戸籍は、家族構成や先祖に関する貴重な情報源です。その分、古くから記録されているため読み方には難しい部分があり、戸籍の見方には独特のコツがあります。相続手続きに必要な戸籍は複数枚に及び、古い戸籍がある場合には特に、その読み方は複雑です。
スムーズに手続きを進めるには、戸籍の種類や読み方、見方を知る必要があり、手続きが複雑な場合には、司法書士に任せるのがお勧めです。
今回は、戸籍の基本知識から始まり、戸籍謄本と抄本の違いや、実際の読み解き方についてまで、わかりやすく解説します。戸籍情報の正確な読み方を理解することは、自身の家族や先祖について深く知れるだけでなく、相続の手続きの際にも役立ちます。
戸籍の基本
まず、戸籍についての基本的な知識を解説していきます。
戸籍は、現在は夫婦を基本的な単位として家族を表す記録ですが、戦後の民法改正前は「戸主制度」があり、一家の主である「戸主」の戸籍に、複数の家族が記録される「家」の考え方が根強く残っていました。
戸籍とは
戸籍は、個人の出生、婚姻、死亡などの重要なライフイベントを公的に記録した公文書であり、家族単位で作成されます。日本における戸籍制度は、その国民の基本的な記録となっており、個人の特定や身分関係を証明する情報として機能します。
家族構成が変更されると戸籍が新たに作成されたり、記載が修正されたりするため、戸籍を見れば人の家族関係の移り変わりが全て分かります。戸籍は、身分関係の証明として用いられるため、相続手続きだけでなく、パスポート取得など他の場面でも利用されます。
戸籍謄本と抄本の違い
戸籍には、主に謄本と抄本があります。戸籍謄本は、戸籍の全情報を含む完全なコピーであり、家族に含まれる全ての人とその変更履歴が記載されます。一方、戸籍抄本は、その一部を抜粋したもので、目的に合った情報のみを記録しています。
- 戸籍謄本
戸籍の原本の内容を全部写している書面 - 戸籍抄本
戸籍の原本の内容の一部のみを写している書面
※ 現在は戸籍の電子化に伴い、全部事項証明、個人事項証明と名称変更されました。
取得費用は、謄本、抄本いずれも一律で、1通450円程度が通常です。
相続手続きを初めとした行政の関わる手続きでは、その使用目的に応じて、謄本か抄本かを選択する必要があります。戸籍抄本は、対象となる人の戸籍情報しか記載されないため、誰の戸籍抄本が必要かなど、用途に応じて選択する必要があります。
なお、戸籍の原本は、本籍地の役所に保管されており、たとえ自身のものでも取得することはできません。
現在戸籍とその他の戸籍の違い
戸籍謄本も抄本もいずれも、現時点の戸籍は、現在戸籍と呼びます。現在戸籍ではないその他の種類には、次のような違いがあります。
- 除籍
既に死亡したり移動したりして誰もいなくなった場合に残される - 改製原戸籍
法改正される前の古い戸籍 - 戸籍の附票
戸籍単位で記録されている住所履歴の証明書
戸籍の見方のポイント
戸籍には、様々な専門用語が散りばめられているため、その見方や読み方にはポイントがあります。戸籍に使用された用語のうち、次の点をよく確認しておいてください。
- 本籍地
戸籍は、現在の住所地ではなく、本籍地を管轄する市区町村役場に保管されます。つまり、戸籍が保管されている場所が、本籍地です。多くの方にとっていわゆる実家が本籍地となっています。 - 筆頭者
戸籍の筆頭者は、戸籍の一番最初に登録された人です。夫婦が夫の氏を名乗る場合は、夫が筆頭者となります。住民票の世帯主と同じである必要はなく、戸籍の筆頭者は死亡しても変わりません。結婚すると新たな戸籍を作成し、その筆頭者になります。最終的に、誰もいなくなった戸籍は閉鎖され、除籍となります。 - 入籍
婚姻や養子縁組によって、他の戸籍に入ることを指します。 - 配偶者
法律上の婚姻関係にある夫婦のことを指します。婚姻は、結婚届を提出することで成立し、離婚届を提出することで解消されます。 - 嫡出子
婚姻関係にある男女を父母として出生した子のことです。 - 嫡出でない子
婚姻関係にない男女のもとで生まれた子のことです。 - 養子
血縁関係にない親子関係のことで、養子縁組によって創出され、養子離縁によって解消されます。 - 転籍
本籍地を移動させることです。
戸籍の取り方
最後に、戸籍の取り方については、謄本も抄本もいずれも、本籍地の市区町村役場に申請して取得します。役所によって名称は異なりますが、市民課、住民課、戸籍課といった戸籍の発行業務を担当する窓口に申請書を提出し、手続きを行います。本籍地が不明の場合には、住民票を取得することで本籍地の記載を調べることができます。
- 戸籍の請求先
本籍地のある市区町村役場 - 戸籍を請求できる人
本人、配偶者、直系血族及びその代理人
請求する戸籍に、自身との親族関係が記載されていないときは、自分の戸籍謄本などの親族関係を証する戸籍を要することがあります。なお、相続の開始後は、戸籍法10条の2第1項により、配偶者、直系血族以外の相続人についても、亡くなった方(被相続人)や他の相続人の戸籍を入手できます。
戸籍は郵送請求することもでき、必要書類は次のものです。
- 申請書
窓口もしくは役所のサイトで入手します。 - 手数料
定額小為替を郵便局で購入し、同封します。 - 請求者の身分証明書
- 返信用封筒
- (代理人の場合)委任状
戸籍を請求できる人は、本人、配偶者、直系血族ですが、これらの人から委任状を預かれば、代理人として戸籍を取得できます。相続では、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍が必要となるなど、集める戸籍が複数となるため、司法書士など慣れた専門家に任せるのがお勧めです。
相続に必要な戸籍の集め方について
まとめ
今回は、相続手続きを行うときに重要な必要書類となる戸籍について、その種類や名称、読み方、見方、取り方といった基本知識を解説しました。
相続手続きに必要となる戸籍を集める手間が多くかかりそうな複雑な相続こそ、遺産分割でもめやすく、相続財産も高額となれば相続税の申告・納付も必要です。このような事案では、司法書士の助けが必要なのはもちろんのこと、専門家がチームとなってサポートすべき場面が多くあります。