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死亡退職金の相続税はいくら?課税・非課税の区別と計算のしかた

在職中に死亡してしまったとき、勤務する会社の制度によっては死亡退職金、弔慰金といった名目の金銭が支給されることがあります。このような死亡を原因として支給される金銭を家族が受け取ったとき、みなし相続財産となり、相続税の対象となることがあります。まずは、就業規則、退職金規程といった会社の規程類に規定があるかどうか確認してください。

一方で、死亡退職金には非課税枠があり、非課税限度額の範囲に収まるならば相続税はかかりません。本解説では、死亡退職金の相続税について、課税・非課税の区別と計算のしかたを解説します。

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死亡退職金と相続税の基本

まず、死亡退職金と相続税の基本的な知識について解説します。

死亡退職金とは

死亡退職金は、勤務していた社員が死亡した際に、会社の規定によって支払われる金銭を指します。

死亡退職金については、法律によって支払う義務が定められているものではなく、あくまでも勤務先と社員との間の雇用契約に基づいて支払われるものです。そのため、どのような場面で、誰にいくらの金銭が払われるか(もしくは払われないか)は会社によって異なるため、まずは雇用契約書や就業規則、退職金規程といった契約内容となる書類を確認する必要があります。

名称もまた企業によって異なり、死亡退職金、退職手当、功労金など、様々に呼称されます。

死亡退職金の受取人

死亡退職金の受取人は、退職金規程などに定められた受取人が受け取るものとされています。ただ、退職金規程のなかには受取人が定めていないものもあるため、次の3つのパターンが想定されます。

  • 退職金規程などに受取人が定められている場合
    退職金規程に定められた受取人
  • 退職金規程などに受取人が定められていない場合
    遺産分割協議により決定した受取人

法定相続人が受け取るのが基本

死亡退職の場合には、死亡退職金を遺族に支給する旨が定められていることが通例です。退職金規程によっては受給者の順位が定められている場合もあります。また、退職金規定などに受取人が定められていない場合には、遺産分割協議により受取人を決定することになります。

そのため、退職金は基本的に法定相続人が受け取ることになります。

法定相続人の順位と範囲について

退職金規程に特別な規定があるときは例外

退職金規程に特別な規定があるときは、法定相続人以外が受け取ることになることも想定されます。誰が受取人に設定されているか確認するため、退職金規程などの確認が必要です。

死亡退職金に相続税がかかる理由

結論として、死亡退職金には相続税が課税されます。その理由は、死亡退職金が、みなし相続財産となるからです。相続税の課税対象となる退職金の範囲は、次の通りです。

  • 勤務先から被相続人に支給されるべきであった退職手当金など
  • 死亡後3年以内に支給が確定した退職手当金など

課税対象となるのは、必ずしも金銭に限られず、現物支給も含みます。なお、在職中に死亡し、死亡時点から3年以内に支給される場合だけでなく、退職後に死亡した場合にも、死亡から3年以内に支払いが確定する退職金については、相続税の対象となります。

そして、亡くなった方の家族に死亡退職金が払われるとき、その金額もまた、みなし相続財産となり、相続税が課税されます。本来の相続財産は、故人が生前に所有していた財産のことですが、死亡に起因して受け取ることのできる一定の財産(死亡退職金、生命保険など)もまた、みなし相続財産として課税されるのです。

ただし、被相続人に扶養され、その収入によって生活していた方を保護するために、相続人に対して支給される退職手当金については、一定の非課税枠があります。

死亡退職金の相続税の計算方法

次に、死亡退職金にかかる相続税の計算方法について解説します。死亡退職金の相続税を算出するには、その課税対象となる範囲と、非課税限度額を知る必要があります。

死亡退職金の相続税の計算式

死亡退職金の相続税は、死亡退職金から非課税限度額を控除した残額に対して課税されます。また、残額がある場合には、その他の相続財産と合計し、基礎控除を超える金額(課税遺産総額)について、相続税が課税されます。計算式にすると以下の通りです。

  • 死亡退職金 - 非課税限度額 = 課税される死亡退職金
  • 課税される死亡退職金 + その他の相続財産 - 基礎控除 = 課税遺産総額
  • 相続税額 = (課税遺産総額 × 税率) - 控除額

なお、相続税の税率と控除額は、次の速算表を参考にしてください。

スクロールできます
法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
1,000万円超から3,000万円以下15%50万円
3,000万円超から5,000万円以下20%200万円
5,000万円超から1億円以下30%700万円
1億円超から2億円以下40%1,700万円
2億円超から3億円以下45%2,700万円
3億円超から6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円
参照:国税庁タックスアンサー No.4155 相続税の税率

