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相続手続

「名字が途絶えてしまう」という理由で氏を変更できる?【相続Q&A】

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今回の相続相談は、「名字が途絶えてしまう」という理由で、氏の変更をすることができるのか、という問題について、戸籍に詳しい司法書士がQ&A形式で回答します。

日本は「家社会」であり、家を守ることが重要とされ、長男が代々、その家を守り、その家の名字(氏)を継ぐものとされていました。現代では「家社会」の文化はなくなっていますが、「名字が途絶えてしまう」ことを危惧するご家庭は、まだまだ多いです。

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相続相談の内容

質問

私は現在19歳で、東京で大学生をしています。しかし、実家の両親が離婚の危機で、私の親権をどちらが得るかについて揉めているようです。私は母方についていきたいのですが・・・。

私の父が、私の親権をとりたいのは、私が「長男」だからです。「この家を継ぎ、墓を守っていくのはお前だ」と昔から何度も諭されたこともあります。そして、私の父は、万が一、母が親権を得る場合であっても、「名字が途絶えてしまうから、氏は変更しないように」とのことでした。

私としては、母についていきたいと考えていますが、母は、名字を変え、結婚前の旧氏に戻したいようです。私も、母と一緒に旧姓に戻す予定でいます。

この場合、父親のいうように、「名字が途絶えてしまう」という理由で、一度旧姓に戻した氏を、再度、父親の氏に変更することはできるのでしょうか。

今はいいのですが、父は、自分が死んだときの相続で、自分と同じ氏の人にしか相続財産を与えないといっています。もし母も私も、母の実家の氏に変更してその後は氏を戻さないときには、父は自分の兄弟(私の叔父)に対して全財産を譲るという遺言を書くといっています。

相続専門家(司法書士)の回答

回答

司法書士の吉越です。今回の質問について、私が回答します。

人の氏(名字)は、生涯不変のものではなく、ライフイベントにあわせて変更することができます。結婚、離婚、養子縁組や離縁を理由とする氏(名字)の変更がその例です。そして、そのようなライフイベントのタイミングでなくても、家庭裁判所の許可を得ることで、氏(名字)の変更を行うことができます。

これを「氏の変更許可」といいます。

しかし、家庭裁判所の氏(名字)の変更は、どのような理由でもできるわけではなく、やむを得ない事由(理由)があるの場合(戸籍法107条第1項)にしか認められません。

そして、今回のご相談者のように、「父親の名字が途絶えてしまう」という理由ですと、基本的には変更は認められません。

ただし、お母様の戸籍に入った後、ご本人の21歳の誕生日(2022年4月以降に成人する方は19歳の誕生日)の前日までであれば家庭裁判所の許可を得ずに父親の名字に戻すことが可能です(民法791条第4項)。

――では、離婚によって母親の氏を名乗り、相続財産(遺産)を得るためにその後に父親の氏に変更をした後、さらに母親の氏に戻す、といったことが可能なのでしょうか。家庭裁判所の許可を得られるのでしょうか?

司法書士吉越:家庭裁判所で、氏の変更の許可を得ることは、厳しい判断であるとお考え下さい。何度も氏(名字)の変更を申し立てることはどうしても心証が悪く、繰り返し申し立てをすることが権利の濫用であると判断した裁判例もあります。

その結果、氏(名字)の変更について、仮に「離婚によって母親の氏を名乗った後、相続財産(遺産)を得るために父の氏に変更」することまでができたとしても、その後に「更に母親の氏に戻す」ことが認められず、父親の氏のままとなってしまう危険があります。

特に、その時点で、お母様がお亡くなりになってしまっていた場合、母方の氏(名字)を名乗る理由が少なくなりますので、家庭裁判所の許可を得ることは難しいでしょう。。

もし、ご相談者の希望を叶えるのであれば、父方の親族、たとえば父方の祖父母や叔父等と養子縁組をすることで、父方の氏を名乗ることができます。養子縁組であれば、お父様の死後、家庭裁判所の許可を得ずに離縁をして、母方の氏に戻ることも可能です。



――次に、仮に私が父親の意向にしたがわずに、父親の氏を生涯名乗らないことを決め、宣言したときに、父親が言っているような「全ての相続財産(遺産)を自分と同じ氏の兄弟に与える」という内容の遺言が有効なのでしょうか。私は父の名字を名乗らない限り、相続財産(遺産)をもらえないのでしょうか?

司法書士吉越:確かに、感情的になったお父様が、そのような遺言書を書くことは覚悟しておいてください。しかし、父母が離婚をしたとしても、あなたがお父様の子である事実にかわりはありません。

そのため、「子」の続柄として、第一順位の法定相続人となります。遺言によって指定された「兄弟姉妹に全財産を相続させる」という「指定相続分」のほうが、「法定相続分」に優先するものの、「子」であるあなたには、「法定相続分の2分の1」は、遺留分として保証されています。

したがって、このような遺言書をお父様が書いてしまった場合であっても、全ての相続財産(遺産)を取得した叔父さんに対して遺留分減殺請求権を行使することで、遺留分相当額の財産を取りもどすことができます。

参 考
遺留分減殺請求権の行使方法は、こちらをご覧ください。

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司法書士 吉越 清顕

司法書士吉越清顕は、弁護士法人浅野総合法律事務所に所属する司法書士です。東京都中央区、銀座駅から徒歩3分の利便性の高い、相続登記・戸籍に強い司法書士です。 同場所に所在する税理士法人浅野総合会計事務所と連携をとることで、ご相談者にとって最適なトータルサポートによる相続問題の解決を目指します。

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