相続不動産を売却するとき、できるだけ高く売りたいと思うのが、売主として当然のお気持ちではないでしょうか。しかし一方で、買主側としても「できるだけ安く買いたい」と考えることでしょう。
相続不動産の売買交渉で、よく買主側から値引き交渉がされます。値引き交渉に応じたくないのはやまやまですが、相続税の納税資金を早く確保したい場合など、「早く売りたい」という場合には値引き交渉に応じて値下げしたほうがよいケースもあります。
そこで今回は、相続不動産の売却で、買主側からの値引き交渉に応じるかどうかの判断と、適切な値下げのタイミングについて、相続不動産の高値売却を多数経験した不動産会社が解説します。戦略的な売却方針を理解し、より有利な不動産売却を進めてください。
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値引き交渉は当たり前?
相続不動産の購入を検討している買主側の立場からすれば、「少しでも安く不動産(土地・建物)を手に入れたい」と考えるのは当然です。そのため、値引き交渉をされるのは、よくあることとお考え下さい。
特に、不動産を購入する際に、予算を設定している場合で、予算を少し超えている程度の金額が売り出し価格となっているとき、買主側としては積極的に値引き交渉を行います。
不動産を売却したい売主側の立場としても、値引き交渉は当然されるものと想定し、値引き交渉されて値引きせざるをえないことを想定して売り出し価格を設定してください。
値引き交渉に応じての値下げを想定することなく売り出し価格を決めてしまうと、値引きをせざるを得なくなって希望通りの価格で売れなくなってしまうおそれがあります。
売り出し価格の設定が大事
相場から乖離したあまりにも高い価格で、売り出し価格を設定している物件がしばしばあります。そして数か月経過しても売れずにすぐに値下げしてしまうと、結果的に物件そのものが安っぽく見られてしまいます。
仮に値下げせずに高い金額で売り出し続けると、売れ残り感が出てしまって、これもまた物件の価値を自ら下げてしまうことになりかねません。そういう意味では、一番最初の価格設定は非常に大事です。
値下げの時期・タイミングは?
相続不動産を、値引き交渉を想定した価格で売り出したとしても、値下げ交渉に安易に応じ続けることは、得策ではありません。特に、よほど反響のない不人気物件でもない限り、しばらくは様子見して値下げせずにキープしましょう。
戦略的な売却方針を知っていただくために、次に、適切な値下げの時期・タイミングの決め方について、解説していきます。
反響があるかどうか
売り出した物件を不動産会社に依頼して不動産情報サイトに登録してもらった場合には、その物件のページに、何人の人がアクセスし、問い合わせを行ったかを知ることができます。
更に、そのうち何人が内覧したかなどを統計データで知ることによって、その物件が現在、人気物件か、不人気物件かを知ることができます。
売り出した相続不動産が不人気物件であって、相続税の納税資金が足りないとか、ご家族のために緊急の資金が入り用であるといった早く売らなければならないご事情があるときは、不動産会社と相談して、値下げの幅を調整するということも必要になると考えられます。
不動産市況とタイミング・季節性
不動産の売買には、タイミング・季節性があります。賃貸不動産の繁忙期(2~4月)ほど顕著な違いは売買においてはありませんが、会社の入社・異動、学校への入学・卒業などの関係で、3月ごろは不動産を売買する人が比較的多い季節となっています。
買主が個人の投資用、個人の自宅購入の場合は、確定申告や、住宅ローン減税の関係で、12月末までに買いたいというニーズも多いです。買主が法人の場合は、その法人の決算期などが絡んでくる場合もあります。
不動産会社の売却戦略
仲介業者として依頼した不動産会社が信頼のできる業者であれば、その不動産会社の売却戦略を聞いてみてください。高値売却のための戦略的な方針があるのであれば、勝手に値下げ交渉に応じてしまわないほうがいい場面もあります。
しかし一方で、不動産会社の中には、早く成約させて仲介手数料収入を得たいために、売主の意思に反して、積極的に値下げするよう提案してくる不誠実な会社も残念ながらあります。
このような不誠実な業者を避け、売主の意向を聞いて親身になってくれる不動産会社にお願いするためには、仲介業者として依頼する不動産会社を選定する最初の時点で、不動産会社を見極めるポイントを理解しておく必要があります。
仲介業者の選び方は、次の解説でまとめています。
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高額売却するための仲介業者の選び方は、こちらをご覧ください。
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値引き交渉に応じるときの値下げ幅は?
