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減資の手続きについてわかりやすく解説!活用場面と必要書類、方法など

減資を検討する企業にとって、その手続きは複雑なものであり、必要書類も多岐に渡ります。また、メリットとともにデメリットやリスクもあるので、適切な局面で利用しなければ、狙った効果が発揮できません。

今回は、減資を成功させるために、その手続きの流れや注意点を解説します。 企業が実際に減資を行う場合、どのようなステップで進めるべきか、スケジュールを立てて計画的に進める必要があります。特に、事業承継において減資を活用する場面では、そのタイミングによっては事業承継税制が利用できず、取り消される可能性もあるので注意が必要です。

減資をした場合には、登記手続きを要するため、登記の専門家である司法書士に相談するのが適切です。そのなかでも会社法に詳しい知見を持った司法書士がよいでしょう。

目次(クリックで移動)

減資の基礎知識

まず、減資についての基本的な法律知識を解説します。

減資とは

減資とは、企業が資本金の額を減少させることを指します。減資は、次の2つの方法のいずれかで行うのが通例です。

  • 有償減資
  • 無償減資

※ 「減資の種類」参照

減資は、会社の資本政策の柔軟性や機動力を確保し、財務体質を健全化するための手段として利用されています。

減資の主な理由と目的

減資はさまざまな理由で実施されますが、主な目的は以下の通りです。

  • 財務体質の改善
    過剰な現金や資産を抱えているのに、効率的に使用できていない企業があります。減資によってその資本を株主に還元したり、負債を減少させたりする方が、企業の経営として健全です。
  • 損失の清算
    赤字が蓄積して資本が毀損した場合には、減資によって累積損失を解消し、財務状況を健全化することが可能です。
  • 経営戦略の転換
    事業の再構築や組織再編など、経営戦略の大きな転換に伴って、資本構造を調整するために減資をすることがあります。本解説の通り、事業承継のタイミングも、減資がよく活用される場面です。

減資の種類

減資には主に、以下の2つの種類があります。

  • 有償減資
    有償減資は、実際に会社の財産の減少を伴う減資の手続きで、「実質的減資」とも呼びます。資本金を減らし、会社の財産を株主に払い戻す方法をとるため、社内の手続としては「減資」と「剰余金の配当」を同時に株主総会で決議し、減資をした後に、実際に剰余金の配当として株主に金銭を交付する必要があります。株主への配当や、節税を目的として行われます。
  • 無償減資
    無償減資は、会社の財産が減少しない減資の手続きで、「形式的減資」とも呼びます。資本金を別勘定科目である資本剰余金などへ振り替えることによって行い、株主総会の決議事項は「減資」のみとなります。主に損失の補填や、節税を目的として行われます。

有償減資と無償減資の大きな違いは、株主への配当がなされるかどうかです。有償減資は、実質的にも資本が減るのに対し、無償減資は、株主資本の内訳が変わるだけで、会社に入っているお金は減らない、帳簿上の形式的な手続きに過ぎません。

減資は、企業が直面するさまざまな財務、経営面の課題を解決するのに重要な戦略です。その手続きと効果を正確に理解し、適切なタイミングで実施することが、企業の持続的な成長と安定には不可欠です。

減資の手続きの流れ

減資の手続きは、法的要件を遵守しながら慎重に進める必要があります。ここでは、減資の法的な要件と基本的なプロセス、登記の流れや必要書類を解説します。

減資の法的要件

減資は、会社法447条にその手続きが定められています。

会社法447条(資本金の額の減少)

1. 株式会社は、資本金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 減少する資本金の額
二 減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とするときは、その旨及び準備金とする額
三 資本金の額の減少がその効力を生ずる日

2. 前項第一号の額は、同項第三号の日における資本金の額を超えてはならない。

3. 株式会社が株式の発行と同時に資本金の額を減少する場合において、当該資本金の額の減少の効力が生ずる日後の資本金の額が当該日前の資本金の額を下回らないときにおける第一項の規定の適用については、同項中「株主総会の決議」とあるのは、「取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)」とする。

会社法(e-Gov法令検索)

法律上、「資本金がいくら以上でないと実行できない」などの財産的な要件はありません。必要な手続きを踏めば、極端な話、資本金を0円にすることも理論上は可能です。次章の手続きの説明の通り、株主総会の決議要件、債権者保護といった手続きを踏む必要があります。

減資の手続きの流れ

次に、減資の手続きの流れについて、ステップで解説します。

STEP

減資の計画を立てる

まず減資の計画を立てます。

いつまでに減資をしなければならないか、資本金をいくら減少させるか、減少させた資本金をどうするかなどの計画を決めてください。減資の目的が節税のとき、適切な減資額を選択するために税理士との連携も必須です。

