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共同遺言の禁止とは?夫婦で遺言書を作成するときの注意点

共同遺言とは、二人以上の人が一つの遺言書に遺言を記載し、その遺志を表明する行為です。しかし、日本の民法では、この共同遺言が認められていません。

共同遺言が禁止されている理由を知り、その代替策を知る必要があります。共同遺言が認められないのは、遺言の真意が曲解されるリスクを避け、遺言者一人一人の意向を明確にするためです。遺言は最後の意思表示として極めて重要です。正確で、真実性をもったものとするためにも、共同遺言のような複雑な手続きは間違いのもとだからです。

今回は、共同遺言の禁止と、夫婦で遺言書を作るときの注意点を解説します。

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共同遺言の禁止

共同遺言とは、二人以上の人が一つの遺言書に遺言内容を記載し、それに共同で署名押印するという遺言の形態を指します。通常、遺言は個人ごとにする個別の行為であり、共同遺言を作成するような状況は特殊なケースでしょう。そして、共同遺言は、日本では法律で明確に禁止されています。

民法975条(共同遺言の禁止)

遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。

民法(e-Gov法令検索)

共同作成名義の遺言について、一方の当事者に形式不備があった場合でも、共同遺言としてその全体が無効であると判断されています。

裁判例でも、夫婦の自筆証書遺言について、一方が他方の署名を代筆し、自署の要件を満たさない場合でも、民法975条によって禁止された共同遺言として無効だと判断されました(最高裁昭和56年9月11日判決)。

遺言書の基本について

共同遺言が禁止されている理由

共同遺言が禁止されている主な理由は、次のものです。

  • 遺言者の真意が不明確になる
    複数の遺言者が同じ文書に遺言を記載すると、互いの遺言内容に影響を及ぼし合い、遺言者各自の真意が曖昧になってしまいます。
  • 自由に撤回できなくなる
    遺言は本来自由に撤回したり変更したりできるものですが、夫婦が共同で書く共同遺言を許すと、夫婦の一方が遺言を変更したくても、自分の意向だけでは遺言を撤回や変更できなくなってしまいます。
  • 混乱を避ける
    夫婦の関係が良好で、意思が統一されていればよいですが、そのようなケースばかりではありません。共同遺言を許し、1つの遺言書に書かれた記載が矛盾すると、混乱を招いてしまいます。
  • 自筆証書遺言の形式不備のおそれ
    自筆証書遺言では、全文を自署する必要があり、共同遺言を許すと、夫婦のいずれかに要件のミスがあるだけで遺言が無効になってしまいます。また、どの部分をどちらが自署したかも曖昧になり、遺言書の筆跡鑑定を要するなどトラブルのもとです。

遺言を巡るトラブルが起こりづらいようにするには、遺言の明確性と確実性が必要であり、この観点から共同遺言には問題があり、禁止されているのです。

この共同遺言の禁止は、自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言といった遺言の種類を問わず禁じられています。

例外的に有効になるケース

以上の通り共同遺言は禁止されるのが原則なので、作成時に気付けば、避けるべきは当然です。ただ、実際に問題のありそうな遺言が発見されたとき、例外的に有効となるケースもあります。故人の意思を少しでも遺産分割に反映するために、原則に対する例外も理解しておいてください。

なお、いずれも裁判によって遺言書の有効性が争われた結果であり、同じ結果になるという保証はないため、これから遺言を残す人は、できるだけ共同遺言にならないよう注意してください。

  • 夫婦の財産の処分方法が書かれているが作成者は片方のみである場合
    夫の遺言書中に、妻が死亡した場合の遺産の処分方法が記載されていたケースで、夫が自身の遺産の処分について書いた部分のみ有効であると判断した(東京高裁昭和57年8月27日決定)。本裁判例では妻もまた同一の意思である旨を示す趣旨から妻の名前が書き加えられていたものの、共同遺言ではなく夫の単独遺言として有効と判断された。
  • 容易に切り離すことができる場合
    夫婦がそれぞれ書いた遺言書が一体となって綴じられているが、2つの遺言書を切り離すことが容易に可能だというケースで、遺言書を有効なものと判断した(最高裁平成5年10月19日判決)。

なお、夫婦それぞれの遺言が、同一の封筒のなかに入れられているだけでは共同遺言とはいえず、それぞれの遺言が有効となります。

共同遺言と同じ目的を達成する代替手段

最後に、共同遺言は禁止であるとして、それと同じ目的を達成するための代替手段について検討しておきます。共同遺言を作りたいと考えている人には、次のような果たしたい目的、動機があります。

  • 両親の気持ちを子供に伝えたい
  • 「子供に財産を残す」というのは夫婦共通の意思である
  • 子供達にトラブルにならずスムーズに相続させたい

このような夫婦の思いを生かすための代替手段には、以下の方法があります。

夫婦でよく相談して遺言を残す

まず、共同遺言として禁止されるのは、同じ紙に遺言を残すことです。夫婦がよく相談しながら、一緒に遺言書を書くことは禁止されていません。その際に、互いの遺言の内容を見せあい相談することも、自筆証書遺言、公正証書遺言なら可能です(秘密証書遺言では不可)。

夫婦の納得のもとに各自の遺言が作成したという事情は、遺言書の付言事項として書き加えておきます。付言事項に法的な効果はないものの、相続人らに夫婦の思いを伝える役に立ちます。

なお、公正証書遺言では、夫婦が他方の証人となることはできません。

遺言に条件を付ける

共同遺言を作成する動機として、夫婦それぞれのライフプランによって場合分けをして遺言を残したい、という点が挙げられます。このような目的は、法律で禁止されている共同遺言でなくとも達成することができ、具体的には、夫婦各自の遺言に条件を付けて記載すれば足ります。

例えば「夫が先に死亡した場合に遺産Aは妻に相続させる。妻が亡くなっている場合は長男に相続させる」といった内容の遺言です。この場合、死亡の前後関係によって遺言を作り直す必要もありません。ただし、互いの遺言内容が矛盾しないよう注意が必要で、書き方が難しくなるので弁護士など専門家の助けを借りるのがお勧めです。

夫婦の財産を信託する

最後に、信託を活用する手段もあります。民事信託の方法によるならば、夫婦の財産を信託契約を締結した受託者に託し、一定の条件のもとに管理してもらうことができます。

まとめ

今回は、共同遺言の禁止についての法律知識を解説しました。

共同遺言の禁止は、遺言者の真意を明確にし、遺言に関する法的な紛争を最小限に抑えるためのルールです。遺言書を作成する際は、遺言者一人一人が自身の意思を明確に表現し、法的な要件を満たして作らなければなりません。

夫婦が十分に話し合って、残された他方や、子供のために、財産の分け方を遺言書に残しておくことは非常に重要です。しかし、遺言には法的な要件があり、共同遺言は禁止されているため、後から無効と判断されないよう作成時から十分に注意しなければなりません。

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