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相続税を少しでも安くする節税対策の基本を、税理士が解説!

相続税は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、税務署に申告し、納付しなければなりません。

このとき、節税対策を全くしていないと、相続税が高額となり、期間内に払いきれない危険があります。相続税は現金での一括納付が原則であり、仮に遺産がたくさんあってもそのうち多くが不動産だと、すぐには売却が困難なこともあります。

そして、相続税を期間内に納付しないと、滞納状態となり、延滞税などのペナルティが課されます。今回は、このような事態を回避し、少しでも相続税の負担を軽減するための節税対策の基本を解説します。

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生前贈与による節税対策

相続税の負担を減らす対策のなかで、最も実行しやすいのが、生前贈与による節税です。

相続を予定するほぼ全ての家族が、生前贈与による節税をしなければ損するといっても過言ではありません。節税になる理由は、生前贈与に活用できる以下のような非課税制度があるからです。


※ 教育資金、結婚資金・子育て資金、住宅取得等資金は、親から子だけでなく、祖父母から孫への贈与も可能で、相続を1回飛ばして財産移転できるので節税効果は非常に高いです。

贈与税が非課税となる生前贈与によって遺産をあらかじめ減らせば、相続税の課税対象が減り、節税できるのです。

なお、非課税制度の利用には、生前贈与を行った翌年の2月1日から3月15日の間に、贈与税の確定申告をする必要があります。なにも考えずに生前贈与するだけでは、かえって贈与税が課税されてしまうので注意してください。

暦年贈与による非課税制度

暦年贈与は、毎年贈与をすることです。暦年贈与は、受贈者1名につき、年110万円までの贈与額について、贈与税が非課税とされています。この暦年贈与による非課税制度を利用した節税として、子や孫、妻の親族など、身内に対して年110万円ずつ生前贈与を繰り返す方法があります。

ただし、相続開始前3年以内(令和6年からの贈与については7年以内)にされた贈与については相続財産に加算されるのでご注意ください。加算されるのは、相続又は遺贈により財産を取得した者に限られるため、孫や妻の親族など、相続人以外の人は、通常は加算の対象から外れます。

最も基本的な節税ではあるものの、税務署から否認されて贈与税を課されるケースも多いため、税理士に相談せずに進めるのは危険です。

教育資金の贈与に関する非課税制度

子や孫に教育資金として一括して贈与する場合にも、最大1500万円までの贈与額について、贈与税が非課税となる制度があります。1500万円の非課税枠を利用するには、その贈与した額について30歳までに使い切る必要があり、残ってしまった額については贈与税が課されます。なお、贈与者が死亡した場合にも、残ってしまった額に相続税がかかることがあります。

ただし、一括して贈与するのでなく、学費などの教育資金が必要となる都度に贈与していれば、扶養義務者間の教育資金についてはそもそも非課税です。本解説は、あくまで節税対策として一括贈与した場合の制度であり、いずれの方法によるのか、計画性も重要となります。

結婚資金・子育て資金の贈与に関する非課税制度

結婚資金・子育て資金として贈与するとき、最大1000万円までの贈与額について、贈与税が非課税となります。式場代、指輪代、結納金や新居費用など、多くの費用を要する結婚のタイミングで、残しておいても相続税のかかってしまう財産を移転しておくのは有効な節税です。なお、贈与者が死亡した場合には、残ってしまった額に相続税がかかることがあります。

住宅取得等資金の非課税制度

住宅取得等資金の非課税制度を利用した節税とは、子や孫が住宅を購入するための資金を贈与する場合の非課税枠を利用する方法です

この制度で非課税にできる限度額は、省エネ住宅など良質な住宅を取得する場合に、最大で1,000万円の贈与額について、贈与税を非課税とすることができます。

夫婦間で居住用不動産を贈与したときの配偶者控除

配偶者(夫または妻)は、死亡時に存命なら必ず相続人になります。夫婦は相互に扶助義務を負い、お互いに扶養し合うのが原則です。そのため、相続のときにも、夫婦間では相続税を非課税とする特例があり、贈与の際にも、節税に活用できる非課税枠があります。

