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紙の終焉!デジタル化の波に飲まれる出版社を救うメディアの事業承継とは

かつて出版業界は、情報の伝達や文化の継承に不可欠な存在でしたが、デジタル化の波が伝統的な業界に革命をもたらしました。ページをめくる手が、クリックやスクロール、タップに取って代わる中、出版社の存続は危機に頻しています。

デジタル化は、環境への配慮の点からも時流に乗っていますが、書籍や新聞など紙媒体の魅力は、データには置き換えられない体験が多くあります。

ウェブメディアの隆盛により低迷した出版社は廃業を余儀なくされています。社員の高齢化による事業承継も必須の課題となりました。この大きな波に、出版社がどう対応すべきか。自社独自の価値を守り抜くには、伝統を守るだけでなく、技術の進歩を受け入れる必要があります。

今回は、こうしたメディアの今後と事業承継について、メディア運営の支援を行う株式会社メディアインキュベートの浜崎正己氏に、お話を伺いました。法人の事業を受け継ぐことを「事業承継」といいますが、様々な方法があり、ケースに応じた最適解を探さなければなりません。

ゲスト

株式会社メディアインキュベート 代表取締役

浜崎正己

メディア、マーケティング関連を中心に6社起業。メディアに携わる業務を総合的に扱う。メディア作成、運営支援だけでなく、出版社の事業再生、M&Aを利用した再生に積極的に取り組む。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。

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紙媒体、終焉の序章、デジタルによる革命の波

――現在、紙媒体は縮小傾向にあるように思いますが、「メディアのM&A」に注力される立場からのご見解をお聞かせください。

浜崎:どの業界も再編は常に起きていると思いますが、メディア業界も同様です。M&Aや、投資というのは、金融的な知識だけでなく、その領域の専門性も問われます。

特定領域のM&Aを継続的に支援することによって、情報が集約され、スムーズな仲介が可能です。売り手、買い手の双方にとってメリットのある、幸せなマッチングの実現に注力しています。

ーーデジタルによる革命の波を乗り越えるために、どのような施策が必要でしょうか。

浜崎:これからは、出版社もデジタル化の時代です。例えば、Kindleを始めとした電子書籍、新聞のデジタル化は既に一般に普及しています。出版社発信のメディアを立ち上げたいというご相談も多くいただくようになりました。メディアに紐づく新規事業の開発は、他の業界と同じく、出版社でも必須の課題となっています。戦略の転換が必要な時代になっています。

当社は、メディアに関わる事業を多数経験してきたため、メディアの運営はもちろんですが、営業、資金調達、編集、アライアンス先の開拓からイベント運営など、周辺のあらゆる活動も一括してサポートすることができます。

ーー戦略の転換が必要ということですが、デジタル化を進めるにあたって、出版業界特有の注意点があれば教えてください。

浜崎:テレビ離れ、新聞離れなどといいますが、出版業界は、数あるメディア業界のなかでも特に変革を求められていると感じます。

注意すべきは、ユーザーの情報取得環境が変化したことによって、発信方法そのものを見直す必要に迫られていることです。事業承継の文脈でいえば、出版社はオーナー企業が多い傾向にあり、苦悩している会社が多いです。子孫に軽傷するのか、社員に引き継ぐのか、外部にM&Aするのか、いくつかのパターンがあります。

対策が必要なのは、デジタル化の波によって、現業への影響が著しく、競合となるサービスが出現しやすい点です。外部環境の変化に、内部の体制が追いつかないことが多く、事業承継を機に会社の内側から見直す機会にするのがよいと考えています。

事業承継で花開く!出版業界の未来は?

――さまざまな業界で事業承継が必要ななか、特に出版社のオーナーの課題にはどんな特長がありますか?

浜崎:事業承継の必要な場面では特にそうですが、出版社のオーナーには高齢な方も多くいます。今までのやり方だけにこだわるのではなく、培ってきた強みが十分に活かせない外部環境となったことを受け入れなければなりません。すると、内部体制が時代に沿っていないことに気付くはずです。

スマホ時代が到来し、自分がターゲットでない世界では、ユーザー体験が「体感」として分からない方もいるのではないでしょうか。情報を摂取する方法は、年代によっても大きく代わります。時代の変化を感じ、環境変化に対応しなければ、意思決定が遅れてしまいます。

――出版社が事業承継を成功させるには、何が必要だと思いますか?

浜崎:まずは、決して過去の強みが無駄でないことを知ってほしいです。これまで培ってきたことは、紙媒体でなくても生きる強みが多くあります。本を作るには様々なプロセスがあり、そのなかには編集力や顧客との接点、営業力、業界とのパイプなど、将来も活かせるものがあることに気づいてください。

そして、何よりも大きいのは、これまで継続してきた「信頼」です。

これらの強みを、外部環境を把握した上で認識し、再構築するのです。基本の資金調達は、借入で行うことが多いですが、これからの時代は、自社だけで完結するのではなく、強みを明確化し、他社との提携をし、力を合わせて乗り切るのが大切です。そして、事業承継でも同様に、社外への承継例が増えている印象があります。

――会社ごとに課題は様々だと思いますが、ご担当された成功例を教えてください。

浜崎:あるメディア企業は、子息への継承を検討する家庭で、事業の見直しを図りました。会社の強みはなにか、それが外部と比較しても戦えるものを明確化し、方向性を定めていきました。その結果、外部の会社との提携が決まり、自社にはないリソースは委託することによって再成長を遂げています。

特にこの例でうまいのは、自社の不得意なことを切り出し、それを解消する提携先を探した点です。その際に、自社にアドバイザーを入れ、言うなりにはならない配慮をしました。新時代に対応するにあたり、対等な関係を築くには一定のリテラシーを要します。事業承継であっても、外部と交渉するにあたって、ただ従うだけでは乗っ取りに遭ってしまいます。

――専門知識を身に着け、後悔しないように進めないといけませんね。

浜崎:そもそも、事業承継の際の乗っ取りに築くには、自社をよく理解しなければなりません。しかし、時代が目まぐるしく変わるなか、特に出版社は急激な変化にさらされています。目新しいことほど、学習を拒否する人が多いですが、そのようなケースほどアドバイザーの腕が試されます。

燃える志、出版界の新章へ…

――メディアが事業承継する必要性について教えてください。

浜崎:備えあれば憂いなし、です。「必要なし」と最初から切り捨てるのではなく、まずは知識をつけましょう。今すぐでなくても、適切なタイミングが来たときに正しい検討をすることができます。環境の変化はとても早く、そのタイミングは近日来るかもしれません。

アドバイスや提案を受ける機会を確保することは、現業のブラッシュアップにも役立つはずです。

――最後に、メディアの承継を手伝うにあたって、大切にしている思いを教えてください。

浜崎:創業者の思いと、企業の歴史は必ず尊重します。ただ否定するだけでは、長く繁栄し続けることはできません。文化だったり、社員だったり、単に製品やサービスにとどまらない部分に、その会社の強みが隠れているケースは多くあります。

関わる方々が幸せになるための方法を、一緒に模索したい、その一心です。新しいことをやるのが必須だとは思いません。文化、歴史を大切にしながら、メディアへの愛情を持ち、更なる繁栄に貢献して期待と考えています。

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