相続財産(遺産)を守る専門家(弁護士・税理士)が解説!

相続の専門家(弁護士・税理士)が教える相続の相談窓口│相続財産を守る会

相続手続

外国人が亡くなった時(被相続人が外国籍)の相続手続を弁護士が解説

投稿日:

日本にも国際化の波が押し寄せ、日本に暮らしている外国人が多く存在します。日本在住の外国籍の人がお亡くなりになったとき、その相続をどのように進めたらよいでしょうか。

日本以外の国籍の人がお亡くなりになるとき、相続人にもまた、日本人、外国人のいずれもがいる可能性が高いです。

そこで今回は、外国人が亡くなったとき、すなわち、被相続人が外国籍のときの相続手続きとその注意点を、相続に強い弁護士が解説します。

参 考
相続人に外国人がいるケースは、こちらをご覧ください。

国際化が進むにつれて、国際結婚なども当たり前に行われるようになりました。すると、お亡くなりになった方のご家族の中に、外国籍の方(外国人)がいることも少なくありません。 外国人が相続人となるとき、当然に ...

続きを見る

「遺産分割」の人気解説はこちら!

遺産分割

2019/1/11

疎遠だった元父の子に「相続放棄してほしい」と言われたら【相続Q&A】

今回の相続相談は、両親の離婚をきっかけとして母方についていき、その後疎遠となっていた実の父親が死亡したときの相続についてのご相談です。相続問題に詳しい弁護士がQ&A形式で回答します。 両親が離婚したとき、別れた実の親とは、もう長年連絡をとっていないという人は多くいます。このような場合でも、母方にも父方にもそれぞれの生活があります。別れた実の父が、新しい妻と家庭を持ち、新たに子をもうけたとき、その子から「相続放棄をしてほしい」という連絡が来ることがあります。 夫婦の離婚率は3割~4割ともいわれており、一度結 ...

ReadMore

遺産分割

2019/2/15

遺留分減殺請求の相手方・請求先・判断方法・順番は?【弁護士解説】

民法で定められた相続人(法定相続人)が、最低限相続によって承継することが保障されている相続分を「遺留分」といい、遺留分を侵害されたときに、多くの財産を入手した人に対して財産を取り返すために行使されるのが「遺留分減殺請求権」です。 ところで、遺留分減殺請求権を行使する相手方、すなわち、請求先は、誰なのでしょうか。「遺留分を侵害している相手方」に行うのが原則ですが、「遺留分の侵害のされ方」も様々に異なるため、相手方・請求先が誰か迷う場合があります。 例えば、遺留分を侵害する生前贈与、遺贈(遺言による贈与)が複 ...

ReadMore

遺産分割

2019/3/1

相続した不動産の「換価分割」の注意点6つを、弁護士が解説!

相続人が複数いるとき「財産をどのように分割するか」、すなわち、遺産分割が、相続を「争続」とする最大の要因です。そして、特に不動産(土地・建物)は、相続財産に占める割合が大きいにもかかわらず、「きっちり半分に」という分割が難しいため、遺産分割の最大のハードルとなる難しい財産です。 「換価分割」は、相続した不動産を売却し、その売却代金を分割する方法であり、「お金に換える」わけですから、いかなる割合にも分けることが出来る便利な遺産分割方法です。 ただ、相続財産(遺産)を相続人間で公平かつ平等にわけることができる ...

ReadMore

遺産分割

2018/10/25

代襲相続とは?範囲・割合をケースごとに弁護士が解説!

「代襲相続」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。「代襲相続」を知ることによって、いざ相続が発生したとき、誰が、どれだけの遺産(相続財産)を相続できるかがわかります。 通常、相続が発生したときには、民法という法律に定められた相続人である「法定相続人」が相続をするのが原則となります。 しかし、「法定相続人」が、相続が発生したとき、既に死亡してしまっていた場合に発生するのが「代襲相続」です。 そこで今回は、「代襲相続」が起こるケースで、相続は具体的にどのように進むのか、「代襲相続」の範囲、割合など ...

ReadMore

遺産分割

2018/11/16

指定相続分とは?法定相続分との違いは?

