★ 相続の専門家の正しい選び方!

会社を放置すると危険?休眠会社のメリット・デメリットと注意点4つ

経営に失敗したり、後継者が見つからず事業承継が円滑に進まなかったりするとき、法人を清算するのではなく、放置してしまう経営者がいます。しかし、会社を放置することにはリスクもあるため、注意しなければなりません。

会社を放置するという消極的な判断は「休眠」と呼ばれます。休眠会社は、事業に着手せず放置するための制度であり、統計上も、約8万8000社が休眠しています(2015年1月時点)。

今回は、会社を放置し、休眠会社にすることの意味、メリットとデメリットを解説します。

目次(クリックで移動)

休眠会社とは

休眠会社とは、企業経営をせずに放置するための制度です。完全に廃業して終了させるのではなく、一旦事業を停止するのが、休眠会社の特徴です。

会社法は、休眠会社の定義と利用方法について、次の通り定めています。

会社法472条(休眠会社のみなし解散)

1. 休眠会社(株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から十二年を経過したものをいう。以下この条において同じ。)は、法務大臣が休眠会社に対し二箇月以内に法務省令で定めるところによりその本店の所在地を管轄する登記所に事業を廃止していない旨の届出をすべき旨を官報に公告した場合において、その届出をしないときは、その二箇月の期間の満了の時に、解散したものとみなす。ただし、当該期間内に当該休眠会社に関する登記がされたときは、この限りでない。

2. 登記所は、前項の規定による公告があったときは、休眠会社に対し、その旨の通知を発しなければならない。

会社法(e-Gov法令検索)

本条文の通り、休眠会社は、12年間経営せずに放置された会社のことであり、事業廃止しない旨の届けでをしなければ、いずれはみなし解散となります。

廃業の場合には、法人の解散、清算手続きをし、清算登記をする必要がありますが、休眠の場合は、休眠届を出してそのまま法人は存続させながら事業をストップさせることができ、まさに「会社の放置」といえます。

なお、社員の給与や退職金、取引先への仕入れ代金、金融機関からの借入など、負債を抱えている会社を放置して休眠させることはできません。債務超過の状態だと、債権者からの取立てがされることもあり、放置は難しいでしょう。負債を返済しきるのが難しい場合は、法人破産が最適です。

休眠会社のメリット・デメリット

会社の経営をあきらめる場合にも、放置して休眠会社とする以外の方法もあります。経営を止める場合に取りうる選択肢は、例えば次のものです。

  • M&Aにより売却する
  • 事業譲渡する
  • 解散して清算する
  • 法人破産する

休眠会社にもメリット、デメリットがあるため、上記の方法と比較して検討する必要があります。

休眠会社のメリット

休眠会社のメリットは、一旦停止した事業を再開するときのコストや手間が少なくて済むことです。

法人の設立には、登録免許税などの手続き費用が20万円〜30万円程度かかります。休眠会社としておけば、新設時の費用を節約することができます。また、休眠前の税務申告において繰越欠損金があるなら、休眠から明けた後の事業年度まで赤字を繰り越すことができます(なお、このためには次章の通り休眠中の税務申告が必須となります)。

一方で、休眠会社とするには、休眠届を市区町村役場、税務署のそれぞれに提出しますが、この際に費用はかかりません。

休眠会社のデメリット

休眠会社のデメリットは、事業が進行しない間にも税務申告が必要となる点です。

会社を清算したり、破産したりすれば法人そのものがなくなるため税務申告は不要ですが、休眠会社の場合には法人格が残るためです。税理士に依頼すれば、休眠中でも税理士費用がかかります。また、休眠期間中に売上がなくても、地方税(法人住民税)の均等割を納付しなければなりません。

会社が存続しているため、取締役の任期満了時には再任手続きが必要です。会社の役員変更登記などは2週間以内に行う必要があり、違反すると法人及び代表者個人に対して100万円以下の過料が科されます。

休眠会社にする方法と、事業再開までの全スケジュール

次に、会社を休眠させる手続きと、スケジュールについて解説します。

また、一旦休眠した会社も、その後に状況が変化した場合には事業を再開することができますので、再開までのスケジュールもあわせて解説します。

事業を停止する

会社を休眠させるために、行っていた全ての事業活動を停止します。これにより、会社には一切の収入、支出、売上、債務などのない状態になります。少しでも事業が続いていたり、取引先への債務や給与の未払いなどがあったりすると、休眠会社にはできません。

休業届を提出する

会社を休眠させる方法は、異動届出書、休業届を提出する必要があります。それぞれの書類の提出先は次の通りです。いずれも役所の窓口に書式が備え置かれています。

書類提出先
異動届出書税務署
休業届都道府県税事務所・市区町村役場

休眠状態となる

休業届が受理されると、会社は休眠状態になります。法人格としては存続し、税務申告、役員変更登記などは継続して行う必要がありますが、事業はしてはいけません。

なお、休眠期間が12年以上となり、その間登記手続きを行わないと、次章の「休眠会社のみなし解散」によって法人格が消滅します。事業再開や事業承継、M&Aなどの予定があるときには、休眠期間に気を払っておく必要があります。

事業を再開する

休眠会社を再開することもできます。例えば、次のような理由によって再開する例があります。

  • 新規事業を思いついた
  • 社会情勢の変化によって売上が見込める
  • 人手不足が解消された
  • 後継者不足が解消され、事業承継に成功した
  • 新たな出資先が見つかった

休眠会社を再開する場合は、休業に関する書類を提出した税務署、都道府県税事務所、市区町村役場それぞれに、再開届を提出します。

休眠会社のみなし解散とは

休眠会社として放置するのも、永遠に続けられるわけではありません。休眠会社のみなし解散の制度があり、相当期間を経過した法人は、強制的に解散させられてしまうからです。休眠会社の整理は定期的に行われ、直近では令和5年度に行われています。

休眠会社のみなし解散は、次の流れで進みます。スケジュールを理解し、解散させられたくない休眠会社を持っている場合は、手続きに対応する必要があります。

  • 2か月以内に届出せず、登記されないときはみなし解散とする旨が官報に公告される
  • 事業を廃止しない旨の届出、もしくは、登記(役員変更等の登記)申請を2ヶ月以内に行えば存続できる
  • 上記の手続きに対応しなかった法人は、登記官が食券によって解散登記をする(みなし解散)

休眠会社への通知は、法務局が把握する登記簿上の本店所在地に送付されます。しかし、長期間休眠している会社ほど、陶器を変更していない可能性があり、通知に気づけない危険があります。このとき、たとえ通知が届いていなくても、官報による公告から2ヶ月経過すると、強制的に解散となってしまいます。

相続との関係では、亡くなった方(被相続人)の経営していた会社が、円滑に事業承継できず放置されているケースに注意が必要です。

まとめ

今回は、休眠会社に関する法律知識を解説しました。経営悪化や後継者不足、人手不足など、会社を放置する理由は様々ですが、一旦休眠とするには、手続きや費用、スケジュールなどの基本を知っておく必要があります。また、メリット、デメリットを比較し、慎重に検討してください。

経営者にとって、事業承継はは大きな課題となります。自身の相続によって事業を台無しにしてしまいたくはないでしょう。事業承継がすぐには解決できない場合も、事業を一旦停止はするものの法人は清算せず、破産もしないという方法もあります。休眠会社としておき、時期を見て再開する方法によって、事業承継のタイミングを見極め、円滑に進めるのがお勧めです。

目次(クリックで移動)