年末年始や正月休みに、家族で実家に帰って団らんの機会としたり、親戚回りをしてお酒を飲んだり美味しい食事をしたりといった機会を持つご家庭も多いのではないでしょうか。年末年始や正月に、家族や親族で集まるタイミングこそ、遺産相続の話をする絶好の機会です。
しかし一方で、相続の話の切り出し方が下手だったり、生前対策、節税対策に対する考え方、意見、方針が異なることで、話し合いのはずがむしろ「争続」の機会を招いてしまう危険もあります。
そこで今回は、年末年始・正月に、両親、兄弟姉妹など親族が集まる機会を活用して、将来必ず起こる相続についての話し合いを円滑に進める方法について、弁護士がまとめました。
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なぜ年末年始・正月が相続の話をする絶好の機会なの?
相続問題は、家族全員で考えなければなりません。今後先にお亡くなりになり被相続人となるであろう親だけの問題でも、そのとき残されて相続人となるであろう子だけの問題でもありません。
そして、相続人と被相続人との間で、相続についての考え方や、「どの相続財産(遺産)を誰がどのような割合でもらうか」、つまり、遺産分割についての考え方が異なると、たちまち「争続」になってしまうため、「考え方の共有」が重要です。
年末年始・正月は、仕事も休みとなり、実家や故郷に帰るなどして、家族が全員で一緒に時間を共有でき、家族全員で、相続のことについて話し合いをするまとまった時間をとることができます。
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年末年始・正月に相続の話をするときの注意点
年末年始や正月の休みが、家族全員で相続の話をする良い機会である理由をご理解いただけたでしょうか。しかし、年末年始や正月休みに相続の話をするとき、逆にトラブルを招いてしまわないよう、注意が必要です。
相続の話を聞かれたくない親族がいないか注意
年末年始、正月休みに相続の話し合いをして、円満に生前対策や節税対策のことを話し合えるのは、その話し合いに参加する家族、親族がみな、同じ考えであったり、少なくとも、これからお亡くなりになるであろうご家族の意向に理解を示している場合だけです。
年末年始、正月休みには、親族が大勢集まる結果、相続について、全く反対の考えを持っている人も同席の場で話し合いが始まると、相続の話し合いを始めたことが逆に争いを招いてしまうリスクがあります。
ご家族の状況によっては「妻と子にだけ話しておきたい。」、「親戚には相続の話を聞かれたくない。」、「孫にはお金の話は聞かせたくない。」ということもあり、そのような場合には、年末年始、正月の集まりでは話すことが適切でない相続の話もあるかもしれません。
特に、民法で定められた相続人(法定相続人)ではない親族には、まずは相続の話を聞かれないほうがよいケースが多いです。
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円満な相続のためにコミュニケーションが重要
将来の相続のとき「争続」問題を起こしてしまわないために、円満な相続のためには、まずは家族間、親族間の良好なコミュニケーションが重要です。
相続の時によく起こる次のような問題は、年末年始や正月など、家族が集まる機会によくコミュニケーションをとっておくことによって、回避できる問題です。
ポイント
相続財産に何があるかを知らない
ある相続人が、隠し財産を持っていた
相続人に誰がいるか知らず、「隠し子」など全く知らない相続人が発見された
遺言書を書いているかどうか、遺言の内容などを知らない
将来の相続に向けて、被相続人と相続人はもちろんのこと、相続人同士が良好なコミュニケーションをとっておくことによって、互いを尊重し合い、円満でスムーズな相続を実現することができます。
強引に説得しない
人は、説得されるとますます強硬な姿勢を示すものです。相続の話を進めて、「相続税の節税対策を生前にしてほしい」、「この相続財産(遺産)は自分に譲ってほしい」といった、相続人本意の話し方では、親や祖父母の気持ちが離れてしまいます。
余命まであとわずか、残された時間も少ないとなると、年末年始や正月の機会に、「今年こそは相続の話をしよう」と気負うがあまりに、話し方が説得になってしまうことには注意が必要です。
ひとたび拒否し、心を閉ざしてしまえば、相続の話を続けることはできません。相続財産をリストにし、相続税額を計算し、分厚い資料を見せて説得するのは、ご家族が相続の話にしっかりと興味を持ってからにすべきです。
年末年始・正月の、相続の話の切り出し方は?
