相続した不動産を売却することをお考えの相続人が、仲介業者を選ぶときによくご相談されるのが、「大手不動産会社と、地元密着の小規模業者の、どちらを選ぶべきですか?」という疑問です。
結論からいうと、大手不動産会社にも、地元の地域密着型の中小業者にも、いずれもメリット・デメリットがあります。売却したい相続不動産の種類、規模、価値などによって、できるだけ早く、できるだけ高値で売却してくれる不動産会社を選択すべきです。
そもそも、同じ不動産会社といえども、大手と中小では、ビジネスモデル、顧客対応、集客方法などが全く異なります。
そこで今回は、大手不動産仲介業者と、地元密着の小規模仲介業者のメリット、デメリットを比較し、あなたの相続不動産を売却するのに適した不動産会社の選び方を解説します。
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大手仲介業者のメリット
はじめに、相続した不動産の売却を、大手不動産業者に仲介を依頼するときのメリットについて解説します。
大手不動産業者には、例えば有名な「三井のリハウス」、「住友不動産」、「野村不動産」、「東急リバブル」などがあります。
【メリット①】顧客情報が豊富
相続不動産をできるだけ早く売却したいという場合があります。相続税が支払いきれないため相続財産を換価処分したいというケースが典型的です。
大手不動産業者は、不動産の購入希望者の情報を、中小規模の不動産会社よりも豊富に持っています。不動産を買いたい人も、「とりあえず大手に話を聞きに行く」という人が多い上に、大手業者は多くの広告宣伝費をかけて顧客を集客しているからです。
相続した不動産を、あまり売却価格にはこだわらず、とにかく早く売却したいと考えるときは、大手不動産のメリットの1つである顧客情報の豊富さが重要となります。
【メリット②】横のつながりが豊富
大手不動産会社は、「不動産会社と顧客」という縦の繋がりだけでなく、「不動産会社同士」の横のつながりも豊富です。
大手同士のネットワークや、大手業者の持つ全国の販売店の組織を活用して、全国的な横のつながりを作っているからです。相続した不動産を売却したいとき、全国に物件情報を流してもらうことができます。
地域密着の小規模不動産会社の手が行き届かないような地域の不動産を相続してしまったときなどには、ひとまず大手不動産会社に相談することが有益です。
大手不動産業者のデメリット
大手不動産業者に、相続不動産の売却を依頼するときのメリットについて解説しましたが、大手に依頼することにはデメリットもあります。
大手不動産業者に依頼するデメリットが気になる方は、より親身に相談を聞いてくれる地域密着の中小不動産会社を探して、相談してみるのも一つの手です。
【デメリット①】利益重視
大手不動産会社であるほど、柔軟な対応は望めない傾向にあり、基本的にはドライな対応されることが多いです。大手不動産会社の営業マンにはノルマがあるため、相続不動産を早く売却することを目的とすることが、顧客のためにならないこともあります。
大手業者の利益を重視するあまり、不動産売却者である相続人に対して、不動産の売値を下げるよう提案してきたり、できるだけ自社内で売主と買主をつないで「両手仲介」をしようとしたりして、結果的に売主の負担が増えたり利益が減少したりするおそれがあります。
相続人間が円満であって、不動産の有効活用が目的である場合など、相続不動産の売却をそれほど焦っていない場合には、大手不動産業者のこのデメリットを知らないと損をするおそれがあります。
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【デメリット②】囲い込み・物件隠し
大手業者によくありがちな、両手仲介と囲い込みの問題もまた、大手業者に相続不動産の売却を依頼した場合のデメリットとなるおそれがあります。
仲介手数料は、宅地建物取引業法によって上限の定めがありますが、仲介手数料は売主、買主の両方から受け取ることができます。ですので、自社で売主、買主の両方を見つけてマッチングすると倍の仲介手数料を売り上げることができます(「両手仲介」といいます。)。
両手仲介を狙うあまりに、自社以外の不動産会社からの仲介の依頼を拒否し、客付けを断ることを、「囲い込み」、「物件隠し」といいます。売主としては、販売機会を失い、相続不動産の売却にかかる期間も長くなり、売値も低くなるおそれがあり、メリットはありません。
相続税が支払えないなど、早く売りたい事情があるにもかかわらず、不動産会社が仲介手数料をたくさんほしいために囲い込みをされるおそれがあることが、大手業者のデメリットの1つです。
【デメリット③】地域密着でない
大手業者は、全国に販売店をもっており、全国に情報を持ち顧客を持っている代わりに、地域密着ではありません。そのため、営業マンによっては地域の特性に詳しくなかったり、その地域の有力な買主とのつながりが少なかったりする可能性があります。
相続した不動産の所在する地域によっては、地域の有力な地主が高値で購入してくれるという話は、地域密着の中小規模の業者のほうが多くもっていることも少なくありません。
地域の有力な地主は、「この地域で不動産を買いたい」という思いが強く、地域密着の業者と強いパイプを築いており、相続した不動産などをすぐに購入してくれることが期待できます。
中小不動産会社のメリット
次に、大手ではなく、地域密着で商売している中小の不動産会社に、相続した不動産の売却を依頼する場合のメリットについて解説します。
相続不動産の売却をするときの不動産会社は、「規模が大きければ信頼できる」という単純なものではありません。
【メリット①】地域の情報が豊富
