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子供名義の口座を開設すべき?メリットとデメリットや贈与税のリスク

子供名義の口座の開設は、資産形成や教育資金の準備として、多くの親が検討する選択肢です。お年玉を親が管理したり、子供名義で積立投資したりする家庭も珍しくありません。

しかし、子供名義の口座を利用する方法は、慎重に考えるべきメリットとデメリットがあります。また「そもそも親だけで作れるのか」といった疑問から、贈与税のリスクの不安まで、様々な心配が山積みです。責任ある親として、状況に応じた最善の選択をすべきで、そのために正しい情報を取捨選択する必要があります。

今回は、子供名義の口座について、将来に備えた資産形成を計画するのにどんな点に配慮すべきかを解説します。本解説を通じて、子供名義の口座の開設があなたの家族にとって最良の選択かどうかを判断する知識が得られます。

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子供名義の口座とは

子供名義の口座では、まだ小さい子供を所有者として開設するため、キャッシュカードや通帳、入出金は親が管理することを前提とする家庭が少なくありません。そのため、金融機関では未成年の名義でも口座を作ることが可能となっています。

いずれ育って大きくなったらまとまった資金をプレゼントしようと考える親もいるでしょう。口座を作ったことを子供自身に共有する場合もあれば、大きくなってから通帳などと合わせて口座が有ると伝えて贈与する場合もあります。

子供名義の口座には様々な用途や目的があります。以下では、目的ごとに詳しく解説します。

正月のお年玉や祝い金の貯蓄

お年玉は、年一の臨時収入。欲求が優先し、貯蓄の意識のわかない子も多いですが、受け取った額を全て使うのでは金銭教育が養えません。「貯蓄して複数年分で買い物をする」という勉強をさせるにあたり、資金の保存場所として良いのが子供名義の口座です。「親の口座の100万円のうち3万円が自分のもの」というのと「子供名義の口座に3万円」というのでは子供の意識は明らかに違います。

また、小遣い制を導入する家庭でも同様に、何ヶ月分か貯蓄して子供名義の口座に貯めることで、家計と分けて管理できます。子供にとっても「自分のやり繰りでお金を貯めることができた」という自信になります。これらのやり方は回りくどいでしょうが、金融教育には非常に大切です。

子供の教育費用

文部科学省の統計によれば、3歳の幼稚園入学から高校卒業まで全て公立学校と仮定しても約500万円(すべて私立の学校に通うと約1,600万円)と試算されています。教育費の難しいのは、ある程度大きくならないと将来の夢が見えず、目標が決まってから貯金しても時間的な余裕がないことです。

早い段階で教育費用を準備をするにも、子供名義の口座は向いています。教育費を確実に貯めるには、時々の家計の状況に流されず、継続的に貯めるのが大切だからです。

運用資金

国が「貯蓄から投資へ」と掲げたのを受け、幼い頃から資産運用をはじめる家庭も増えました。金融機関にもよりますが、未成年でも現物株式、投資信託、債券の売買は可能です(なお、配当所得が非課税になるNISAは18歳以上でないと開設できず、ジュニアNISAは2024年に廃止されました)。

子供にとっても、運用の経験やリスクとリターンの考え方が重要です。稼いではじめて経験するのではなく、親と一緒に子供名義の口座で運用すれば、資産形成の経験を早めに積めます。子供名義の口座なら、いつでも自由に入出金でき、急な出費にも対応できます。学資保険で運用する方法もありますが、投資額以上のリターンを得るには10年以上なども加入せねばならず柔軟性に欠けます。

子供名義の口座を作るメリット

子供名義の口座を開設すると複数のメリットがあります。

子供のための資産を分けて管理できる

子供の口座を開設すると、子供のための資産を生活費と分別して管理できます。

親の口座だと、平時は「子供のお金だから」と手をつけないようにしたお金も、急にまとまったお金が必要になると使ってしまう危険があります。子供に愛情のある親にとって、子供の通帳に金額が貯まっていくことは貯金の良いモチベーションとなります。

