★ 相続の専門家の正しい選び方!

登記先例・通達について解説します

相続登記など、不動産の名義変更をするときに、「登記先例」「通達」という専門用語が登場することがあります。今回はこの登記先例と通達の意味について解説します。司法書士が解説します。

登記先例と通達は、いずれも不動産登記を進めるのに避けては通れませんが、司法書士など登記の専門家でなければ知らず、読んでも理解できないことが多いでしょう。

とはいえ、これら決められたルールと異なる登記申請は、却下されるおそれがあるからです。実務上は、登記先例や通達に反する登記の申請は、法務局に出した時点で取り下げるよう指示されることがほとんどであり、受け取ってすらもらえません。

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登記先例・通達とは

登記先例は、法律・法令の下位に位置する、行政機関の発する通達のことです。

専門用語なので、一般の方には聞き慣れないでしょうが、相続登記をはじめとした登記実務に携わるにあたっては、先例の調査がとても重要です。登記先例や通達について正確に説明できるかどうかは、良い司法書士を選ぶ重要なポイントとなります。

相続問題をはじめとした紛争は、最終的には裁判所で判断されます。人と人との間のトラブルを、事例にあわあせて強制的に決めるのが、司法の役割だからです。そして、裁判所のなかでも最も権威があり、最終判断を下すのが最高裁判所、そして、最高裁判所の下す判決は「判例」と呼ばれ、特に重い意味を持ちます。

最高裁判所の判例は、同種の事例では常に参考とされ、判例変更をするためには最高裁判所の大法廷で行わなければなりません(裁判所法10条3号)。同種の事例において判例がある場合には、これと異なる判断をすることはできません。

このような最高裁判所の判例と同じことが、登記実務における登記先例で起こっています。つまり、登記実務において、同様の状況が起こったときには、登記先例に照らして判断されます。なお、全く同一の事態が起こることは稀で、似て非なる状況ではケースごとの判断となる点は注意しなければなりません。

登記先例・通達は事例に合わせた判断となる

不動産登記で遵守すべきルールの基本は、不動産登記法、不動産登記規則といった法令に定められています。また、民法などの一般法を守らねばならないのも当然です。

しかし、上記の法令はいずれも、ごく一般的なケースについて定めるに過ぎず、個別具体的な事例に沿った判断をする歳には、法令に書かれた文言を解釈し、法令を適用する作業が必要となります。このように個別具体的な登記事例に対し、法令の解釈適用といった判断については、法務省民事局長が発する質疑応答集や通達などが、登記先例と呼ばれて重視されています。

登記を申請する側の司法書士だけでなく、登記を受理する側の法務局もまた、登記先例や通達に従って、これに基づいて登記実務を運用します。そのため、円滑に登記を行うためには、登記先例、通達を調べ、理解しなければなりません。

登記先例・通達の調べ方

登記先例や通達はとても数が多く、全てを記憶するのは難しいです。相続登記を専門的に扱う司法書士であっても、全ての登記先例や通達を把握しているわけではありません。そのため、困った状況に陥ったら、同種の登記先例や通達がないか、その都度調査して解決せねばなりません。

登記先例や通達をまとめた「不動産登記先例集」などの書籍が出版されているので、これらを調査することで、有名な登記先例や通達は知ることができますが、より詳しく、細かい調査をしたい場合には、次の方法があります。

  • 登記専門誌の過去の版を調査する
  • オンラインの先例検索サービスを活用する
  • 法務局の窓口で相談する
  • 経験豊富な司法書士にアドバイスを求める

いずれにしても、登記先例・通達の調査まで必要となるような困難な登記のケースでは、不動産登記に詳しい司法書士に調査を依頼したり、登記自体を代行してもらったりするほうが、間違いなく、スムーズに進めることができます。

なお、先例を詳しく調査しても、法務局ごとに取扱いが微妙に異なる場合もあるため、実際に登記をするときには、法務局の担当者に事前確認することをお勧めします。

まとめ

今回は、登記実務を進める際に必要となる登記先例、通達の基礎知識を解説しました。

相続登記を自身で申請する場合には、登記先例や通達に反する誤った申請をしていないか、注意を要します。また、司法書士に依頼する場合にも、登記先例や通達をよく理解した、知識の豊富な人に任せるのがよいでしょう。

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