具体的には、以下の点を検討していきます。

  • 減資の目的
  • 減資の額
  • 減資の振替先
  • 効力発生日
  • 債権者の洗い出し
  • 株主への配当額(有償減資の場合)
STEP

株主総会の決議

株主総会で「資本金の額の減少」について決議を採る必要があります。

原則として特別決議(議決権を行使できる株主の過半数以上が出席し、出席した株主の3分の2以上の賛成が必要)によりますが、定時株主総会で決議する場合で、減少させる資本金の額をすべて欠損に充てる場合は普通決議(議決権行使可能な株主の過半数以上の出席と、出席した株主の過半数の賛成)で足ります。

決議する事項は次のとおりです。

  • 減少する資本金の額
  • 効力発生日
  • 資本準備金とする場合はその旨
STEP

(例外的に)取締役会の決議もしくは取締役の決定

増資と同時に行う場合で、効力発生日後の資本金の額が効力発生日前の資本金の額を下回らないときは、株主総会の決議は不要で、取締役会の決議もしくは取締役の決定によって減資が行えます。

STEP

債権者保護の手続き

減資を行う場合、必ず債権者保護手続を実施しなければなりません。1ヶ月以上の期間を設けて官報に公告し、債権者へ個別に催告が必要となります。

具体的には、会社の債権者に個別に次の事項を通知(催告)し、官報にも同内容を公告します。なお、定款に定めた公告方法が官報以外の場合、官報と併せて定款で定める公告方法で減資を公告すれば、債権者への個別催告を省略できます。

公告ないし通知すべき内容は、次の通りです。

  • 資本金の額の減少の内容
  • 決算公告の内容
  • 債権者が一定期間内に異議を述べることができる旨
STEP

減資の登記の申請

減資の効力発生日から、原則2週間以内に登記申請をする必要があり、法務局の審理を受けて登記を完了させます。

減資の登記の必要書類

以上のステップによって減資の手続きを終えた後で、減資の登記は、次の必要書類を提出することによって行います。そのため、上記の減資の手続きのステップにおいて、議事録や官報公告、債権者保護手続きにおける書面などは、間違いなく作成する必要があります。

  • 株主総会議事録(一定の場合には取締役の決定もしくは取締役会議事録)
  • 株主リスト
  • 官報
  • 債権者への催告書
  • 異議不存在証明書

減資は、企業が直面する状況に対応するための重要な財務戦略です。適切に計画し、法的要件に従って慎重に実施することが、成功の秘訣です。

減資にかかる費用

減資を進めるには、次のような費用が発生します。

  • 官報への公告
    約15万円(決算公告と同時に行う場合)
  • 登記費用
    3万円
  • 司法書士報酬
    5万円~15万円

減資の効力が発生する時期

減資の効力は、株主総会で決議した効力発生日にその効力が発生します。ただし、効力発生日までに債権者保護手続きが終わっていないと、効力が生じません。

債権者保護手続きに期間を要するため計画的に進める

次に、減資をする際に注意しておくべきポイントを解説します。

減資では、債権者の権利を保護する措置が必要です。債権者保護手続きでは、債権者が減資に異議を述べることのできる期間を1か月以上設ける必要があるために、官報への申し込みから掲載、異議申述の期間満了まで2か月ほどかかるので、あらかじめ計画を立てるのが重要です。

減資は、企業内のお金が実際に減ったり、減りやすくなる可能性が生じたりすることを意味するので、債務の返済が難しくなると債権者の権利が害されます。権利を侵害されると判断する債権者は、異議を申立て、減資をストップさせることができます。会社法上は債権者に催告すれば足るものの、実際は、金融機関や大口の取引先にはどのような目的で減資するか事前に説明し、理解を得ておくのも手続きをスムーズに進めていくコツです。

減資は、債権者保護手続きが適切に完了した後でないと、その効力が発生しません。

官報や債権者へ催告をしたことの証明書を、登記の際に法務局に提出する必要があるため、手続きを怠った場合は最初からやり直さなければならないリスクもあります。

減資の必要性と、メリットとデメリットについて

減資が必要となる場面は、次のようなものです。

  • 事業規模の縮小
  • 損失の補填
  • 税務上の負担軽減
  • 組織再編の手続きの一環
  • 事業承継対策

そして、各場面において、その状況を打破するための有効な戦略となるかどうかは、減資のメリットとデメリットを比較して、ケースに応じて検討しなければなりません。

減資のメリット

減資のメリットは、次の通りです。

  • 欠損てん補による経営状態の改善
    決算書上、欠損金があると業績が良くない印象をもたれ、金融機関の融資が受けづらかったり融資条件が不利になったりする可能性があります。減資では会社の正味の財産は変化しませんが、欠損金を解消して決算書上の見栄えをよくすることができ、財務体質の改善に前向きな姿勢と捉えられ、資金調達がしやすくなります。
  • 税制の優遇措置の適用
    過剰になった資本金を減少させることで中小企業として様々な税制優遇措置を受けられることになり、節税にもつながります。例えば資本金が1億円以下となった場合、中小法人の区分となり、軽減税率の適用や交際費課税の特例などを利用できます。
  • 株主への利益配当が可能
    有償減資ならば、減らした資本は株主に配当することができます。
  • 事業承継税制の利用が可能
    事業承継の際にも、資本金を低くすることで事業承継税制が利用できたり、減資して生じた剰余金で分散した株式の買い取りが可能になったりといったメリットがあります。
    (※ 「減資は事業承継に活用できる」参照)