「子供のための資金」として児童手当があります。児童手当は、子供を教育するにあたり国から支給される金銭です。

児童手当は、申請者(保護者)名義の口座でしか受け取れませんが、振り込まれた金額について子供名義の口座に分けて管理をすれば、生活費と明確に区分できます。

【児童手当(所得制限額未満の方)】

スクロールできます
年齢区分児童手当
3歳未満月15,000円
3歳から小学校6年生まで
(第1子・第2子)
月10,000円
3歳から小学校6年生まで
(第3子)
月15,000円
中学生月10,000円

【特例給付(所得制限額以上、所得上限額未満の方)】

スクロールできます
年齢区分児童手当(所得制限額未満)
一律月5,000円

【特例給付(所得上限額以上の方)】

スクロールできます
年齢区分児童手当(所得制限額未満)
一律手当の支給なし

家庭内の資産を透明化できる

子供名義の口座を開設し、子供のためのお金を分けて貯めることは、家族内における資産の透明性を向上させることにも繋がります。家族間で「このお金は何の目的のお金か」ともめることが少なくなり、最終的には、親が死亡したときの相続の対策にもなります。

子供の貯蓄習慣を育てることができる

子供名義の口座を作ることは、金融教育としても効果的です。子供名義の口座なら、中ののお金は「自分のもの」という当事者意識を養えます。自分のお金が減るのは子供でも嫌なので、引き出すごとにその支出の目的をよく考えるようになります。

日本人は消費思考で、投資や寄付といった発想の少ない人が多いですが、幼いうちから金融について学ぶことで、長期的な資産形成の意識を身につけられます。幼少期の教育は、将来的な金融リテラシーの向上にも繋がると期待できるのです。

アメリカでは「豚の貯金箱」という考え方があります。

これは、幼少期にマネーリテラシーを鍛えるための4つに区切った豚の貯金箱です。4つの部分にSave(貯める)、Spend(つかう)、Invest(ふやす)、Donate(寄附する)と記載され、どの部分にお金を入れるとどういう効果を生むか、子供に理解させるのです。

生前贈与に活用できる

元気なうちに親の資産を子供名義の口座に移行することで、生前贈与に活用することができます。贈与については後ほど詳しく触れますが、親子間で将来に向けて資産をどのように承継していくのか、コミュニケーションの具体化策として生前贈与があります。そこから相続に繋げるイメージです。

子供名義の口座を作るデメリット

一方、子供名義口座の解説にはデメリットもあります。

成人後の引出しが制限される

子供名義の口座は、未成年のうちは親が管理できますが、成人後は原則として本人しか各種手続きができません。成人後に親が引き出し、口座の解約をする場合は委任状が必要で、委任状には子供の実印も必要なので煩雑な手続きが増えてしまいます。

名義人である子が成人を迎えると、口座は子供の影響下に移る、と認識すべきです。成人は18歳であり、親の扶養を受ける子も多い年齢です。大学入学時の学費など、引き出しが遅延するリスクに備え、まとまって必要なお金は親の口座に残しておくべきです。

親子の対立の原因となる

子供名義の口座を作ったことでかえって、親の資産を子供が不当に使用するリスクもあります。これによって、家庭の資産が、親の思いとは裏腹に目減りする危険があるのです。

このようなトラブルが起こると、親子間の信頼関係にも直結します。逆に、子供が受け取るはずだったお金を親が無駄遣いする問題もあります。親としては一時的な家計管理のためでも、子供にとっては「勝手に引き出していいのか」と反発心が生まれてしまいます。

子供の口座を開設したら、そのお金は親のもの、子のものという感覚で考えるのでなく、親子で話し合いながら、互いの理解を求めて利用しなければなりません。

贈与税がかかる危険がある

財産を無償で譲渡すると、受け取った人が贈与税を払う必要があります。贈与税の基礎控除として、1名あたり年110万円までは課税されず、また、30歳未満の受贈者が直系尊属(祖父母など)から教育資金として贈与された金銭については最大1500万円までが非課税とされています。