相続税がかかる死亡退職金の範囲

死亡退職金の相続税を計算するには、課税対象となる退職金の範囲を理解してください。死亡から3年以内に支給が確定した金額が、課税対象となります。なお、3年を超えてはじめて退職金の支給が決定することは多くはないですが、その場合には相続税ではなく、所得税が課されます。

死亡退職金の受取人が複数いる場合には、支給された額に応じて相続税を払う必要があり、非課税限度額についてもその取得した額に応じて割り付けられます。

死亡退職金の非課税限度額の計算方法

相続人の生活に配慮するため、被相続人の使用者から、相続人に対して支給された死亡退職金には、一定の非課税枠があります。これを、死亡退職金の非課税限度額と呼びます。

死亡退職金の非課税限度額は、次のように計算されます。

  • 死亡退職金の非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

なお、次の人は救済の必要がないと考えられており、非課税枠の適用がありません。

  • 続放棄をした人
  • 相続欠格相続廃除によって相続人ではなくなった人
  • 死亡退職金を受け取った相続人以外の人(内縁や事実婚の配偶者など)

死亡退職金受取時の注意点

次に、死亡退職金を受け取るときの注意点について解説します。

弔慰金、葬儀費用は非課税が原則

家族が死亡したときに会社から支給される弔慰金、葬祭料は非課税が原則であり、相続税はかかりません。これは、弔慰金や葬祭料が、あくまで会社の「お気持ち」、つまり、遺族への配慮に過ぎないからです。

したがって、名目は弔慰金、葬祭料でも、実質としては死亡退職金に該当する場合には、相続税を課税される可能性があります。常識で考えて高額すぎる弔慰金や葬祭料は、実質は退職金であったと認定されやすくなります。相続税の分野では、弔慰金などとして払える上限は次のように考えられています。

  • 業務上の死亡のとき
    死亡当時の月額給与の3年分に相当する金額
  • 業務外の死亡のとき
    死亡当時の月額給与の6ヶ月分に相当する金額

なお、弔慰金や葬祭料の実質が死亡退職金であって、相続税を課されるときにも、非課税枠の適用があるので計算の際には注意してください。

相続放棄しても死亡退職金はもらえる

死亡退職金はみなし相続財産です。みなし相続財産とは、民法上の相続財産ではありませんが、相続税法上、相続や遺贈により取得した財産とみなされる財産です。

みなし相続財産は、遺産分割協議の対象とならず、指定された受取人が受け取ることができる財産です。そのため、相続放棄しても受取人に指定されている場合には受け取ることができます。

相続放棄の基本について

死亡退職金の相続税の計算の具体例

次に、死亡退職金の相続税についてわかりやすく説明するために、死亡退職金の相続税の計算について、具体例で解説します。

事例

【家族構成

  • 夫が死亡したケース
  • 遺族は妻と、子2人

【死因】

  • 業務外の交通事故による死亡

【会社より支給された金額の内訳

  • 死亡退職金 2,000万円
  • 弔慰金 200万円
  • 死亡月の給与 40万円
  • 賞与 100万円

このケースで、相続税の計算は、以下の通りです。

  • 死亡退職金のうち相続税の対象となる額
    2,000万円-(500万円×3人)=500万円

※ 業務外の死亡の場合には、給与月額の6ヶ月分を超えない弔慰金は非課税となります。今回の例では、弔慰金200万円は、死亡当時の月額給与の6ヶ月分240万円(40万円×6ヶ月)を超えないため、相続税はかかりません。

  • その他の財産のうち相続税の対象となる額
    給料40万円 + 賞与100万円 = 140万円

以上より、課税対象となる財産の合計額は640万円(500万円+140万円)となります。

死亡退職金の相続税によくある質問

最後に、死亡退職金の相続税についてのよくある質問に回答しておきます。

死亡退職金の相続税を申告するときの必要書類は?

死亡退職金の相続税申告について、必要書類は次の通りです。

【勤務先より取得する資料】

  • 支払調書
  • 弔慰金などの通知書
  • 退職金規程

【その他の資料】

  • 確定給付企業年金、確定拠出年金、小規模企業共済などの支払通知書

死亡退職金はいつ支払われる?

死亡退職金は、請求日から7日以内に支払われます。ただし、就業規則に退職金の支払期日を明確に定めている場合は、就業規則で定めた支払期日に支払われることになります。そのため、会社により支払期日が異なる可能性があるため、事前に確認が必要です。

まとめ

今回は、死亡退職金と相続税の関係について解説しました。家族が亡くなると、必要な手続きに忙殺され、勤務先との関係の清算にまで手が回らない方も多いですが、死亡退職金は高額になることもあるので、忘れないようにしましょう。

死亡退職金は、相続税の対象となりますが、相続人への配慮として非課税枠が定められており、非課税限度額を下回る金額については相続税はかかりません。正確な計算方法を知り、税金で損しないようにしてください。

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