相続財産(遺産)を相続する割合のことを、「相続分」といいます。そして、相続分には、指定相続分と法定相続分とがあります。 相続財産の分け方は、遺言によって希望通りに決めることができますが、遺留分等に注意しなければなりません。指定相続分について民法の条文は次の通りです。 民法908条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。 今回は、指定相続分についての基礎知識、法定相続分との違い、指 ...

ReadMore

[toc]

亡くなった人の国の法律が優先される

お亡くなりになった方が外国人の場合、その国籍のある国の相続についての法律を検討する必要があります。相続が発生するとき、「どこの国の法律が適用されるか。」を「準拠法」といいます。

日本では、お亡くなりになった方(被相続人)の国籍が日本ではない場合、被相続人の本国の法律が、相続に適用されることとなっているからです。長年日本在住であっても同様です。

相続人の範囲、法定相続分などのルールが、国によって異なるため、準拠法を正しく判断することが重要です。どの国の法律で相続するかで、相続人になれる人、なれない人が出てきます。

注意ポイント

ただし、被相続人の国籍の本国法が、「被相続人のお亡くなりになった地の法律にしたがって相続する」という定めをしていたときは、お亡くなりになった日本の法律が適用されることもあります。

本国法にしたがった結果として準拠法が日本法となることを法律の専門用語で「反致」といいます。

以上のことは、日本で相続の準拠法を定める「法の適用に関する通則法」という国際私法にあたる法律で、次のように定められています。

法の適用に関する通則法36条(相続)

相続は、被相続人の本国法による。

法の適用に関する通則法37条(遺言)

1 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。
2 遺言の取消しは、その当時における遺言者の本国法による。

法の適用に関する通則法41条(反致)

当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。(以下略)

したがって、日本に在住する外国籍の人(外国人)がお亡くなりになり、相続が発生するときに、どの国の相続のルール(法定相続分、遺留分、遺言など)に基づき遺産分割をしたらよいかを判断するためには、日本法だけでなく外国法に関する理解も必要不可欠です。

中国、韓国、台湾など、日本にも多くの人が来ている外国であれば、前例や文献などから相続のルールを調査し、遺産分割を進めることが可能ですが、マイナーな国の場合、外国法の専門家の協力を得なければ遺産分割が困難な場合もあります。

参 考
相続人に外国人がいるケースは、こちらをご覧ください。

国際化が進むにつれて、国際結婚なども当たり前に行われるようになりました。すると、お亡くなりになった方のご家族の中に、外国籍の方(外国人)がいることも少なくありません。 外国人が相続人となるとき、当然に ...

続きを見る

被相続人がアメリカ国籍の場合は?

お亡くなりになった方(被相続人)がアメリカ国籍の場合には、被相続人の本国法としてアメリカ法における相続のルールが、その相続・遺産分割・遺言について適用されます。

しかし、アメリカの場合、州によって法律(州法)が異なるため、どの州の法律が適用されるか判断する必要があります。先ほど紹介した法の適用に関する通則法は、アメリカ州法のように国内に複数の法律があるとき、相続に適用される「本国法」を次の通り定めています。

法の適用に関する通則法38条3項

当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合には、その国の規則に従い指定される法(そのような規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある地域の法)を当事者の本国法とする。

つまり、被相続人の国籍がアメリカのときの相続の準拠法の判断では、「国の規則」がなく、「最も密接な関係がある地域」を判断する必要があります。これは、住所地、出生地などから総合的に判断しなければなりません。

被相続人が多重国籍の場合は?