夫婦間で居住用不動産またはその取得資金を贈与したときには配偶者控除があり、評価額が2000万円までは贈与税が非課税となります。ただし、不動産を贈与したときの登録免許税や不動産取得税については非課税となりませんのでご注意ください。

生命保険による節税対策

生命保険に加入することは、保険料を払うことによって遺産の額をあらかじめ減らし、相続税の節税となる効果があります。

生命保険の死亡保険金は「みなし相続財産」とされ、相続財産それ自体ではないものの、相続税の課税対象となります。このとき、「500万円×法定相続人の数」の金額までは非課税とされているため、この限度額までの生命保険に加入することは、相続税の節税となります。

養子縁組による節税対策

相続税の基礎控除を利用した節税に、養子縁組を利用した対策があります。

相続税には基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)があり、遺産がこの額を超えなければ相続税はかからないので、法定相続人の数を増やし、基礎控除を上げれば、税額を減らすことができます。ここまでの節税対策がいずれも遺産の額を減らすことを目指していたのに対し、本章の方法は控除額を上げるという違ったアプローチなのです。

具体的には、養子縁組することで子の続柄にある人を増やし、法定相続人を増やして基礎控除額を挙げる方法が一般的です。

なお、養子縁組を利用した相続税の節税は、判例によって「相続税の節税目的は養子縁組をする意思と併存しうる」と判断されました(最高裁平成29年1月31日判決)。そのため、租税回避の意図が悪質なケースでない限り、養子縁組による節税対策も合法的に可能だということが裁判所でも認められています。

ただし、養子縁組による相続税の節税対策には、相続税法による制限があります。

現実的にあり得ないほどの養子縁組を交わし、課税を回避する悪質な手法を禁ずるため、「実子がいる場合は1人まで」「実子がいない場合は2人まで」しか、相続税の基礎控除を計算する際の「法定相続人」には含まれません。

養子縁組と相続税の節税について

相続税を滞納すると制裁がある

相続税の期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。これは、税務署が計算して支払いを命じてくれるのを待つのではなく、相続人が計算して納付しなければならず、滞納には厳しいペナルティが課されます。

延滞税

延滞税は、納税が送れたことによる制裁であり、延滞した税金の追納と同時に納付することが必要です。延滞税の税率は、納期限の翌日から2ヶ月以内は年2.4%、納期限の翌日から2ヶ月を超えると年8.7%ですが、法改正によって変更されることがあります。

「納期限」は、次の通りです。

  • 期限内申告:法定納期限
  • 期限後申告・修正申告:申告書の提出日
  • 更正・決定:更正通知書を発した日から1月後の日

無申告加算税

単に申告、納付が遅れただけでなく、そもそも行わなかった場合、無申告加算税が課され、更に重い税負担となります。無申告加算税の税率は、申告の状況に応じて、次のようになります。

  • 税務調査前に自主的に期限後申告した場合
    納付税額の5%
  • 税務調査の事前通知後にした期限後申告
    50万円までは10%、50万円を超える部分は15%
    ※ なお、令和6年以後に法定申告期限が到来するものは、50%までは10%、50万円を超え300万円までは15%、300万円を超える部分は25%
  • 上記2つ以外の場合
    50万円までは15%、50万円を超える部分は20%
    ※ なお、令和6年以後に法定申告期限が到来するものは、50万円までは15%、50万円を超え300万円までは20%、300万円を超える部分は30%

まとめ

今回は、相続税の節税対策について解説しました。節税はとても複雑で難しいものですが、本解説は基本的な内容であり、どの家庭でも利用を検討しておいてほしいものとなっています。

誰しもいずれは向き合わなければならない家族の死と相続の問題について、早めの対策をすることが、節税対策では最も重要です。

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