記)申請(2か月以内)
  • みなし解散(登記官が職権で解散登記を行う)

休眠会社への通知は、法務局が把握している、登記簿上の会社の本店所在地に送付されますが、登記を変更していない場合には、現住所と異なる場所に届いて、通知を放置してしまうおそれがあります。

しかし、通知が届いていなくとも、公告から2か月経過すると強制的に解散させられてしまいます。登記の電子化にともない、平成28年度より、法務省は毎年休眠会社の整理を行うことを発表しています。

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相続・事業承継問題との関係では、ご両親など被相続人が経営していた会社が、相続を機に円滑に事業承継できず、放置されてしまっていることに注意が必要です。

事業承継は「相続財産を守る会」にお任せください!

いかがでしたでしょうか?

今回は、会社の経営悪化や後継者不足、人手不足などによって、一旦会社を放置して休眠させるときの手続や費用、スケジュール、メリットとデメリットなどについて、事業承継に詳しい弁護士が解説しました。

会社(法人)を経営している社長の場合には、「事業承継」が今後大きな課題となります。事業承継がすぐには難しい場合には、一旦事業を停止したとしても、会社を解散させたり、破産させたりすることが必須なわけではありません。

会社を放置して休眠会社として、時期を見て再開をするなどの方法により、事業承継のタイミングをより円滑に図ることができます。会社経営をしている社長の方は、事業承継の準備のため、ぜひ「相続財産を守る会」の弁護士に法律相談ください。

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