★ 相続の専門家の正しい選び方!

僧侶が語る、お寺の知られざる世界とは?お坊さんが運営する寺メディア

身近には、実は数多くのお寺が存在しますが、普段はあまり意識することが少ないかもしれません。日常の喧騒に隠れ、穏やかな佇まいで私達の生活を見守るお寺。しかし、家族が亡くなるという人生の転機に、慌ててお寺を探し始める人がほとんどです。驚くことに、地域によって多様な宗旨や宗派の寺があり、どこに頼むべきかは生前に決めておくべき大切な問題です。

近年、IT技術の進化により、お寺もまた時代の変化に適応しようとしています。サイトやSNSを通じての集客が、現代社会で不可欠な要素となっていることは、お寺もまた同じです。ただ、多くのお寺ではこの新たな挑戦に向かう体制や知識が十分でないのが現状です。お寺としての伝統と静謐を守りつつ、新技術を取り入れるのは簡単ではありませんが、その必要性は日増しに高まっています。

今回は、お寺と良いご縁を見つける「お寺の窓口」というユニークなメディアを運営する副住職で、株式会社AVENIL、代表の遠島光顕氏にお話を伺いました。

ゲスト

お寺の窓口 株式会社AVENIL 代表取締役

遠島光顕

お寺との良い縁を作るメディア「お寺の窓口」運営。人口減少、宗教離れ等に対し、お寺の情報発信やコミュニケーションの活性化を目指す。代表自ら北海道教願寺の副住職としても活動。

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お寺の窓口が全国初なわけとは、伝統と革新の融合

――はじめに、「お寺の窓口」とはなんでしょうか。

遠島:「お寺の窓口」は、全国7万7000ヶ寺以上存在するお寺を、宗旨宗派ごとに網羅的に掲載する、全国初のお寺のポータルサイトです。

運営者が、実際の副住職、つまり、お寺の当事者なのが他のメディアにない大きな特徴です。いわゆる「お寺さん」は高齢で、インターネット、ITと聞くと怖がる人もいます。情報発信を助けるポータルサイトも、僧侶が運営する方が安心してくれて、登録が増えています。

――登録するお寺の方にはどんなメリットがあるのですか?

遠島:「お寺の窓口」に登録することで、寺の独自のサイトを持つことができます。まだまだホームページもない寺は多く、情報発信に慣れていただく必要があります。全国津々浦々の寺に広く登録してもらいたいので、無料から始められるようにしています。

地域住民にアピールし、間口を広げることで、葬儀や法要など依頼をもらいやすくなるメリットがあり、当社はマージンなど一切いただきません。寺を探すユーザーは実は多いと思っているので、全国各地の登録をお待ちしています。

――お寺の方のウェブに対する意識はどのようなものでしょうか?

遠島:ウェブやインターネットという横文字だけで、高齢者には怖い意識があるようです。また、テレビのニュースでは仮想通貨の流出、個人情報の漏洩など、新しい技術を駆使した犯罪の報道が煽情的にされています。まずはサイトを作り、ブログで発信するならさほどの危険性はないと知ってもらい、慣れてもらうしかありません。

過剰な恐怖感を持ってしまっているのではないか、という印象を感じることがあります。当社が正しい情報を広めることで、活用に踏み切ってほしいと思います。

相続とグローバル寺院戦略…お寺、世界への一歩

――お寺の窓口に多くの登録が増えることによって、今後の寺との協業ビジネスなども考えているそうですね。

遠島:300ヶ寺を超える登録をいただいたおかげで、様々な事業提携の話が来て、他分野への進出の道が開けています。インバウンド事業、ストレスケア・メンタルケア事業に特に注力しています。

インバウンド事業とは、登録された寺に、海外から来日する方を招待し、写仏写経、ヨガなどのアクティビティを体験してもらうことです。欧米から来る富裕層は有名な観光寺には空きていて、小規模でニッチな檀家寺でオーダーメイドなサービスを体験したいと考えています。要は、日本旅行の「玄人」向けというわけです。

――ストレスケア・メンタルケアはまさに寺の得意分野ですね。

遠島:2つ目の提携であるストレスケア・メンタルケア事業は、ストレスチェックの義務化が話題となったように現代がストレス社会であるために必要とされる事業だと思っています。深刻なメンタル疾患にかかる前に、福利厚生の一環として寺に相談したり癒やしを享受できたりするサービスを会社向けに導入してもらうことを目指します。

愚痴を聞いてもらうだけでストレスの大部分が軽減でき、生きる活力が湧きます。皆さんも経験あるのではないでしょうか。僧侶は現代のストレス軽減に役立つのです。

――相続分野に注力していく点はいかがでしょうか?

遠島:当然ながら相続分野にも力を入れます。当社から積極的に進出というよりは、ポータルサイトを開設すると、自然と相談が多かった分野ということで、当然のように手掛けることになりました。亡くなった方の葬儀や法要は寺で行われます。四十九日までの間に親族間の揉め事が激化するケースをよく見てきました。

お寺の窓口では、寺との関わりが少ない相続の専門家に、勉強会やセミナーの機会を提供します。寺を会場にした無料相談会も開催しています。「お寺にいる士業の先生」といって信頼感も上がると好評です。

寺コンサルとしてお寺の未来を導く

――お寺の窓口が今後目指す将来像はどのようなものでしょうか?

遠島:既に寺業界のなかで「お寺の窓口」の存在感はかなり高いです。当面の目標は、全国展開、1万ヶ寺登録です。登録してもらった寺院には順に挨拶にいっています。「お坊さん運営」「お寺と近い」がモットーです。

――メディアの課題でしょうが登録してくれないお寺へのアピールはありますか?

遠島:副住職は若年層だが、住職は高齢、というケースがあります。ネットに嫌悪感のある高齢者世代が生きている限りは参加できない、と嘆くお寺さんもいます。しかし、IT化の波は寺業界にも容赦なく押し寄せています。寺に電話しにくいという人に向け、スマホアプリで僧侶を派遣するビジネスも流行し、認知されていました。

個人的にもSNSの情報発信を通じて頑張っていきたいです。

――ネットに偏見ある住職などにお寺の窓口を広めるための考えがあれば…。

遠島:お寺さんといえど将来はIT化が避けられません。私と同じ若手世代がコンサルタントとして教育指導して情報発信の手助けをしたいです。その認知を拡大するために仏教に関するコラムも作成中です。「お寺」というよりも「僧侶」個人に焦点を当てた注目も面白いのではないかと考えています。「このお寺にいく」ではなく「この僧侶に任せたい」というイメージです。

――最後に、お寺の窓口を見ていただきたい方に、一言メッセージをお願いします。

遠島:お坊さんと関わる世間のイメージが「葬式」という暗いものではなく、お寺の窓口をきっかけに地域のコミュニティという明るいイメージに変わるようにしたいです。

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