★ 相続の専門家の正しい選び方!

住職の目で見る、相続問題の光明!お寺がひも解く相続相談の救済とは

相続問題は、しばしば家族の絆を試す挑戦となります。お寺というと「墓」のイメージが強く、相続の場とは認識していない人も多いかもしれません。しかし、古くから、家族関係において寺院の果たす役割にはとても大きなものがありました。

昔は、檀家制度による地域コミュニティがありましたが、現在では数が減ってきています。それでもなお、新たなコミュニティの形成、家族間の安らぎを目指して努力をする住職の姿のあるお寺も。このような場所では、住職はその独自の立場から人々の心に寄り添い、解決の道標となっています。

相続問題は、死後の手続きだけではありません。生前から、相続対策をしなければならないときに、お寺が相談窓口として機能すれば、スムーズな相続に移行する光となります。

今回は、お寺が相続の解決に果たす役割、あるべき未来について、山梨耕雲院の河口智賢氏にお話を伺いました。

ゲスト

耕雲院 副住職

河口智賢

曹洞宗耕雲院は室町時代に創建された禅寺。同寺院副住職、全日本仏教青年会理事・全国曹洞宗青年会副会長。寺院を開放した集う地域食堂など、地域コミュニティ活性化を行う傍ら、映画製作や精進料理教室、ヨガ坐禅など禅の魅力と多様性を融合させる活動に尽力。

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お寺の現状、直面する課題

――「お寺と相続問題」というテーマを語る際に、外せないのが檀家制度でしょう。お寺の立場として、現状についてどのように考えていますか?

河口:檀家制度の意識は低く、全国的にみてもおよそ3,4割しか普及していないのではないでしょうか。地方では過疎化、少子化が進む一方、都心部では人的ネットワークの希薄化などが、檀家減少の理由に挙げられます。

お寺の立場では、残った檀家さんは重要なコミュニティになっていますが、このままだと今後はますます少なくなっていくのではないかと危惧しています。

――そのような課題感に対して、河口様のお寺で実際にしている活動をご紹介いただけますでしょうか。

河口:私が副住職を務める耕雲院では、檀家さんは300件程度ですが、坐禅会や写経会、マルシェやヨガ教室などを催し、交流を深めています。特に最近は、子供の貧困、独居老人といった課題の対策に取り組んでいます。

また、地域食堂を定期開催して、お寺に足を運びやすい環境を整える努力をし、生活のコミュニティとして活用いただける工夫をしています。そのなかでも、高齢者世代で重要な話題となるのが相続です。

座旋回の様子

――率直な話、経営的に厳しいお寺もあるのでしょうか。

河口:それはもちろんあると思います。お寺によって状況はさまざまなので、状況ごとにどんな檀家さんを組織しているか、どんな活動をしているかを考えて対応しなければなりません。特に、お寺の存続問題は深刻です。相続は、檀家さんの課題というだけでなく、お寺そのものの事業承継も、喫緊の課題となっています。

現代に問う、相続におけるお寺の役割

――相続問題におけるお寺の役割、位置づけについてお考えを教えてください。

河口:お寺は、地域住民と専門家の窓口として、第一次的な相談役になれるのではないかと考えています。お寺には、相続や終活をはじめ、「死」にまつわる問題が多く寄せられます。また、それ以外にも、不安や心配事をお聞きすることの多い場所です。

単に漠然とした不安を打ち明けたいだけで、何に困っているのか、どう解決してよいか、自分ではわからない、という方もおられます。この状態では、士業の相談としては成り立たないでしょうし、問題解決はできません。そもそもこのような人は「弁護士に相談しよう」とすら思い立たないでしょう。

私達僧侶が、このような人生の悩みを解きほぐすのに最も適しています。

――お寺の状況によっても様々でしょうが、相続問題の窓口としてお寺を活用してもらうために、特に気をつけるべきことはありますか?

河口:お寺の果たす役割は、都市部と郊外で大きく異なります。相続の窓口として活用するに際しては、都市部のお寺だと、地方からの人口の急激な流入によって、お寺との関わりの薄い方が多くいる点に注意が必要です。

墓地や相続の相談をしたいのに、どのお寺に行ってよいかわからない、という声を聞きます。またお寺によっても相談の受け皿が整っていない印象もあります。相談者の受け入れと、事前に情報を収集できる窓口の開示をしていくことがポイントだと感じています。

――お寺から、専門家への連携を、相続問題でどう進めていくのが適切でしょうか。

河口:家族からの深刻な相談は、「僧侶」という役割を尊重して打ち明けられることがあります。そこからどう解決してくれる専門家に繋げるか、私も課題を感じています。

大切なのは、本気のサービスを提供し、相談者にも本気度を示してもらうことです。そのために、お寺が窓口となって門戸を開けば、相続相談の敷居は決して高くありません。お寺が提供できるのは安心感であり、かつての「寺子屋」への原点回帰が必要となるでしょう。いずれにしても、相続問題はとても広範で、お寺の力だけでは解決できないので、連携が必須となります。

相続支援をするお寺の課題と挑戦

――相続の専門家の側からしても、相続について真剣に考えてくれる僧侶の方がいるのはとても企業ですが、主導的にリードしていく上でハードルはありますか?

河口:現状では、お寺の機能は、一般の方から遠ざかってしまっています。その部分に、民間の事業者が入っていますが、悪質なサービスもあります。葬式は葬儀社の紹介を受け、高額な紹介料が発生していることもあります。

良いサービスを提供するのに費用が生じるのは当然ですが、私達お寺は、資本主義の原理の外にいる存在として、親身に寄り添い、心理面で救済を与えてあげたいと考えます。

――相談者の心のケアを大切にされているのですね。本来サービス業は全て同じだと思うのですが、お寺としての特殊性はありますか?

河口:葬儀社の話をしましたが、士業などの専門家との違いは、私達は「死」を乗り越えて、更に幸せになってほしいという理念があることです。家族の死はとても悲しいですが、葬儀が終わってますます不幸を感じるようでは、相続問題の真の解決とはいえません。

私達の理念をより広く知ってもらうために、山梨で宿坊を経営する予定です。また、禅をテーマにした映画を作成しています。

――映画だと、一般の人にも受け入れやすく、楽しく見られますね。どんな映画かご紹介ください。

河口:「典座-TENZO-」という映画で、2019年秋に公開されました。禅宗には典座(てんぞ)という、炊事を担う役職があります。

典座の教えには、食を通じて今を生きる心得が説かれています。様々な悩みや葛藤を抱える現代社会で、典座の教えから導かれ受け継ぐいのちの循環をテーマにした映画であり、相続にも深く関わるでしょう。

――本日はありがとうございました。最後に、相続問題に関心のある方に向けて、お寺の僧侶という立場から一言メッセージをいただけますでしょうか。

河口:本日はこの様な機会をいただきありがとうございました。相続とはものやお金だけではないと私は考えます。ご先祖さまから受け継がれ親からいただいた私たちの命も相続されたものであることをお心に留めていただければ幸いです。

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