地域密着で商売している中小の不動産会社は、その地域に限って言えば、大手不動産会社よりも豊富な情報を持っています。
地域の特性を理解し、相続した不動産の場所、性質ごとに、その地域で土地・建物を探している人の顧客データから、より素早いマッチングを期待できる場合があります。長年同じ土地で営業していると、過去の不動産売買のデータも多く持っているはずです。
相続した不動産の所在する地域によっては、その地域についての豊富な情報を持っている中小規模の不動産会社のほうが、より高値で、より早く売却に成功させることができる場合も少なくありません。
【メリット②】親身に相談できる
地域密着の小規模の不動産会社では、大手のように担当営業マンがドライに対応するのでなく、より親身になって、できるだけ顧客の利益になるような売買仲介を考えてくれる会社が多くあります。社長が自ら対応してくれる会社も多くあります。
相続した不動産を売りたいとき、やる気があって親切に対応してくれる中小業者であれば、「できないこと」をしっかり把握して活用すれば、莫大な広告費をかける大手業者よりも有益なことも少なくありません。
中小不動産会社のデメリット
最後に、相続した不動産の売却を、地域密着の中小不動産会社に依頼することのデメリットについて解説します。
【デメリット①】資金力が少ない
大手業者には、多くの資金力があります。その資金力を使って、不動産を売却するための広告を出したり、多くの営業マンを動かしたりすることができます。売買と賃貸の部門が一緒であったり、1人の担当者が売買と賃貸の両方を行っており、経験不足な会社もあります。
相続した不動産を購入する人は、その地域の人だけとは限りません。顧客データが少ないことにより、売却できる見込み客を探すのが遅れるおそれもあります。特に、売却条件が良い物件や人気物件の場合、大手業者のほうが早く買手を見つけてくれる可能性があります。
【デメリット②】情報量が少ない
限られた地域の情報については豊富で、どの程度の価格になるか、いつ売れるかといった見積もりを正確に出すことができますが、それ以外の情報量は、大手に比べてとても少ないです。
ただ、情報量が少ないことから、さきほど解説した「両手仲介」をすることが事実上困難であることから、会社の利益よりも顧客の利益を優先してくれることが多いのも、中小規模の不動産会社の特長です。
大手・中小の判断基準は?
では、大手業者と、地域密着の中小業者それぞれのメリット・デメリットを説明しましたが、「実際に、相続した不動産を売却するときに、どのように仲介業者を選んだらよいのでしょう?」という疑問、不安が消えないのではないでしょうか。
メリット・デメリットがそれぞれ存在することから、相続した不動産の所在する地域や、相続人の希望、相続の方針などによって、どのように仲介業者を選んだほうが得かは異なります。
そこで次に、相続の場面でよく発生するケースに応じて、大手・中小のどちらの仲介業者を選択すべきか、その判断基準を解説します。
注意ポイント
大手・中小のいずれに仲介を依頼するにしても、担当してくれる営業マンが誠実な対応をしてくれるかどうかが何より重要となります。
特に、中小規模の不動産会社の場合には、担当が代表者(社長)であることも多いため、担当してくれる人のやる気、誠意を、対面で話してしっかり見極めて進めてください。
複数の不動産会社に査定を依頼する
まず、相続した不動産の売却をお考えの相続人の方は、不動産の査定を、不動産会社に依頼します。このとき、最終的に大手・中小のいずれにお任せするかはともかくも、複数の業者に査定依頼をすべきです。
一括査定を比較すると、各社の査定額がさまざまであることに驚くことでしょう。ただし、大手業者の査定額は、地域密着の中小会社の査定額ほど正確ではなく、実際にその金額で確実に売却できると期待するのは少し気が早いです。媒介契約をもらうために、最初の査定額を高くしているケースも少なくありません。
最近では、簡単にできる一括査定を薦めるインターネット上の広告のほか、昔ながらの投函チラシ、折り込み広告なども増加しています。売却不動産の情報収集が目的である場合も多く、信頼できる不動産会社に依頼するほうがお勧めです。
仲介業者は大手?中小?たった1つの重要なポイント
さて、ここまで大手不動産会社、中小業者のメリット、デメリットを書いてきました。これらの基本的な理解は重要ではありますが、最後に仲介業者を選ぶときの基準には、とても重要なポイントが1つあります。
大手に依頼しようが、中小に依頼しようが、実は媒介契約を結んだ後で、REINSという不動産業者間で物件情報を共有するシステムに登録することが宅地建物取引業法で義務付けられているため、実はすべての不動産会社に情報を共有することが可能です。
そういったことを加味すると、やはり一番大事なのは、会社規模などではなく、その会社、担当に信頼して任せられるかということです。
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いかがでしたでしょうか?
今回は、不動産を相続した方のうち、できるだけ早く、できるだけ高値で相続不動産を売却したいという相談者に向けて、仲介業者の選び方を解説しました。仲介業者には、大手業者も、地域密着の地元の業者にも、メリット、デメリットが複数あり、比較が必要です。
そして、大手の仲介業者がよいか、中小規模の仲介業者がよいかは、売却したい相続不動産の地域や面積、用途など、また、相続人が「早く売りたいのかどうか」などの方針によっても異なってきます。
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