減資のデメリット

減資には、メリットと共にデメリットもあります。

  • 信用力の低下
    一般に会社は、資本金が高いほど信用力が高まるため、減資すると信用力が低下する可能性があります。新規の取引の際に、公に開示された資本金で会社の信用力を判断することもあり、資本金が低いことで取引の機会を逃す例もあります。また、許認可が必要な業種では資本金の要件がある場合もあるため、減資をした結果、許認可が取り消されることはないようにしましょう。
  • 財産の流出(有償減資の場合)
  • 事業承継税制の取消事由
    事業承継税制を選択した後に、減資を行ってしまうと事業承継税制の適用が取り消し事由となっているため、減資のタイミングも非常に重要となります。

減資は、適切に計画され実行された場合、企業にとって多くの利点をもたらしますが、デメリットが顕在化しないよう注意が必要です。

適切な減資の手続きを踏まないとリスクがある

減資の手続きを適切に行わない場合、企業にはデメリットやペナルティ、場合によっては法的な罰則が生じる可能性があります。減資を正しく実施しないことによるマイナス面を解説します。

債権者からの信頼喪失

減資は企業が債権者に対して責任を果たすことを約束しながら進める必要があります。

債権者保護の手続きをうまく周囲の納得をえながら進めないと、債権者の信頼を失い、借入の一括返済を求められたり、将来の出資や融資を断られたりといった悪影響が及びます。最悪は、債権者からの訴訟を提起されてしまいます。

株主との関係悪化

減資の手続き的なミスが、株主に対する責任の放棄と見なされると、株主との関係悪化につながります。特に、全ての株式をオーナーが有しているわけではく、他社やファンドなどから出資を受けている場合、株主が経営への信頼を失うと、企業経営は立ち行かなくなってしまいます。経営責任を追及されたり、役員を解任されてしまったりといったトラブルにもつながります。

社会的なイメージの損失

財務体質が透明でないことは、企業に悪いイメージをつけます。市場や業界内での企業の評判を損なえば、顧客離れや取引先離れを招き、ビジネスの拡大が困難になってしまいます。

法的な責任

減資の手続を適切に行わなかった場合、会社法963条5項により最悪の場合、5年以下の懲役や500万円以下の罰金が科される可能性があります。減資手続きを適切に行わなかったことが企業の財務状況を悪化させた場合、経営者は株主や債権者から経営責任を問われる可能性があります。

減資は事業承継に活用できる

事業承継を考えるうえで、減資を検討する場面がいくつかあります。

事業承継税制を活用しやすくする

1つ目が事業承継税制の活用をしやすくする点です。

事業承継税制は、後継者への自社株の贈与・相続の際に、贈与税や相続税が猶予、免除される制度です。この制度の利用時に「中小企業者かどうか」という要件があり、業種ごとに資本金や従業員数に基準があります。

スクロールできます
業種目資本金従業員数
製造業3億円以下300人以下
製造業その他
(自動車又は航空機用タイヤ及び
チューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)
3億円以下900人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
サービス業のうちソフトウェア業又は情報処理サービス業3億円以下300人以下
サービス業のうち旅館業5,000万円以下200人以下

上記のうち、資本金か従業員数のどちらかの要件を満たせばよいため、従業員数が多くこの制度が利用できない場合は、減資をして資本金要件を満たすといった方法を取ります。

自社株を買取りやすくする

事業承継を行っていくうえで、自社株は後継者へ集中させることが大切です。しかし、実際には株主が複数いて自社株が分散してうケースも多いのが現状です。

そこで、会社が自社株を買い取るための準備として、減資をすることがあります。自社株の買取りには財源規制があるため、分配可能額を確保する必要があり、そのために減資をして分配可能額を増やし、より多くの自社株を買い取りやすくすることで、後継者への事業承継をスムーズに行えるようになります。

事業承継の基本について

まとめ

減資は企業の直面する財務、経営における課題への対処として、とても重要な戦略の1つです。

資本の過剰、損失の清算、株価の安定化、財務構造の最適化など、様々な場面で活用することができます。また、節税や、事業承継の準備としても、減資は有効に機能します。このようなメリットのある一方、適切な手続きを踏まないことによる法的、社会的な責任は見逃せず、手続きの流れをよく理解し、ミスのないよう進めなければなりません。 企業の将来に大きく影響する重要な戦略だと理解し、慎重に実施してください。

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