日本では、多重国籍、二重国籍は認められていませんが、海外では多重国籍が容認されている国もあるため、日本でお亡くなりになる外国人の中にも、二重国籍の方もいます。

日本でお亡くなりになった外国人が二重国籍のとき、その二重国籍のうちの1つが日本国籍であるかどうかによって、相続法に適用される「本国法」の判断が変わります。

まず二重国籍のうちの1つが日本国籍である外国人がお亡くなりになったときの相続・遺産分割・遺言のルールは日本法によることとなります。

法の適用に関する通則法38条1項

当事者が二以上の国籍を有する場合には、(・・・中略・・・)ただし、その国籍のうちのいずれかが日本の国籍であるときは、日本法を当事者の本国法とする。

二重国籍に日本国籍が含まれない場合には、常居所、もしくは、密接関係地が、その相続に適用される「本国法」となります。そのため、二重国籍が例えばイギリスとフランスなどであったとしても、長年日本に居住した外国人の相続に日本法が適用されることがあります。

法の適用に関する通則法38条1項

当事者が二以上の国籍を有する場合には、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国があるときはその国の法を、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国がないときは当事者に最も密接な関係がある国の法を当事者の本国法とする。(以下略)

被相続人が外国籍(外国人)のときの相続税は?

お亡くなりになった方が外国籍(外国人)であったとしても、相続税の課税は、その住所地によって決まることとなっています。

そのため、日本に居住する外国人がお亡くなりになった場合、一定の例外を除き、日本にある不動産、預貯金などの相続財産(遺産)だけでなく、海外に所有していた財産もまた、日本の相続税の対象となります。

相続税は、相続によって財産を取得する人(相続人)が支払う必要があるため、相続人が日本に住んでいるかどうかで、相続税がかかるかが決まります。相続税の計算のルール、その際の法定相続分など、相続税の申告期限も、日本の法律(民法、相続税法)に従います。

二重課税が生じてしまう不公平がある場合、例えば、日本法でも海外法でも相続税の対象となってしまう相続財産(遺産)があったときは、「外国税額控除」の制度により、日本で申告・納付する相続税から控除することができます。

被相続人が外国籍(外国人)のときの相続登記は?

お亡くなりになった方が外国籍(外国人)であったとしても、相続財産(遺産)の中に日本の不動産(土地・建物)が含まれる場合、その不動産登記は、日本法にしたがって行われます。日本法で登記のルールを定めるのは「不動産登記法」です。

相続登記を行うとき、お亡くなりになった方(被相続人)の戸籍などが必要となりますが、日本のような戸籍が存在しない国も多くあります。戸籍制度のない国でも、出生、死亡、婚姻を管理し、証明書を発行してくれる国の場合、その証明書で代用することができます。

また、在日領事館や公証人の認証を受けた宣誓供述書により、相続人を確定する作業が必要となります。宣誓供述書「私達だけが相続人であることを宣誓します。」という内容であり、日本語の訳文をつけることで相続登記のときの戸籍の代用となります。

参 考
相続登記にかかる費用と司法書士報酬は、こちらをご覧ください。

相続財産に、不動産が含まれている場合には、遺言、遺産分割協議などによって決まった相続分にしたがって、不動産の登記名義を変更する必要があります。 相続が発生したときに、相続分にしたがって不動産の登記名義 ...

続きを見る

国際相続は、「相続財産を守る会」にお任せください!

いかがでしたでしょうか。

お亡くなりになった方(被相続人)が外国人(外国籍)であり、日本で亡くなった場合には、原則として、亡くなった方の本国法で相続がされるため、日本法のルール(相続分、相続人の範囲、相続順位、相続放棄など)とは異なります。

どの国の法律が適用されるかは、相続に関する法律だけでなく、国際私法についての高度な知識が必要な判断です。また、日本法が適用される場合でも、相続登記、相続税について注意すべきポイントが多くあります。

日本人の国内相続とは異なる外国人の国際相続に関する問題は、法律と税金、日本法と外国法の絡みあう、複雑で難しい問題ですので、相続に強い専門家(弁護士、税理士など)にお任せください。

ご相談の予約はこちら

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

弁護士法人浅野総合法律事務所

弁護士法人浅野総合法律事務所は、銀座(東京都中央区)にて、相続問題、特に、遺言・節税などの生前対策、相続トラブルの交渉などを強みとして取り扱う法律事務所です。 同オフィス内に、税理士法人浅野総合会計事務所を併設し、相続のご相談について、ワンストップのサービスを提供しております。

-相続手続
-

Copyright© 相続の専門家(弁護士・税理士)が教える相続の相談窓口│相続財産を守る会 , 2023 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.