さて、ここまでの注意点を理解していただき、年末年始、正月休みに、相続の話をするのに適した集まりがあったとしても、その際の話の切り出し方には、細心の注意が必要です。
相続人となる立場の人が、話の切り出し方を間違えると、「親の死ぬのを期待しているのか。」、「がめついお金の話か。」と受け取られかねず、両親や祖父母の機嫌を損ねてしまうからです。一度機嫌を損ねると、その年の年末年始、正月の機会には、もう相続の話はできないかもしれません。
話の切り出しは少人数で
年末年始や正月に、相続の話を家族でしたいと考えるとき、話を切り出すときには、少人数のときにするのが良いです。というのも、さきほど解説したとおり、被相続人となる親や祖父母の立場からすると、「あの親族には聞かせたくない」という意向があるときもあるからです。
親や祖父母など被相続人の側から積極的に相続の話題が出る状況であればよいですが、相続人となる子の側から相続の話を切り出すときは、まずは少人数(できれば自分しか聞いていないとき)で切り出し、次の集まりの場で、親の側から積極的に相続の話をしはじめるようにするのがお勧めです。
単刀直入にお金の話をしない
親や祖父母など、これからお亡くなりになって相続が開始するであろう人の側からしても、「実は、相続のことが心配だ」という方は多くいます。しかし、相続をする側から、相続の話を単刀直入にすることはお勧めできません。
相続をする側からすれば、相続の話というのは、「財産をもらう話」、つまり、お金の話だからです。聞きようによっては「私の心配より、お金の心配なのね。」ととられかねません。「もし亡くなったら」と突然切り出すことは不吉で、心外だと腹を立てる人もいます。
そもそも、「相続税が高いと損する」といった相続にまつわるお金の問題は、あくまでも相続人の問題であって、死にゆく被相続人には関係のないことと考える人もいます。
相続財産(遺産)や相続税、もめる遺産分割協議や「争続」など、将来の相続に向けた不安、心配は尽きないでしょうが、まずは親のからだの心配が一番です。「残された子の心配」は、親がするものであり、子が自分でするものではありません。
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昔の話をする
まずは、親や祖父母の心配をするところから話を始めるのがよいでしょう。相続の問題は、「万が一に、お亡くなりになったとき」のことですが、お亡くなりになる時期が遅いほど良いのは、当然のことです。
間違っても、「高齢だから」「認知症だから」・・・「そろそろ相続の話も考えないと」と説教、説得になってはいけません。
その上で、年末年始・正月休みに相続の話をうまくはじめるための切り出し方としては、昔の話をするのがよいでしょう。自分が小さい頃の親の話や、更にさかのぼって、先祖からどのように自宅を譲り受けたか、相続財産(遺産)をもらったかなどの話は、相続の話の切り出し方に最適です。
親・祖父母の希望を聞く
年末年始・正月に相続の話をする前に、まだ生きている両親や祖父母に対して孝行をすることからはじめるべきです。まずは、親や祖父母の希望を聞いて、最大限実現してあげてください。
例えば、実家をバリアフリー化にリフォームしたり、親の資産運用の相談、保険加入の相談に乗ったりといったことは、親や祖父母の希望を叶えるとともに、同時に<b>相続の話を切り出すタイミングづくりとしても絶好の機会です。
「子供に苦労をさせたくない」という思いから、両親や祖父母のほうから相続の話、遺言作成の話を切り出してきてくれることも少なくありません。特に、過去に相続で苦労した経験のある人ほどそのような傾向にあります。
相続法改正も話題に
2018年に、相続法についての大きな改正がされました。これによって、自筆証書遺言の要件が緩和されて作成しやすくなったり、配偶者の死亡によって残されたパートナーの保護が図られたりと、相続問題につきものであった問題点の一部が解消されました。
その中には、既に遺言書を作成している人も遺言書の作成をしなおしたり、相続計画を考え直したりしたほうがよい改正も含まれています。また、相続税法も年々改正されています。
これらの今年起こった重要な法改正を、年末年始や正月の家族の団らんの機会に話題に出すことによって、将来の相続の話を切り出しやすくすることができます。
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2018年相続法改正の概要は、こちらをご覧ください。
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いかがでしたでしょうか?
今回は、家族や親族が一同に会する場がひらかれることの多い年末年始、正月を迎えるにあたって、相続の話をうまく切り出し、円満に話し合うためのポイントを、弁護士が解説しました。
年末年始、正月は、相続の話をする良い機会ですが、気負うあまりに切り出し方を誤ると、逆にトラブルのもととなったり、両親や祖父母の気持ちが離れてしまい相続の話をしづらくなってしまいます。
「相続財産を守る会」では、ご家族の状況にあわせて、弁護士、税理士などの専門家が親身になって相続相談をお聞きし、多くの相続問題を解決してきた経験談を踏まえて、円満な話の切り出し方からアドバイスいたします。