値引き交渉に応じるときや、不人気物件を早く売却するために値下げを検討しているときに、「どの程度値下げしたらよいのだろう。」という疑問が生まれるのではないでしょうか。
結論からいうと、値下げ幅には相場はなく、その不動産(土地・建物)の特性や、不動産市況の状況、売却方針などによって、いくら値下げすべきか、適切な値下げ幅は変わりますので、都度検討が必要となります。
適切な値下げ幅を見極めるにあたって、重要となる考慮要素について、解説します。
過去の取引実績
売り出した不動産の、周辺地域の過去の取引実績もまた、値下げ幅の目安を決めるのに参考になります。
過去に、その地域の、その不動産と同様の特性、面積などを持った不動産が、どの程度の相場価格で売買が成立しているのかを知ることによって、「この不動産も、そこまで値下げをすれば売却できるだろう」という予想ができるからです。
ただし、過去のデータはあくまでも過去のものなので、現在の売り出し物件の反響の様子や、時期などによって、値下げするかどうか慎重な検討が必要です。
値引き交渉の提示額
買主候補が、値引き交渉をしてきたときに、「200万円値引きしてくれるならすぐに買いたい。」など、値引き額を提案してくることがあります。この場合、この提示額が、値下げ幅の一つの目安となります。
例えば、次のような事情で、値下げをしてでもすぐに成約させたいときは、買主候補の提示してくる値下げ幅で契約することを検討する必要があると思います。
ポイント
相続税の納税資金が足りず、相続した不動産を売却したい。
生前対策のために不動産を売却したいが、売主の余命があとわずかである。
値引き交渉をしてきた買主候補が、十分な資力を有しており買主として申し分ない。
物件情報に対する反響が薄く、不人気物件であることが明らかになった。
ただし、他にも引き合いが多く、高値売却が可能であるなど、その他の事情も考慮して、総合的に判断して決定してください。
値引き交渉を受けたときの対応方法は?
値引き交渉を受けたときの対応方法は、当初からの売却方針によって変わります。さきほど解説したとおり、そもそも値引き交渉はされるのが当然、という考え方で売り出し価格を決定していれば、値引き交渉を即座に拒否することはありません。
まずは、値引き交渉には応じる姿勢を示しておきながら、値下げ幅を交渉によって調整するのが、早く売買契約を成約させるためのポイントです。
しかし、値引き交渉の言いなりになって値下げをして売却することは、売却を急ぐ特別な事情がない限り、損だと考えた方がよいでしょう。まずは即断即決はせず、仲介不動産業者を窓口として、改めて連絡する旨だけ伝え、どれだけの値下げ幅が得かを検討するのです。
ただし、周辺の取引相場からして、あまりに不当な値下げ幅の値引き交渉をしてくる人に対しては、即座に断って構いません。
不動産相続は、「相続財産を守る会」にお任せください。
いかがでしたでしょうか?
今回は、相続不動産を高値で売却したい相続人の方や、相続の生前対策で不動産を売却したい方に向けて、買主候補の人から値引き交渉を受けたときにどのように対応したらよいかと、適切な値下げ幅を解説しました。
不動産売却のときの値引き交渉は、駆け引きです。駆け引きのやり方には、セオリーはあるものの、より有利な不動産売却をするためには具体的な場面での状況判断が求められ、ノウハウと経験がものをいいます。
「相続財産を守る会」では、相続不動産を多数売却した経験を持つ不動産会社が、弁護士、税理士などの専門家士業のパートナーとなって、あなたのご家族の不動産相続をサポートします。