相続の生前対策の中で、遺言書作成がとても重要であることは争いの余地のないところです。遺言書を作成するとき、相続の専門家に相談・依頼するとしたら、弁護士、司法書士、行政書士などの職種が考えられます。
遺言書を作成するときには、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言という遺言の種類ごとに法律上定められた有効要件を満たさなければならないだけでなく、「どうやって死んでしまった後に自分の意思を家族に伝えられるか」を考え、伝わりやすい遺言でなければなりません。
そのためには、形式的な法律知識だけでなく、「人の心」や「温かみ」が、遺言作成に重要となることがあります。
今回は、女性司法書士として独立開業し、遺言書作成、支援サポートを中心に相続問題を手掛けるシルク司法書士事務所、代表司法書士の長谷川絹子先生をお呼びして、女性士業ならではのていねいで安心な相続サポートについてお話をお聞きしました。
シルク司法書士事務所
代表 長谷川 絹子
「やわらかな対応」と「わかりやすい説明」だから肩の力を抜いて相談できる、相続・遺言に強い女性司法書士です。
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女性司法書士として相続サポートをする理由
――今回は、女性士業として開業独立され、相続問題に取り組んでいらっしゃる先生へのインタビューということで、お話をお聞かせくださいませ。まずは、長谷川先生の経営するシルク司法書士事務所の特長をおしえてください。
長谷川(以下、敬称略):
シルク司法書士事務所では、大手の司法書士事務所のように銀行や不動産会社さん経由でご依頼を頂くのではなく、ホームページ経由で個人のお客様から直接、ご相談やお問合せを頂いております。
このため相続手続きや遺言作成、相続放棄、親族間の贈与といったご家族にまつわるお手続きが主要業務です。町のお医者さんのように、ひとりひとりのお客様と膝を据えてじっくりとお付き合いできる司法書士事務所でありたいです。
事務所名にはシルクのようにやわらかくきめ細やかな対応をこころがけ、またシルクのように強く長く続く事務所であろうという思いを込めております。
――長谷川先生が司法書士を目指した理由はどのようなものですか?
長谷川:30歳で結婚をしてライフプランというものを見据えたときに、それまでの業界や職業(インターネット業界の企画職)では仕事と育児の両立すること、高齢になっても働き続けることが難しいと気づきました。
自宅でも仕事ができるような、細く長く続けられる職業にキャリアチェンジしようと考え、それにはやはり国家資格をということで司法書士を選びました。
――長谷川先生が、司法書士になってから、独立開業をされた理由はどのようなものですか?女性司法書士ですと、独立開業される人の割合はそれほど高くないかと思います。
長谷川:先の通り、司法書士の資格を取得しようと思ったきっかけが、もともと仕事と育児の両立を目指したものだったからです。
二人目の子の妊娠を機に、今後はさらに家事育児の負担が増えると思い、7年の勤務司法書士期間を経て自宅での開業を決意しました。(現在はオフィスを借りています)
――現在、長谷川先生が携わっている業務は、相続業務の中でも、特に遺言作成の支援業務が多いとのことですね。長谷川先生が、司法書士業務の中でも、遺言作成業務に取り組もうと思った理由は、どのようなものですか?
長谷川:相続手続きの仕事をしていると「遺言さえ残していれば・・・」と悔やまれる案件に本当に多く出会います。相続のトラブルは、精神的にも金銭的にもダメージが大変大きいものです。
このような思いをする方が少しでも減るように、遺言作成のお手伝いに積極的に取り組んでおります。
女性司法書士だからこそできる遺言サービスとは?
――さきほど、遺言作成サービスの内容についてお聞かせいただきましたが、特に、女性司法書士に遺言作成を依頼することで、どのようなメリットがありますか?
長谷川: 女性司法書士に依頼するメリットは、やはり女性の依頼者がセンシティブな家族の問題を、話しやすいということではないでしょうか。
また、遺言本文は定型的な文章ですが、付言(遺言の末尾に添えるメッセージ)は個性や想いが出せる部分です。女性司法書士にご依頼いただくことで、やわらかで想いの届くメッセージを残せるかと思います。
――ぜひとも女性司法書士に依頼してほしいと思うような、相続問題にお悩みのお客様は、どのような方でしょうか。長谷川先生のところにご相談、ご依頼に来られる方には、どのような方が多いでしょうか?
長谷川:難しいことはわからない、何から相談してよいのかわからない、という方こそぜひ遠慮せずにご相談ください。
いろいろお話をお伺いしていくなかで、漠然とした不安や素朴な疑問に丁寧にこたえていきます。男性は「〇〇だから遺言を作成する」と決められてるケースが多いのですが、女性は「遺言をかいたほうがよいのかもしれない」というところからのご相談が多いです。
――「働く女性」として、司法書士業界の女性活躍にも一翼になっていただきたいですね。ご家庭のこともお忙しいと思いますが、女性司法書士が、相続業務を行うにあたって、仕事とご家庭の両立で気を付けていることはありますか?
長谷川:お客様とのコミュニケーションや家族との時間を大事にするために、業務の生産性を高めることを強く意識しています。
具体的には、帳票や業務フローを日々改善したり、仕事効率を高めるITツールや機器などを積極的に導入をしております。これらは会社員として複数の会社で経理から営業まであらゆる仕事を経験したことが大いに生きていると思います。
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遺言作成が、将来の相続に役立つ
――将来必ずやってくる相続問題に、不安、心配を感じていらっしゃる方も多いかと思いますが、遺言作成を活用してほしいケースは、どのような場合ですか?
長谷川:私は司法書士なので不動産が関係する遺言作成が多いのですが、不動産のご心配がある場合はまず遺言作成をご検討ください。
自分がなくなった後もご自宅を残してほしい、〇〇に住んでほしいというようなご要望があるケースです。遺言が残されていないがゆえに、故人や故人の思いを引き継ぐ相続人のご要望が成し遂げられない案件を数多くみてきました。
――やはり、女性のお客様にお願いされることが多いのでしょうか?女性目線での遺言書の指摘点、ポイントなどがありましたら教えてください。
長谷川:女性は「家族や親族に迷惑をかけないためにはどうすればよいか」という想いからご自身の相続問題を検討する方が多いです。その結果、特定のご親族の気持ちを尊重するあまり「子の〇〇に作成してといわれたので」という、ご自身の意思かどうかわからないようなご相談を頂くことがあります。
ご家族への配慮や調和を尊ぶ気持ちは私自身も争いごとを厭うタイプなのでとてもよくわかるのですが、遺言はあくまで「ご自身の意思」を残すものです。ここが揺らぐとせっかくの遺言が争いの種になる可能性もあります。
方向性に迷われたときは「自分は本当にどうしたいのか、どうしてほしいのか」を再確認していただきたいと思います。
――最後に、女性司法書士に遺言作成を依頼したい、今後起こる相続に備えて遺言を準備したいという方に向けて、一言メッセージをお願いいたします。
長谷川:遺言は作成すれば、なにかしらのメリットがあります。
一方で、相続にまつわる深刻なお悩みや問題がある場合、今考えている遺言内容がベストなのか、本当に遺言作成で解決するのか、遺言作成以外に何かもっとよい手段はないのか、丁寧に検討する必要があります。
数多くの書籍やインターネット上で手軽に情報が入手できるこのご時世において、遺言作成そのものは、ご自身で作成することはそんなに難しいものでないかもしれません。
しかし、いろいろな角度から問題を観察してベストな解決法を導くにはやはり専門家のアドバイスが不可欠ではないでしょうか。
どうぞおひとりで悩まず、肩の力をぬいて、お気軽にご相談くだい。
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