また、生活費の仕送りとして渡すお金は、贈与にはなりません。つまり、生活費として渡したなら贈与税はかからないのです。

なお、子供名義の口座は子供のものか、それともお金を拠出した親のものなのか、法的な権利義務が曖昧になりがちです。名義が子でも、実質は親の資産とみなされる預金を「名義預金」と呼び、税務当局の指摘を受けると、贈与税を課税されたり、将来の相続が複雑化したりするおそれがあります。

子供名義の口座で贈与するときのポイント

子供名義の口座を作成することで生じるトラブルを回避するために、次のポイントを押さえて対策してください。

通帳を渡す年齢やタイミングを慎重に決める

子供名義の口座のトラブルを減らすにあたり、大切なのは通帳を渡すタイミングです。いつ渡すかによって、子供の理解が大きく変わるからです。

早すぎると、親がなぜ子供名義で貯めるのか理解できないですが、遅すぎると「もっと早く渡してくれたら有効活用できたのに」と不満を抱くでしょう。しっかり教育し、適切なタイミングを見極めるのが肝心。では「何歳が最適なのか」という疑問は「成長やタイプによる」のであり、正解はありません。大学入学時に渡した費用で充実した勉学に励む人もいれば、無駄遣いする子もいます。性格に応じて決めるべきで、本人と話し合うのもお勧めです。

贈与を証拠化して記録に残す

子供名義の口座に振込をすると、贈与だという認識の薄い人もいます。

しかし、税金の観点からも、子供の金融教育の観点からも、その資金移動の意味をきちんと子供に理解させ、「贈与である」と伝えて理解させることは大切です。そして、その際に、贈与の契約書を作成して、証拠化することも忘れてはなりません。

生前贈与の契約書について

子供名義の口座を開設する方法

子供名義の口座を作るには、次の方法で手続きを進めてください。

口座開設の必要書類

口座開設のために必要なものは、一般に次の4つです。金融機関により異なることがあるので、事前に確認することをお勧めします。

  • 手続きを行う人(親)の本人確認書類
    (運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなど)
  • 口座名義人(子)の本人確認書類
    (健康保険証、マイナンバーカードなど)
  • 子供の印鑑(実印)
  • 口座名義人と来店者の関係を確認できる書類
    (戸籍謄本など)
  • 入金用の現金

開設可能な口座の種類

子供名義であっても、普通口座と定期預金口座の開設ができます。

金融機関によっては年齢制限が設けられているところもあります。定期預金口座は親の収入から自動的に貯蓄することができるため、継続的な資産形成にお勧めです(名義が違うと、金融機関によっては親の口座とは連携できない可能性があります)。

親が代理をできない金融機関もある

金融機関によっては、親が子供の代理として口座開設できない場合があり、子供自身の手続きが必須とされることがあります。この場合、親の口座で資金を貯め、子供が一定の理解をできるようになったら一緒に窓口に行って手続きを進めるしかありません。

子供名義の口座開設についてのよくある質問

最後に、子供名義の口座開設について、よくある質問に回答しておきます。

児童手当はどの口座に振り込まれる?

児童手当の振込先は、申請者(保護者)名義の口座しか指定できません。ただし、本解説の子供名義の口座のメリットを生かすため、受け取った金額を、子供名義の口座で管理したり、将来のために運用したりすることは可能です。

赤ちゃんでも口座は作れる?

生まれたばかりの赤ちゃんでも、戸籍があれば口座の開設が可能です。親権者が代わりに手続きをすることができます。一方、生まれる前に口座を開設することはできません。

まとめ

本解説では、子供名義の口座についての知識を、網羅的に解説しました。

子供名義の口座のメリットからデメリット、税金の問題や解説のプロセスなどの情報をもとに、保護者として正しい決断をしてください。子供が幼いうちは、資産形成は親の責任ですが、将来のことを考えると、早めに子供の口座を開設し、親子が共に学びながら成長することは非常に有益です。

子供名義の口座は、子供への経済的な知識と責任感を教え、将来的に自立した金融判断ができる大人へと成長させるための有効なツールとなります。

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